著者
浅山 英一
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-9, 1958-12-30

ストック初雪外13品種を用いて,花色,草丈,開花の早晩,八重率等についてそれぞれの組合せを行い,F_1にあらわれる特性を調査し次のような傾向を見出した.(1)花色 同一系統の白色品種間のF_1は白色に,異系統の白色品種間のF_1は淡紫色又は紫色に咲く.白色花と紅色花とのF_1は紫色花となり,紅色系品種間のF_1は紅色系の花色にあらわれる.(2)草丈 F_1は概ね両親品種の何れかより草丈が高くなり,矮性種相互の組合せでは両親品種よりはるかに高性となるものが見出される.(3)開花の早晩 概してF_1植物は早咲となる傾向があり,早生種相互のF_1には両親品種よりも1カ月以上早咲するものが見出された.(4)八重率 F_1にあらわれる八重率は,両親とした固定品種の八重率よりも高いものが各組合せの70〜80%程度あらわれる.(5)花色に関する成績を除いては,逆交配の結果は必ずしも正交配の結果と同一であるとは限らない.
著者
織田 成人
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本人独自の遺伝子多型からみた重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的としている.多施設共同研究(計5施設)で遺伝子情報と臨床情報を収集した.IL1RA 2nd intronVNTRの臨床経過や転帰への影響について検討した.その結果,導出コホート(自施設症例;n=261)および検証コホート(多施設症例;n=793)両方において,IL1RA RN^*2 alleleの保有数が多くなるにつれてICU死亡率,重症敗血症罹患率ともに有意に上昇していた.
著者
池田 忍 柴 佳世乃 久保 勇 伊東 祐子 亀井 若菜 水野 僚子 土屋 貴裕 成原 有貴 メラニー トレーデ 須賀 隆章 中村 ひの
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日本の中世の物語絵画、とりわけ多様な知識や情報を共有し伝達する媒体であった絵巻の描写を手がかりに、身分と階層を跨る絵巻制作者と享受者の重層的な世界観を明らかにしようとするものである。本研究では、中世の人々の日常生活、労働、信仰、行事、儀礼、合戦の他、異国や異域、神仏化現の舞台となる「場」(型)を抽出・収集し、そこに描かれた建築や環境、多様な「もの」に、身分差や階層差、ジェンダーの差異がどのように描き分けられ、関連付けられているかを具体的に検証し、物語絵画、とりわけ絵巻という媒体の歴史的特性を明らかにした。
著者
須鎗 弘樹
出版者
千葉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

(1)最も基本的な線形微分方程式を最も単純に非線形化した非線形微分方程式を解くことによって,q-指数関数、q-積、q-多項係数を導き,q-多項係数のq-対数にq-スターリングの公式を適用することにより,Tsallisエントロピーを導くことができる.それは,加法的双対性と言われる数理構造の表現であるが,q-多項係数をさらに一般化した(μ,υ)-多項係数を導入することにより,加法的双対性に加え,乗法的双対性,q-triplet,マルチフラクタル-tripletの構造も導くことができた。これら4つの数理構造は,Tsallis統計力学に典型的に現れ,それらを特殊な場合として含む統一的な表現を得ることができた.(2)(1)で導いた(μ,υ)-多項係数から,ドモアブルラプラスの定理の拡張として,ロングテール構造をもつ裾野の広い分布(q-ガウス分布)が導けるかを数値的に検証した.特に,q-ガウス分布に分布収束するときの3つのパラメータμ,υ,qの関係を数値計算により調べた.(3)Tsallisエントロピーを平均符号長の下限にもつ符号木を導いた。この導出方法は,ある性質をもつ一般化エントロピーにも応用できる.さらに,ここで導いた符号木は,マルチフラクタル構造をもつこともわかった.(4)Tsallisエントロピーのパラメータqの意味は分かっていなかったが,マルチフラクタルの理論に現れる一般化次元のqと同じであることがわかった.さらに,Tsallisエントロピーと一般化次元との一意な関係式を導き,これが1910年のEinsteinの論文で主張された式の一般化になっていることを発見した.
著者
設楽 悦久
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

これまでにシクロスポリンによる有機アニオントランスポーターに対する阻害効果が単なる競合阻害ではなく、阻害剤に曝露することによって、阻害剤除去後も持続的に見られるものであることを見出してきた。この機序を解明するために、シクロスポリン投与後のラットより遊離肝細胞を調製し、細胞表面をビオチン化したのちに、ビオチン化を受けた蛋白を回収し、そこでのトランスポーターOatp1a1発現量を解析することで、細胞表面での発現量の変化について検討を行った。しかしながら、発現量が低いため、十分量の回収をすることができなかった。同様に、培養肝細胞にシクロスポリンを曝露した後、細胞表面のOatp1a1発現量の解析などを試みたものの、結果が得られなかった。一方で、トランスポーター活性に影響を与えると考えられている肝組織中グルタチオン量を測定したところ、シクロスポリン投与による変化は見られなかった。このことから、肝臓内グルタチオン量の変化による現象ではないことが明らかとなった。また、阻害剤がトランスポーターに共有結合している可能性を考慮し、トリチウム標識シクロスポリンをOatp1a1発現細胞およびベクター導入細胞に曝露した後、膜表面を有機溶媒でwashした後で、結合しているシクロスポリン量を測定したものの、結合量に差は見られなかった。ヒトでの有機アニオントランスポーターOATP1B1およびOATP1B3発現細胞の供与を受け、シクロスポリン曝露によるトランスポーター活性の低下を検討したところ、曝露時間および濃度依存的な阻害効果が認められた。ラットOatp1a1発現細胞を構築し、同様の検討を行ったところ、ここでも同様の結果が得られた。以上より、シクロスポリンによる曝露時間および濃度依存的なOATPファミリートランスポーターに対する阻害が明らかとなったものの、機序を解明するには至らなかった。
著者
小澤 桂子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、約1年以内に初回の退院をした血液疾患患者を対象に、退院指導についての質問紙調査を行った。退院後の生活等についての説明は、医師から、退院前3〜7日前に、病室で、時間を特にとって、一人で、言葉だけで、どんなことに注意しなければならないかについて説明を受けたと回答した者が最も多かった。それで良かったとの回答が多かったが、面談室で、家族と共に、パンフレットなど紙に書いたものを使って、を希望する意見が多くみられた。P<0.05で正の相関が見れたのは、生活上困ったことの解決の程度と説明が役だったか(相関係数0.737)であった。次に、(1)化学療法とはどのような治療方法であるのかを理解できる、(2)化学療法と自分の疾患の関係を理解し、納得して化学療法を受けることができる、(3)化学療法により起こりうる副作用、自分自身や生活への影響を知り、それらを最小限にするよう、対処方法を獲得できる、(4)得られた知識及び自分の入院中の体験の評価をもとに、退院後に起こる副作用や、自分自身や生活への影響を知り、起こりうる問題に対して効果的な対処方法を検討し、実施することができる、(5)継続した化学療法を行うことを受容できる、(6)自分自身が治療の主体として、疾患や治療とうまくつきあっていこうという意志・意欲を持つことができる、の6つを目標に、退院指導のための看護プログラム及び、パンフレットを作成した。6名の血液疾患患者(男性2名女性4名、平均年齢52.0歳)にプログラムを施行し、退院後1カ月後に質問紙により、プログラム、パンフレットともによくわかり、効果があったとの意見を得た。しかし、副作用などによる生活の困難は依然出現し、退院後の生活を困難にする大きな要因になっているため、この点を改善する方法を検討し、プログラムに取り入れる必要が示唆された。
著者
波多野 誼余夫 稲垣 佳世子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.91-104, 2005-02-28

本論文において,人間の心が発達するのは,文化,すなわち何世代にもわたって蓄積され,共同体により共有された人工物を取り入れることによってである,と我々は提案する。我々のアプローチは認知的である。というのは,人間における知識と技能の獲得は,種々の内的ないし認知的制約のもとで行われると想定しているからである。我々のアプローチは社会文化的でもある。というのは,獲得された制約は,たいてい社会文化的な起源を持っており,人間は知識や技能を相互作用的な社会文化的制約のもとで獲得する,というのが我々の主張だからである。本論文では,非特権的な領域で生じる発達(すなわち熟達化)と特権的領域ないし思考の中核領域における概念的発達と変化の両方を論じ,文化がこれらの発達の基本的構成要素であることを論証しようと試みている。このように文化を強調することは,発達論者に対して,いくつかの研究課題と研究デザインを示唆する。
著者
小野 佐和子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.49-58, 1996-03-29

コミュニティーガーデン運動は,オープンスペースを自らの手で作り出すことを通じて,70年代の都市の荒廃に対処しようとする市民運動である。70年代から80年代にかけての運動を通じて,コミュニティーガーデンは合法化され,オープンスペースの一形態として社会的に認知される。その背景には,市民が行動を起こさざるをえないほど進んだ都市の荒廃,不動産不況による空き地の存在,草の根市民運動の盛況,伝統的オープンスペース計画の失敗,連邦レベル,自治体レベルでの住民参加を促す政策の存在が考えられる。組織化やネットワーキングによる住民の組織力を背景として問題解決や社会的認知の獲得がなされたのが,この時期の運動の特徴だと考えられる。
著者
寺崎 朝子 中川 裕之 中川 裕之
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ニワトリ脳より申請者が同定したアクチン結合タンパク質lasp-2に東化活性があることを明らかにし、ニワトリ初代神経細胞の成長円錐やスパインに局在することを示した。また、アクチン結合領域を欠損したlasp-2の導入によって神経細胞の成長円錐の運動が異常になることも明らかにした。関連した論文を2本、総説1本を発表した。
著者
東郷 秀雄
出版者
千葉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

研究の目的は、イミダゾール型及びアンモニウム型イオン液体反応場の中で、中性の活性種である炭素ラジカルを発生させ、イオン液体という高極性・高粘性反応場の中での中性炭素ラジカルの化学的挙動を精査し、一般的な有機溶剤との反応性の相違を比較するとともに、その特性を合成化学的に反映させることにあります。そこで、金属亜鉛を用いた1,3-ジハロプロパン類のシクロプロパン環への変換反応を種々のイオン液体反応場で検討した結果、イミダゾリウムNTf_2塩、イミダゾリウムPF_6塩、及びイミダゾリウムOT_S塩では殆ど反応しないが、イミダゾリウムCI塩及びイミダゾリウムBr塩のイオン液体を用いると、シクロプロパン化反応が1,3-ジヨード、1,3-ジブロモ、及び1,3-ジクロロプロパン何れの基質においても効率的に進行することが分かった。つまり、イオン液体を用いることにより、金属亜鉛から1,3-ジハロプロパンへの電子移動が促進され、不活性な1,3-ジクロロプロパンでも効率的に反応することが分かった。これらの知見をもとに種々の2,2-ジ置換及び2-モノ置換1,3-ジハロプロパン類のジ置換及びモノ置換シクロプロパンへの効率的3-exo-tet環化反応を確立した。また、イオン液体固定型ヨードベンゼンを触媒とし、イオン液体中でケトンのmCPBAによるα-トシロキシケトンへの変換反応、及び続くチアオミドとの反応によるチアゾールへの直接変換反応を確立した。イオン液体固定型ヨードベンゼンを含むイオン液体反応場は再生再利用が可能である。
著者
石田 理永
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

平成12年度は、環境外乱による地盤震動特性のマスキング現象の解明に向け、実験的・解析的双方の側面からの検討を行った。実験的検討としては、平成11年度に構築したリアルタイムの交通流記録システム(池上通信機(株)・ZPC-104他)と、既存の地盤振動モニタリング・収録システムを連動させ、道路交通に起因する地盤振動と交通流との相関の抽出を試みた。その際に、補助的に騒音も計測するのが良いと考え、新たに積分形普通騒音計(リオン(株)・NL-06)を購入した。当初の研究計画では、数パターンの敷地と道路との取り合いをフィールド調査の上選択して、地盤振動・交通流同時計測を実施する予定であったが、振動・映像・騒音同時計測手法の工夫・習得にじっくりと時間を費やしたため、千葉市内の計155箇所においてフィールド調査は行ったものの、同時計測としては、今年度の段階では、千葉大学西千葉キャンパス南門付近の平面道路と敷地境界における検討のみとなった。交通外乱による地盤振動を適切に説明するためは振動源特性(走行速度・積載状況・車種・路面凹凸等)まで遡って一台一台の車両走行状況を精度良く把握することが鍵となるため、現在、同時刻における敷地境界での振動・騒音と映像のパターン分類と、波形・スペクトルの定常的、非定常的特性の考察を進めており、今後に繋がる成果が出つつ有る。解析的検討としては、平成11年度に地盤振動計測を実施した東京都墨田区鐘ヶ淵周辺の敷地の1つである、高架道路に面した公園について、既存の動的相互作用解析コードSASSIを使用し、高架道路の複数橋脚による伝播波動の重ね合わせに関する検討を行った。推定加振力による平行成層地盤上の複数橋脚基礎同時加振の結果は、橋軸直交測線上の地盤振動観測記録を定性的・定量的に説明しており、環境外乱による地盤震動特性のマスキング現象の一端を解明することができた。
著者
宮城 俊作
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.205-220, 1990-02

本研究では関西地方に存続する6つの歴史的市街地を対象として,宅地割の形態にみられる特徴から抽出される宅地のタイポロジー,その基準となる形状寸法,「にわ」の存在形態,家屋を含めた敷地平面構成,の4点を検討した結果,以下の諸点が考察された.(1)抽出された住戸敷地の形態は,宅地割のオリジナル形態にみられた形状と標準規模を何らかのかたちで継承している.(2)「にわの配列は,宅地の形状と規模の基準値によって想定される敷地条件によく呼応し,間口3〜4間,奥行9間が「にわ」1単位の存在条件となっている.(3)「にわ」の単位と別棟の複数化は,敷地規模,特に奥行が増大することによって生じる.これによって敷地後部に「にわ」と家屋がヴァリエーションを持って配置されることになり,街区内部の空間に街路側とは異なった多様化が担保されることを示す.
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では安全で高度な内視鏡下胎児手術をサポートするシステムとして、低侵襲性の向上と術具機能の確保を両立させるために、腹腔内で先端部が変形することで内視鏡手術用デバイスとしての機能を持つエンドエフェクタ「変形駆動」機能を開発し,挿入時φ8mmから体内でφ14mmに大型化する把持鉗子を開発した.また3次元超音波画像診断装置と手術ナビゲーションを用いて、手術ナビゲーションとしての術野情報・術具位置姿勢提示機能のみならず、子宮内組織と術具との距離(接近度)を術者に提示する「近接覚」提示機能を備えたリアルタイム3D超音波ナビゲーションを開発した.
著者
山田 豊和
出版者
千葉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

今日の情報社会を支えているのは、ナノスケールの微小な磁石である。我々の身の回りのパソコンをはじめ、情報の記憶・書き込み・読み込みは、磁石のN極S極の向きを利用している。磁石の向きを読み取るために、磁気ヘッドを使う。磁気ヘッドは、2つの小さな磁石の間に金属などの無機物は挟んだものである。ひとつの磁石の向きは常に固定であり、他方は検出する磁石の向きにより、その方向を変える。この2つの磁石の間に電流を流しておくと、2つの磁石の向きが平行な場合電流は多く流れ、反平行では減少する。この効果は巨大磁気抵抗(GMR)効果と呼ばれる。これまで、磁気ヘッドは無機物で作られてきた。これに代わる新たな物質として有機物がある。我々は、インクなどの色素分子として広く普及・使用されてきているフタロシアニン分子を2つの小さな磁石の間にいれ、さらに単一分子を使用することで1ナノメートル(十億分の1メートル)の大きさのGMRヘッドを作成した。有機分子と磁石との電子スピン相関の解明を、スピン偏極走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて行った。平成22年度は、コバルトナノ磁石の上につけた単一フタロシアニン分子(H2Pc)に、STM磁性探針(Co薄膜をコートしたW探針)を接触させ、この2つのコバルト磁石の向きが平行な場合と、反平行な場合の電子伝導測定を行ったところ、60%のGMR比を得た。有機分子の無い場合に比べて、1ケタ大きい値であった。有機分子を利用することで、無機物には無い新たな特性の発現を確認した。研究と並行して、ドイツ・カールスルー工大学から千葉大学へのSTM装置の移動を完了した。鉄ウィスカ単結晶上のマンガン膜を新たな基板として使用する。これを用いることで、弱い外磁場で容易に磁化方向を反転できる。外磁場印加のためのコイル系の設置、また磁性探針の向きを制御するための回転機構の取り付け・改造を行った。
著者
松尾 七重
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は我が国における就学前教育と小学校低学年教育の接続を考慮した幼児・児童のための連携図形教育プログラムを確立することである。そのために,図形教育に関する問題点を解明するための調査を実施し,その結果及びアメリカ合衆国の就学前教育の研究プロジェクトの成果を踏まえ,就学前の幼児及び小学校低学年の児童を対象とした図形に関する指導の内容,配列及び方法を構想した。また,その指導の一部を実施し,その前後で質問紙調査等を行い,その効果を検証し,その結果を基に,幼児と児童を対象とした連携図形教育プログラムを提案した。
著者
高村 民雄 久世 宏明 鷹野 敏明 中島 映至
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度は以下の研究成果を得た.[GMS-5を用いた放射収支及び雲の放射強制量の高精度評価の為の雲の光学的性質の再検討]これまで,GMS-5を用いて1996年以降の雲量,地表面輝度温度,地表面日射量(収支量)の毎時データを継続的に求めてきた.これらの物理量に対してSKYNET(本研究グループが中心となって,東アジアに展開・運営している高精度雲・エアロソル・放射観測網)による雲・放射に関する各種観測量を利用して,これまで作成したプロダクトの精度評価を行った.その結果,快晴時の推定精度が良好なのに対し,曇天時には,日平均量で50W/m2以上になる大きな誤差が認められる事が分かった.この誤差は短波放射収支に大きな誤差をもたらすことから,その原因究明とアルゴリズムの改善を図った.誤差の要因は,雲の評価,中でもその光学的厚さ推定の正確さにある.この推定に誤差が入る要因には,次のものが予想される;(1)センサーの劣化による感度低下,(2)量子化誤差,(3)推定アルゴリズム,(4)雲自身がもつ非均質性に由来するもの等.センサー劣化については,既に過去に幾つかの研究があり当研究室でも解析を行ってきた.その結果年間数%の割合で劣化を起こしていることが確認された.また,GMS-5と並行して取得されたMODISデータを併用して検討した結果,この誤差を定量的に評価することができた.一方,可視センサーは,6ビットA/D(64階調)変換能力しか持たず,特に低反射率時に高分解能になる様な感度特性を持っている.その結果,薄い雲では比較的精度良く推定できるのに対して,厚い雲では極めて誤差が大きいことが明らかになった.MODISとGMS-5の幾何学的位置の違いは,雲の3次元構造の影響を評価するのに効果的である.同一視野に対するこの影響を評価した.これらの結果は,衛星データの推定アルゴリズムの改善に反映される.
著者
松香 敏彦
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではカテゴリー学習において、学習者の個人の目的が獲得される概念・知識に影響を与えること、また、ある概念は単一に表象されているのではなく、複数の表象をもちうるということが、行動実験によって明らかにした。これらの状況に応じた知識を獲得する能力、複数の表象を持つ認知メカニズムが、人間の適応性を要素であることを計算機シミュレーションによって示した。
著者
松岡 延浩 今 久 松田 友義 木村 玲二 神近 牧男 王 秀峰 井上 京
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,砂漠化とは本来気候的に決まる「気候生産要因(Climatic Production Factor)」が,農業・牧畜業による人為的因子(農業形態,牧畜形態)などの「阻害要因(Inhibition Factor)」を上回っている場合に植生は安定しているが,「阻害要因」が「気候生産要因」上回った場合に砂漠化が発生するという仮説を立てた。それの従って,砂漠化の危険度を評価するため,地点毎の「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルを作成した。阻害要因としては「土壌水分量」,「放牧強度と土地利用」を取り上げた。研究組織を以下の3班に分けて,砂漠化ハザードマップ作成に必要な「気候生産要因」と「阻害要因」を表現するモデルの妥当性の検討とハザードマツブ作成を行った。メッシュデータ整備班(松岡,王)研究期間に整備された自然的要因に関するデータを用いて,「気候生産要因」メッシュデータの作成を行った。また,メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域現地の気象データの再収集および地表面分類のグランドトゥルースを行った。農作業調査班(今,神近,木村,松田,井上,中野)観測期間内に,「阻害要因」のモデル化とメッシュ化を行った。メッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,農業形態,特に作物の種類,栽培方法,灌概水量の聞き取り調査を行った。同時に,農業形態には,農家の経営状況が大きく影響するため,経営状況のメッシュ化を松田を中心に再検討した。牧畜調査班(小林,松田,野島)上記に出作成されたメッシュデータの妥当性に問題があると判断される地域において,砂漠化指標の1つである植生量と構成植物種に対する家畜密度の影響を,再度植生調査と聞き取り調査した。以上の結果を取りまとめ,黄河流域の10kmメッシュを作成して,現地地方政府など普及機関に配布するとおもに農牧畜民の砂漠化に対する教育普及に供試することができた。