著者
加藤 洋介
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

定家本源氏物語を復原する上でもっとも尊重されている大島本(古代学協会蔵)が、室町期書写の伝本と共通する本文や漢字表記を持つことから、定家自筆本系統の本文から直接書写されたのではなく、室町期に流布していた本文に定家自筆本系統の本文を校合することで成立したことを検証した。これは伊勢物語伝本においても、同一系統にある伝本間では漢字表記など共通する部分を多く持つことから考案したものであり、伊勢物語伝本の側から定家本源氏物語の本文成立史を窺うという横断的検討から得た成果である。
著者
渡邉 浩崇 養老 真一 外山 勝彦 小塚 荘一郎 佐藤 靖
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、「冷戦終結が日本宇宙政策にどのような影響を与えたか」を明らかにするために、政治外交史を主としながらも、国際法、科学技術史、法情報学などの学際融合的アプローチによって、冷戦期、冷戦終結前後、冷戦後の日本宇宙政策を再検証するものである。日米両国の一次資料(政府内部文書等)を徹底して収集・分析・整理することで、日本宇宙政策の歴史と資料の一つの総括を行う。その成果を発表・共有し発展させる場として、国際研究会を開催するとともに、収集資料の内容・属性や資料間の関係を分析・整理した「宇宙政策法文書データベース(リンクド・オープン・データ、LOD)」の構築と公開を試みる。
著者
廣部 祥子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では、従来の注射投与型ワクチンと比較して高い有効性を発揮しうる経皮ワクチンの免疫誘導機構の解明を目指した。独自に開発した2種類の経皮ワクチンデバイス(ハイドロゲルパッチと皮膚内溶解型マイクロニードル)を用いた経皮ワクチンと注射投与(皮下および皮内)における免疫応答を比較検討した。その結果、皮膚を標的とした経皮ワクチンでは、皮膚組織内での遺伝子発現変化、所属リンパ節内での細胞ポピュレーション変化やT・B細胞の活性化など、注射投与ワクチンとは異なる反応が生じていることが判明し、これらの反応の違いが経皮ワクチンの優れた抗体産生誘導能に寄与していることが示唆された。
著者
日野林 俊彦 南 徹弘
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

思春期から青年期にかけての発達においては、性に関わる発達が重要な役割を果たすと考えられる。日本における女子の性的発達は、発達加速現象の進行により平均初潮年齢が世界的に見ても著しい低年齢の12歳3.7ヶ月まで低下したように、時代的に大きく変化してきている。本研究においては、この初潮に代表される性成熟が、思春期における性的同一性の発達に影響を及ぼしていることが確認された。なお、この初潮や性的同一性の発達には、47都道府県別の資料で著しい国内地域差が確認された。特に沖縄県においては、平均初潮年齢12歳0.1ヶ月と最も低い一方、性的同一性の発達においても否定的傾向の発達が最も早く顕著な傾向が確認された。他にも、誕生の月と初潮の月の相関や、早生まれのものの相対的な早熟傾向等、女子思春期発達における顕著な心身相関を示唆する傾向が確認されている。一方、大学生・短期大学生等の調査結果から、青年期中期以降の発達には、思春期変化の直接的な影響は見られなくなる傾向が示唆された。しかし、性的同一性の発達が、大学入学時の満足度や自己評価に影響することに見られるように、各個人の同一性の発達が、女性性の発達や進学決定過程に影響を及ぼすことが分析された。女子の発達において、思春期変化の時期にあっては性成熟における早遅が性意識の発達に影響を及ぼす形で心身相関が顕著に見られる。しかし、青年期中期以降には、思春期変化の直接的な影響は減少し、性役割への心理的適応が青年期発達全般と関連することが示唆された。今後は各ライフ・サイクルにおける女性の性的発達と性差の問題の解明が必要である。
著者
山内 直人 赤井 伸郎 石田 祐 稲葉 陽二 大野 ゆう子 金谷 信子 田中 敬文 樽見 弘紀 辻 正次 西出 優子 松永 佳甫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」の定量的把握および統計的分析からその経済社会的効果を分析し、政策的意義について検討・評価することを目的としたものである。 研究の成果を通じて、抽象的概念であるソーシャル・キャピタルの定量的把握に関する手法を開発、新しいソーシャル・キャピタル指標を提示し、それを用いた実証分析を行うことが可能となった。また、これまで十分に解明されてこなかったソーシャル・キャピタルの日本的特徴を把握し、多様な政策対象とソーシャル・キャピタルとの関係性に関する理論的、実証的示唆を得るとともに、ソーシャル・キャピタルの社会的意義や政策的インプリケーションに関する検討課題や論点を整理した。
著者
藤目 ゆき
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

連合国占領軍の事件・事故に起因する人身被害に関する研究を行い、被害者とその遺族が受けた心理的・社会的・経済的ダメージやその後の暮らし、現在の心境・考えなどを明らかにした。全国調達庁職員労働組合による被害実態調査について、1000件を超える調査票の内容をデータ入力し、地方ごとに年表およびマップを作成した。GHQと米日両政府・被害者及びその遺族・政党や労働組合などの社会団体の動向を調査し、補償請求運動と立法化の過程を解明した。また、占領軍被害補償問題を原爆や空襲の被害、「慰安婦」被害など他の補償請求問題との比較検討・関係性の考察を進めた。
著者
宇佐美 雄生
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究は、分子ネットワークを用いたリザーバコンピューティングを構築し、物質ネットワークに立脚した情報制御の可能性を示すことを目的とする。リザーバコンピューティングは、入出力と計算資源であるリザーバ層から成り、出力との接続部分の結合の強度のみを読み取ることで情報処理及び学習を行う演算システムの一つである。リザーバコンピューティングの肝であるリザーバ層を物質系である金微粒子-導電性高分子ネットワークで担い、入出力をソフトウェアで制御することで、情報処理機能を発現する。
著者
近藤 滋
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

イセエビの幼生は、1回の脱皮で、2次元平面から3次元形状に変態する。脱皮前後のクチクラの構造を電顕で詳しく解析することにより、クチクラの各地点での収縮率、収縮の異方性を測定し、それを幼生の平面上クチクラ形状にマップする。次にその平面情報から、収縮後の立体構造を、計算機により3次元物理計算から導き出す。成功すれば、平面の構造から、任意の3次元構造を瞬時に作り出す新しい技術が生まれる可能性がある。
著者
中川 淳一郎
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々はクラッシュ症候群の多臓器不全にいたるメカニズムに活性酸素種が強く関与していると考え、活性酸素種を制御するために抗酸化物質ETS-GSを用いて本研究を行った。その結果、抗酸化物質を経静脈的に投与することにより活性酸素種や炎症性サイトカインの産生が抑制され、引き続き生じる遠隔臓器障害が軽減し、生存率改善効果が得られた。活性酸素種はクラッシュ症候群において病態進行を誘導する一因であることが示唆された。
著者
川村 光
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本基盤研究では、地震の統計・物性物理学の構築に向け、長年統計物理分野で地震現象の標準的モデルとして研究されてきたバネ-ブロックモデルに、現在地震学分野で広く用いられている、摩擦力が滑り面での「状態」にも依るとする所謂「滑り速度-状態依存摩擦則(Dietrich-Ruina摩擦則)」を組み合わせたモデルに基づき、数値シミュレーションを主体とした地震現象の統計物理的な研究を展開した。その結果、モデルは摩擦不安定性が強い場合と弱い場合とで定性的に異なった振る舞いを示すこと等を明らかにすることに成功した。
著者
深瀬 浩一 真鍋 良幸
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

3糖構造α-Galエピトープは,多くの哺乳類で広く発現しているものの,ヒトはこの糖鎖構造を持たない.その代わりに,ヒトは大量の抗Gal抗体を持つ.本研究では,化学合成したα-Galエピトープとがん抗体を複合化させることで,がん細胞を特異的にα-Gal標識し,超急性拒絶反応を引き起こすことにより,がん細胞を排除する全く新しいがん免疫療法の開発を目指した.まず,α-Galの効率的な化学合成を行った.さらに,合成したα-Galをリンパ腫細胞に発現するCD20に対する抗体と複合化し,全く新しい抗体薬物複合体の調製に成功した.また,α-Galのアジュバント(抗原性補強剤)としての利用も検討した.

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著者
OSIPP広報委員会・ニューズレター編集部
出版者
大阪大学
巻号頁・発行日
vol.2006年, no.(37), 2006
著者
猪飼 隆明
出版者
大阪大学
雑誌
待兼山論叢. 史学篇 (ISSN:03874818)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-30, 2005-12-25
著者
森 三樹三郎
出版者
大阪大学
雑誌
大阪大學文學部紀要 (ISSN:04721373)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.223-328, 1954-03-25

This is a report of the overseas research project "Field Research on Japanese Language and Culture Remaining in the Former Japanese Mandate Pacific Islands", supported by a Ministry of Education Scientific Research Grant (International Grant, Satoshi Toki, representative), 1994-1996.
著者
岩橋 利彦
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は、咳嗽および発声時における声門閉鎖の定量的解析法の確立を目標とした。まず、高速度撮影装置と電気声門図(electroglottography:EGG)の同期記録システムを用いて、片側声帯麻痺症例の咳払いにおける声門閉鎖の有無をEGG波形より間接的に評価できるかどうかについて検討を行った。健康成人例の咳払い時の圧縮相において、高速度撮影画像では、声帯、仮声帯、披裂喉頭蓋括約部の閉鎖が認められ、EGG信号では、EGG波形の一過性上昇が認められた。特に、高速度撮影画像における咳払い時の声帯突起の接触とEGG波形の一過性上昇が一致して認められた。そこで、このEGG信号の一過性上昇に着目し、片側声帯麻痺症例においても、声帯が閉鎖する場合にEGG波形の一過性上昇が認められると考え、その検証を行った。結果として、片側声帯麻痺症例においても、EGG波形の一過性上昇は声帯の閉鎖を反映していると考えられ、高速度撮影画像を用いた視覚認識による声帯の閉鎖の評価よりもEGG信号所見の評価の方が評価者間一致率が高い結果となった。片側声帯麻痺症例では麻痺側の披裂部が声門を覆うことがあるため、約3割の症例で声門を視認できない場合がある。そのため、本研究の結果は、咳払い時のEGG波形の一過性上昇が明確に声門を観察することができない片側声帯麻痺症例の咳払い時の声帯閉鎖能力を予測する有用な指標になり得ることを示した。今回の研究結果については12th Pan-European Voice Conferencesにて発表を行った。
著者
小谷 眞一 樋口 保成 内山 耕平 熊谷 隆 楠岡 成雄 厚地 淳 杉田 洋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

この研究は平成7年度と8年度にわたって行った。内容については研究成果報告書にあるように我国で行われている確立論の多くの分野にわたることについて計12日の研究集会を開き,研究情報の交換を行った。特にその中でも,数学の他の分野,あるいは数学以外の分野との交流が多く持てたことに大へん意義があった。統計物理,数理生物,数理ファイナンス,数学の分野では討論,微分方程式,スペクトル理論,微分幾何,等々関連する分野の研究に親展があった。また7年度と8年度に1度づつ夏の学校を開き,若い研究者,学生に対して現在活発に進行中の話題,つまり「流体力学極限」と「エルゴ-ト理論と数論」の2つの主題について,専門の研究者に連続講演をお願いした。これは,若い世代に自分の研究の方向付けを与えるものとして非常に意義深いものであったと思う。さらに各分野を統合する研究集会を各年の12月に開催した。これにより,ともすれば狭い専門に限られて関心を広げることができたと思う。