著者
柴沼 忠三 石井 弘 間瀬 哲也
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.89-94, 1961-12-31

著者等はβ-インドール酢酸のPaperchromatographyについて研究し,更に植物材料からこれの分離定量を試みた.展開剤にはiso-Propanol: NH_4oH: H_2O=10: 1: 1,呈色剤にはEhrlich試薬を用いたが,β-インドール酢酸のRf値は同試薬で発色する数種の他の物質のRf値とはかなりの差異があるので発色相当部を切離して定量することが出来た.これにより馬鈴薯および小麦の中の遊離および複合β-インドール酸酸を定量した.
著者
松岡 真里 丸 光惠 武田 淳子 中村 伸枝 兼松 百合子 松本 暁子 内田 雅代 竹内 幸江 佐藤 奈保 栗林 浩子 篠原 玲子 西牟田 敏之
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.59-68, 1998-03
被引用文献数
2

気管支喘息患児をもつ母親の,1)ライフスタイルの実態を明らかにする,2)ライフスタイルの要素間の関連を明らかにする,3)母親の特性,喘息児の特性とライフスタイル間の関連を明らかにする,ことを目的に研究を行った.対象は,喘息児をもつ75名の母親であった.質問紙による調査の結果,以下のことが明らかとなった.気管支喘息患児をもつ母親は,家族の健康に関心が高く,楽観的な考えの母親ほど,日常の中でストレスを管理している様子が明らかとなった.また,こどもの自立を望み,子育てへの関心も高かった.しかし,発作に関するストレスや薬の不安などを抱く母親も多く,発作が母親のストレスとなり,発作をコントロールするためにこどもへの統制的な関わりが増していた.以上より,疾患管理についてのみでなく,子育てについてをともに考え,母親自身の生活が充実したものになるように援助することが,喘息児の発作のコントロール,ひいては児の自立にもつながると考えられた.
著者
矢橋 晨吾 雨宮 悠 高 錫九 高橋 悟 田中 弥寿男
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.129-134, 1992-03-25
被引用文献数
1

以上の結果を総合的にまとめると以下のとおりになる.保水性及び通気性が良好であることは植物の生育にとって重要な条件であり,鹿沼土がこれらの条件を満たすのは,大粒径ほど多量に微細間隙を持ち保水性を高める一方,鹿沼土粒子が形成する粒間大間隙が通気性に大きく寄与していることが保水特性ならびに通気性の測定より明らかになった.さらに,単一混合する場合もなるべく粒径の大きいものを用いるのが良いことも明らかになった.今日,採取したものを風乾させ袋詰めにされ,園芸店において市販されているが,以上のことを考慮にいれ,今後鹿沼土を合理的に利用するには,袋詰めにする前において粒径及び間隙により分類し,植物により使い分ければ一層の効果が得られるものと考える.
著者
中村 隆文
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.29-40, 2004-10-01

ヒュームは因果関係を批判し、さらに人格の同一性も虚構的なものとして批判したことから、その思想は、デカルト以来疑われることのなかった「明晰な私」さえも否定する懐疑主義としてみなされてきた。事実、彼はその著作『人間本性論』において、実体を主張する二元論が根拠のない通俗的な説であると明言し、その論駁を主な目的としている。だが、私は、そうした動機、およびその議論の方法が懐疑主義的なものであるとも、あるいは、結論としてヒュームが懐疑主義者であるとも解釈されないものであると考えている。しかし、だからといって、ヒューム思想の本質が実際には彼自身が否定した二元論に拠っているということでもない。経験論は通常、知覚の中断にも関わらず、時間的経過における主体の在り方は不変的で同一的であるような主体実在論的立場にある。ヒュームは人格の同一性を批判しているものの、ヒューム思想全般の理論的背景として、そのような主体実在論的な経験主義、あるいは彼が否定するところの、主体の実在性を認めるような二元論を採っているとする解釈も少なくない。この論文における目論見としては、人格の同一性分析におけるヒュームの反主体実在論的立場が、因果分析を可能にしているヒュームの経験論と理論的に矛盾しないことを示し、ヒューム思想というものが、二元論あるいは主体実在論とは異なる形で主体の拡がりを示していることを明らかにしてゆくことにある。ヒュームの『人間本性論』における因果分析、人格の同一性分析を通しつつこれらのことを検証し、二元論的主体をどのような意味において否定しているのか、そして、主体というものがどのような位置付けをされているのかを考察してゆきたい。
著者
小林 達明 野村 昌史 佐々 英徳
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

柏市こんぶくろ池湿地に自生するズミ集団の保全のために、個体の開花・結実状況、実生の更新状況、アロザイム遺伝子構造、自家不和合性対立遺伝子構造、花の形態変異を調べた。その結果、こんぶくろ池ズミ集団の結実率は低く、実生の更新状況は不良だったが、アロザイム遺伝子多様度、自家不和合性遺伝子多様度とも高く、遺伝的劣化は見られなかった。同湿地の再生目標を明らかにするために江戸期以来の絵地図・絵図の変遷を検討し、周辺はクヌギを主とする立木密度の低い林だったことがわかった。
著者
小原 均 岡本 敏 松井 弘之 平田 尚美
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.187-193, 1992-03-25

キウイフルーツ'ヘイワード'の果実肥大と成熟時の品質に対する葉果比(1.5, 3, 4.5, 6)の影響を調査した.結果枝に環状剥皮を行うと葉果比が増加するに従って果実重量が増加したが,葉果比1.5では果実を適正または積極的に肥大させるまでには至らず,葉果比3では通常の果実の肥大(約100g)を示し,葉果比4.5及び6では肥大が促進された.一方,結果枝に環状剥皮を行わないと,葉果比にかかわらず果実の大きさはほぼ同じであった.KT-30処理果実でも肥大に対する葉果比の影響は,KT-30無処理果実と同様な結果であったが,結果枝に環状剥皮を行った葉果比4.5及び6の果実では,著しく肥大が促進された.正常な果実の肥大のためには,葉果比が3であれば十分であり,また,KT-30による果実肥大促進にも葉果比が3であれば十分であった.なお,果実肥大に対するKT-30の効果は,果実のsink能を高めることであることが,葉果比の面からも推察された.葉果比が果実の品質に及ぼす影響は,特に糖度に認められ,結果枝に環状剥皮を行うと,KT-30処理にかかわらず葉果比1.5で低く,また,KT-30無処理果実では葉果比3でも低かった.正常な品質の果実に生長するためには,葉果比で4.5は必要であると推察された.
著者
荒井 幸代 吉村 忍 丸山 喜久
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

情報提供が人間の意思決定戦略を変化させ,交通流に大きな影響を与えることを示し,これを改善する方法を提案した.具体的成果は3つに大別される.1)不完全情報下で運転者の経路選択モデルの提案,2)1)のモデルが大域的な交通流に与える影響の検証,および,3)実世界データを用いた1)2)の妥当性検証である.交通網変化時の過渡現象の混乱から収束の様子を再現し,東北地方太平洋沖地震後に東京都で取得されたタクシープローブデータを分析し,利用者均衡配分によってリンク交通量を予測し運転者の経路選択行動に関する分析も実施した.
著者
山岸 亜人
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.237-247, 1971

イヌ卵巣の外来神経についてのオスュミウム酸染色と各種動物卵巣の鍍銀染色を行ない,神経組織学的にそれらを比較検討し,つぎの結果を得た。1.イヌ卵巣支配の外来神経には卵巣動脈神経叢から来るものと骨盤神経叢に由来するものとがある。神経線維の平均総数は前者で120本,後者で84本であった。また有髄線維の含まれる割合は前者では神経線維総数の29.2%であるのに対し後者ではわずかに3.6%過ぎ|なかった。一方無髄神経線維(交感神経性)は両方の神経系においてほぼ等量に含まれていた。2.血管をとりまきながら卵巣門から卵巣内に進入した神経線維束は次第に血管から離れ互いに分岐,交錯して髄質から皮質にかけて一次神経叢を形成する,この神経叢からさらに数本の自律神経線維と知覚神経線維が分かれ皮質stromaで細かい二次神経叢(autonomic aroundplexus)を作る。後者は髄質より皮質に豊富である。3.知覚性の神経線維がヒト(成人),ネコ,マウスに多く認められ,特に成人の皮質stromaではところどころ神経密度の高い部分があった。ヒト(胎児)の神経線維は成人と比べて走向は直線的であり,形態は単純で,知覚神経線維の形態形成が未完成の状態にあった。4.皮質stromaには拡散型分岐性終末,単純型分岐性終末,および小体様終末などの知覚終末が認められた。5.Autonomic groundplexusはヒト(胎児,成人),ネコの皮質stromaなどに認められたが,そのなかには自律神経線維ばかりでなく知覚神経線維も混じていた。またイヌ,ネコの皮質stromaにおけるautomic groudplexusのまわりにはinterstitial cellsの存在が顕著であった。6.ヒト(胎児)の原始卵胞の外膜,ネコ,マウスの二次卵胞,黄体の外膜外層に神経線維が認められたが量は少なく,卵胞,黄体との支配関係は明らかでなかった。7.卵巣内に神経細胞は証明できなかった。
著者
久保 勇
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

軍記を<武>の表現として捉え,歴史事象・地域伝承等へ視野を拡大し,「戦争の語り方」という課題設定から研究をおこなった。およそ以下の2つの成果を得た。1点目は<武>の表現が歴史事象としての「断罪」から「戦闘」へと変容していく傾向を把捉したことである。2点目は,江戸前期(17世紀半ば)の修史事業を契機として「軍記」はさかんに流動・伝播した。都市部では新たな物語(軍談など)の創作がおこなわれる一方,地方では伝播した軍記作品等が史書に近い形で受容されていくという2つの方向性が認められたのである。
著者
小林 裕幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

私たちは種々のメディアのもつ画質と接するとき、その画質情報からいろいろなことを感ずる。本研究は、メディア画質を定量的に解析し、それらが私たちに与える感性効果を明らかにし、画像を、目的の感性効果をもたらす画質に自動的に変換できるフィルタを作成し、いろいろな映像を作り出そうとするものである。次のような実験を行い成果を得た。1.いくつかの視覚メディアが特徴的にもつ画質特性に注目し,それらが画像の印象にたいして与える影響について調べた.SD法による評価実験の結果,画像の印象評価に影響を与える三つの因子が抽出された,また,画質に対して抱く印象が世代によって異なることが分かった.2.写真の過去的な印象に対して,どの画質要因が優位性をもっているのかを調べ,セピアや白黒のような単色の画像を見たときに,過去的な印象を強く喚起する効果が見られた.また,低色温度と高色温度の写真の時間印象に有意な差が見られたことから,色温度が時間印象に影響を及ぼす因子であることが示唆された.3.写真に撮影された人物のパーソナリティの推測に対して画質が与える影響について調べた.同一人物の写真の画質を変化させ,その人物のパーソナリティをSD法により評定させた.実験の結果から,パーソナリティの認知に働く3つの因子が抽出された.また,画質が人物の印象形成に影響を与えていることが確認された.さらに,複数の画質要因の相互関係について検討するため,明るさ(3水準)×コントラスト(3水準)に変化させた画像刺激を用いた印象評価実験も行い,印象形成における明るさとコントラストの交互作用が有意であることが確認された。
著者
櫻井 清一 霜浦 森平 新開 章司 大浦 裕二 藤田 武弘 市田 知子 横山 繁樹 久保 雄生 佐藤 和憲 高橋 克也
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

農村経済多角化に資する経済活動の運営方式と、地域レベルの経済活動を下支えする社会的成立基盤との関係性を分析し、以下の諸点を明らかにした。(1)農産物直売所が開設されている農村社会では、高齢出荷者の社会活動レベルの低下および出荷活動の停滞がみられる一方、後発参入者が広域的な社会ネットワークを広げ、出荷活動にも積極的である。(2)多角化活動の実践は地域社会における経済循環を形成している。(3)政府による農商工等連携事業において、農業部門の自主的な参画・連携がみられない。(4)アイルランドで活発な地域支援組織LAGはプロジェクト方式で自主的に運営され、地域の利害関係者間に新たな協働をもたらしている。(5)アメリカの消費者直売型農業にかつてみられたオールタナティブ性が変化し、対面型コミュニケーションが希薄化している。
著者
綾野 雄幸 大塚 慎二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.41-47, 1968-12-31

食用レバー(豚)を水煮した場合,加熱が蛋白質の消化にどのように影響するか,また脱脂ならびに脱糖処理をして水煮した場合,消化性がどのように向上するかについて,ペプシンによる人工消化試験を行なった.1.消化過程中における消化率の変化は,生のもの,加熱したもの(100℃および120℃で1時間)両者とも時間の経過にともない上昇した.しかし加熱温度が高いものほど消化率は低かった.37℃で24時間消化後の消化率は生のもの89.1%,100℃で加熱したもの84.4%,120℃で加熱したもの77.6%であった.2.脱脂(凍結乾燥レバーをエチルエーテルで処理)ならびに脱糖(生レバーをglucose-oxidaseで処理した後,凍結乾燥,脱糖率59.3%)処理により消化率は向上した.脱脂したものの消化率は無処理のものより各加熱段階(60℃,100℃および120℃で1時間)とも約3〜4%高くなった.脱糖したものも約2%高くなった.消化生成物中の窒素成分の組成の点からみても,脱脂ならびに脱糖処理を行なったものは無処理のものより小分子のものに分解されていることが認められた.特に120℃に加熱したものではその傾向が顕著にあらわれた.3.レバーの消化を阻害する因子として蛋白質の加熱変性以外に,脂肪や還元糖の存在が考えられ,これらは加熱温度が高い場合に著しく影響することが分った.
著者
三木 隆 佐藤 武幸
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-6, 1987
著者
西垣 知佳子 リーシュマン サンドラ
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. II, 人文・社会科学編 (ISSN:13427415)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.87-99, 2000-02-29

The purpose of this study was to examine English composition writing to identify the gap between students' initial writing level and their target level. Data about this gap for a specific group of students, or 'needs analysis', provides teachers with the necessary information to create the appropriate course instruction to meet the needs of the students. 17 students, who took part in this study, were enrolled in English Composition I in the English Department of the Faculty of Education at Chiba University. The target level of this student composition class was to produce essays (write compositions) which meet the expectations of a Western academic writing context. Students' compositions were examined in terms of four categories of writing knowledge: content knowledge, language system knowledge, context knowledge, and writing process knowledge. Reviewing the students' compositions, it was learned that few students had even a rudimentary understanding of the expectations, codes and writing process of Western academic writing. They seemed unfamiliar with basic elements of writing involved in the four categories of writing knowledge. Finally, on the basis of the results obtained, course objectives for this specific group of students were suggested.
著者
今 久 羽生 寿郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.17-22, 1987-03-30

1985年4月24日関東地方の広い範囲でひょうが降った.被害は約5億円に達したが,季節的に早かったせいもあり,規模の割には少なかったといえる.しかし,降ひょうの規模が大きかったので,降ひょう予測という点に注目しながら解析を行なった.その結果,次のような知見が得られた.1.進行速度は日本海上で少し遅くなるが,500mbの寒気の大陸上の移動速度を使って外挿することでおおむね予想できた.2.降ひょう日には対流不安定が地上から3000mまで達し,下層は南よりの風で湿度が高く,上層は北よりの風が卓越していた.3.ショワルターの安定指数を用いた降ひょう子測では850mbより900mbの気塊を用いた方がうまく予報できた.4.クラスターの南側と東側では風向・風速・気温降下の間に異なる関係が見られた.5.風向が変化した時から降ひょうと風速ピークが生ずるまでの時間は,平均的に見ると30から40分程度であった.6.降雨域と気温降下域にずれがあったが,最大の気温降下量は温度の時間変化の軌跡から,連続した複数の積乱雲による下降気流によってもたらされたと判断された.
著者
渡辺 幸雄 猿丸 仁美 嶋田 典司
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.37-43, 1983-12-25

134種の植物についてウレアーゼ活性を調べた結果,大部分の植物でその活性が検出された.活性がもっとも高かったものはナタマメであった.ウレアーゼ活性が検出されなかった植物でも,生育環境が異なると活性を発現するものもみられ,まったくウレアーゼが存在しない植物があったとはいいきれないと思われる.供試植物を草本と木本とに分けて比較すると,草本の方が高いウレアーゼ活性を示す傾向にあった.ウレアーゼ活性が検出されなかったシコロベンケイに尿素を与え,その同化を検討したところ, Niの存在下でのみウレアーゼ活性の上昇が認められた.
著者
Edurise Escuadra Gina M. 宇佐見 俊行 雨宮 良幹
出版者
千葉大学
雑誌
食と緑の科学 : HortResearch (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.21-29, 2008-03

種々の有機質素材からなる堆肥を用い、Fusarium oxysporum f. sp. spinaciaeによって引き起こされるホウレンソウ萎凋病の発病に及ばす影響を評価するとともに、土壌中の微生物と病原菌に対する影響について調査した。堆肥はコムギフスマ、コムギフスマ・オガクズ、コーヒー粕、鶏ふん、およびこれらの混合物に5%のカニ殻粉末を無添加または添加したものを供試した。各堆肥を病原菌汚染土壌に5%(w/w)添加し、その30日後からホウレンソウを約1ヶ月ずつ連続して栽培し、2作後には堆肥をさらに2.5%追加施用した。その結果、各堆肥施用区とも2作目以降から発病が顕著に抑制されるようになり、特に混合堆肥施用区でその効果が高かった。FDA(fluorescein diacetate)分解活性を指標に土壌中の微生物活性を調べたところ、これらの堆肥施用土壌ではいずれの栽培時においても無処理の土壌に比べてその値が高く、希釈平板法で検出される糸状菌、細菌、放線菌の密度もそれに対応して増加していた。これら微生物群の中では細菌の増加が特に顕著であった。さらに、細菌を対象としたプライマーを用いてPCR-DGGE (denaturing gradient gel electrophoresis)解析を行った結果、堆肥施用に伴って土壌中の細菌群集構造が多権化していることが伺えた。また、堆肥を施用した土壌ではいずれも無処理の土壌に比べて病原菌の胞子発芽が抑制れる傾向が見られた。以上の結果より、堆肥施用に伴う発病抑止機構の一つとして、多様化・活性化した土壌微生物の競合や拮抗など様々な機能の総合的作用によって土壌の静菌作用が強化され、病原菌の活動が抑制されることが考えられた。
著者
小林 秀樹
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

研究最終年度は、平成20年度・21年度の調査結果を踏まえて、具体的な立地を想定して組合所有住宅の計画モデルを作成し需要供給のあり方について検討を行った。本研究では、LLCまたはLLPを用いた組合所有コープ住宅の可能性について、日本における大正時代の住宅組合法の検証、LLPまたはLLCを用いた先駆的事業の調査、北米の住宅生協法人法を含めた様々な法人形態の比較検討、具体的な立地を想定したケーススタディ、金融の可能性の検討などを通じて解明するものである。組合所有住宅は、区分所有が定着した日本では一般的に普及するメリットには乏しい。しかし、公的賃貸住宅の払下げ、密集市街地の再生、高齢者住宅等において、賃貸住宅の良さを生かして経営でき、かつ入居者の自主運営の努力を生かせる点で適している場合がある。この場合、LLC(合同会社)が、住宅組合の法人形態として比較的使いやすいことが明らかにされた。また、組合所有住宅に対する融資については、一般化することは現時点では困難であるが、「街なか居住再生ファンド」を用いることで、当該ファンドの目的に合致した事業については融資が組み立てられる可能性がある。これは、リーマンショックの影響で銀行等による不動産融資が停滞する中で、各銀行等が抱える不動産融資債権を買い取り、それをまとめて証券化する構想から検討が進められたものである。これにより、銀行が次の不動産融資に乗り出しやすくするとともに、地方都市を含めてノンリコースローンを日本に定着させようと意図したものである。また、老朽団地の定期借地権による払い下げのように、外部からの融資を必要としない事業であれば、さらに実現の可能性は高まろう。
著者
本田 陽子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.29-32, 1977-12-20

千葉県長生郡東浪見町産のBlasia pussila L.ウスバゼニゴケを用いて,集積培養ののち,Silica平板培養により,内在藍藻を純粋培養にみちびいた。得られた藍藻は,種々の観察の結果,葉耳腔内に生育するNostoc sphaericum Vauchi.と同定した。しかし,どのような経過を経て,葉状体中に浸入したか,更に本種とBlasia pusilla L.との関係にっいては更に研究を続行している。