著者
服部 典之 玉井 アキラ
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

18世紀英国において大きな社会問題であった「孤児問題」を、ロンドンのFoundling Hospital(孤児養育院)の流れを汲み現在も重要な慈善活動を行うCoram Foundationを調査し、18世紀イギリス文化と孤児問題の繋がりを明らかにした。また同養育院が設立された1745年前後にはフィールディングの『トム・ジョーンズ』など数多くの孤児小説が出版され、これらの小説の孤児主人公の特徴と制度としての養育院を設立させるイギリス文化が密接な関係を持つことを実証した
著者
森 裕
出版者
大阪大学
巻号頁・発行日
2006

14401甲第10815号
著者
西垣内 泰介
出版者
大阪大学
雑誌
大阪大学言語文化学 (ISSN:09181504)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.41-52, 1992
著者
北村 卓
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

明治期、大正期から昭和にいたるフランス近代詩受容の一つのパースペクティブが、上田敏、永井荷風、谷崎潤一郎、岩野泡鳴、福永武彦らを中心とする具体的な研究を通して明らかになった。またフランス文学・文化の受容に関する研究を、日仏文化交渉の観点から、詩・小説・演劇・映画などを視野に収めた上で行うことによって、立体的な傭職図を獲得できた。こうした受容研究と並行して、日本においてフランス近代詩がどのような過程を経て翻訳・発表されたのか、すなわち原典の確定、翻訳者、発表の媒体、社会的状況を明らかにしようと試みた(これは成果報告書巻末に付した年表形式のデータベースに反映されている)。それらがどのような読者層に受容され、さらには日本の作家や芸術家さらには日本の社会にどのような影響を与えたのかについては、受容研究において具体的に考察を加えている。以上の成果をもとに、100ページにわたる研究成果報告書を平成19年3月に刊行した。その報告書は、5章からなるフランス近代詩の受容研究(序章:日本におけるフランス近代詩受容のパースペクティブ、第1章:永井荷風『珊瑚集』における戦略、第2章:谷崎潤一郎とボードレール、第3章:岩野泡鳴とフランス象徴詩、第4章:福永武彦における「幼年期」と「島」の主題)および年表としてまとめた翻訳文献(ボードレールを中心とする)のデータベースとから構成されている。
著者
大石 和徳 山領 豪 森田 公一 井上 真吾 熊取 厚志
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

フィリピン、マニラ市において78例のデングウイルス二次感染症患者(DF40症例、DHF38症例)の急性期と回復期の末梢血血小板数とPAIgGおよびPAIgMを測定し、血小板数のみならず重症度との相関を検討した。急性期に血小板数は減少するのに対し、PAIgG,PAIgMは増加し、それぞれは血小板数と有意な逆相関を示した。また、PAIgMの増加はDHF進展と有意に相関することが判明した。一方、急性期患者の末梢血血小板の溶出液中には健常者と比較して高い抗デングウイルス活性を検出した。デングウイルス二次感染症において、抗デングウイルス結合活性を有する血小板に付随した免疫グロブリンはその血小板減少機序と重症度に重要な役割を果たすことが推察された。また、血漿中thrombopoetin(TPO)は急性期に増加することから、デングウイルス二次感染症において、デングウイルス感染に伴う巨核球減少が関与することが示唆された。次に、顕著な血小板減少を伴うデングウイルス感染症患者34例(DF18例、DHF16例)を対象として、高用量静注用ヒト免疫グロブリン(IVIG)を0.49/kg/日を3日間投与し、血小板減少の進行阻止あるいは回復促進効果が認められるか否かを前向き比較試験として実施した。入院直後にウイルス学的診断の確定した34症例を封筒法により無作為にA群(IVIG投与+輸液療法)17例、B群(輸液療法のみ)17例の2群に分類した。2群の性別、年齢(平均15歳)、重症度、末梢血血小板数に有意差は認められなかった。A群において、IVIG投与に伴う明らかな副反応は認められなかった。これらの結果から、急性デングウイルス感染症は、ITPとは異なり網内系細胞のFcレセプターを介した血小板クリアランスは主要な血小板減少機序でないことが示唆された。さらに、分化したTHP-1細胞を用いてin vitroの血小板貪食能測定法をフローサイトメトリーを用いて確立した。
著者
守屋 美都雄
出版者
大阪大学
雑誌
大阪大學文學部紀要 (ISSN:04721373)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.45-113, 1954-03-25

1. Introduction. 2. Critique of the text in the Shuo-fu (説郛), edited by T'ao T'ing (陶梃) oi the Ming Dynasty (明代). 3. Critique of the text in tire Pao-yen-t'ang Pi-chi (寶顔堂秘笈)> edited by Ch'en Chi-ju (陳繼需) of the Ming Dynasty (明代). 4. Re-presentation of the original form of the Ching-ch'u Sui-shih-chi (〓楚歳時記). 5. Conclusion. The ChingcWu Sui-shih-chi (〓楚歳時記), originally complied by Tsung Lin (宗懍) in the Liang Dynasty (梁代) was a description of annual functions held around the middle basin of the Yang-tse-kiang (揚子江) at that time, and therefore ontains many traditions and records of the manners and customs of old China. Afterwards, during the Sui Dynasty (隋代), Tu Kung-shan (杜公贍) recomplied the said work, adding more descriptions, as well as his own notes, until its enriched contents looked like a sort of encyclopedia dealing with ceremonies throughout the year. However, it is a great regret for all persons concerned that this valuable piece of work by Tsung Lin was seldom looked at in the 10th century and is thought to have wholly disappeared from the world by the beginning of the 13th century. Meanwhile, Tu Kung-shan's revised annotation is widely believed to have been lost in the 13th century also, but I believe there still remain some points to be discussed in this connection. As a matter of fact, a rather good text of the Ching-ctiu Sui-shih-chi did exist in A.D. 1370, with the styles and forms proper to the original work retained to some extent. Regarding the texts of this work in our possession today, they can be divided,into two strains, and we can trace their respective sources: one is contained in a series named Pao-yen-fang Pi-chi (寶顔堂秘笈), complied by Ch'en Chi-ju (陳繼儒) of the Ming Dynasty (明代) and the other in a series named Shuo-fu (説郛)> complied by T'ao T'ing (陶〓) and completed under the same dynasty. These texts, according to prevailing opinion, are nothing but a combination of fragments of the Ching-ch'u Sui-shih-chi during the quoted in similar books of encyclopedic style written in the Tang and Sung Dynasties (唐宋時代). Yet, I have a somewhat different opinion, and should say that texts of the Pao yen-fang Pi-chi derived from th3 abovementioned text existed in A.D. 1370. Also, based upon the same text the Shuo ftc was composed, I believe. Here, it must be added that it is thought that the' Shuo-fu was supplemented by those fragments quoted in the T'ang and Sung encyclopedias. In this treatise, I have tried to re-present the original form of this text as exactly as possible, and two ways were taken to reach this end. Throughout the first part, corrections and supplements are made to the texts of the Pao-yen-V ang Pi-chi, referring to the original of the Pao yen-fang Pi-chi, and to changes, interpolations, omissions, etc., which were made while these texts were being copied one after another for generations. Next, in the second part, 54 articles of the above fragments have been shown. In fact, necessary materials, both Chinese and Japanese, were very useful, in discovering and collecting them. In so doing, I was happy to be able to detect meny omissions in the text of the Pao yen-fang Pi-chi. On the other hand, some descriptions were found mistakenly introduced in the materials as those of the Ching-ctiu-sui Shih-chi and therefore I closely examined each article as to wh3ther it was genuine or not. In the meantime, despite all my efforts, it was quite difficult to distinguish Tsung Lin's passages from Tu Kung-shan's notes, for which I am very sorry. However, if this little essay of mine can be of any help and service to the future progress of the study of Chinese folk-lore, I shall certainly be very happy.
著者
久我 清 浦井 憲 入谷 純 永谷 裕昭
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

現在の一般均衡理論(GE),就中,伝統的な企業理論がその記述に重要な理論構成要素であるはずの予算制約式・販売・産出投入・在庫活動等の記述を行っていない。そのような非現実的なあり方を改めて,企業は財を所有し,家計のように予算制約式をもち,産出投入・販売購入・在庫設備投資計画を策定し実行する森嶋(1950,1992,1996)型の構造をもつものと規定した。現在のGEにおける均衡解の存在とそのパレト効率性命題が企業を単なる利潤最大化原理に依る組織と見る法人擬制説に依存している事とは対照的に,我々は市場の構造を多期間型一時的均衡として追求し,企業がいずれの期間においても収支条件の制約下にあり,財所有を行う組織として利潤の現在価値の流れの総和を最大化するものと規定するとき,「厚生経済学の基本定理」が受ける制約を価格メカニズムの本質論として展開した。家族とその家計行動についても,複数のリーダーがそれぞれ異なった価値観をもって家族の意思形成を統合するメカニズムを一般均衡理論的に活写し,家族意志への連帯と個人の自由意志の共存の可能性を検証し,併せて,予算制約式のみならず,家計も産出投入・販売購入・在庫設備投資計画を策定し実行する経済活動主体たちの集まりとして規定した。このような流れと従来のアプローチを統合的な視野から検討することもまた重要である。完全予見的な動学理論において,明らかに企業というものの像は単純化されすぎており,また一時的一般均衡理論においては市場の非完備性という問題が(そもそも完備性などありえないという立場から議論が始まっているがゆえに)議論の中心にはならず,それゆえ市場構造が明確でないという欠点が存在する。一時的一般均衡モデルと完全予見型の非完備市場一般均衡モデルとを統合的に扱うことによって,動学的経済の運行を描く最も普遍的な枠組みを提供し,同時にその範疇に入らないものを浮き彫りにしたという作業は,本研究課題における重要な成果の一つである。租税論は従来法人の資産所有を認めないモデルすなわち法人擬制説にしたがって商品課税と効率性について検討してきたが,法人実在説を念頭に置けば,法人の資産所有が明瞭に考察されねばならない。この点で,企業の予算制約の有無が,法人実在説と法人擬制説のどちらの立場をとるかへの分岐点となるが,我々の研究プロジェクトでは,法人実在説にもとずいて法人所得への課税がどの経済主体への相対的に重い課税になるかという租税帰着を研究した。
著者
高橋 英之
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

対人応答性(他者に対する社会的態度の構築能力)が弱い自閉症などの発達障害者の療育手法として,単純で振る舞いを予測しやすいロボットとの交流を通じて対人応答性を引き出す試みがある.しかし対人応答性を定量的に評価する指標がこれまで殆ど無かったため,ロボットによる療育効果の客観的評価が難しかった.申請者は対人ゲームをプレイ中の独自の行動指標(エントロピー)と脳計測(fMRI)から,対人応答性を定量的に評価する客観的指標を開発した.
著者
川端 亮 渡邉 光一 猪瀬 優理 弓山 達也 河野 昌弘
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究においては、私たちのグループは、UMLを用いて、宗教の体験談を図示する方法を開発した。Enterprise Architect13というソフトウェアを用いて、既に教団誌に発表された体験談や、これまでメンバーが聞き取ってきた体験談を、クラス図とステートマシン図によって示した。日本社会学会大会で、「ライフヒストリーの図式化の試み」と題して、その成果を報告した。また、学術論文としてもその成果を発表した。さらにこのUMLによる体験談の図示をもとに、宗教体験談を聞き取る項目を検討し、インタビューガイドを作成した。そのガイドに従い、インタビュー調査を実施した。
著者
多賀谷 光男
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

分泌系蛋白質の細胞内輸送は角オルガネラをつなぐ小胞によって媒介されている。N-エチルマレイミド感受性因子(NSF)は、最初ゴルジ体内小胞輸送に関与する因子として発見、精製されたが、後に小胞体からゴルジ体への輸送やエンドソームの融合にも関与することが明らかにされ、小胞輸送の中心的役割を担う蛋白質であると考えられている。NSFはSNAPと呼ばれる膜表在性蛋白質と膜内在性のSNAPレセプターとの複合体を形成して膜に結合している。私たちは今年度の研究によって、NSFがシナプス小胞にも存在することを生化学的、形態学的に明らかにし、この蛋白質が神経伝達物質のエキソサトーシスにも関与している可能性を示唆した。また、ヒト脳NSFのクローニングに成功し、アミノ酸の推定一次構造においてチャイニーズハムスター卵巣細胞のNSFと97%もの相同性があることがわかった。更に、各臓器におけるmRNAの発現量を調べたところ、NSFは脳において最も多く発現していることが明らかとなった。これらの知見および肝臓からゴルジ体が比較的きれいに精製できることを考慮して、NSF複合体をラット脳および肝臓より精製することを試みた。まず最初に、NSFのシナプス小胞への結合様式について調べた。ゴルジ体のNSFはATP・Mg^<2+>の添加によって膜より遊離してくるが、シナプス小胞に結合したNSFはこの条件では膜から遊離せず、可溶化にはコール酸やデオキシコール酸のようなイオン性の界面活性剤が必要であった。現在、可溶化したNSF複合体の精製を進めている。ラット肝臓のNSFは非イオン界面活性剤であるTriton X-100で可溶化された。このNSFは20Sの沈降計数を持つことから複合体として存在することは確実であり、現在この複合体の精製も進めている。
著者
旗手 瞳
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当初、計画していた通り、英国図書館蔵敦煌チベット語文献IOL Tib J 1253の訳注を行った。この文書は敦煌が吐蕃支配下にあった時期に作成されたもので、吐谷渾人で組織された二つの千戸(新旧のカルツァチン千戸)の千戸長をめぐり、ある一族内で発生した争いを記録している。この文書はこれまで五人の研究者(F. W. Thomas, 山口瑞鳳, S. Coblin, 周偉洲, 陳践践)によって取り上げられてきたが、いずれも部分的な分析にとどまるか、あるいは吐蕃について研究が進展したことで、今日では訂正されるべき箇所が少なくない。申請者は、五人の研究を踏まえた上で、あらたな日本語訳注を作成した。と同時に、文中で問題となっている千戸がどういう過程を経て設置されたものか、また千戸長の任命が行われたかを、詳細に検討した。その結果、千戸設置は必ず宮廷ないし中央の大臣の主催する議会で決定されていたことを示した。また千戸長任命の過程で行われる推薦に、「吐谷渾王」とチベット中央から派遣されたと考えられる「吐谷渾の担当大臣」が関与していたこと、任命者は「デの大臣」であるが、その任命は中央の認可を得た上で行っていたことを示した。加えて、本文書から明らかにされた千戸長任命の過程を、吐蕃中央で行われた千戸長任命と比較することを試みた。その際、使用したのは現在もラサに残るショル碑文である。そして、両者から吐蕃の千戸長の特徴として、①千戸長は、ある人物の貢献に対する恩賞として与えられる②千戸長は世襲が保証され、実際に親子間で世襲されていた③有為な人材を得るために、千戸長の候補者は時として貢献を捧げた人物の子孫だけでなく、祖父の世代にまで遡って、その子孫も含むよう設定されたという三点を示した。
著者
古谷 大輔 中本 香
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近年の近世ヨーロッパ史研究で議論されている複合国家論で典型例とされているスウェーデン、スペインを例にとり、国際戦争後の「帝国」再編過程を分析することから、空間的範囲設定を前提とした特異なスウェーデン民族性を統合軸とするようになったスウェーデン、イベリアとアメリカを自由主義的経済政策により相互補完的に統合したスペインといった複合的国家編成をまとめあげる統合軸の論理の差違を明らかにした。
著者
金水 敏 定延 利之 渋谷 勝己 山口 治彦 鄭 惠先 松井 智子 山口 治彦 定延 利之 鄭 惠先 勅使河原 三保子 渋谷 勝己 松井 智子 吉村 和真 岡崎 智子 菅 さやか
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

役割語とは、一定のキャラクタと対応関係を持つ話し方(語彙、語法、音声的特徴等)のヴァリエーションのことである。本研究では、1)役割語の理論的基盤、2)幼児の役割語獲得のプロセス、3)個別の役割語についての記述的研究と歴史的起源の探求、4)日本語と外国語との対照研究、5)教育への応用、という5つの問題について、検討してきた。その結果、社会的属性が役割語の中核となること、役割語の知識が5歳までに獲得されること等を明らかにした。