著者
中村 伸枝 林 有香 伊庭 久江 武田 淳子 石川 紀子 遠藤 巴子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,日常生活習慣上の問題の程度に関わらず、より健康な生活をするためのアプローチが可能である学校の場を利用して,養護教諭とともに学童と親を対象とした日常生活習慣改善のために楽しく、親子で、段階的に行うプログラムの試作と検討を行うことを目的としている。研究の対象校は,平成10年度に実施した学童とその親に対する日常生活習慣と健康状態に関する調査で協力が得られた岩手県内の2つの小学校であった。小学校3年生1クラスと小学校5年生1学年(3クラス)で実施の協力が得られ,平成12年度には前回の調査結果と,学校内の協力体制,身体計測や学級活動等のスケジュール,体育や理科,家庭科の学習内容などを考慮して「学童と親の日常生活習慣改善プログラム」を試作した。平成13年度にプログラムを実施し,平成14年度にプログラム前後で行った生活習慣の変化,プログラムの満足度や家族の参加と反応,プログラムで学童が学んだことを視点に評価を行った。その結果,食習慣についてのプログラムを中心に実施した小学校5年生では,「好き嫌い」「野菜の摂取」「夕食時間」「排便習慣」と,「近くに出かけるときには歩く」項目でプログラム前後に有意な改善がみられた。また,学童はブレーン・ストーミングやグループワークを取り入れた学習に積極的に参加していた。運動習慣についてのプログラムを中心に行った小学校3年生では万歩計を用いた学習に学童は強い興味を示し,生活目標や,がんばったこととして運動に関することを最も多くあげていた。また,いずれの学年も,1年間通して使用した「健康ファイル」を家庭に持ち帰り,家族と共に健康目標を立てたり,学校での学びを家族にも伝えていた。健康ファイルは,肥満学童の保護者面談の資料としても用いることが出来た。看護職者と養護教諭の連携による学童と親への健康教育の有効性が示唆された。
著者
斎藤 義夫
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究では,異機種の知能化機器で構成された加工セルを対象として,セル内での協調作業の分析を行うとともに,協調制御を実現するために知識獲得方法の獲得および学習機能の付与を試みた.また,具体的に画像処理装置とロボット加工セルよりなるシステムを実際に構築し,木材の加工を行い,自己学習の実現を目標に研究を行った.その結果,下記に示すように多くの新しい知見を得ることができ,所期の目的を満たす研究成果があげられた.1.協調制御に関する知識獲得過程の分析と自己学習機能の検討:個々の知能化レベルにより具体的な協調動作は異なり,事前に獲得した知識レベルの状態が重要な因子となる.そこで,知識工学や心理学など幅広い分野の成果を集め,知識獲得と自己学習の過程を分析し,学習過程において重要となる概念形成の構築を試みた.具体的には,「図面,図形に対する類似性の概念構築に関する研究」として,概念形成の自動学習方法について新しい提案を行った.2.協調制御加工セルの試作と自己学習の実現:ロボットとビジョンシステムで構成された加工セルのプロトタイプを試作し,これを用いて知識獲得による自己学習の実現を試み,運用面での問題点について検討を行なった.実際に,「ロボットビジョンシステムによる木版彫刻加工の最適化」を試み,知能化機器が自分及びセル内の他の機器の知能化レベル(レディネス)に対応して作業内容を分解し,それぞれに適した内容として実行することを行った.ここで,各工程で獲られた新たな知識を自分自身に取り込む過程を繰り返すことにより,自己学習を行ない,実際の協調作業に適したセルとして成長することを目標とし,その実用化における問題点を明らかにすることができた.
著者
坂尾 誠一郎 巽 浩一郎 笠原 靖紀
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

慢性血栓塞栓性肺高血圧症における血栓内膜摘出術検体より分離した肉腫様細胞は、肺動脈原発血管内肉腫(intimalsarcoma)に非常に近い特徴を有することが示された。また肉腫様細胞ではmatrixmethalloproteinase(MMPs)遺伝子発現が著名に上昇していたため、抑制実験としてMMPs阻害薬のbatimastatの投与実験を施行した。その結果invitro、invivo共に腫瘍細胞増殖抑制効果を示し、以上からbatimastatによるintimalsarcomaへの臨床応用の可能性が示唆された。しかし、当初の目的である摘出血栓からの造血幹細胞分離・臨床応用に関してはさらなる検討が必要である。
著者
貫井 正納
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.39-48, 1987-02-26
著者
花澤 麻美
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

今年度は下記の研究成果が得られた。(1)骨髄中の抗原提示細胞の動態抗原標識した抗原をマウスに投与することで、生体内における抗原の可視化に成功した。抗原は二次応答時にのみ骨髄に選択的に集積し、その中で血管周囲に付着するものと骨髄内に散在するものの二種類が観察された。免疫を行ったマウスの血清を新たなマウスに移入する実験により、血管周囲への抗原の付着は抗体を介して行われることが示唆された。また、骨髄内に散在する抗原のほとんどは、抗原を取り込んだ成熟B細胞であることが明らかとなった。この成熟B細胞の骨髄内における動態を観察するため、様々な色素を用いて抗原を標識し、観察に最も適する色素の探索を行った。今後は二次応答時の、この抗原提示細胞と骨髄の記憶ヘルパーT細胞のMHC class II-T細胞レセプターを介した接着を中心に細胞間相互作用を明らかにしていく。(2)二次免疫反応における骨髄記憶ヘルパーT細胞の動態初めに、生きているマウスの長骨において細胞動態を観察する実験系の立ち上げを行った。GFP遺伝子発現マウスより骨髄を取りだし、その浮遊細胞を新たなマウスの静脈中に移入した。この時、血管を標識する目的として、色素標識されたデキストランを共に投与した。その結果、移入したGFP陽性細胞が血管から骨髄内に移動している様子が観察された。加えて、細胞の移出入は血管の特定の部位において選択的に行われていることが明らかとなった。現在は、抗原特異的エフェクターヘルパーT細胞をマウスに移入し、この細胞が骨髄に入る様子、また抗原を投与した際に再び骨髄より移出する様子の撮影を行っており、移出入に関わる分子メカニズムを明らかにする予定である。また、記憶ヘルパーT細胞の形成と維持における分子メカニズムを解明した研究を投稿した。現在、Eur. J.Immunol.において審査後修正中である。
著者
曽川 一幸
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

原発性肝細胞癌診断に用いる腫瘍マーカーは画像診断に及ばなく、新たなマーカーの探索が急務である。探索では原発性肝細胞癌患者術前後血清20組(計40検体)を使用し、血清中のメジャータンパク質12種類を除去し、MB-LAC ConA, MB-LAC LCAを使用し、N型糖タンパク質を抽出後、逆相HPLCで分画した各フラクションを二次元電気泳動で解析した。手術前後血清10組以上で、Desmoplakin、Elongation factor 2、Heat shock protein HSP 90-beta、Lamin-A/C、Involucrin、Serpin B3、Serpin B4、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、Protein S100-A9は手術前で発現量が高く、特にGrowth/differentiation factor 5の発現量の増加がみられた。検証では健常者血清、慢性肝炎患者血清、肝硬変患者血清及び原発性肝細胞癌患者血清各50検体を使用し、Growth/differentiation factor 5 のELISA kitを用いて解析した。肝硬変患者血清と原発性肝細胞癌患者血清との間で統計学的有意差(p<0.01)が認められた。
著者
石橋 功 真鍋 和明 萩原 捷夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.75-81, 1965-12-31

White Leghorn種雌にNew Hampshire種雄を配して得た種卵を,室温に1-8日間保存して,孵化率に及ぼす保存の影響を検討した.実験期間I (4月19-26日に産卵したもの),II (5月10-17日),III (5月31-6月7日),IV (6月21-28日),V (7月12-19日),VI (8月2-9日),VII (8月23-30日),VI (9月13-20日)の計8回,6274卵についての結果は次の通りであつた.1.産卵率は平均67.33% (60.91-74%),産卵数に対する種卵合格率は平均82.35%(79.09-87.01)であつた.2.実験期間I-VIIIにおける,種卵の受精率は92.63, 90.26, 87.38, 86.90, 85.81, 86.71, 83.75, 75.99%であり,受精卵に対する孵化率は92.16, 91.65, 89.30, 88.90, 82.85, 83.31, 80.24, 84.65%で,これらの平均は87.36%であつた.3.室温に1-8日間保存した場合の孵化率は,受精卵に対し92.43, 89.42, 89.85, 88.49, 87.16, 86.43, 85.94, 79.14%で,僅かながら漸次低下する傾向がみられた.また,入卵後22日で孵化した雛は,保存1日の2.07%から保存8日の5.80%へ増大し,保存日数が長くなるにつれて孵化日数も遅延する傾向が認められた.4.さらに保存日数と孵化率の関係を,実験期間別にみると,I-IVにおいては,7-8日保存を行なつても殆んど孵化率の低下はみられないが,V-VIIIにおいては,5日間以上の保存の場合に,急激な孵化率の低下がみられる.その原因は,概略27℃以上の高温の持続によつて,胚が不完全な発生を開始するためであろうと推察されるが,正確なことはさらに検討を要する.
著者
丸山 喜久
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

アンケート調査に基づき実地震下での高速道路運転者の地震時の行動特性を評価すると,震度5以上の強震域を走行中であっても地震発生に気付かない運転者が見られるなど,震動の影響で路面の段差や陥没が発生すると衝突事故が発生する可能性が否定できないことが分かった.新潟県中越地震における盛土の段差などの被害と地震動強さの関係を精査したところ計測震度が5.1〜5.2に達すると通行に支障のある被害が発生することが分かった.これらのことから,交通量の多い都市部では地震直後に多数の事故が発生することが懸念される.橋梁などの道路構造物の地震応答特性が,走行車両の地震応答量に与える影響を検討した.地表面地震動を入力地震動とした場合と構造物の応答加速度を入力地震動とした場合の車両の応答を比較すると,車体のロール運動のための荷重移動量やヨー角が構造物応答を入力したときに大きくなり,その結果車両の横変位量も地表面地震動の場合と比べて大きくなることが明らかとなった.さらに,緊急地震速報が高速道路運転者に与える影響を,サーバーで連動された2台のドライビングシミュレータを用いた地震時走行実験で検討した.自動車交通に緊急地震速報を導入するためには,速報を受け取った場合のハザードランプを点灯させるなどの対応方法を共通化することが必要であるという課題が得られた.また,速報を受信した際や前方車がハザードランプを点灯したことを視認した際の行動の統一化を急ぐ必要があることが結論づけられた.
著者
磯部 俊彦 吉田 義明 門間 要吉 山田 稔
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

今日、日本農業は過剰生産、価格低下、後継者難という深刻な危機に直面している。これらの問題を、個別農家の対応により解決することは困難である。従って地域農業における早急な土地利用管理システムの構築が必要とされている。このシステムは、個々の農家、集落の生産組織及び農協の相互の協力によって作られるべきである。その場合に各々の構成員が各々の特徴を活かした組織化が計られなければならない。この研究の目的は、各々の産地の実情に即した適切な集団的土地利用管理のあり方を提起することである。このテーマにアプローチするために、我々は愛媛県南予地方の優等ミカン産地及び沖縄県の野菜産地と工芸作物産地を調査した。そして、この問題について資料文献の収集、農家からの面接聞取り調査及び関係者との意見交換を行った。また、関連調査として山梨市のぶどう産地及び茨城の畑作地帯への調査も併せて実施した。以下は、その概要である。ミカン産地では高齢化と価格低下により荒廃園地が増大している。耕作できない農民は親せき又は他の農家に農地を預託する場合もあったが、特筆すべきは有機農法グループ「無茶々園」のメンバーで構成される「ヤング同志会」が耕作不能に陥った農地を管理していたことである。現在は点の存在ではあるが、この地域の集団化の歴史的経験の土台に立脚したものであるだけに将来さらに大きく育っていくであろう。沖縄県では農地相続が分割される場合が多い。しかし多くの相続者は農地を兄弟などに預けて出稼ぎに出るケースが多く、そして退職後に帰郷して農地を返してもらい農耕に従事する。この制度によって彼らの老後の生活も一応保証されるわけである。このような私的所有権の集団化ともいえる制度は、独特な相続制度に由来している。我々は、このような相続制度のあり方が、日本農業革命の鍵を提供しているように思われるのである。
著者
荻山 正浩
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.泉南地方の事例明治期における泉南地方の若年女性の就業態度をめぐって、綿布生産量など、各種出来高を通して分析すると、彼女たちは家族に対して強い愛着を有していたため、生家では勤勉に働いたが、家を離れて働く場合には逆に充分な働きをしていなかったことが判明した。こうした家族に対する愛着は、彼女たちを含めて、この地域の人々の就業行動にも相当な影響を与えていた。この点を実証するため、明治後期における泉南から他の地域への労働移動のあり方に注目し、寄留統計にもとづき、この地域の人々の多くは家族をともなって移動していたことを解明し、それを英文の論文にまとめ所属機関の紀要に発表した。また泉南地方の貝塚に所在した商家の廣海家には、同家の雇用していた家事使用人の記録を収めた史料が残されており、その家事使用人の雇用動向は、若年女性の就業行動を解明する貴重な手掛かりを与えてくれる。そこで、明治後期から大正期に至る同家の家事使用人の雇用動向を分析した論文を所属機関の英文のワーキングペーパーとしてまとめた。これについては、平成18年度に英国の学術誌に投稿する予定である。2.両毛地方の事例明治40年代に群馬県桐生に所在した桑原家の絹織物工場の史料を分析し、女工の絹布生産量の多寡から女工の就業態度を分析することを計画していた。だが、この地方では多種多様な絹布が生産されていた関係から、当初の予想と異なり、絹布生産量から女工たちの就業態度を分析することは困難であると判断し、同地方の研究を中断することにした。3.秋田県北部の事例平成17年度から、両毛地方に代わり秋田県北部の事例に対象を移し、若年女性の就業態度を分析する作業を開始した。具体的には、明治末期から大正期に至る秋田県北部の大館に居住した資産家である中田家の史料を使用し、同家が家事使用人として雇っていた若年女性の雇用動向を分析する作業を進めている。
著者
土屋 俊 竹内 比呂也 佐藤 義則 逸村 裕 栗山 正光 池田 大輔 芳鐘 冬樹 小山 憲司 濱田 幸夫 三根 慎二 松村 多美子 尾城 孝一 加藤 信哉 酒井 由紀子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、今後の学術情報流通環境における大学図書館の役割を追求し、大学の教育研究の革新という観点から検討を行うとともに、それを実現するための要件を明らかにし、「2020年の大学図書館像」を描き出すことを目的とした。そのために大学図書館における情報サービス(NACSIS-ILL)と情報資源管理(NACSIS-CAT)の定量的、定性的分析を行い、時系列的変化を明らかにするとともにその要因について考察した。これらを踏まえ、さらにシンポジウムなどを通じて実務家からのフィードバックを得て、「2020年の大学図書館像」について考察した。
著者
久保 勇
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

当該助成研究開始前より整理済の延慶本『平家物語』における音楽記事一覧から、他の諸異本に共有されない独自な傾向を抽出、「読み本系」と称され、「読まれる」享受を前提とする該本本文に口頭(音声)伝達を意識されていると推される「音声字解(注釈)傾向」を指摘(「延慶本『平家物語』と<音楽>-巻六の音楽記事から叙述方法をさぐる-」2005・3)した。現存最古と見なされる「読み本系」の該本が如上のように、音声理解を前提とする本文を有している可能性があることから、「語り本」以前「読み本系」先行成立という通説に、未だ検討の余地が残されているという問題提起をおこなった。当該助成研究開始前より着目していた『発心集』等、中世期の文芸思潮の中、「音楽」を考える上で重要な「数寄」の問題に着手、「数寄者」と称される人物の心象をめぐって、延慶本は「心」が「澄まされた」状態にあることを一つの価値として表象している点に注目、検証作業をおこなっている。(同上論文)中世以降の古典文学世界において、「延喜聖代」は理想的帝政期を表し、『平家物語』でも「秘事」として別巻に同章段名を掲げる諸本があるが、延慶本においては清盛死去関連記事群内に「延喜帝堕地獄説」が展開しており、一般に音楽をはじめとする理想的文化形象期とされる当該帝政期に、独自な価値認識が指摘できる。そこには、「高倉院≒堀河院」といった、延慶本の物語世界における理想帝政期の認識が基盤となっている傾向がうかがえる。具体的には巻六冒頭などに潜在する「礼楽思想」との関連において考究すべき問題が残されている。現状では、延慶本の成立と直接繋がらないが、『平家物語』と盲僧琵琶との関連について、当該助成によって調査をおこなっている。九州、筑前・薩摩に本拠を置く盲僧琵琶は、何れも天台宗の管轄となっており、自身の『平家物語』の天台圏成立説と関わりを有する。調査によって、島津久基氏「筑紫路の平曲」等の研究で注目された筑前地域の再検討の必要性が明かとなった。近時看過されている感のある、筑後一宮・高良大社伝来の覚一本の存在、筑前盲僧琵琶拠点・成就院の存在等々、当該助成期間内には成果を発表し得なかったが、追跡調査を進め、論文・HP等で順次公表していく予定である。
著者
北原 理雄 宮脇 勝 郭 東潤
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

魅力的な都市には人々の生き生きとした活動がある。物的空間だけで魅力ある都市景観を形成することは困難であり、活気あるアクティビティが存在して初めて都市は輝きを増し、都市活性化にも資する成果を生むことができる。街路、広場などの公共空間は、都市におけるアクティビティの主要舞台である。従って、都市景観形成に当たっては、公共空間の物的改善に加えて、その利活用を適切にコントロールする手法の確立が必要不可欠である。上記のような課題意識に立ち、本研究は次の2点を目的として進められた。・この領域で一日の長を有する欧米諸都市において公共空間の利活用に関してどのような制度が用意されているか、またどのような体制のもとで公共空間の利活用がどのように規制・誘導されているか調査し、コントロールの制度とその運用実態を明らかにする。・わが国における実験的取り組みに基づき、現行制度のもとにおける成果と課題を明らかにし、今後の方向性を見いだす。その結果、次のような成果が得られた。(1)既調査6都市(パリ、コペンハーゲン、ミラノ、サンフランシスコ、ポートランド、シアトル)の資料を再整理するとともに、新たにロンドン、ヘルシンキ、ストックホルム、ニューヨーク、クリチバの調査を行い、公共空間の利活用を図る制度とその運用実態を明らかにした。(2)広島、横浜、名古屋など、国内の先駆的都市について追加調査を行うとともに、韓国(ソウル、清州)の調査を行い、アジアにおける公共空間利活用の視点で、現状と課題を検討した。(3)千葉市におけるオープンカフェとパラソルギャラリーの実験を継続し、公共空間の利活用が生み出す賑わいの実態と都市活性化に対する効果を分析した。
著者
樋口 咲子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の研究成果は以下の4点である。一点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる、書字動作に注目した資料集を作成したことである。二点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる動画教材を作成したことである。三点目は、書字動作を理解しやすい行書規準文字(いわゆる手本)を提案したことである。4点目は、書字動作に注目した、行書の授業展開法を提案したことである。以上の研究成果により、課題解決学習の充実を目指した。
著者
赤坂 信
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

初年度は高垣(クネ)に関する一般的知見を得るために、北海道、山形県、長野県、島根県の事例を中心に現地踏査と文献収集をおこなった。次年度は関東地方、とくに千葉県北西部に位置する江戸川低地に分布するクネについて調査を実施した。松戸市北西部から流山市南部につづく江戸川低地には、農地(畑と水田)がひろがり、微高地に立地する農家が点在している。ほぼ矩形の農家の敷地のまわりに巡らされたクネと呼ばれる刈込まれた高い生垣(高さ4.5〜6m)がみられる。今回対象地とした南北2km東西1kmの範囲では約60か所(クネの跡が認められるものも含めて)のクネが分布していることがわかった。クネを構成している樹種は、江戸川に近い方と遠い方で異なることや南向きと北向きで異なる傾向がみられた。モチノキは至る所で用いられているが、ツバキも多用されている。イヌマキは寒さと乾燥に弱いため、北部や江戸川に近い方にはみられない。全方位ともすべてツバキというクネもあるが、方位によって樹種をかえているものがほとんどである。南側にモチノキ、北側にツバキあるいはケヤキ、そして枯れあがった部分の下にイヌマキを用いているものがみられる。農家は戦後に入植したところもあるが、古いところで150年から500年前からの入植という。クネの手入れは自分でやるところと植木職に委託するところがある。年1回の手入れ(刈込み)で植木職10人手間(1万6千円1人)というコストである。高い位置での作業なので、職人も若いもののなり手がいないということである。後継者の不足は同じような理由で島根県出雲地方でも同様であった。
著者
小林 正弥 金原 恭子 一ノ瀬 佳也
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究においては、ハーバード大学のマイケル・サンデル(Michael Sandel)教授のDemocracy's Discontents-America in search of a Public Philosophy(Belknap Press, 1996)の翻訳プロジェクトを進めると共に、マイケル・サンデル教授を招聘した国際シンポジウムを開催し、「憲政政治」についての世界的な水準での理論的検討を行なった。