著者
田中 成典 窪田 諭 北川 悦司 物部 寛太郎 中村 健二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.II_41-II_50, 2011 (Released:2012-03-26)
参考文献数
26

我が国の建設事業においては,CALS/ECや情報化施工,生産性向上のために3次元データを利用する環境を構築することは重要な課題であるが,その要求を満たす3次元CADが存在しない.そのため,国産の3次元CADの開発を支援することを目的とした,汎用3次元CADエンジンの開発が求められている. そこで本研究では,建設事業において3次元CADを迅速かつ低コストに導入し,これを活用できる環境を構築するために,汎用3次元CADエンジンを設計するための調査研究を行った.ここでは,3次元CADの利用場面,標準化動向,汎用3次元CADエンジンに付随するシーズ,既存製品,IT要素技術について調査し,汎用3次元CADエンジンに対する要求を明らかにした.
著者
清水 智弘 吉川 眞 瀧浪 秀元 御崎 哲一 髙橋 康将 中山 忠雅 内田 修 近藤 健一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:22489622)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_45-I_53, 2013 (Released:2014-03-19)
参考文献数
11
被引用文献数
9

適切に橋梁構造物を維持管理していくためには,各種データを一元管理する必要がある.JR西日本では通常のメンテナンスは展開図を参照することによって検査,補修が行われている.しかし,変状もしくは補修の位置や形状を記録する維持管理用の展開図は,寸法のない模式図である.さらに,検査と工事で共通に使用できず,時系列管理を行いにくいという課題がある.そこで,著者らは,3Dモデルを活用した橋梁維持管理システムを開発した.また, 点検や修理を管理するための展開図を簡単に作成できるシステムを開発した.さらに,本システムの有効性を確認した.
著者
日比野 忠史 金城 信隆 TOUCH NARONG 福岡 捷二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_910-I_915, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
7
被引用文献数
1

過剰な有機物の流入により底棲生物(マクロベントス)が棲息できなくなった海底から堆積有機泥を採取して生態系の再生実験を現地で行った.還元化した土壌での生態系の再生は,SiO2,Al2O3,CaOを主な成分とするアルカリ剤を用いた.アルカリ剤を用いることで生態系が崩された土壌を底棲生物が棲息できる土壌に再生することができた.生態系の再生ができた土壌の有機泥性状を分析することで有機泥土壌の再生法について検討した.この結果,アルカリ剤からの陽イオンの溶出は有機物の分解により泥層内に蓄積された電子,水素イオンを処理すること(電子伝達機構の促進)により,COD,硫化物の低下等を生起させて生態系の再生を促進させていることが明らかにされた.
著者
杉山 隆文 清水 俊吾 RITTHICHAUY Worapatt 辻 幸和
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2004, no.767, pp.227-238, 2004
被引用文献数
2

電気泳動法を用いて, イオン移動に影響を及ぼすモルタルの空隙構造を定量的に把握することを試みた. 定量化にあたって空隙率と屈曲度から構成される空隙構造係数を定義し, 定常状態におけるイオンの電気泳動より求めた実効拡散係数を用いて, この係数を計算した. 空隙構造係数は, 100nm~2μmの範囲の細孔量と概ね整合し, 置換率が30%のフライアッシュモルタルでは, 空隙率が大きいにもかかわらず屈曲度が増加するために, 空隙構造係数は小さくなることを明らかにした. そして, 空隙構造係数が小さい場合, 駆動力が濃度勾配である拡散では移動できない空隙が存在する可能性を示唆した. また, トレーサーイオンとして塩化物イオンの他に, カリウムイオンも同一の空隙構造係数を与えることを示した.
著者
太田 裕之 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.159-167, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

現代社会において,CO2排出削減のための環境配慮行動は多様に存在し,そのような中で人々は優先的にいくつかの行動を選択し取り組んでいると考えられる.その行動の選択の際に影響する要因の一つとして考えられる「有効性知覚」は,様々な認知的バイアスの影響により,実際の有効性と必ずしも一致していない可能性があると考えられる.そこで本研究では,CO2排出削減量効果の情報を提供することで,人々の有効性知覚と客観的有効性との間の乖離が減少し,それに伴い行動の効率化がなされるとの仮説を措定し,アンケート調査形式の実験を行った.データ分析を行った結果,事実情報の提供により認知的ひずみは軽減し得るものの,行動意図は十分には効率化されない可能性があるとの結果が示唆された.
著者
村上 理昭 山口 敬太 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.11-24, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
95

堺大濱では,明治期半ば以降,堺市や阪堺電気軌道株式会社によって公園地経営が進められた.本研究では堺市会決議録・会議録や行政資料,大阪毎日新聞堺周報等の資料をもとに,堺市大濱公園における管理と経営の変遷と,作り出された海浜リゾート空間の形成過程を明らかにした.具体的には,堺市による官有地を借り受けての料理屋・茶店営業を主とした遊園地経営,内国勧業博覧会を契機とする水族館と西洋式広場の整備,堺市の財源不足や鉄道会社間の競合関係を背景とした阪堺電気軌道の公園経営への参画と公会堂や潮湯などの文化・娯楽施設の整備,市と阪堺電気軌道の考えの相違による契約解消,といった公園地経営の経緯を明らかにし,海浜リゾートとしての空間形成の実態を明らかにした.
著者
小泉 圭吾 櫻谷 慶治 小田 和広 伊藤 真一 福田 芳雄 FENG Maria Q. 竹本 将
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.93-105, 2017
被引用文献数
4

近年の突発的かつ局所的な集中豪雨に伴う斜面災害に対し,現行の降雨規制基準のみでは,適切な通行止め,あるいは通行止め解除の判断が困難な場合がある.本研究では,現行の降雨規制基準の補助的指標を見出すことを最終目的とし,そのための基礎研究として小型模型スケールで上記指標の検討を行うこととした.模型斜面実験において,斜面が崩壊するまでの浸透と変形挙動を捉えた結果,本論で定義した初期擬似飽和体積含水率を超えた付近から変形が始まることが確認された.この初期擬似飽和体積含水率と変形の関係に着目することで現行の降雨規制基準の補助的指標を提案できる可能性が示唆された.今後は,模型スケールを拡大した同様の実験により,本研究結果の再現性を検証していく予定である.
著者
岩部 紫織 森 信人 中條 壮大 安田 誠宏 間瀬 肇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_1465-I_1470, 2016

観測資料にもとづき,過去に観測された高潮イベントから特定地点の高潮偏差の長期評価を行うことは難しい.この為,サンプル数を確保するための手法と,精度の高い高潮偏差を求める統計モデルの開発が求められている.本研究では,確率台風モデルとニューラルネットワークを用いて,三大湾を対象とした気候変動を考慮した高潮の長期評価を行った.まずニューラルネットワークを用いて,台風情報のみから最大高潮偏差を予測するモデルの構築を行い,その精度検証を行った.ついで,台風の将来変化を考慮した高潮偏差の将来予測を行い,高潮偏差の出現確率分布及び再現期間の将来変化を推定した.
著者
中村 文則 小林 豪毅 高木 利光 児玉 敏雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1056-I_1060, 2011

Many concrete and steel structures near shoreline are damaged severely by generated salt spray from sea surface. To reduce the transportation of salt spray near shoreline is effective method of prevention of salt damage. In this study, to discuss the effect of the structure on the reduction of salt spray concentration, experiments of transportation of salt spray were carried out. The wind velocity and the distribution of salt spray concentration around the permeable structures were measured in the wind tunnel. In this result, the structure that set up filters can effectively reduce the transportation of salt spray concentration, the experiment data showed that the decrease of salt spray concentration is influenced from the salt amount of adhesion of structures.
著者
広瀬 宗一 藤原 辰彦 牛嶋 龍一郎 高橋 宏直
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2001, no.672, pp.13-22, 2001

関西国際空港2期工事は, 平成11年7月に現地着工した. 2期空港島は1期空港島よりもさらに沖合での建設であり水深は深く予測沈下量も大きいため, 1期工事の約1.4も倍の埋立土量を要する. しかしながら, 全体工程の中においてこの2期工事は, 1期工事とほぼ同じ期間での施工が計画されている. この限られた期間内に工事を安全かつ円滑に実施するためには, 適切な施工展開計画の作成が非常に重要となる. したがって, 大規模な海上工事である2期工事の, 施工計画策定に際して効率的かつ多角的な検討を可能とするシミュレーションシステムを開発した. そのシステムの概要および実際の現場に適用して得られた効果等について報告する.
著者
羽鳥 剛史 片岡 由香 尾崎 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_407-I_414, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
13
被引用文献数
3

近年,地域社会の課題に対して,市民自身が自主的・自発的に取り組み,課題解決に貢献する様々な市民活動の事例が増えつつある.しかし,市民活動の中には,当初の理念や問題意識が薄れていき,その活動が長続きしない事例も少なからず見受けられる.本研究では,市民活動の持続可能性の規定要因を明らかにすることを目的として,一般市民を対象として,市民活動への参加状況やその活動期間の実態を調査した.それと同時に,市民活動の持続可能性に関わる要因として,地域愛着や文化資本等の諸項目を測定した.この調査の結果から,市民活動の持続可能性に寄与する心理要因やその心的プロセスについて検討し,市民の主体的かつ継続的な活動を支えるための方途について考察した.
著者
井尻 裕二 深田 淳 坂本 和彦 内田 雅大 石黒 勝彦 梅木 博之 大西 有三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2001, no.694, pp.179-194, 2001
被引用文献数
4

岩盤中の割れ目をモデル化する際に, 原位置で観察したスケールとモデル化するスケールが大きく異なる場合には, 割れ目特性のスケール依存性に注意する必要がある. わが国のトンネルやダムで観察された割れ目データを収集して, 割れ目トレース長のスケール効果について検討した結果, 割れ目トレース長の頻度分布は場所や岩種に関係なく負のべき乗分布にしたがうことが示された. また, 花崗岩を対象として割れ目ネットワークモデルの水理特性について検討した結果, 割れ目ネットワークモデルの水理特性は割れ目の大きさを表すべき乗分布のべき乗数に依存し, べき乗数が小さいほどモデル内に大きな割れ目が多くなりモデルの透水性は高くモデル内の地下水移行時間は短くなることが示された.
著者
Nobutada YOKOUCHI Petr MATOUS Kazumasa OZAWA
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
Journal of JSCE (ISSN:21875103)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.313-320, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Although the importance of understanding the diverse values of participants in global infrastructure projects has been increasingly recognized, research on methods to assess moral values in such contexts is still lacking. This article proposes a method for extracting context-specific moral values in three steps: (1) vignette development, (2) interviews, and (3) data analysis. The article illustrates how the method can be applied to understand the way project members make and rationalize their decisions when faced with moral trade-offs in the management of infrastructure projects.
著者
関根 正人 浅井 晃一 古木 雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1423-I_1428, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
6
被引用文献数
6

Recently, the warming on the earth advances gradually. Under such circumstances, occurrence frequency of the torrential rain increases in Tokyo. The technique of numerical prediction of the inundation is an effective tool in order to reduce damage due to such a torrential rain in urban area. In this study, the numerical prediction was conducted by using the rain data of the X-band MP radar as the first step to realize a real-time inundation forecast at the time of the localized torrential rain occurrence. Inundation in Shinjuku area that was highly-urbanized was investigated in this study by using the actual rain data that was measured locally on August 26, 2011. It was suggested that an inundation forecast could be realized soon in future.
著者
村上 啓介 北村 翔一郎 真木 大介 竹鼻 直人 岩田 恭平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_670-I_675, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8

効果的な防波機能と十分な耐波安定性が得られる構造形式の一つとして,防波堤や護岸天端のパラペット部を後退させた構造形式(後部パラペット)が提案されている.本研究では,後部パラペットにフレア断面を採用する新たな構造を提案し,その越波低減機能を水理模型実験により評価した.また,数値シミュレーションを実施し,フレア断面を有するパラペット部に作用する波圧と波力について検討した.後部パラペットにフレア断面を採用することで,従来の直立断面パラペットと比較して少ない後退量で越波を低減できることを確認した.また,フレア断面のパラペット部に作用する水平波力は,パラペットを後退させることで低減され,下向きの鉛直波力は増大することを示した.
著者
猪股 貴憲 斉藤 雅充 池田 学 小島 謙一 進藤 良則 玉井 真一 小田 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.II_135-II_144, 2016
被引用文献数
1

ジオテキスタイルを用いた補強盛土による一体橋梁(GRS一体橋梁)は,桁と橋台,補強盛土を一体化させる工法であり,補強盛土を含めた不静定構造物であるため,橋長の長い橋梁への適用時には,桁のコンクリートの収縮や温度伸縮等の経時的な挙動の影響が増大することが懸念される.そこで,大規模なGRS一体橋梁の経時挙動の把握を目的に,橋長60mの橋梁を対象に施工時から変位やひずみ等の計測を実施した. 構造物構築後1年半にわたる測定結果より,本橋はコンクリートの収縮による桁収縮は小さく,温度変化による桁の伸縮挙動は橋台竪壁背面の拘束度に応じて,夏季と冬季で異なる傾向があること等を明らかにするとともに,これらの経時挙動における構造物の応答特性に関する考察を行った.
著者
上月 康則 山中 亮一 松重 摩耶 齋藤 梓 石田 達憲 大谷 壮介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_971-I_975, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
15

Various laboratory experiments were performed to examine the effects of H2S (Hydrogen Sulfide) on R. philippinarum in this study. These results were as follows. 1) Most of clam closed its shell, in case was placed in the anoxic water. However, the number of clam that opened its shell increased with time. 20 hours later, the dying clam appeared after the clam extended the siphon and pelecypod. 2) H2S exposure had an insignificant effect on the clam, they closed shells. However, the clam was significantly affected by H2S exposure when they opened its shell and extended siphon and pelecypod. 3) When the water was hypoxic or anoxic before Blue tide occurrence (Aoshio), the clam would directly suffer severe effects of H2S because the extended soft tissue from the inside of shell was exposed.
著者
赤羽 弘和 桑原 雅夫 佐藤 拓也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.660, pp.79-87, 2000
被引用文献数
6

本研究においては, 休日の都市間高速道路を対象とした利用予約制を適用し, 交通需要の発生を時間的に平準化することにより, 交通渋滞を軽減・解消する可能性を探った. サービスエリアにおけるSP調査に基づき, 予約条件, 利用者属性, およびトリップ属性を説明要因とする予約制選択モデルを構成した. このモデルと実際の交通渋滞の観測データとを組み合わせ, 数値シミュレーションにより予約制の効果を検証した. さらに, 予約動向に基づいて交通需要の発生状況を予測し, それを予約条件の設定や予約の受付・処理に反映させるフィードバックループを構築し, 交通需要の予測誤差が予約制の効果に及ぼす影響を数値シミュレーションにより検証した.