著者
仲 眞紀子 (2009 2011) 仲 真紀子 (2010) JANSSEN S.M. JANSSEN Stephanus
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

自伝的記憶とは,思い出や体験,自己に関わる出来事の記憶であり,典型的には手がかり語法を用いて調べる。手がかり語法とは「木」などの手がかり語を提示し,そこから想起される出来事と,出来事が起きた年齢を思い出してもらう方法である。このようにして想起された記憶の個数を,10代の記憶,20代の記憶,30代の記憶…というように年代ごとにプロットすると,10-20代の記憶の個数が高くなる。この現象はレミニセンス・バンプ(想起のコブ)と呼ばれ,忘却曲線等では説明できない現象として注目されている。レミニセンス・バンプの説明要因としては,(1)社会文化的な要因(ライフスクリプト等)と(2)認知的要因(作業記憶)とがある。これら二つの要因がバンプの形成にどの程度寄与しているかを調べることで,レミニセンス・バンプが生じるメカニズムに迫るとともに,自伝的記憶の成立に関わる要因を明らかにすることが,本研究の目的である。具体的には,インターネットを通じた調査により,若年から高齢までの広い範囲の参加者から,(1)自伝的記憶におけるレミニセンス・バンプ,(2)ライフスクリプト(人生において重要な出来事はいつ起きるか),(3)作業記憶の経年的変化(10-20代の作動記憶機能が高いために,多くの情報が蓄積されるのか)に関するデータを収集する。(2)は文化の影響を受けやすく,(3)は文化の影響を受けにくいと考えられるので,(2)と(3)における日,米,オランダの差を検討することで,レミニセンス・バンプが社会文化的要因と認知的要因の影響を受ける度合いを調べる。期間内に,インターネットでの調査を可能にするシステムを構築する。また,ネットに接続する参加者の偏りや,調査媒体(パソコンか「紙と鉛筆」による質問紙か)によるバイアスの効果を検討するために,オフ・ネット条件でも資料を収集する。
著者
嶌田 智
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

緑藻アオサ・アオノリ類は世界中の沿岸域で最も目立つ海藻類で、世界で約200種、日本で17種が報告されている。この仲間は体制が単純で分類形質が少なく、しかもその形質状態が生育環境で大きく変化してしまうため、現在でも分類学的な混乱が生じている。本研究では前年度に引き続き、日本各地での採集、系統分類学的な研究をすることで本類の種多様性を明らかにしようと試みた。その結果、博多湾や高知県の浦ノ内湾でグリーンタイドを引き起こしているアオサが新種であると判明し、新種記載した。また、蓄積されたDNA配列データを元に輸入アオノリや日本各地のグリーンタイド原因種の種鑑定を行った。DNA鑑定については、横浜税関での輸入アオノリ、千葉県三番瀬や愛知県三河湾のグリーンタイドを引き起こしている原因種のDNA鑑定などの依頼を受けた。またスジアオノリは四国・四万十川の高級アオノリとして知られるように低塩分環境の河川においても生育している。このような河川アオノリはこれまで四国でのみ報告されていたが、本研究で北海道、島根(中海)、種子島、沖縄本島、石垣島の河川でも発見でき、河川アオノリは広範囲に分布すると考えられた。これら河川アオノリの種多様性解析を行ったところ、少なくとも4種の存在が確認できた。そのうちの1種、海産ウスバアオノリと同種と考えられた河川アオノリに注目し、さらにその分布域拡大の方向性、環境適応の回数・起源の解明のため分子生物地理学的解析を行った。その結果、河川アオノリと海産ウスバアオノリには遺伝的に大きなギャップが生じており、河川に適応できたのは進化の歴史上たった1回であることが示唆された。
著者
柴田 裕通
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-48, 2000
著者
奈良林 直 佐藤 修彰 辻 雅司 千葉 豪
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新規制基準では、国内全ての原発に格納容器フィルタードベントシステム (FCVS) の設置を義務づけた。しかし、FCVS 関する公開文献は限られており、ヨーロッパの既存のFCVS は小児甲状腺癌の原因物質である有機ヨウ素の除染係数(DF)が低い。本研究では、有機ヨウ素に対して高い除染係数(DF)を有する銀ゼオライト(AgX)を使用し,より高性能なFCVSの開発を実施した。北大は、FCVSの二相流特性の安定化、スクラビングノズルの最適化を、東北大学では、放射性ヨウ素を使った吸着試験を分担し、放射線検出器のカウント値の高精度な測定可能とし、世界最高性能のDFを有するFCVSの開発に成功した。
著者
西田 清徳
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
1989

博士論文
著者
岸田 治 小林 真
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、「水生動物が溶存アミノ酸をエネルギーとして利用する可能性」を孵化直後のエゾサンショウウオ幼生を用いて示すことである。実験の結果、アミノ酸を添加した環境水で飼育したエゾサンショウウオ幼生は、アミノ酸由来の窒素を体内に取り込み、成長を促進させることが分かった。細菌などの微生物が溶存アミノ酸を直接利用し増殖することは一般に認知されているが、脊椎動物による溶存アミノ酸の利用はこれまで想定されてこなかった。本研究の成果は、「これまでの慣習的な栄養伝達経路の有り様」の変更を促すものである。
出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
vol.史料(一), pp.825-867, 1981-04-10
著者
喜田 宏 伊藤 壽啓 高田 礼人 岡崎 克則 河岡 義裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

シベリアの水禽営巣地ならびに北海道で採取した野鳥の糞便からインフルエンザウイルスを分離し、シベリアに営巣する水禽が様々なHA亜型のインフルエンザウイルスを保持していることを明らかにした。NPならびにH5HA遺伝子の系統進化解析の結果、1997年に香港のヒトとニワトリから分離された強毒H5N1インフルエンザウイルスの起源がこれらの水禽類にあることが判った。したがって、今後ヒトの間に侵入する新型ウイルスのHA亜型を予測するため、シベリア、アジアを含む広範な地域で鳥類インフルエンザの疫学調査を実施する必要がある。北海道のカモから分離した弱毒H5N4ウイルスを用いて強毒H5N1ウイルス感染に対するワクチンを試製し、これが有効であることを示した。そこで、疫学調査で分離されるウイルスは新型ウイルス出現に備え、ワクチン株として系統保存する計画を提案した(日米医学協力研究会2000、厚生省1999)。中国南部のブタにおける抗体調査の結果から、H5ウイルスの感染は少なくとも1977年から散発的に起こっていたことが判明した。一方、H9ウイルスは1983年以降に中国南部のブタに侵入し、その後ブタの間で流行を繰り返していることが判った。
著者
東 正剛 三浦 徹 久保 拓弥 伊藤 文紀 辻 瑞樹 尾崎 まみこ 高田 壮則 長谷川 英祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究プロジェクトにより、スーパーコロニー(SC)を形成するエゾアカヤマアリの感覚子レベルにおける巣仲間認識と行動レベルでの攻撃性の関係が明らかとなった。このアリは、クロオオアリの角で発見されたものと同じ体表炭化水素識別感覚子を持ち、巣仲間であってもパルスを発しており、中枢神経系で識別していると考えられる。しかし、SC外の他コロニーの個体に対する反応よりは遥かに穏やかな反応であり、体表炭化水素を識別する機能は失われていないと考えられる。また、SC内ではこの感覚子の反応強度と巣間距離の間に緩やかな相関関係が見られることから、咬みつき行動が無い場合でも離れた巣間では個体問の緊張関係のあることが示唆された。敵対行動を、咬みつきの有無ではなくグルーミングやアンテネーションなどとの行動連鎖として解析した結果、やはり咬みつきがなくてもSC内の異巣間で緊張関係が検出された。さらに、マイクロサテライトDNAを用いて血縁度を測定したところ、SC内の巣間血縁度は異なるコロニー間の血縁度と同じ程度に低かった。巣内血縁度はやや高い値を示したが、標準偏差はかなり大きく、巣内には血縁者だけでなく非血縁者も多数含まれていることが示唆された。これらの結果から、SCの維持に血縁選択はほとんど無力であり、恐らく、結婚飛行期における陸風の影響(飛行する雌は海で溺死し、地上で交尾後、母巣や近隣巣に侵入する雌が生き残る)、砂地海岸における環境の均一性などが多女王化と敵対性の喪失に大きく関わっていると結論付けられる。
著者
吉田 邦彦 早坂 啓造 岡田 秀二
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

入会問題(理論、実態)について、小繋、戸呂、山中湖の事例、沖縄の事例から、多面的に問題状況を考察し、同時に、森林管理のために、林業の課題、中山間地の再生の道を探った。他方で個人主義的所有論の抜本的再検討のためにも、オストロム・コモンズ理論の分析を用いて、森林保護以外にも、海洋資源の保護、灌漑制度、水資源の共同利用等も検討した。それに関連して、先住民族の土地(生活空間)利用哲学の理解を深め(とくにアイヌ民族の場合)、その侵害補償の在り方を考えた。土地問題のみならず、薬草などの伝統的知識・遺伝資源の保護も扱った。
著者
藤吉 康志 工藤 玲 川島 正行 林 政彦 宮崎 雄三 青木 一真 山本 真之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地上リモートセンサーと同時にグライダーでのin situ 観測を実施することによって、大気境界層内の各種物理量が整合的に変動することが確認できた。さらに、大気境界層上端に発生した強い乱れは、小さな積雲の縁に存在する極めて狭い下降流によってもたらされていたことが分かった。また、エアロゾルの時空間分布と光学的特性の変動要因を解明するため、エーロゾルの量と光吸収特性の鉛直分布を導出するアルゴリズムを開発し、日射による加熱量を推定した。アルゴリズムの検証は、滝川で行ったグライダー観測データで行った。その結果両者にはまだ不一致が見られ、さらなるin situ観測との比較が必要であることが明らかとなった。
著者
岡本 健
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
2012

Hokkaido University(北海道大学)
著者
中村 睦男 前田 英昭 岡田 信弘 山口 二郎 江口 隆裕 高見 勝利
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究は、平成3年度および4年度の2ヵ年にわたって行われたものである。日本においては、他の先進諸国と同様に、政府の提案によって成立する政府立法が量的にも(約85%)、また質的にも(国の政策を実現するための法律)、立法過程において重要な役割を果たしている。本共同研究の成果は、政府立法を取りあげ、1.研究分担者による総論的研究、2.研究分担者による事例研究、3.立法・行政実務家による事例研究に分けられる。今回の共同研究は2年間であったため、半数の研究は完成しているが、残りの半数の研究は中間報告の形をとっている。今後も研究を継続して一冊の著書にまとめる予定である。1.総論的研究では、日本の立法過程では法律案の作成段階で官僚機構を通じて意見調整がなされ、国会審議の段階で修正によって野党が重要な役割を果たし得ること(江口論文)、法律案の公案過程における行政機関間の調整の在り方(加藤報告)、行政部内政策過程の枠付けの手法としての“基本法"の役割(小早川論文)、日本とアメリカの1980年代における財政政策をめぐる政治と行政の相互関係の比較検討(山口論文)、アメリカ公法学の立法過程モデル(常本論文)、イギリスにおける政府立法の生成(前田報告)、日本の立法過程論の論争点(清水報告)が明らかにされている。2.政府立法の事例研究では、PKO協力法(牧野報告)、難民条約への加入に伴う関係法令の改正(渡辺報告)、育児休業法(小野報告)、大学審議会設置法(稲報告)、元号法(高見報告)、地方自治法改正(神原報告)および選挙法(岡田報告)が扱われている。3.事例研究は、立法・行政実務家を研究会に招いての報告と質疑の記録で、老人保健法(渡邉論文・岡光論文)、個人情報保護法(松村論文)、大店法(古田論文)および暴力団対策法(吉田論文)を取り上げている。
著者
宮下 雅年
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

北原白秋の『フレップ・トリップ』(1928)の樺太イメージは、以後の樺太観光に道筋を付けた。本作における風物・風習・異民族の記述が島民の郷土の誇りに直結していった。戦後、その生まれ故郷は奪われてしまうが、だからこそ、望郷の念は募り、今もサハリン観光と言えば帰郷ツアーが中心である。そこにあるのはもはや白秋の「樺太」ではなく、往時の日常生活への思慕である。サハリン州政府も観光の好影響を重視して様々な対応を開始した。
著者
高田 礼人
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

これまでに、エボラウイルスなどの新興感染症は世界の限られた地域でしか認められていないが、昨今の急激な国際化による人の移動および動植物の輸出入に伴い、それらの疾病の原因病原体が他国に拡散する可能性が高まっている。さらに近年、エボラウイルスのような致死率の高い出血熱ウイルスがバイオテロリズムの手段として使用される危険性が高まっており、対策を講じる必要がある。しかし、ウイルス性出血熱に対する効果的な医療手段はほとんどなく、予防・治療法を開発する事が急務となってきた。これまでに申請者は、エボラウイルスZaire株の表面糖蛋白質(GP)分子はウイルスの感染性を中和する抗体および増強する抗体の両方の標的である事を証明した。そこで、エボラウイルスの病原性の強さと感染増強抗体との関わりを調べるために、病原性の非常に強いZaireウイルスと病原性の比較的弱いRestonウイルスの間で、感染増強抗体誘導能を比較した。ZaireウイルスとRestonウイルスGPに対するマウスの抗血清をそれぞれ作成し、血清中の感染増強活性および中和活性を調べたところ、中和活性には殆ど差が無かったのに対して、感染増強活性はZaireウイルスの血清の方が優位に高かった。これは、感染増強抗体が結合できる抗原決定基の種類と数が両ウイルスの間で異なることを示している。また、この感染増強活性は主に血清中のIgG2a抗体によるものであることが示唆された。以上の成績より、エボラウイルスのGP分子そのものの感染増強抗体誘導能がウイルスの病原性と関連があることが示唆された。(注)実際のエボラウイルスを用いた実験は、Heinz Feldmann博士の協力でカナダの国立研究施設Canadian Science Centre for Human and Animal Healthで行った。
著者
喜田 宏 伊藤 壽啓 梅村 孝司 藤田 正一 前出 吉光 中里 幸和 高田 礼人 岡崎 克則 板倉 智敏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ウイルスの病原性発現機構を宿主側の要因を詳細に解析することによって究明することを目的とした。そのため、ウイルス感染によって誘発される宿主細胞由来病原性因子の検出を試みた。インフルエンザウイルス感染発育鶏胚の奨尿膜を超音波破砕し、その可溶性画分をニワトリの静脈内に注射した。ニワトリは汎発性血管内凝固により数分以内に斃死した。この致死活性はヘパリンを静脈内に前投与することによって抑制されたことから、本因子は血液凝固に関与する物質と推定された。陰イオン交換体を用いた高速液体クロマトグラフィーおよび塩析法によって病原性細胞因子を濃縮精製する系を確立し、粗精製致死因子をマウスに免疫して、モノクローナル抗体11クローンを作出した。ニワトリの鼻腔内にインフルエンザウイルス強毒株と弱毒株を実験感染させ、経過を追及した。強毒株はウイルス血症を起こしたが、弱毒株はウイルス血症を起こさなかった。すなわち、強毒株を接種したニワトリでは全身臓器の血管内皮細胞でウイルス増殖が起こり、血管炎を招来した。強毒株の標的が血管内皮細胞であることが明らかになった。損傷した血管内皮細胞から血液凝固因子ならびにサイトカインが放出された結果、汎発性血管内血液凝固を起こし、ニワトリを死に至らしめるものと結論した。この成績はインフルエンザウイルス感染鶏胚奨尿膜から抽出した細胞因子がニワトリに血管内凝固を起す事実と一致する。汎発性血管内血液凝固症候群は様々なウイルス感染症で認められる。したがって、この細胞因子はインフルエンザのみならず他のウイルス感染症においても病原性発現に重要な役割を果たすものと考えられる。ウイルス感染症の治療法を確立するため、本致死因子をコードする遺伝子を同定する必要がある。