著者
永井 泉治 吉武 勇 中村 秀明 浜田 純夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.665, pp.183-188, 2000-12-20
参考文献数
2
被引用文献数
3

本研究は, 山岳トンネル坑口部の橋梁における車輌の積雪スリップ事故防止策として, 山岳トンネル特有の湧水を利用した温水パイプ式ロードヒーティング実験を実施し, 検討を試みたものである. またその基礎実験として, 熱伝導特性の異なるコンクリートについて熱伝導試験を行うとともに, その融雪効果を調べた. トンネル湧水を用いた現場実験より29cm/dayの降雪量に対しても, 無雪状態にすることができたため, 温水パイプ式ロードヒーティングへのトンネル湧水適用の有効性が確認できた.
著者
宮崎 一浩 日比野 直彦 森地 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_477-I_486, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
14
被引用文献数
1

我が国の都市鉄道は,新線建設,高頻度運行等の輸送力増強施策による混雑緩和対策やネットワークを活用したシームレスな輸送サービスの提供等,利便性の向上に取り組んできた.その反面,稠密なダイヤ構成や運行形態の複雑化により,慢性的な遅延の発生,広域波及といった新たな課題が顕在化している.本研究は,都市鉄道における列車遅延の発生,波及の要因について,路線の特性を踏まえつつ,実績値データを用いた現状の把握を目的としている.また,輸送サービスの維持と遅延解消の両立に向け,ラッシュ時における列車の運行を再現するシミュレーションモデルを構築し,計画ダイヤ上の発時刻前に列車を発車(以下「早発」という)した場合の影響を定量的に示している.
著者
矢野 真一郎 北川 洋平 谷口 弘明 西村 圭右 堂薗 俊多
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_721-I_726, 2015 (Released:2016-01-29)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The Northern Kyushu Heavy Rain in July, 2012 caused very serious damages. The event also caused many drift woods disasters in river basins and coastal areas. This research focuses on transport of drift woods in the Ariake Sea due to the rain event. Numerical simulation of their transport by 3D hydrodynamic model (DELFT3D) combined with assumed drift woods tracking model and comparison between the calculation result and collection data by Ministry of Land, Infrastructure Transport and Tourism were conducted. From the result, the followings were clarified: 1) total drift woods volume of discharged from all rivers into the sea was estimated as 17,500m3; 2) volume of discharged drift woods from each A-class river was estimated; 3) relationship between the volume and specific maximum river discharge was evaluated.
著者
石田 仁 矢吹 信喜
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.II_58-II_65, 2015 (Released:2016-03-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

国土交通省が推進するCIM(Construction Information Modeling)により,建設現場における3Dモデルの活用が急速に広まっているが,高スペックなワークステーションや特殊なソフトウェアを必要とするケースも多いことから,利用可能な状況が限られている.一方で,標準的なWEBブラウザで3Dグラフィックスを表現することが可能なWebGLは,様々な立場の利用者が3Dモデルを共有することができ,このような課題を解決できる可能性があると考えられる.そこで,本研究では,土木構造物の維持管理のうち,主に点検業務にWebGLを応用し,その有効性を検討した.
著者
宮下 剛 藤野 陽三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.561-575, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

スキャニングレーザードップラー速度計を三台連動させ,対象物の三次元挙動を高精度かつ空間的に高密度に計測可能な振動計測システムを開発する.計測原理としては,三方向から振動計測を行い,計測された速度成分を対象物に設定された直交座標系の成分にレーザー照射角度に基づく座標変換を用いる.まず,計測原理を検討するために基礎的なシステムを構築し,その妥当性を検証した.次に,現場計測への適用を想定して,任意の配置を許すスキャニング計測可能な三次元振動計測システムを構築し,屋内実験からその妥当性を検証した.本システムを用いて実構造物や実地盤を計測することで,常時微動や列車・交通荷重による三次元局所変形・振動特性を明らかにし,既存の社会基盤施設に対する予防保全・機能性向上に貢献することが期待される.
著者
内藤 英樹 白濱 永才 秋山 充良 高田 真人 鈴木 基行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.698-712, 2006 (Released:2006-11-20)
参考文献数
45

SRC柱の正負交番載荷実験により,H形鋼の割合が多いSRC柱は,H形鋼フランジの局部座屈が生じた後に鋼材が破断することで脆性的に耐力を失うことが報告されている.本研究では,破断の前段階であるH形鋼の局部座屈を終局としたSRC柱の靭性能評価法を提示した.コンクリートに拘束されたH形鋼の座屈性状に着目し,3辺固定-1辺自由の支持条件を仮定した平板の弾塑性座屈モデルにより,H形鋼フランジの座屈時ひずみを定式化した.さらに,この座屈時ひずみを基に部材軸方向の曲率分布を定め,これを二階積分することで座屈時変位を算定する.そして,FEM解析や正負交番載荷実験と比較することで,提案手法はSRC柱でのH形鋼の座屈時変位やフランジの座屈長などを妥当に評価できることを確認した.
著者
鈴木 猛康 田村 重四郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.525, pp.275-285, 1995-10-21
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

1985年ミチョアカン地震の際, メキシコ市でシールドトンネル軸方向の引張およびねじり変形に起因する被害が発生した. このような軸方向変形に対しては, シールドトンネルの覆工体とその外周の地盤の間に免震層を形成し免震構造とした場合, 地震時に覆工体に生じるひずみを大きく軽減させることができる. 本論文では, シールドトンネルの免震構造の免震効果を評価する方法として, 軸対称有限要素を用いた簡易モデルによる数値解析法を提案するとともに, パラメトリック・スタディーによりひずみの低下率によって免震効果を定量的に示している. また静的安定解析により, 0.5に近いボアソン比を有する免震層とすることが, 地表面沈下を抑制する意味から重要であることを示している.
著者
越川 義功 高山 晴夫 竹内 康秀 真崎 達也 大城戸 博文 藤井 暁彦 林 健二 渡邉 洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_73-II_81, 2015 (Released:2016-06-01)
参考文献数
30

ダム建設工事では,工事区域での樹木伐採や剥土に伴い,昆虫類の生息場が短期間で広範囲に減少する.施工者による自然環境保全の取り組みのひとつとして,伐採材を活用した木柵(エコスタック)設置により,昆虫類の代替生息場の確保を実施した.設置からわずか1カ月後の調査において,木材に依存するカミキリムシ類、オサムシ類等をはじめとした56種の昆虫類がエコスタックで確認された.その後も季節による変動はあるものの,多くの昆虫類がエコスタックを利用しており,伐採材を利用したエコスタック設置は昆虫類の代替生息場の提供として有効に機能することが確認できた.
著者
宮川 愛由 田中 謙士朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.344-355, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
19

本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.
著者
李 漢洙 下山 智久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_325-I_330, 2016

瀬戸内海は,潮汐と潮流の影響が卓越した沿岸環境を有している.本研究は,南海トラフで想定される最大クラスの巨大地震によって発生しうる津波を対象として,適合格子細分化を採用した数値実験により,瀬戸内海における潮汐が津波伝播に及ぼす影響について定量的評価を行った.特に,瀬戸内海における津波伝播過程において,速吸瀬戸を基準とする潮汐の位相差(上げ潮・満潮・下げ潮・干潮)を考慮し,潮汐と津波の物理的相互作用を考慮した数値計算を行った.その結果,瀬戸内海で最も潮汐が大きい周防灘において,潮汐位相別の津波高に最大50cm,到達時間に最大約1時間の差が認められた.さらに,計算最大津波高における潮汐位相別津波高の差の比率を不確実性と定義して評価した結果,播磨灘において,最大50%を超える計算津波高における不確実性が認められた.
著者
池田 一 吉田 真也 風間 宏 小渕 光昭 神野 忠広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_85-I_92, 2016

火山災害は,洪水災害等とは異なり発生頻度が低いため,災害経験がある行政職員や地域住民等はごく限られる.また,噴火に伴い発生する現象は多様でかつそれらの規模は大きいという特徴があるため,火山噴火時の災害状況をイメージすることは難しい.このため,火山災害のレジリエンス強化に向けては,災害状況の疑似体験ができるロールプレイング方式による,実践的な防災訓練が有効と考えられる.<br> 群馬県と長野県の県境に位置する浅間山では,周辺の関係機関により組織される火山防災協議会により,浅間山の火山噴火を想定したロールプレイング防災訓練を平成20年よりこれまでに9回開催してきた.本研究では,過去9回の浅間山ロールプレイング方式防災訓練の結果を分析し,火山災害に対してレジリエントな地域社会をつくるための課題を抽出するとともに,解決策を提案した.
著者
津國 正一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.313-327, 2014 (Released:2014-09-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1

壁状改良と杭状改良を併用する新しい3次元的な改良形状を有する杭状・壁状配置併用型改良工法は,軟弱粘性土地盤上の高盛土の基礎への適用を想定して開発された工法で,既存工法に比べて盛土周辺地盤の変状抑止効果が高いという特長がある.3次元的な改良形状の効果を設計で反映させるために,地盤改良の設計では一般的でない3次元FEM解析を用いた詳細検討を,設計法の検討の一環として実施した. 解析コードMuDIAN1)を用いた3次元FEM解析により,壁状改良部である側部壁を盛土法肩部に配置すると最も変状抑止効果が高くなることを明らかにした.また,3次元FEM解析を用いた熊本宇土道路での試験施工のシミュレーションを通じて,3次元FEM解析で行う詳細設計法を検証した.
著者
瀬木 俊輔 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_353-I_371, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
39

本研究は,マクロな社会資本投資政策の便益の世代別帰着分布を評価可能な動学的応用一般均衡(DCGE)モデルを構築した.その上で,構築したモデルを我が国に適用し,社会資本投資政策と長寿命化政策について分析を行い以下のような知見を得た.社会資本投資には,その水準を増やすと将来世代の厚生が増加する一方で現在世代の厚生が減少するという世代間厚生のトレードオフの問題が生じる.起債による世代間所得移転はこの問題を効率的に緩和できるが,これは公債残高を一時的に増加させる.長寿命化政策は,現在世代を含む幅広い世代に対して便益をもたらし,損失を受ける世代への補償は現在世代の中だけで行うことが可能である.
著者
島岡 明生 谷口 守 松中 亮治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.786, pp.135-144, 2005-04-20
被引用文献数
6 2

今後わが国は今までに経験のない人口減少状況の中で交通環境の改善, 都心部の活性化などの課題に対応することが求められる. そのための都市づくりのコンセプトとしてコンパクトシティが着目されているが, 実証的な観点にたつ都市の具体的な撤退戦略については展望がない. 本研究では, 地方中心都市を対象に, 人口減少をどのような分布と構成で受け入れる必要があるかを実データに基づき, 詳細な地区レベルで検討した. ガソリン消費量などのサステイナビリティに関連する多様な指標で評価を行った結果, ただ単に都市構造をインフラ面からコンパクトにするだけでは改善は望めず, 抜本的な行動変容の促進とあわせた政策パッケージの導入必要性が示された.
著者
澤崎 貴則 藤井 聡 羽鳥 剛史 長谷川 大貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-15, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
33

近年,中心市街地の活力低下等が問題となっている中で,町の活気を取り戻すというような事例も見られる.こうした成功事例に着目し,如何にしてその成功が導かれたのかについての一般的知見を得ることは,今後のまちづくりにおいて有益であると考えられる.その知見を得る方法として,これまでは定量的な分析を行う自然科学的な手法が多く用いられてきたが,まちづくりに関わった人々の思いを理解するためには,“物語”を解釈するという解釈学的な方法論を用いることが求められる.本研究では,まちづくりの成功事例として挙げられる埼玉県川越市を対象として,まちづくりの様々な関係者にインタビューを行う.そして,それらを通じて“物語”を構成し,その解釈によって「川越まちづくり」が成功に至った要因を論ずる.
著者
佐野 慈 増田 周平 李 玉友 西村 修 原田 秀樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_565-III_573, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究では,下水処理場における温室効果ガス排出特性を評価し,排出量低減対策を考察した.処理方式の異なる3箇所の下水処理場について季節毎に温室効果ガス排出量の実測調査を行い,各処理場における温室効果ガス排出係数を算定した.その結果,各処理場において電力消費に伴う温室効果ガス,汚泥焼却に伴うN2O及び下水処理過程におけるCH4が主要な排出源であった.また,処理方式や季節により現地におけるCH4,N2Oの排出特性は異なり,下水処理過程におけるCH4排出係数に水温との相関が見られるのに対し,下水処理過程におけるN2O排出は硝化・脱窒の有無や水温との相関,放流水による間接排出など複雑な要因が関わり,区分化の必要性が示唆された.さらに,調査結果を基に下水処理場における効率的な温室効果ガス低減対策について考察を行った.
著者
越村 俊一 行谷 佑一 柳澤 英明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.320-331, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
55
被引用文献数
1 4

津波数値解析技術の高度化およびリモートセンシング技術・地理情報システム(GIS)の普及を背景に,新しい津波被害想定指標としての津波被害関数の概念とその構築手法を提案した.津波被害関数とは,津波による家屋被害や人的被害の程度を被害率(または死亡率)として確率的に表現し,津波浸水深,流速,波力といった津波の流体力学的な諸量の関数として記述するものである.本稿では,被災地の衛星画像,数値解析,現地調査結果および歴史資料の分析を通じて被害関数を構築し,津波外力と被害程度の関係についての考察を行うとともに,被害関数の適用性や工学的利用にあたっての留意点について論じた.
著者
横川 英彰 中島 章典 緒方 友一 青戸 清剛 笠松 正樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.209-217, 2008

In this research, we examine the reproducibility of the actual dynamic behavior of the simple viaduct model with the pseudo-ground by the dynamic response analysis. First, we conduct the vibration test of the pier and superstructure member, and the movable bearing. Second, we identify the damping property from the experimental results. Third, we construct the numerical model according to the test model so as to reproduce the natural frequency and the damping property of the viaduct model. Finally, we try to reproduce the vibrational behavior with the pseudo-ground by the dynamic response analysis of the numerical model which is constructed on the basis of the finite element method with the rotational spring and dashpot at the pier base. As a result, the dynamic behavior of the viaduct model is successfully reproduced by the numerical model under the earthquake excitation rather than another numerical model considering Rayleigh damping matrix.
著者
加藤 裕人 宮城 俊彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_121-I_130, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
22

本研究では,過去に実施された累次の財政政策の効果を検証し,いかなる条件の下に公共投資の効果が有効に発現するのかを分析する.具体的には,経済政策の分析ツールとして発展している動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルに民間資本,社会資本の二つの資本を導入し,時系列データを取り込んでモデルのパラメータ推定を行う.モデルには,Time-to-buildラグを伴う公共投資や,毎期の可処分所得を全て消費に回す非リカード的家計を導入する.インパルス応答分析の結果,推定期間であるバブル崩壊以降において,公共投資は一定の景気刺激効果を有していたことがわかった.また,粒子フィルタを用いてパラメータを時変推定し,社会資本の生産弾力性の低下や,近視眼的な家計行動の傾向を観察した.