著者
津田 尚胤 貝戸 清之 青木 一也 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.801, pp.801_69-801_82, 2005 (Released:2006-05-19)
参考文献数
17
被引用文献数
17 16

本研究では橋梁部材の劣化予測のためのマルコフ推移確率モデルを推定する方法論を提案する. その際, 橋梁部材の劣化状態を複数の健全度で定量化するとともに, 時間の経過により劣化が進展する過程をハザードモデルで表現する. その上で, 一定期間を隔てた時点間における健全度の推移関係を表すマルコフ推移確率を指数ハザード関数を用いて表現できることを示す. さらに, 定期的な目視検査による健全度の判定結果に基づいて, マルコフ推移確率を推定する方法を提案する. ニューヨーク市の橋梁を対象とした実証分析により提案した方法論の有効性を検証するとともに, サンプル数と指数ハザードモデルの推定精度の関係について考察する.
著者
根本 信 高瀬 嗣郎 長谷部 大輔 横田 崇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.346-350, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
15

With the progress of recent seismological research, we have understood that slip distribution of earthquake fault rupture is generally heterogeneous and has fault asperity. However this heterogeneity of fault slip has not been considered enough in scenario earthquakes of tsunami prediction. In this study (1) we performed inversion analyses of past three large earthquakes in Japan sea (1964 Niigata, 1983 Nihonkai-Chubu and 1993 Hokkaido Nansei-Oki) using tsunami height data in order to investigate the characteristics of slip heterogeneity, (2) based on the inversion results, we proposed a modeling procedure of fault asperity on tsunami source model of scenario earthquakes.
著者
久保田 健吾 林 幹大 松永 健吾 大橋 晶良 李 玉友 山口 隆司 原田 秀樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.56-64, 2010 (Released:2010-03-19)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

都市下水を処理しているUASB-DHSシステムのG3型DHSリアクターの微生物群集構造をrRNAアプローチを用いて解析した.クローン解析による結果はリアクター上・中・下部において微生物群集構造が異なっていることを示しており,微生物多様性はリアクター上部において最も低かった.定量Real-time PCR法による各種微生物のrRNA遺伝子の定量結果は,アンモニアおよび亜硝酸酸化細菌の存在率がリアクター中・下部に行くにつれて増加することを示していた.リアクター上部からのアンモニア除去は,活性汚泥と同程度以上のアンモニア酸化細菌群の存在率に加え,DHSリアクターの高い汚泥保持能力および酸素供給能力に由来する可能性が示唆されるなど,除去メカニズムに関する知見を得ることが出来た.
著者
松本 浩幸 三ヶ田 均 大町 達夫 井上 修作
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.281-285, 2004-10-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

本研究では, 津波地震の発生原因が「断層面上のゆっくりとした断層破壊」と仮定して, それに伴う「ゆっくりとした海底面変動」が津波を引き起こす過程および伝播の特性を数値計算によって検討した.ライズタイムが100s程度であれば断層破壊の影響は無視でき, 静的変位から予想される津波と同程度の津波が発生する. また, ライズタイムが500sのゆっくりとした海底面変動でも水塊移動を引き起こし津波が発生することを示した. ただし, 津波の波高が小さくなり, 周期が長くなる点は従来の予測とは大きく異なる.本研究は, ゆっくりとした断層破壊による地震津波に対しても, 沖合観測によって早期に津波を検知できることを示唆している.
著者
中下 慎也 日比野 忠史 駒井 克昭 福岡 捷二 阿部 徹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.344-358, 2010 (Released:2010-11-19)
参考文献数
29

太田川放水路に形成されている干潟の特性を明らかにするために,1996年から2008年にかけて底質,水質の経年変動,生物分布および有機泥の捕捉調査を行った.さらに,生態環境の形成に果たす河川構造物の役割について検討するために,生物分布,底質,地下水質,地下水位調査を行った.調査結果より,二枚貝の棲息には地盤内の間隙の保持等,地下水流動によって起こる二次現象が重要であることを明らかにした.また,護岸前後に形成された水位差によって促進される地下水流動が地盤内の間隙への有機泥の堆積抑制等に寄与していることを明らかにし,地下水環境を考慮した河川構造物の構築により安定した多様な生態環境が形成されることを示した.
著者
堀 倫裕 鶴田 岳志 貝戸 清之 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.33-52, 2011 (Released:2011-02-18)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

下水処理施設は,保全管理方式が異なる複数の資産群から構成されており,補修や再構築に要する財源も様々である.したがって,維持管理計画を最適化し,事業の安定性・継続性を確保していくためには,異なる資産管理方式および資金調達方式を同時に考慮したライフサイクル費用分析が必要となる.さらに,下水道事業体は公営企業として財務会計を有する場合も多く,財務会計と有機的に連携した管理会計を構築することが重要である.本研究では,下水処理施設のアセットマネジメントに資する管理会計システムを提案するとともに,管理会計シミュレーションを通じて,ライフサイクル費用の低減に貢献するようなアセットマネジメント戦略を検討するための方法論を提案する.さらに,適用事例を通じて方法論の有効性を検討する.
著者
谷口 綾子 浅見 知秀 藤井 聡 石田 東生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.441-448, 2009 (Released:2009-11-20)
参考文献数
10

効率的な都市構造「コンパクトシティ」を実現するためには,土地利用規制とともに,人々の居住地を公共交通機関の近くに誘導する施策が不可欠である.本研究ではこうした認識の下,平成20年4月に転居予定の筑波大学の学生を対象に,居住地選択のための探索行動を行うであろう平成19年11月から平成20年3月の期間に,一般的な住宅情報とともにバス停位置の情報を提供するというコミュニケーションを実施し,これによりバス停近くの居住地選択を促すことが可能か否かを実証的に検証した.その結果,バス停位置を強調した情報を提供した群は,バス停を強調しない情報を提供した群よりも,バス停近くのアパートを選択する傾向が2倍程度高いという結果が示された.
著者
中野 俊夫 大澤 輝夫 吉野 純 益子 渉 河合 弘泰 松浦 邦明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1286-1290, 2006-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

台風により発生する強風や波浪・高潮を高精度に推算することは, 海岸工学上, 極めて重要な問題である. 本研究は, 台風ボーガスの高度化および4次元データ同化の検討を通して, 数値予報モデルの精度向上を図り, 一般性のある海上風推算手法の確立を目指したものである. 台風ボーガスの高度化, 4次元データ同化を行った結果, 台風の中心気圧, 進路の推算精度が向上することが確認された.また, この手法で推算された海上風を周防灘・八代海に高波・高潮をもたらした10事例で比較したところ, 従来の簡易的な推算手法より精度の高いことが確認された.
著者
臼谷 友秀 中津川 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.268-279, 2010 (Released:2010-08-20)
参考文献数
16

気候変動に対する適応策の一環として多目的ダムの治水・利水機能が注目されている.その背景の一つに,積雪寒冷地の多目的ダムでは,利水容量の確保を優先した融雪期における大雨への対応が懸念されていることがある.そこで本論文では,ダムの洪水調節機能の向上を目指し,予測雨量を利用したダムの事前放流の可能性を検討した.最初に,積算予測雨量と時系列予測雨量の精度を比較し,積算予測雨量の優位性を明らかにした.次に,積算予測雨量に基づいた事前放流方法を提案し過去の大雨を伴う融雪洪水に適用した.以上の結果,積算予測雨量の利用は融雪期のダムの洪水調節機能の向上に有効であることがわかった.さらに,融雪期の多目的ダムの管理においては,事前放流によって治水機能の向上が可能であることを示唆することができた.
著者
伊藤 将司 森本 章倫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_101-67_I_108, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究は,参加型の社会資本整備より,市民主体の継続活動に展開する要因を明らかにするものである.既往研究及び事例調査から,人(参加者とつながり),意識(目標と信頼関係),環境(適正な合意形成の場)の3つの要因を仮定し,詳細の事例分析によって検証を行った.その結果,参加型の社会資本整備より,市民主体の継続活動に展開する流れを明らかにするとともに,その過程において,継続活動において3つの要因の形成が重要であることが明らかとなった.また,3つの要因に課題が生じた場合においては,継続活動が停滞する場合があることも分かった.
著者
秋山 孝正 奥嶋 政嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.145-157, 2007 (Released:2007-04-21)
参考文献数
16

本研究では機械学習における決定木を用いて,交通行動の意思決定構造の記述を試みる.具体的には,ID3,C4.5,ファジィID3,ファジィC4.5の4種類の決定木アルゴリズムを用いて交通機関選択モデルを構成する.大量のデータからの知識獲得を前提とするモデル化は従来の方法に比べて,多様な意思決定構造の表現と推計精度向上の点から有効性が示される.また事後的な枝刈を実行して,情報量を整理することによって,多様性を持つ高精度な判別が可能なファジィ決定木を構成できることが示された.最終的にデータの情報量利得を基本とする決定木の交通行動分析への適用可能性が示された.
著者
佐野 信夫 馬場 弘二 山田 隆昭 吉武 勇 中川 浩二 西村 和夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.391-400, 2007 (Released:2007-09-20)
参考文献数
24

トンネルにおける点検作業は,効率的に実施することが望まれている.高速道路トンネルにおける覆工コンクリートの詳細点検は,高所作業車を用いた近接目視と打音点検が主体となっている.本研究で提案する点検システムは,1)走行速度60km/h程度でも計測できる車両を用いて,2)覆工コンクリート表面画像の机上点検から健全度の劣るスパンを特定し,3)そのスパンに限定して従来の近接目視・打音点検を行うものである.この点検システムにより,点検技術者による現地点検回数の低減に伴う点検費用の削減,点検・調査の迅速化,安全性判断の早期化,詳細点検計画の効率的な立案などが可能となった.
著者
野口 仁志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.131-140, 2007 (Released:2007-03-20)
参考文献数
4

港湾および海岸に設置されている消波ブロックの撤去は,一般には,作業員あるいは潜水士が,消波ブロックの隙間にワイヤーロープを通して玉掛けを行い撤去しているが,足場が不安定で危険な作業である.そのため,無人でブロックを撤去できる網チェーンを用いたブロック移設装置を開発した.種々のブロック視認状況での模型実験を行い作業効率を比較検討した.実際のブロック撤去工事においては,視認可能な水中ブロックの作業効率は5.0分/個と,潜水士による従来方法の6.1分/個を上回った.工事の作業方法を本装置に適した状態とすることで,作業効率は,ブロックが視認状況では,約3分/個,視認不可状況では約4~6分/個,撤去コストは,従来の人力工法の1/3程度に抑えられる試算結果となった.
著者
目野 幹雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学講演会講演集 (ISSN:04194918)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.56-63, 1965-11-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
35

前回の報告ではMiles-Phillipsの風波発生理論とPhillipsの平衡領域のスペクトル理論をもとにして, 風波特性の解明を試みた。この論文では, さらに, 風と波との相互作用を支配する原理として “エネルギー仮説” を提出し, これから導かれる一連の理論的結果として, fetch graph, スペクトル最大の周波数, 海面粗度係数などを求め, また風と波との間のエネルギー授受の力学関係をも示すことができた (なお, 文中前の2報告をそれぞれ論文I, IIとして引用する)。
著者
古谷 宏一 横田 弘 橋本 勝文 花田 祥一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_159-I_168, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
6

社会基盤施設の維持管理において,事後保全型から予防保全型へとその枠組みを転換することにより,施設の有効活用やライフサイクルコストの低減を図る試みが進められている.この場合,劣化進行予測の信頼性を向上させることが重要になる.本論文では,係留施設の劣化に対する対策の実施推奨年をマルコフ連鎖モデルにより予測する場合の,予測結果の信頼性を議論する.つまり,係留施設の劣化度調査データを用いて次の検討を行う.1) 構造物ごとの劣化速度を算出し,K.S.検定により劣化速度の分布系を決定する.また,2) 分布に従う劣化速度乱数を発生させ,モンテカルロシミュレーションにより構造物の対策推奨年の分布を求める.さらに,3) 施設全体の代表劣化度の相違が対策推奨年の予測結果に与える影響を把握する.その結果,1) 係留施設の構造形式ごとに推定される対策推奨年の分布系が確認できた.2) 構造物に期待される対策推奨年の最頻値と最小値との差を定量的に示すことができた.また,3) 代表劣化度の相違に起因する対策推奨年の予測結果の差異を定量化する算定式を提案した.
著者
山口 晶 吉田 望 飛田 善雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.407-417, 2010 (Released:2010-06-18)
参考文献数
13

本研究では,一度液状化した地盤が別の地震によって再度液状化する現象(再液状化現象)が発生する理由として土粒子の水中落下に着目した.これは,液状化後の体積減少によって発生する土粒子の水中落下現象を想定したものである.土槽に作製した模型地盤を強制的に水中落下させ,その前後でせん断抵抗の変化を調べた.この結果,土粒子の水中落下距離が大きいほど,土層のせん断抵抗が減少する層厚が増加した.この実験から,土粒子の水中落下現象が,再液状化が発生する原因の一つであることを示した.