著者
平田 好則 西山 宏昭 宮坂 史和
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,これまで我々が取り組んできた,電界放出およびそれに続くマイクロプラズマ生成による材料加工プロセス(マイクロ熱加工)の更なる高度化を目指して,高い構造形成自由度を有するフェムト秒レーザ光造形法を駆使することで,マイクロ熱加工用素子の開発を行った.以下に得られた知見を示す.1. フェムト秒レーザによるレジストパターニングフェムト秒レーザ誘起非線形光吸収とエッチングプロセスを複合化することで,従来の半導体プロセスでは困難であった,立体基板上への構造形成を実現した.2. カーボンナノチューブを先端部に位置選択合成した針状微細電極電界放出特性に優れたカーボンナノチューブを前面に合成した針状微細電極を用い,電極先端部の曲率,被加工試料とのギャップ長,印加電圧をパラメータとして変化させ,金薄膜に電界放出による直接加工を行った.曲率と印加電圧が大きいほど,また,ギャップ長が小さいほど,加工は容易であり,直径2μm程度の円形パターンを形成した.電極先端部1μm程度の領域のみナノチューブを合成した電極では電界放出によってサブミクロンオーダでの直接加工を実現した.3. アレイ型マイクロプラズマ源半導体プロセスによってSiウェハー中に作製したホローカソード型微細電極(直径30μm)をアレイ化し,大気圧アルゴン雰囲気下では安定なグロー放電を得た.微量の酸素を混ぜることで,マイクロプラズマによるレジスト材料のマスクレス加工を実現した.
著者
西川 勝
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

認知症高齢者をめぐる医療的ディスコミュニケーションの実態については、いまだ明らかでない部分が多い。そもそも医療に関するコミュニケーションには正確無比な指標があるわけではなく、医療的判断や意思決定にも文脈依存的な性格が強く存在しているので、唯一の基準でディスコミュニケーションと決定できない側面がある。患者本人の自己決定に基づくことを最優先するリビング・ウィルや事前指示(advance directives)の思想は、合理的判断能力を有する自立的個人を前提しており、「判断能力には問題があるが、意識がないわけではなく、深刻な認知症のために自己の意思や考えを十分には他者に伝えられない」状況にあって他者の介護を必要とする認知症患者には適当しない。本研究では、認知症高齢者をめぐる医療的ディスコミュニケーションの発生以前に、広く社会に存在する認知症高齢者とのディスコミュニケーションを、さまざまな場面で検討した。主なものをあげると、介護職員を参加者にした定期的な哲学カフェを開催し「認知症ケアと安楽」を議論したものや、保育園児や小学生を対象とした認知症サポーター講座を実施して、「老いの意味」を考える教育のあり方について検討した。これらの研究活動から明らかになったことは、認知症高齢者の医療的ディスコミュニケーションの背後に、認知症ケアの文化的意味が未開拓であり、老いの生き方そのものが問われている現状があるということである。
著者
伊藤 一馬
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、前年度までの成果をうけて、以下のことを行った。まず、北宋の神宗期に将兵制が成立するまでの過程や背景を、対外情勢との関連に着目して検討した。北宋の将兵制は、決して画一的・均質的に成立したのではなく、陝西地域・河北地域8東南諸路のそれぞれで対峙する勢力への姿勢に応じた背景や過程をもって成立したことが明らかとなり、とりわけ、西夏と対峙して軍事衝突が頻発していた陝西地域は、北宋における軍事的な先進地域となり、その情勢は将兵制成立に見られる如く河北・東南地域にも影響を与えたことを確認した。このような軍事政策の観点に立てば、陝西地域は当時の国際情勢における「結節点」であったと言える。次に、黒水城遺趾から出土した「宋西北辺境軍政文書」中の「赦書」の語が見える109-28文書・109-98文書を手がかりに、南宋成立直後における中央政府と陝西地域の動向ならびに双方の動向を検討した。それにより、北宋から南宋への移行期に、金軍の侵攻に対して陝西地域は領域を維持し、建炎四年まで頑強に抵抗し続けていた。それを可能にしたのが、南宋成立直後における中央政府との連絡の復活であり、赦書という皇帝の"お墨付ぎ"を背景にした軍備再建であったのである。神宗期に成立した将兵制が、北宋末期から南宋初期に至るまで陝西地域で定着していたことは「宋西北辺境軍政文書」から明らかであり、このような将兵制が軍備の再建にも大きく寄与したと考えられるのである。
著者
土岐 哲 鹿島 央 中西 久実子 山下 洋一 江崎 哲也 岡田 祥平
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本課題は、『非母語話者による日本語話し言葉コーパス(CSJ-NNS)』に収録するデータをさらに充実させ、構築されたコーパスを広く一般に公開する目的で行われた。音声データの収録や各種アノテーションの付与のみならず、個人情報を消去するなどして公開に向けて作業を行い、コーパスを頒布した。また、本コーパスと『日本語話し言葉コーパス(CSJ)』とを比較することにより、従来の日本語非母語話者音声研究に新たな視座を提示した。
著者
菊野 亨 水野 修 水野 修
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ソフトウェア開発のプロジェクトにおける混乱状態回避を目的として,プロジェクトに関するメトリクスから混乱するかどうかの診断手法を開発した.実際のソフトウェア開発プロジェクトにおいて収集されたメトリクスデータを利用して,その有効性を示した.
著者
三谷 研爾 中村 真
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究課題は、ナショナリズム対立が深刻化だったボヘミアを対象とし、1890年代から両大戦間にかけて書かれた同地の文学史的・民俗誌的記述を検証したものである。ザウアー、ハウフェンなどのドイツ系知識人による、地域性を重視する文学史は、理念においては国民文学史を相対化する契機を含みながら、具体的記述としてはナショナリズム的な本質主義の思考を強く主張する結果となった。他方、チェコ系知識人ホスチンスキーもまた、その民族芸術論をとおして、文化の移動の生産性に注目しながら、民族文化の恒常性に固執した。同地における文化的越境現象は、人文学的ディスクールのこうした構造と並置して理解すべきことが明らかとなった。
著者
堤 康央 角田 慎一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、有効かつ安全な粘膜ワクチンシステムの開発を目的に、サイトカインアジュバントの最適化および、ナノキャリアによる抗原送達システムの構築を図った。その結果、粘膜ワクチンに最適なサイトカインアジュバントを探索し得る方法・基盤技術を確立すると共に、優れた粘膜ワクチン効果を発揮可能であること、ナノキャリアとの併用により、さらに効果が期待できることを先駆けて見出した。
著者
桑田 六郎
出版者
大阪大学
雑誌
大阪大學文學部紀要 (ISSN:04721373)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-43b, 1954-03-25

The contents are as follow: 1. The Three Provinces (南海, 桂林, 象郡) of South China in the Ch'in (秦) Dynasty and the Nine Provinces (南海, 蒼梧, 鬱林, 合浦, 交阯, 九眞, 日南, 〓耳, 珠崖郡) of the Han (漢) Dynasty. The Shih-chi (史記) mentions the establishment of the Nine Provinces after the defeat of Nan-yueh. (南越国). According to the chronicle of Wu-ti (武帝) in the Han-shu (漢書). the Nine Provinces were established in 111 B.C. (元鼎6年), but in other chapters (地理志, 賈捐之傅) of the same book two (〓耳, 珠崖) of them were established in 110 B.C. (元封元年). The Mouling-shu (茂陵書), probably found in the tomb of Wu-ti, mentions Hsiang (象) Province. Dr. N. Sugimoto says that the Nine Provinces mentioned in the Shih-chi included the two provinces 桂林 and 象郡 rather than the two provinces 〓耳 and 珠崖郡. I think that the Nine Provinces of Shih-chi were the same as those of the Han-shu, but the Han-shu was not correct in dating the establishment of the Nine Provinces in 111 B.C. The correct dates are 111 B.C. and 110 B.C. As for the Hsiang Province, I think that it was established by Wu-ti after the establishment of the Nine Provinces, and I locate the province in the western part of Kuang-hsi (廣西省). 2. The southern frontier of the Han empire and maritime intercourse with the western countries. Huang-chi (黄支) presented a rhinoceros as tribute to the court of Wang Mang (王莽). Dr. T. Fujita identified Huang-chi with Kanchipura (Conjeveram) in South India. But I think that Huang-chih was another form, invented intentionally by the Wang Mang party, to represent of Chiao chih (交阯). 3. The founding of Lini (林邑). Dr. G. Coedes identified £ri Mara of the Vo-canh inscription with Fan Shih-man (范師曼) of Fu-nan (扶南), but their dates'are not the same, and I can not decide which is correct, Fan Shih-man or Fan Man. 4. The ancient kingdoms (扶南, 眞臘) of Cambodia. 5. Dvaravati (堕和羅) of Siam and the Pyu (驃) in Burma. 6. Hindu colonies in the Malay Peninsula. 7. Srivijaya (室利佛逝) in Sumatra. Many years have passed since I identified the Ch'h-t'u (赤土) of the Sui (隋) Dynasty with the Srivijaya (室利佛逝) of the Tang (唐) Dynasty (東洋學報 IX, 2, 1919). The Chines3 embassy sailed southward along the Malay Peninsula and saw the mountains of Lankasuka (狼牙須). Dr. G. Coedes' identification of Ch'ih-t'u with Patalung in the peninsula is not correct. The Buddhist pilgrim I-ching (義淨) does not mention the name of Ch'ih-t'u. I think that Gh'ih-t'u is the same as Srivijaya, which I-ching visited. 8. The Sailendras in Java. The mohammedans often mention the Maharaja of Jawaga, a name derived from Jawaka, but afterward used to refer to Srivijaya, when the royal family of Srivijaya became the Sailendra. San-fu-ts'i (三佛齊) is not the transcription of Jawaga, but of Srivijaya. 9. Hindu remains,in Borneo and the Celebes.
著者
米田 信子 中島 久 小森 淳子 竹村 景子 米田 信子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では「スワヒリ語圏」におけるスワヒリ語すなわち「超民族語」(民族を超えた共通語)と諸民族語の相互の影響を明らかにするために,東アフリカにおいてスワヒリ語と各民族語に関する社会言語学的調査および記述言語学的調査を行なった。スワヒリ語圏には異なるタイプの言語接触の状況が存在するが,各地域での調査結果を比較しつつ網羅的に言語状況を捉えたことにより,スワヒリ語圏の言語文化的な動態をより正確に記述することができたと思われる。
著者
竹田 敏一 代谷 誠治 北田 孝典 山本 敏久 山根 義宏 三澤 毅
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)ミクロ炉物理を考慮した過渡解析の理論および計算コードの開発を行った。理論としては、燃料集合体内のピンセル構造などの非均質性を厳密に取り扱えること、さらに実効断面積作成にその厳密性が陽に反映されることを考慮して中性子流結合衝突確率法(CCCP法)による方程式を用いた。これまでのCCCP法では時間依存性が考慮されていないため、新たに時間依存を扱えるCCCP法の開発を行った。2)ミクロ炉物理的検討により、中性子束の角度分布は周囲の幾何形状や組成により大きく異なることが示唆された。そのため原子炉内での中性子束角度分布の測定方法の開発を行い、実際にKUCAのC架台に構成した炉心に対して測定を試みた。原子炉内の中性子束角度分布の測定方法として、光ファイバー検出器とCdチューブを組み合わせた手法を考案した。この手法による測定実験を行い中性子束角度分布の測定結果を得ることによりこの手法の有効性を確認した。3)過渡時の燃料棒内温度分布を考慮する効果を正確に把握するため、制御棒を含む2次元軽水炉燃料集合体体系において、核と熱を結合した計算コードを開発した。この計算コードを用いて燃料棒内の温度分布等の非均質性を考慮し、冷温停止及び高温待機状態からの制御棒落下事故を模擬した過渡解析を行った。その結果、特に高温な炉心での格子内の非均質性を直接考慮した過渡解析において燃料棒内の径方向温度分布は無視できないこと、および燃料棒内の温度分布が複雑であるため燃料棒内で均一な温度を用いる実効温度モデルでは不十分であることが分かり、過渡時のような燃料棒内の複雑な温度分布を取り扱うにはミクロ炉物理に基づく考察が必要であることが明らかとなった。
著者
若狭 智嗣
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

相対論的重イオン衝突によりクオーク・グルーオン・プラズマ(QGP)が形成されるモデルにおいて、QGPにおける相転移温度では核子核子間で交換される中間子の質量が減少する事が示唆されている。中間エネルギーの(P^^→,P^^→1))反応等の偏極観測量の測定から、通常の核物質密度でも前駆現象(中間子の質量変化)の観測が可能との指摘がある。実験的には、核反応及び核構造の取扱いの不定性から、はっきりとした結論を得るに至っていない。本研究では、構造の不定性の小さい^<16>O(P^^→,P^^→1)^<16>O(0^-,T=0,1)反応の偏極観測量の測定を目指した。運動量分散整合の手法を適用し、更にビームのエミッタンスを小さくする事により、最終的にエネルギー分解能40keVを達成し、低バックグラウンド下での0^-状態の分離・測定に成功した。この0^+→0^-遷移は、パイ中間子の量子数0^-と同じ量子数変化であり、純粋にパイ中間子起因のスピン縦モードが励起される。引力のパイ中間子交換力により、スピン縦モードに於いてはその強度が増大する事が示唆されており、パイ中間子凝縮の前駆現象や、核内でのパイ中間子密度の増大といった現象とも密接にかかわっている。今回得られた0^-状態の断面積の角度分布を、理論計算と比較した結果、・無限系の核物質に対する計算で示唆される。高運動量移行領域での異常な増大(前駆現象)は認められない・原子核の有限性を考慮した計算とは無矛盾との知見を得た。
著者
高木 信二 小川 英治 永易 淳 岩壷 健太郎 江阪 太郎 廣瀬 健一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

グローバル危機を契機に、(特にアジア地域における)経済間の相互連関が注目されるようになった。また、危機の発生確率を軽減するために各国が採るべき政策や制度への関心が高まると同時に、危機への耐性を維持する観点から、資本管理政策が主権国家の政策手段として広く受け入れられるようになった。本研究の成果は多岐に及ぶが、その核心的部分は、(1)経済連関をはかる手法を開発したこと、(2)実証的に経済統合の性格を特定化したこと、(3)資本管理政策の有効性を検証したこと、(4)危機発生確率を低下させるための政策、制度を明らかにしたことにある。
著者
古屋 秀隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

中生動物ニハイチュウについて、分類、系統、およびニハイチュウと宿主との関係(共進化)について調べた。(1)分類 カリフォルニア湾産Octpus hubbsorum、オーストラリア沿岸産Sepioteuthis australis とSepioloidea lineolata、および日本沿岸産クモダコとウスベニコウイカの腎嚢を検索し、10種の未記載種のニハイチュウ類を発見した。そのうち3種のニハイチュウ類を記載した。(2) ニハイチュウの細胞分化:細胞の分化が起きているかどうか16遺伝子の遺伝子の発現パターンよって調べた。(3)ミトコンドリアゲノムの解析ニハイチュウとプラコゾアのミトコンドリアゲノムの構造を調べた。ニハイチュウ類では、一般にミトコンドリア遺伝子がそれぞれミニサークルを形成していることを明らかにした。(4)共進化ニハイチュウと頭足類について、ミトコンドリアCOI遺伝子と18SrDNAの塩基配列を用い、それぞれの種間の系統関係を調べた。その結果、共進化している種もみられる一方、ホストスイッチングした種もみられ、厳密な共進化はみられなかった。
著者
但馬 亨
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度の主たる研究の目的は、以下2つの課題の実行であった。すなわち、国際的にこれまでの研究内容を発表することと、前年度から継続して貴重資料群のデータベース作成に一定の目途を立てることである。第一の課題については、2009年7月から8月にかけてハンガリーの首都ブダペストで行われた、科学史関連では最大である国際学会において18世紀半ばの弾道学的諸問題の理論的および実験的側面についての分析結果を発表し、2010年1月には京都大学理学部において同大学の名誉教授である上野健爾氏主催の数学史国際シンポジュームで曲線概念と関数概念の混交する17世紀末から18世紀前半における無限小解析学について、国際的な近代数学史研究の権威である、ベルリン工科大学のEberhard Knobloch教授と議論を行った。また、第二の課題の画像データベースの作成については、本年もパリのフランス国立図書館を中心として、貴重書の収集に努めた。その結果、パリ王立科学アカデミーの構成員である数学者Etienne Bezoutによる応用力学についての教育的著作やBenjamin Robins, Leonhard Eulerの砲術書の新フランス語訳等のデジタルデータ化を行った。ハードウェアレベルからの画像処理専用のコンピューターの構築についても前年から継続し、諸図形の形状をデジタル人力する専用ソフトを導入しデータベースを作成した。
著者
古屋 秀隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1)分類 イイダコ、スナダコ、コブシメ、テナガコウイカ、メンダコから10新種のニハイチュウを記載した他、ボウズイカとミズダコのニハイチュウの再記載を行なった。(2)系統関係ギャップ結合タンパクのイネキシンによるニハイチュウの系統解析を行なった結果、以前から考えられていた扁形動物との関連性はなく、軟体動物や環形動物との関連が深いことが明らかになった。(3)共進化 ニハイチュウと頭足類について、それぞれの種間の系統関係を調べた結果、共進化している種もみられる一方で、宿主を変えた種もみられ、いわゆる共進化はみられなかった。
著者
井上 聡
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

私はこれまでに、二座配位可能な2-ピリジルメチルアミノ基を配向基とする芳香族オルト位炭素-水素結合の触媒的なカルボニル化を見出し、すでに報告している。具体的には、ルテニウム触媒による2-ピリジルメチル安息香酸アミドと一酸化炭素からのフタルイミド誘導体生成反応である(J.Am.Chem.Soc.2009, 131, 6898)。この研究途上で、芳香環上に置換基を有する基質を用いた場合、目的生成物の他に、別の位置異性体も生成していることがわかった。例えば、パラ位にメチル基を有する基質を用いた場合、本来の目的生成物である5-メチルフタルイミド誘導体に加えて、4-メチル体も生成した。両化合物の生成比は温度によって異なり、125℃で24時間反応させた場合、5-メチル体:4-メチル体=12:1であったのに対し、180℃ではほぼ1:1となった。さらに興味深いことに、メタ位およびオルト位にメチル基を持つ基質をそれぞれ180℃で24時間反応させても、生成物の比はほぼ1:1となった。この生成比は両化合物の熱力学的安定性によるものと考えられる。以上の現象は、いったん生成したフタルイミドのカルボニル炭素-芳香族炭素結合がルテニウム触媒により切断されていると考えることで説明できる。実際、単離した5-メチル体を反応系に入れたところ、この場合もやはり4-メチル体が生成し、その比はほぼ1:1であった。本研究によりピリジルメチルアミノ基は炭素-水素結合切断のための配向基として作用するだけでなく、炭素-炭素結合切断にも有効であることを明らかにした。
著者
落合 理 LEMMA Francesco
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度は,GSp(4)の肥田変形においてオイラー系からp進L関数をつくるColeman写像理論について取り組んだ.成果として,適当な条件下で,ほぼ予想した結果を得た.現在結果の細部をタイプしている最中である.GSp(4)のnearly ordinaryな肥田変形は3変数の岩澤代数の上のランクが4のガロア表現である.以前,申請者はGL(2)の肥田変形におけるColeman写像を構成した.GL(2)のnearly ordinaryな肥田変形は2変数の岩澤代数の上のランクが2のガロア表現である.Coleman写像とはこのようなガロア表現の族においてBloch-Katoのdual exponential mapと呼ばれるp進ホッジ理論で大事な写像をp進補間することである.今回得たGSp(4)における結果はこのGL(2)のときの結果の一般化である.その際の手法やアイデアが部分的には使えたが,一方で新しい困難もいくつかある.ランクが大きくなる困難や様々な表現が入り混じる困難があり,また,素朴な概念で切り抜けることができたGL(2)に比べて,代数群や保型表現の一般理論に通じている必要がある.最後に今回の仕事の意義について述べたい.もともと今回の仕事は描いているもう少し大きな岩澤理論の一般化のプロジェクトの一部である.今まで代数群GL(2)に関連した岩澤理論しかなかったので,高次の代数群で岩澤理論を展開していき様々な新しい世界が広がることを期待している.今回の仕事だけ見ても手法的に面白い発展がいろいろ得られたと思っている.
著者
上野 修 永井 均 入不二 基義 古荘 真敬 青山 拓央 郡司 ペギオ幸夫 小山 悠 勝守 真 中野 昌宏 三平 正明 山田 友幸 重田 謙 入江 幸男
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

独在的<私>と独今的<いま>が非常によく似た仕方で現実概念の根本にあることが明らかとなった。<私>と<いま>が世界のどの個人、どの時点を開闢点とするかは偶然である。にもかかわらず、いったん開闢されるとその特異点は諸個人のうちの一人物と歴史時間の現在に位置づけられ、特異性を失う。そしてこのことがむしろ現実性の条件となっている。このような二重性は、言語の使用者がまさにその使用によって言語世界の限界内に位置づけられる、その仕方によって理解されねばならない。
著者
直田 健 今田 泰嗣 小宮 成義 高谷 光
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

申請者らは、短い笛の音を合図に自由運動分子がマスゲームのように整列を始める、今まで行い得なかった音響照射のみに応答する小分子の集合精密制御が、新しい洗濯バサミ型有機金属分子の設計と合成、それを用いる新しい分子集合重合により行い得ることを明らかにし、これにより流体の新しい流動性制御の手法を初めて見出している。音響照射によってのみ誘起される分子の合理設計のための指針を確立することを目的に、多くの関連化合物の合成とその動的挙動の解明を行った。ペンタメチレン鎖を有するアンチ型2核パラジウム錯体の有機溶媒の溶液は安定で、長期間の保存においても自発的なゲル化等は起こさないが、これに3秒程度の極短時間超音波(0.45W/cm^2,40kHz)を照射すると、瞬時にゲルが形成され流動性を消失する。この際、溶媒にシクロヘキサンを用いた場合光透過性は保持されるが、酢酸エチル、アセトン、トルエン等では光透過性も消失する。本ゲル化はゲル化剤の配座変化のみによって生起するため、ゲルからゾルへの相転移は熱可逆的であり、ゾル-ゲル相転移が完全瞬時自由制御できる初めての例である。本研究では、これら瞬時ゲル化技術による流動性、弾性、光透過性等の物性と、音圧、周波数、ゲル化剤の分子構造、溶媒と添加物の種類などの内的、外的要因との相関を多角的に検討し、安定溶液の瞬時ゲル化および速度可変ゲル化技術を確立することに成功した。
著者
深尾 葉子 安冨 歩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

黄砂という現象が純粋の自然現象ではなく、人間の営為と密接に関わっていることを前提として、そこに暮らす人々の生活・コミュニケーションに働きかける方法を探求した。それにより、黄砂の発生地域に暮らす人々の社会的、経済的行動と密接につながった解決策を編み出すことぬきには、真の解決策には至らないこと、を具体的に明らかにした。これは地域研究者と現地の実践者が環境問題の解決について介在役を果すことではじめて可能となるもので、今後の共同研究のあり方を示唆するものである。