著者
梅田 克樹
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

イタリアの農業は、危機的状況に陥っている。厳しい環境下において農場を維持するために、生産コストの圧縮や農産物の付加価値向上、農外部門への進出などが図られている。イタリア中北部においては、アグリツーリズモや農場レストランと、農産物加工・販売とを組み合わせる事例が多くみられる。そのために必要なコンヴァンシオンを獲得するための手段として、地理的表示システムの活用や有機・減農薬農業への参入が相次いでいる。
著者
鳥山 祐介
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

18世紀ロシアの頌詩とギリシア・ローマ前年度に執筆した2本の論文を学術誌『スラヴ研究』『ロシア語ロシア文学研究』にそれぞれ発表した。また、ここで論じきれなかった問題を、ペテルブルクの国民図書館やヘルシンキのフィンランド国立図書館で収集した文献をも用いて新たに考察した論文を、北大スラヴ研究センターの雑誌に発表した。また、同様の趣旨で、日本18世紀学会において発表した。19世紀初頭のロシア文学と視覚文化ヘルシンキのフィンランド国立図書館、ペテルブルクの国民図書館にて、19世紀初頭のロシア社会における光学スペクタクルに関連する文献を収集し、それに基づいてプーシキンの小説『スペードの女王』における視覚的要素を論じた報告を研究会にて行った。目下論文化に取り組んでいる。また、18世紀の詩人デルジャーヴィンにおける絵画的要素に関する報告をロシア科学アカデミー・ロシア文学研究所(サンクトペテルブルク)において行った。
著者
笹本 智弘
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

界面成長を記述するKardar-Parisi-Zhang(KPZ)方程式や、その離散版モデルの揺らぎについての研究を行った。特にレプリカ法とよばれる手法を用いて定常状態における1次元KPZ方程式の高さ分布と時空2点相関関数に対する明示的な表式を求めることに成功した。これらの量はこれまでいくつかの物理的な手法を用いて調べられていたが、近似無しに表式が得られたのは大きな進展である。また、非対称排他過程やq-TASEPと呼ばれる離散モデルに対して双対性を用いることにより、見通しよく揺らぎの性質を理解出来る事を示した。さらに多点分布や多成分系に対する揺らぎについてもいくつかの成果を得た。
著者
西田 昌史
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,討論などの議事録に話者の発話状態を付与するため,音声から音響特徴を抽出し分析することで,話者の発話状態をモデル化し推定することを目的としている.これまでの研究では,日本語地図課題対話コーパスを対象として話者4名の40発話を用いて,6つの発話状態と4つの韻律特徴の全体の相関関係を正準相関分析により明らかにした.これを踏まえて,今回はさらにデータ量ならびに韻律特徴を増やして重回帰分析に基づき各発話状態のモデル化と推定について検討を行った.データとしては話者10名の130発話を用い,今回「強調」「疑問」「驚き」「自信」「迷い」の5つの発話状態に対して被験者12名によりSD法に基づいて7段階で評定実験を行った.各音声データごとに平均の評定値が一定値以上であればその発話状態があるとみなした.また,韻律特徴としては「F0の平均値・レンジ・最大値・最小値」「パワーの平均値・レンジ・最大値・最小値」「平均モーラ長」の9つを用いており,話者ごとにパラメータを正規化している.以上の評定実験で得られた評定値を目的変数,韻律特徴を説明変数として重回帰分析によりモデル化を行った.変数選択により,「強調」は「F0レンジ・最小値」「パワー平均値・最大値」,「疑問」は「F0平均値・レンジ」「パワーレンジ・最大値」,「驚き」は「F0レンジ・最大値・最小値」「パワーレンジ」「平均モーラ長」などのように韻律特徴により各発話状態をモデル化することができた.この重回帰モデルにより発話状態の推定を行った.その結果,各発話状態がある場合の判別制度が64%,各発話状態がない場合の判別制度が93%となり全体で80%の判別制度が得られた.また,重回帰モデルの推定値と人間の評定値との相関を分析した結果,平均して0.74の相関値が得られ今回のモデルが人間の印象を反映できていることがわかった.
著者
山田 賢 久留島 浩 岩城 高広 安田 浩 秋葉 淳 趙 景達 佐藤 博信 菅原 憲二 安田 浩
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、北東アジア(具体的には中国・朝鮮、そして日本を対象として想定している)の近代移行期における国民国家の形成について比較研究を行った。それぞれの地域の事例について文献調査を実施したほか、浙江工商大学日本文化研究所、武漢大学日本研究中心の研究者と共同研究会を開催して検討を行った。その結果、北東アジア各地域における国民国家は、それぞれの地域において育まれた近世伝統社会における社会関係を基体として出現したことを明らかにした。
著者
秋葉 淳
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、19世紀オスマン帝国の改革を、中央政府と地方社会の相互作用の結果として生じたものとして捉え直すものである。その主たる成果として、地方評議会の機能、地方反乱の性格や背景、地方住民の官僚機構への進出などを分析し、地方住民が国家の政策に影響を及ぼす、あるいは、国家システムに参入する回路についてその具体的諸相を明らかにしたほか、中央政府が地方行政の問題に関する政策決定過程において地方官らに諮問する手続きがとられたことや、1845年の地方代表者会議に見られるように、地方有力者の協力を得るために周到な準備をしていたことなどを見いだした。
著者
一ノ瀬 佳也
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、スコットランド啓蒙哲学における「公私」観念についての研究を行った。そのために、グラスゴー大学アダム・スミス・リサーチ・ファンデーションの客員研究員となり、このテーマをめぐってグラスゴー大学のクリストフォー・ベリー教授と議論した。その結果、「私」的個人とは、単に利己的なだけでなく道徳的心性を有しており、自分たちで正義を導くことができることが分かった。
著者
阪田 史郎 塩田 茂雄
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

外部電源供給型の固定ノードとバッテリー駆動で無線中継機能を有する移動ノードが混在するハイブリッドノード構成型アドホックネットワークに関し、混在構成の特徴を活かした高信頼化・省電力化・高寿命化技術を確立し、その有効性を定量的に示すことにより、センサネットワーク、ホームネットワーク、VANET(車車間/路車間通信)、無線LANメッシュネットワーク、DTN(Delay/Disruption Tolerant Network)など多様な各マルチホップ・アドホックネットワークの共通的な技術課題を横断的に解決した。
著者
岡ノ谷 一夫
出版者
千葉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

鳥類のうち、鳴禽に属する種は、種間コミュニケーションに使う音声を2段階の学習によって獲得する。まず、成鳥の歌を聴き、聴覚的記憶を形成する時期があり、それに続いて、自分で発声しながら、発声パターンと聴覚記憶とを照合させる過程である。こうした過程を経て学習された歌はある程度定型的だが、鳴禽類の一種、ジュウシマツにおいてはある種の文法規則で表現できる可塑性を持っている。ジュウシマツは東南アジアの野鳥コシジロキンパラを家禽化した種である。コシジロキンパラの歌は、ジュウシマツとは異なり線形で定型的である。2種を使って親を入れ替える実験を行った結果、この2亜種間の歌の違いは、学習のちがいのみならず、生得的な学習可能性の違いであることが、私たちの研究でわかってきた。さらに、ジュウシマツの歌制御神経系の一部(NIf)を破壊することで、複雑な歌が単純化することから、この部位が文法生成に関連していると予測される。ジュウシマツとコシジロキンパラのNIfは、光学顕微鏡のレベルでは違いが見られず、容量にも差がない。このことから、分子レベルで違いを検出する必要がある。NIfの遺伝子発現の違いが、文法のありなしを決めているとの仮説を立て、マイクロアレイを使ったスクリーニングを行うことにした。初年度は、ジュウシマツとコシジロキンパラの成鳥オスの脳を薄切し、それぞれの切片から5つの歌制御神経核を切り出し、cDNAライブラリーを作成した。
著者
須賀 隆章
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は第一に、源平合戦図屏風の特色を整理し、戦国合戦図屏風を含めた江戸初期の合戦図屏風の表現の特徴を明らかにしようとした。そして第二に、屏風とは異なる媒体を含めた分析を行い、合戦を視覚化することの意味、歴史的実態との関係を見直す作業を進めた。第一の点に関して、源平合戦図屏風でも多くの作品の残る「一の谷・屋島合戦図屏風」の江戸初期の作品に中世の合戦絵巻からの引用と考えられる「首取り」の図像が共通して見られることを確認した。更にこの図像は、同時代の合戦を描く絵巻や戦国合戦図屏風にも見られることを指摘した。「首取り」の図像が繰り返し描かれた背景には、「自己」と結び付くかたちで武士を描かせる享受者の存在が関係している。源平合戦図では戦場における教訓として、戦国合戦図では自らまたは祖先の活躍を示し家の正統性を語るものとして、「首取り」の図像が享受されたことが想定される。第二の点に関して、「東照宮縁起絵巻」(日光東照宮蔵)に描かれた家康像、合戦像を分析した。まず家康は天海や家光の意向を反映して、仏道に発心し武人として成功を収める人物として造形されていることを明らかにした。そして、絵巻にのみ見られる合戦場面は「武」の威光を求める家光の当時の状況と関係していることを指摘し、中世絵巻の構図や図像を利用した上で、家康の合戦での勝利を強調していることを明らかにした。家康の勝利の演出は戦国合戦図屏風にも共通し、彼の勝利を演出する表現は媒体を超えて選択されたとも想定される。以上の分析に共通するのは、過去の作品のイメージをどのように利用したのかという問題である。この問題は他の絵画作品にも共通し、先行研究の蓄積も多い。しかし、本研究が対象とする合戦図屏風や合戦絵巻といった作品では、そのような研究が進んでいるとは言い難く、この問題の検討は武装した武士の姿を描く絵画を位置づける上で必要不可欠な作業である。
著者
佐藤 和夫 井谷 惠子 橋本 紀子 木村 涼子 小山 静子 片岡 洋子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、日本が男女共同参画社会をめざすためには、男女共学、共修がどのように実施されるべきかについて、高校を対象に分析検討を行った。男女共学、共修は男女平等教育にとって必要な基礎的条件ではあるが、隠れたカリキュラムにおけるジェンダーに無自覚なまま共学、共修を実施しても、共学、共修がただちに男女平等教育には結びつかない。そのため、男女共学や共修の現状を明らかにしながら、男女平等をつくるための共学、共修とはどうあるべきなのかについて、以下の3つの調査領域における研究において析出した。1,福島県の男女共学化および共修の現状調査福島県は、男女共同参画社会の実現のための施策の一環として、長らく残っていた別学高校をすべて共学化した。その共学化実現過程や高校の現状について、聞き取りと観察および質問紙調査を組み合わせて分析、考察した。2,関西(大阪)の私立高校の共学化戦略と共学、別学の現状調査福島県とは対照的に公立高校はすべて共学だった大阪府では、私立高校が別学校を提供してきた。近年、共学化が進んでいる大阪の私立学校での別学、共学の経営戦略および生徒への質問紙調査によって、共学、別学の比較検討を行った。3,高校での体育共習の指導場面の観察調査男女共修の高校の体育の授業場面において、教師の声かけが生徒が男子か女子かで異なること、そこに教師のジェンダー観があらわれ、ジェンダーの利用と再生産が行われていることなどについて、授業観察の分析を行った。
著者
阿不拉 地里夏提 中島 祥夫 下山 一郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.347-357, 2001-10-01

母国語,外国語の認知過程における脳機能局在差異を明らかにすることを目的に,TVモニターに呈示された,1)母国語として漢字単語を外国語として英単語々黙読したとき,2) 2桁のアラビア数字を母国語と外国語で黙読したときの21チャンネル事象関連脳電位を記録し,解析した。1)での被験者は右利き健常成人9名(日本人5名,中国人4名),2)では右利き健常成人10名(日本人6名,ウイグル人4名)であった。その結果,単語認知及び数字認知の両タスクにおいて,刺激後200-300msの間で陰性電位が見られ,その振幅は外国語認知で母国語認知より大きかった。漢字と英単語を黙読したとき,漢字では両側側頭葉及び中心部に陰性電位活動が見られ,英語では左側側頭葉により大きい陰性電位活動が観察された。アラビヤ数字を母国語と外国語で黙読したときは全ての被験者で両側側頭葉及び後頭葉に陰性電位が観察された。これらの結果から,単語及び数字認知時の脳活動は母国語よりも外国語処理で強く,視覚呈示後200-300msで認知処理が最大となると考えられた。また,母国語(漢字と数字)の認知過程には右脳のイメージ処理と左脳の言語処理が同時に関わり,外国語(英語)の認知過程では従来指摘されている言語中枢との関連で左半球が優位であることが示唆された。
著者
吉田 英生 幸地 克憲 田川 雅敏 松永 正訓
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

小児悪性腫瘍に対しても極めて積極的な治療が行なわれるようになり、その治療成績は向上してきている。しかし、進行神経芽腫に代表される予後不良癌の治癒率はいまだ低く、新たな治療法の導入が不可欠である。今回、われわれは遺伝子治療の有効性につき基礎的検討を行なった。1)免疫遺伝子治療の検討:レトロウイルスベクターLXSNにサイトカイン遺伝子を組み込み、マウス神経芽腫細胞C1300に感染させ遺伝子導入を行いサイトカイン産生C1300細胞を得た。IL-2,GM-CSF産生C1300腫瘍細胞の接種は腫瘍の生着・増殖を認めなかった。腫瘍の生着を拒絶したマウスに親株を接種しても増殖を認めなかった。肝転移モデルにおいてもIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は転移を抑制した。さらにIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は先行接種増殖した親株細胞の増殖を抑制した。以上、腫瘍原性の抑制、腫瘍免疫の誘導、癌治療効果を確認した。2)自殺遺伝子治療の検討:進行神経芽腫に高発現するMidkine遺伝子をプロモーターとし、HSV-TK(ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)とGCV(ガンシクロビール)の組み合わせによる自殺遺伝子治療の検討を行った。MidkineをプロモーターとすることによりMidkineを高発現しているヒト神経芽腫細胞に特異的にHSV-TKを発現させGCVに対する感受性を高めることが確認された。以上、神経芽腫に対する免疫遺伝子治療、ならびに自殺遺伝子治療の抗腫瘍効果が明らかとなり臨床応用へ向け有用な基礎的結果が得られた。
著者
安田 正次 沖津 進
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.43-47, 2001-03-31
被引用文献数
5

群馬・新潟県境に位置する平ヶ岳湿原が乾燥化していることが近年報告されている.その原因を探るため,現地に近い十日町・水上・片品の3地点の積雪深の経年変動を比較検討した.その結果,1970年代後半から片品の積雪深が減少していることが明らかになった.冬季の季節風の向きから,平ヶ岳は片品の風上にあり,積雪状況が片品と連動していると考えられるので,平ヶ岳も片品と同様に積雪深が減少していると推測された.一方,片品の積雪深の減少と同じ時期から水上の積雪深の増加が認められた.積雪深の減少の原因は,降雪をもたらす雪雲が水上方面に偏在したために,片品方面で降雪が少なくなったためと解釈された.この降雪量の減少が原因となり,平ヶ岳の湿原の乾燥化が起こっていると考えられた.
著者
福田 友子
出版者
千葉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究は、トランスナショナルな移住形態が顕著に、かつ継続的に見られる、在日/元在日パキスタン人移民とその家族を調査対象者として取り上げ、日本社会に一旦適応したはずのパキスタン人移民が日本社会を離れることを決断し、「第三国」や「最終目的国」に再移住して活動拠点を形成する過程を分析し、その背景にどのような要因があるのかを考察した。そして「間接移民システム」モデルとトランスナショナリズム論を組み合わせながら、独自の説明図式を提示した。