著者
中野 俊 高田 亮 石塚 吉浩 鈴木 雄介 千葉 達朗 荒井 健一 小林 淳 田島 靖久
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11-12, pp.387-407, 2007-03-31 (Released:2014-06-11)
参考文献数
23
被引用文献数
1 4

富士火山噴出物の噴火年代決定を目的として産総研が実施したトレンチ調査のうち,北東山麓で行ったトレンチ調査結果及びそれに関連した露頭観察の結果をまとめ,そこから得られた放射性炭素年代測定値を合わせて報告する.トレンチ調査の対象は,新富士旧期の大臼,小臼などの火砕丘群及び新富士新期の檜丸尾,鷹丸尾,中ノ茶屋,雁ノ穴丸尾,土丸尾などの溶岩流群である.
著者
佐脇 貴幸 村岡 洋文
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.337-341, 2002
被引用文献数
1 1

マタロコ地熱系のMT-1及びMT-2井から得られた流体包有物について,マイクロサーモメトリー及び化学分析を行った. MT-1井坑底部の流体包有物の均質化温度は,マタロコ地域の地質学的・地球化学的データから推定されている温度構造と一致する.しかしMT-2井坑底部の均質化温度データは,推定されている坑底温度(200℃)よりも20-30°C程度高い. 全ての流体包有物の塩濃度は低い. MT-1井坑底から得られた流体包有物についてのガス成分の半定量分析によれば,流体包有物の主成分はH<sub>2</sub>O であり,微量のCO<sub>2</sub>とCH<sub>4</sub>を伴う. これらのデータは,流体包有物が,本地熱系の浅部で,少量のガスを合む220-235°Cの凝縮水から形成されたことを示している. また,MT-2井に関しての,均質化温度 と水の沸騰曲線の比較から,地熱活動開始以降,本地域が少なくとも100m程度の浸食を被った可能性が示唆される.
著者
金井 豊
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5-6, pp.143-157, 2015-10-16 (Released:2016-01-16)
参考文献数
19

物質循環に関する地球化学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,地質調査総合センターにおいてエアロゾル中の放射性核種の観測を2011年から2015年1月まで継続して行ってきた.前報告に引き続き2014年1月から2015年1月までの観測データを報告すると同時に,これまでの長期にわたる観測結果を総括した.更に,2013 年の途中から1年半以上にわたるエアロゾルの重量測定 結果も報告した.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2011年10月には4月時点より3桁ほど低下して10-4 Bq/m3 前後を推移し,2012年,2013年,2014年の春季に段階的に低下傾向を示し,2015年1月のCs-137濃度は10-5 Bq/m3 前後となった.このような春季における濃度低下は,気象条件の変化が変動因子の一つと考えられた. Pb-210 とBe-7は,お互いに相関を有しながら夏季と冬季に低濃度となる傾向が見られた.また,微量のCe-141, Ce-144, Sb-125等も2011年における一部試料で検出された.
著者
内野 隆之
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.109-118, 2021-05-19 (Released:2021-05-26)
参考文献数
25
被引用文献数
2 2

付加体中の玄武岩は沈み込む海洋地殻断片の一部であると一般に考えられている.北上山地の北部北上帯ジュラ紀付加体中の玄武岩も,主に海洋島起源と考えられているが,その研究は少ない.本研究では北部北上帯南西縁部に分布する前期~中期ジュラ紀付加体中の玄武岩6 試料の全岩化学組成を分析し,その起源を推定した.地球化学判別図や微量元素のスパイダー図から,4試料が中央海嶺玄武岩(MORB)の特徴を,2試料が海洋島アルカリ玄武岩の特徴を示す.つまり,北部北上帯南西縁部には海洋島型のみならず,MORB型の玄武岩が一定量存在することが明らかになった.
著者
中江 訓
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.173-190, 2021-06-29 (Released:2021-07-01)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

岩手県久慈地域に位置する北部北上帯ジュラ系付加複合体に挟有される玄武岩・ドレライト(苦鉄質岩)について,その起源・由来を解明する目的で,螢光X線分析(XRF)による主要成分元素組成と誘導結合プラズマ質量分析(ICP–MS)による微量元素組成を求めた.北部北上帯は,それぞれを構成する海洋性岩石類に明瞭な時代差がある安家–田野畑亜帯と葛巻–釜石亜帯に二分され,さらに両亜帯とも付加時期が系統的に異なる複数の下位階層の層序単元から構成されている.久慈地域において対象とした苦鉄質岩は沢山川層と合戦場層に分布するが,前者は安家–田野畑亜帯に,後者は葛巻–釜石亜帯に属す.分析の結果,沢山川層苦鉄質岩は比較的未分化な玄武岩質マグマを起源としたことが示唆され,大半の試料は各種の判別図などから海洋プレート内で活動した海洋島アルカリ玄武岩に類似する.合戦場層玄武岩は,沢山川層苦鉄質岩より分化が進行した玄武岩質マグマを起源とし,一部の判別図で中央海嶺玄武岩ないし島弧玄武岩領域に表示されるものの,海洋プレート内の海洋島玄武岩に由来することが明らかとなった.また両層の苦鉄質岩は,不適合元素と軽希土類元素が濃集し,N-type MORBとコンドライトの規格化図における海洋島玄武岩の分布様式に酷似する特徴を示す.
著者
下司 信夫 中野 俊
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3-4, pp.105-116, 2007-08-31 (Released:2014-05-22)
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

口之島火山は琉球弧火山フロント上に成長した安山岩質の複成火山であり,0.3 Ma以降少なくとも 10 個の角閃石安山岩質溶岩ドームが輝石安山岩質の火山体の上に成長している.軽石流堆積物からなる大勝火砕流堆積物は約 4 万年前ごろにウエウラ火山から噴出した.大勝カルデラの形成後,横岳,南横岳,北横岳の少なくとも 3 つの溶岩ドームが形成された.複数の火砕流がこれらの溶岩ドームの形成に伴って発生し,そのうち南横岳から噴出した火砕流堆積物からは 1.9 万年前の年代が得られている.7,900 年前ごろの横岳・南横岳・北横岳の馬蹄形崩壊によって岩屋口岩屑なだれ堆積物が発生した.この崩壊地形の内部に前岳火山が成長した.落しの平,燃岳火山及びそのほかいくつかの小規模な溶岩ドームが前岳溶岩ドームの形成後に成長した.口之島火山の過去 4 万年間の噴出率はおよそ 8.5 × 104m3/yr と見積もられ,こられは琉球弧や東北日本弧火山フロントの代表的な火山に比べてかなり小さい.燃岳火山は口之島の中で最も新しい溶岩ドームである.燃岳 溶岩ドームの山頂部には幾つかの爆発火口が開口しており,これらは前岳溶岩ドーム上で水蒸気爆発が繰り返し発生したことを示している.最新の水蒸気噴火は 18 世紀以降の可能性がある.
著者
梅田 康弘 板場 智史
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11-12, pp.455-459, 2011-12-31 (Released:2013-07-02)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

1946年南海地震(M8.0)の前に井戸水が2-3 m低下したという証言が,四国から紀伊半島の太平洋沿岸部で得られている.梅田ほか(2010)は,海水と淡水が重力バランスをとっている小さな三角洲などではわずかな土地の隆起でも大幅に地下水位が低下することを示した.このモデルと高知県黒潮町佐賀地区での地下水構造の調査結果を基に,土地の隆起量と地下水位の低下量との関係式を求めた.
著者
梅田 康弘 板場 智史
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11-12, pp.129-144, 2014-12-26 (Released:2015-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

1946年南海地震直前の地殻の上下変動を知るため,それに関連すると思われる井戸の水位と海水位の変化に関する目撃証言を調べた.証言の収集は,四国太平洋沿岸部において,文献調査と聞き取り調査によって行った.ごく一部の井戸ではあるが,本震の1週間ほど前から井戸の水位が低下,ないしは涸れていた.海水位の変化も数日前から潮が狂うなど海水位の異常が目撃されていた.本震の数時間前には,帰港した漁船が接岸できないほど潮位が低下したという証言もある.逆に,そのような海水位低下はなかったという,相反する証言もある.異常な海水位の変化や,相反する証言を説明するため,本震前に津波が発生していた可能性を指摘した.
著者
大谷 竜 塚本 斉 佐藤 努 木口 努 重松 紀生 板場 智史 北川 有一 松本 則夫 高橋 誠 小泉 尚嗣
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1-2, pp.57-74, 2010-01-26 (Released:2013-07-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

産業技術総合研究所(以下,産総研と呼ぶ)は, 2006年度より四国・紀伊半島~愛知県にかけて地下水等観測点やGPS観測局の新設を行っており,これを機に従来の産総研のGPS観測局と統合したGPS連続観測システム(以下,GPSシステムと呼ぶ)の全面的な更新を行った.本報告ではその概要,及び本GPSシステムを用いて得られる結果について紹介する.まず,全局についてTrimble製の同一型の受信機とアンテナに統一した.また,解析ソフトウエアはBerneseソフトウエアに切り替えた.これらの結果,従来の産総研のGPSシステムの結果に比べ,新解析で推定されたGPS局の変位の再現性の向上が見られた.また,産総研のGPS観測局だけではなく,周囲にある,国土地理院のGPS連続観測網(GEONET)の観測局も一緒に解析を行い,日々の座標値を推定するようにした.この解析方法の導入により,産総研GPS観測局周辺の歪をGPSから求めることができるようになった.更に, GEONETの定常解析であるF2 解に準拠した解析を産総研の新GPSシステムでも独立に行うことにした.産総研による解析結果と,F2解で求められた同一観測局 の変位を比較した結果,両者の間に大きな差はないことが確かめられた.
著者
須藤 茂
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11-12, pp.389-404, 2011-12-31 (Released:2013-07-02)
参考文献数
40

トルコ中部アナトリアには,大型成層火山,単成火山群,及び大規模火砕流堆積物からなる台地などの火山地形がみられる.それらは過去1 千万年程度の間に噴出し,東西約200 km,南北約150 km の範囲内に複雑に分布している.比較的新しい大型成層火山として,ハッサン火山とエルジエス火山があり,単成火山群は,溶岩円頂丘,溶岩流,火砕丘,マールからなる.トルコの地質調査所に相当する機関,鉱物資源調査局(MTA)との地熱資源に関わる共同的な研究の一環として,それらの火山岩のうち比較的新しい噴出物について古地磁気測定を行った.その結果,地形的にも新しいと判断されるハッサン火山の岩石はブリュンヌ正磁極期に,より古い年代が得られているギョルダーの試料は松山逆磁極期に対応するなど,既存の放射年代測定値及び古地磁気年代尺度と整合的な結果が得られた.また,ハッサン火山の山腹に分布する未固結な火砕堆積物については,各岩塊の磁化方位がそろっていることから,現地調査において,堆積時にも高温であったと推定されることなどを確認した.
著者
須藤 茂 猪股 隆行 佐々木 寿 向山 栄
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9-10, pp.261-321, 2007-12-14 (Released:2014-05-15)
参考文献数
129
被引用文献数
19 19

降下火山灰は,少量であっても,産業活動の中心である大都市も含めた広範囲にわたり大きな災害をもたらす可能性があるが,これまで,その総括的評価はなされていなかった.本研究では,わが国の降下火山灰の分布に関する既存の公表資料を整理し,補間等を行うことによって,火山灰の等層厚線図を完成させ,火山灰名,噴出火山名,噴出時代,文献等を整理し,ディジタイズ化及びデータベース作成を行った.収録した火山灰のユニットは,551 であり,作成されたデータベースから,国土数値情報の第 3 次メッシュ,すなわち約 1 km メッシュごとの各火山灰の名前,噴出年代,層厚などの情報が引き出せるようにした.本研究で作成した降下火山灰のデータベースは,国土数値情報に基ことが容易である.今後のスムーズな情報の提供を,電子情報等を通じて行う予定である.
著者
森尻 理恵 中川 充
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7-8, pp.381-394, 2009-08-05 (Released:2013-08-05)
参考文献数
34

This paper is intended to show the relationship between susceptibilities and degrees of serpentinization of serpentinized peridotite. The susceptibility, magnetization and bulk density of 79 serpentinized peridotites were measured. Moreover, rock magnetic analyses, i.e., acquisition of IRM, thermal demagnetization of composite IRM, thermomagnetic analysis, and low-temperature magnetometry, were applied to selected samples obtained from the Iwanai-dake ultramafi c rock body in Hokkaido, Japan. Samples with similar peridotite contents were chosen to detect the serpentinization effects clearly. Results show that the magnetic carrier is mainly magnetite. Linear trends fell between 0.1 % and 0.4 % of the predicted volume of magnetite when observed susceptibilities were plotted against densities. The study results show that, if the magnetic carrier is magnetite, the relationship between susceptibility and density reveals the variation of serpentinization reactions. A significant spread of the data is apparent, but it remaines along each linear line of reactions. The volume of magnetite produced by serpentinization of other ultramafi c rock bodies is presumed to be similar in samples for which the magnetic carrier is magnetite. The different susceptibility is inferred to result from the volume of water reaction when these rock bodies come from the same peridotite series. The results suggest that comparable amounts of reacting water affect the ultramafic bodies. The water reaction was found to be an important approach to solving many tectonic problems. Therefore, we recommend that serpentinite, which has the same basic reaction should be used to elucidate tectonic problems.
著者
納谷 友規
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.137-142, 2022-10-26 (Released:2022-10-29)
参考文献数
17

岩殿丘陵西縁部の帰属不明の砂質シルト岩試料の堆積年代を明らかにするために,珪藻化石分析を行った.分析した試料からは,珪藻化石帯NPD4A帯(Denticulopsis lauta帯)を特徴づける珪藻化石が産出するため,年代は中期中新世前期と判断される.また,Cavitatus lanceolatusを産することから,本試料の年代は生層準D41.5(Cv. lanceolatusの初産出:15.6 Ma)– D43.2(Cv. lanceolatusの終産出:15.2 Ma)の区間に限定される.珪藻化石層序に基づくと,本試料は比企層群荒川層の上部か市ノ川層に対比される.
著者
金子 稔 石川 博行 原島 舞 野村 正弘 中澤 努
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.49-65, 2022-08-29 (Released:2022-08-31)
参考文献数
32

東京都世田谷区の武蔵野台地で掘削された上用賀GSSE-1及び駒沢GS-SE-3コアの更新統下総層群東京層の有孔虫・貝形虫化石分析を行った.38試料を処理し18試料から有孔虫化石が産出した.底生有孔虫は18 属40 種が認められた.浮遊性有孔虫は認められなかった.14試料から貝形虫化石が産出した.貝形虫化石は21属41種が認められた.産出した有孔虫と貝形虫化石群集に基づき,東京層下部をⅠ– Ⅵ帯に,東京層上部をⅦ・Ⅷ帯に区分した.その結果,東京層下部のI帯は湾奥部,Ⅱ– Ⅳ帯は湾央部,Ⅴ帯で湾域が縮小し湾央部から湾奥部,Ⅵ帯で湾口部の環境が推定された.東京層上部のⅦ・Ⅷ帯は,海進が進み開放的な湾の湾口部で海岸付近の環境が推定された.
著者
内野 隆之 工藤 崇 古澤 明 岩野 英樹 檀原 徹 小松原 琢
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.67-85, 2022-08-29 (Released:2022-08-31)
参考文献数
35

盛岡市薮川地域,外山川沿いの谷底低地を埋める第四紀堆積物から80 cm厚の降下火砕堆積物を発見し,薮川テフラと命名した.本テフラは発泡した軽石を多く含み,中性~珪長質火山岩,トーナル岩,チャートなどの石質岩片を少量伴う.また,テフラ中には高温型石英・長石・普通角閃石・直方輝石・チタン鉄鉱・黒雲母が含まれる.テフラに含まれる火山ガラスの組成は比較的高いSiO2・K2Oと低いCaO・MgO・TiO2で特徴づけられ,またその屈折率は1.495 – 1.498である.軽石中のジルコンからは0.24 ± 0.04 Maのフィッション・トラック年代が得られ,本テフラはチバニアン期後半に堆積したと判断される.そして,記載岩石学的特徴,火山ガラスの屈折率,ジルコン年代などから,岩手山東麓に分布する大台白色火山灰に対比できる可能性がある.
著者
名和一成 村田泰章 駒澤 正夫 森尻 理恵 広島 俊男 牧野 雅彦 村上 文敏 岸本 清行 大熊 茂雄 志知 龍一
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5-6, pp.183-208, 2005-08-15 (Released:2014-10-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1 2

産総研地質調査総合センターでは,20 万分の1重力図の系統的整備を行っている.新たに測定したものを加えた陸域の重力データと,地質調査所GH83-1航海で測定した海域の重力データを統一的に処理・編集して,「宮崎地域重力図(ブーゲー異常)」を出版した.この重力図には,宮崎沖堆積盆地や九州外帯の屈曲構造に対応する長波長の異常や,人吉・小林・都城盆地に対応する短波長の異常が見られる.また,短波長を抽出したフィルター図では,宮崎平野下の負異常や,過去の研究でも指摘された宮崎平野北部と西部の高重力異常が確認できる.一方,九州山地にも高重力異常が分布するが,重力補正に用いた仮定密度と実際の山体の密度との差から生じる見かけのものである.このため,基盤構造推定に利用する際には,地形の影響を考慮する必要がある.
著者
高下 裕章 野田 篤
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.49-61, 2020-02-28 (Released:2020-03-07)
参考文献数
22

クリティカルテイパーモデルはプレート収束域に向かって先細る楔形を示すfold-and-thrust beltや付加体の断面形状と断層強度の関係を理解するためのモデルとして土質力学を基礎に考案された.この理論モデルを用いることで,地形パラメータから(1)沈み込み帯同士の比較,(2)単一沈み込み帯内での空間分布の比較,(3)単一沈み込み帯内での時間変化の比較が可能となる.ただし,本理論は日本における地質分野では利用者が少ない.これは日本語による解説がほとんどないこと,土質力学を基礎とすることによると考えられる.本解説では,クリティカルテイパーモデルについての読者の理解の助けとなることを目的として,まず土質力学におけるモール・クーロンの破壊基準から一般的なクリティカルテイパーモデルを導入し,さらに最新の論文でどのように活用されているか,その計算方法までを紹介する.
著者
石原 舜三 佐藤 興平 左 容周 金 鍾善
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.143-158, 2006
被引用文献数
1 3

花崗岩風化殻への REE の濃集を見るために,韓国の中部の花崗岩地域 4 箇所(平均降雨量 1,300 mm/ 年)で予察的な調査を実施した.嶺南帯と沃川帯境界部に沿って伸長する三畳紀の片麻状黒雲母花崗岩(帶江岩体)は REE に富み,平均 414 ppm REE+Y,LREE/HREE = 4.8 である.沃川帯の三畳紀咸昌(ハムチャン)花崗岩類は,アルカリとREEに富むグループ(平均 359 ppm REE+Y,L/HREE = 19.0)と,低いグループ(平均 127 ppm REE+Y,L/HREE = 23)に分けられる.他方,嶺南帯南東部の初期ジュラ紀の陜川(ハプチョン)閃長岩は REE+Y(171 ~ 217 ppm)に乏しい.慶尚盆地の杞溪(キゲ)花崗岩は南山アルカリ花崗岩の断層による片割れと言われているが,その含有量は 200 ~ 300 ppm REE+Y であるに過ぎない. 完全風化帯であるB層を中心とする花崗岩風化物は,帶江岩体では花崗岩平均値が 414 ppm REE+Y であるのに対し,風化土壌は 240 ppm REE+Y で希土類元素が減少しており,風化課程における REE の溶脱が考えられる.杞溪岩体でも 342 ppm から 243 ppm REE+Y へ希土類元素は減少している.その他の岩体での増減は不鮮明である.韓国では花崗岩の風化課程で希土類元素の明瞭な濃集は見られない. 忠州鉄鉱床の採掘跡におけるランダム サンプリングによると,この鉱床は平均 0.2% REE+Y 程度の鉱石を保有していたと推定される.
著者
ハン チャンタオ チャン アルヨン ホウ シンウェイ Lijun Shan Zhongdao Zhu Ning Wang Eryong Zhang Xinwei Hou Cunrong Gao Yingchun Shi Hongmei Zhao Jianqing Ding Xingchun Liu Baogui Li
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.59-86, 2009
被引用文献数
1

黄河流域の主要な平野や盆地は中国の社会・経済開発にとって極めて重要な地域であるので,その地域の地下水の収支と循環を明らかにすることもまた重要である.本研究では,黄河源流域,銀川平野,呼和浩特・包頭平野,太原平野,関中平野および黄河下流域を地下水の収支と循環に関する研究対象地域として選定し,地下水の水素・酸素の安定同位体比,水質などの特徴を明らかにする.また,地下水の流動系や水収支について考察する.
著者
Nasution Asnawir 村岡 洋文 Rani Mawardi TAKASHIMA Isao TAKAHASHI Masaaki AKASAKO Hideo MATSUDA Koji BADRUDIN Muhammad
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.87-97, 2002
被引用文献数
1 1

フローレス火山弧の溶岩類は玄武岩からデイサイトの組成範聞をもつが,とくに安山岩に卓越し,ソレイアイト岩系ではビジョン輝石,カンラン石を,カルクアルカリ岩系では角閃石や黒雲母を斑晶とし て合む.化学的には,広い範囲のSiO<sub>2 </sub>(51ー67 wt.%)およびAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub> (14-20 wt.%)合量と低いTiO<sub>2</sub> (<1 wt.%)含量を示し,比較的高いRb,SrおよびBa含量を示す. これらKグループ元素はべニオフ帯の深度の増大につれて増加する. ソレイアイトからカルクアルカリ溶岩にかけてのストロンチ ウム同位体比は0.7042-0.7045であり,これも島弧を横断して沈み込むスラブの深度に比例していると推定される. フローレス島の地熱有望地域は若い安山岩や玄武岩の火山地域に位置し,標高500-1000 m にあって,火山活動後の断裂と断層や,カルデラ構造に伴う. 湧出熱水は広い化学的タイプを示 し,硫酸塩型,塩素型,重炭酸塩型に分けられる.硫酸塩型は主に噴気に伴って,高い火山地域 (標高 700-1100 m)に位置し,表層におけるH<sub>2</sub>Sの酸化を示す(Ulumbu, Mataloko, NageおよびSokoria). 重炭酸塩型熱水はLangagedaやSokoria2のように火山中腹 (標高400-700 m)に位置する. 中性塩素型熱水は低い火山地域 (標高5-600 m)に位置し,温度210-280 ℃の地熱貯留層からのアウトフローを示す.地熱井はUlumbu とMataloko地熱有望地域でそれぞれ700-1800 mと200m の深度まで掘削されているが,200から240°C の地下温度を示し,その高い硫酸塩濃度が蒸気卓越型に伴うことを示している. 同様の型はSokoria地域にも期待される. 他方,高塩素型の地熱有望地域はおそらく熱水卓越型か混在型を示すのであろう (Wai Sano, Wai Pesi, Jopu, LesugoloおよびOka).