著者
安武 潔 垣内 弘章 大参 宏昌
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

薄型Si太陽電池の実現には、光閉じ込め技術に加えて、キャリアの表面再結合を抑制するパッシベーション技術が鍵となる。p型Si表面のパッシベーションには、負の固定電荷をもつ絶縁膜が有効であり、Al_2O_3薄膜がその可能性を有している。本研究では、p型si表面のパッシベーションに有効なAl_2O_3/極薄SiO_2/Si構造の形成条件を明らかにすることにより、高効率Si太陽電池製造に必要なAl_2O_3薄膜の低温・高速形成プロセスを開発する。(1)大気圧プラズマによるSiおよびAlの酸化特性を調べた結果、400℃でのSi酸化速度は、1000℃ドライ熱酸化と同等であること、Al酸化速度はSiの1/2程度であり、熱酸化に比べ高速であることが分かった。(2)大気圧プラズマ酸化によるSiO_2膜は、高温熱酸化膜と同等の品質であり、SiO_2/Si界面準位密度はD_<it>=2×10^<10>cm^<-2>eV^<-1>であった。一方、正の固定電荷密度が高い(Q_f=5.3×10^<12>cm^<-2>)ため、n型Si表面のパッシベーションに有効であり、非常に低い表面再結合速度(S_<eff>80cm/s)を実現した。(3)Al/Si構造を大気圧プラズマ酸化することにより作製したAlO_x/Si構造は、負のQ_fを有するが、界面特性が十分でなかったため、Al_2O_3/SiO_2/Si構造を形成した。SiO_2が厚い場合、正のQ_fを示すが、SiO_2膜厚の減少とともに負のQ_fが増加することが分かった。(4)Al_2O_3/薄いSiO_2/Si構造により、D_<it>=9×10^<10>cm^<-2>eV^<-1>,負のQ_f=5.4×10^<12>cm^<-2>,S_<eff>=260cm/sが得られた。S_<eff>は、HF処理による915cm/sに比べてかなり低く、本方法で形成したAl_2O_3/SiO_2/Si構造が、p型Si表面パッシベーションに有効であることが示された。
著者
中野 貴由 豊澤 悟 坂井 孝司 萩原 幸司 石本 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

骨は部位に応じた骨配向性を持つことで、初めて正常な力学機能を発揮する。しかし、現状では、最先端の骨再生手法を駆使しても、正常な骨配向性の回復は困難であることを見出した。したがって、次の研究段階では、骨組織の「質的な解析」にとどまらず、疾患・再生骨での「骨配向性を取り戻すための手法の確立」が急務である。本研究では、骨が本質的には異方性微細構造を持ち、その起源が骨系細胞の働きであることに着目し、材料工学ならではの手法を中心に、骨配向化を人為的に誘導可能とする新規概念・新規技術の確立を目指す。具体的には、材料/細胞間での相互作用を利用し、配向化のための最適環境(足場材料の形状・材質・結晶方位制御、核形成・成長、外場制御)を与えるための手法を提案することを目的とした。本研究は2009年4月1日に内定され、通知されたのち研究準備を開始し、単結晶を用いた結晶学的特徴を活かした骨系細胞増殖・分化誘導研究課題の達成のための機器の準備等をスタートした。しかしながら2009年5月11日付で科学研究費補助金・若手研究(S)の内定があり、重複制限により補助事業を廃止することとなった。その際、研究分担者が研究代表者になることで本研究を継続することは困難であるものと判断した。
著者
池田 光子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近世期に隆盛をほこった懐徳堂を対象とし、その思想的特徴について、《資料調査》《思想研究》の二方面から検討を行ったものである。主な成果として、《資料研究》では、懐徳堂を代表する儒者の一人である中井履軒の『中庸逢原』を、翻刻・データベース化し、《思想研究》では、養生思想に関する履軒の著作を検討し、儒学・医学に通底した実学主義の学問姿勢を明らかにした
著者
木下 修一 吉岡 伸也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

構造色は、自然界の巧みなナノ構造と光との複雑な相互作用の結果生じる発色現象である。これまで、モルフォチョウをはじめとした多くの生物の構造色が調べられてきたが、この現象を物理学的な見地から検討することは稀であった。今回は、電子顕微鏡を用いた構造決定、光学特性の測定、物理モデルの構築、電磁場シミュレーションの方法を行い、光とナノ構造間のフォトニクス相互作用、発色と視覚・認知との関係の一端を明らかにすることができた。
著者
山本 雅裕
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

TLR非依存的にIFN-γが産生される分子機序について、T.cruzi感染により引き起こされる宿主の細胞内カルシウムイオンの濃度上昇が関与しているかどうかを検討する目的で、FK506を用いてカルシウムシグナルを阻害したところ、T.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。また、FK506がカルシニューリンの阻害剤であることから、カルシニューリンの下流に存在するNFATc1のT.cruzi感染によるIFN-γ産生における役割について検討したところ、T.cruzi感染によりNFATc1が核移行し、さらにNFATc1欠損細胞においてはT.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。さらに、NFATc1欠損樹状細胞はT.cruzi感染による活性化が著しく減弱した。以上のことから、T.cruzi感染後TLR非依存的にNFATc1を介して自然免疫担当細胞よりIFN-γが産生され宿主自然免疫応答が惹起されることが判明した。これらの結果より、T.cruzi感染に対し宿主がTLR依存的・非依存的な自然免疫応答を引き起こす防御機構を有していることが明らかとなった。
著者
岩瀬 真生 石井 良平 高橋 秀俊 武田 雅俊 橋本 亮太 橋本 亮太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。
著者
橋本 博公
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コンテナ船や自動車運搬船で問題となっているパラメトリック横揺れの定量的予測のため,時々刻々の没水断面に対して流体力を計算する数値予測モデルを構築し,このモデルに強制横揺れ試験から得た横揺れ減衰力を用いることで,規則波中パラメトリック横揺れの定量的予測が可能であることを確認した.また,パラメトリック横揺れ防止効果に及ぼすアンチローリングタンク形状の影響,船首・船尾形状の影響を調査し,それぞれについての設計指針を得た.
著者
矢谷 博文 江草 宏 田畑 泰彦 田畑 泰彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,チタンインプラント埋入部周辺の骨組織再生を誘導するための基盤技術を確立することを目的に行われた。チタンインプラントに設けた内空に生理活性物質(b-FGF)を徐放するゼラチンスポンジ生体材料を組み込むことにより,埋入周囲における骨組織新生の誘導が可能であることが明らかとなった。また,骨組織再生を誘導する合成ペプチドおよび小分子化合物を特定し,これらの骨組織再生における役割を明らかにした。
著者
佐伯 万騎男 上崎 善規
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

骨吸収性疾患の治療において破骨細胞分化を調節する小分子化合物は非常に有望な創薬候補として期待される。破骨細胞分化を調節するあらたな小分子化合物を見出すためcell-basedのスクリーニングシステムを開発し、harmineという非常に興味深い小分子化合物を発見した。harmineは破骨細胞分化に対し正負に働くシグナル(カルシニューリン-NFATおよびid2)を同時に活性化させるという興味深い性質をもつことが明らかになった。
著者
三谷 研爾 吉田 耕太郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

この研究は、歴史的に多言語地域だったボヘミアおよびシレジアについて、そこでの複数文化共生の伝統がどのようにして学術研究の対象となってきたか、さらに蓄積された学術情報がどのようにして文化資源に転換され、実際に社会的に活用されているかを考察するものである。人文学的な研究活動とその成果利用の循環が、それぞれの地域の政治的・社会的条件に規定されながらおこなわれていることが、事例に即して検証された。
著者
佐藤 文信
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、X線マイクロビームを用いて、神経細胞め分化を制御し、人工的に配列された神経回路モデルを製作する。神経モデル培養細胞PC12は、放射線照射によってNGF成長因子を必要とせずに神経突起を成長させることが報告されている。卓上型のX線マイクロビーム照射装置を用いて、単一のPC12細胞に照射し、細胞の分化制御を行う技術を開発する。予備実験として、PC12細胞を培養シャーレで培養し、PC12のCo-60γ線照射を行った。吸収線量は最大10Gyで、細胞核内のDNA二重鎖切断の指標となるγ -H2AXの産生を蛍光抗体法で調べた。γ線照射直後では、γ -H2AXを示す応答が最大となり、24時間後には、修復作用によって10%程度まで減少していることが判った。また、4〜5日後より、神経突起を成長させる細胞が現れ、全体の20%のPC12細胞が分化することが判った。人工的に細胞を配列するためにマイクロチェンバーアレイチップを製作した。マイクロチェンバーアレイチップは、SU-8感光樹脂を用いてフォトリソグラフィーでガラス基板上に形成した。細胞を格納するための1個の容器の大きさは40x40μmで深さ15μmとなっている。また、オートクレーブで滅菌処理し、表面にゼラチン層を塗布した。マイクロチェンバー内にPC12細胞が培養されたサンプルを用意し、X線マイクロビーム照射装置を用いて最大10Gyまで照射した。γ線実験と同様に、照射直後では、γ -H2AXを示す応答が最大となり、24時間後には応答は小さくなっていた。ただし、神経細胞の分化については、ターゲット細胞の数%以下で見られ、γ線をもちいた場合と比較して、低い値となった。
著者
宮本 健作 中島 誠 山田 恒夫 吉田 光雄
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.喃語様発声と負の強化:九官鳥の幼鳥がヒトのことばを模倣学習する過程で出現する喃語様発声(模倣原音)に対して大きな拍手音または叱声を与えると、その発声回数は徐々に減少し、結局そのトリの模倣は完成しない。一方、トリの発声ごとに愛称を呼ぶか餌を与えるかすると、模倣原音は加速的に増加し、物まねの完成が促進される。この成績は幼児の言語習得に関する貴重な教訓を示唆する。2.実験的騒音性難聴の形成:九官鳥は騒音負荷に対する受傷耐性が著しく高く、哺乳類では騒音負荷の有効刺激としてよく知られた高音圧のホワイトノイズまたは純音はまったく効果はみられなかった。種々試みた結果、閉鎖空間における陸上競技用ピストル音の暴露によって一過性の騒音性難聴が認められた。3.聴力損失の指標:動物の頭皮上ならびに内耳前庭窓近傍から記録した脳幹聴覚誘発電位(BAEP)および蝸牛神経複合活動電位(AP)は一過性騒音難聴の形成とその回復過程を知る客観的指標としてきわめて有効であることを確認した。4.騒音性難聴条件下の模倣発声:爆発音負荷直後、BAEPおよびAP波形が消失してから振幅が完全に回復するまでの10日間における発声行動の音圧および発声持続時間などにはとくに顕著な変化は認められなかった。難聴児にみられる聴覚フィードバックの障害効果と著しく異なった。5.模倣発声行動の動機づけ要因:飼育者の音声のようにある種の社会的意味をもつと考えられる音声は物まね発声を誘発させる効果があること、さらに飼育者の音声が感覚性強化刺激になることが明らかになった。6.弁別オペラント行動からみた九官鳥の聴力曲線:行動聴力曲線は他種のトリに比べ、ゆるやかなカーブを描き、可聴範囲は110Hzから12kHzまでの幅広い周波数帯域を含むことが認められた。騒音性難聴が模倣発声に及ぼす効果の有無については今後の検討課題であるが、ヒトと異なり、強大音に対する受傷耐性が高い。
著者
多田羅 浩三 高鳥毛 敏雄 中西 範幸 新庄 文明 黒田 研二 西 信雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1.目的:本調査は、国民健康保険の実績をもとに大阪府下の基本医療圏別の入院、および入院外医療の実態について分析を行い、今後の医療計画の策定に資する知見を明らかにすることを目的に実施したものである。2.対象・方法:調査対象は大阪府下の44全市町村であり、平成7年5月診療分の国民健康保健の入院診療(74,486件)、および入院外診療(1,860,062件)の実績について診療報酬明細書に記載された内容をもとに分析を行った。調査項目は、医療機関所在地、医療機関経営主体、診療実日数、診療点数、在院日数などである。3.結果:(1)件数の割合:入院件数の割合をみると、基本保健医療圏別には豊能、三島では65歳以上の者がそれぞれ63.2%、62.4%で高率であった。(2)受診率(被保険者百人当たり):入院受診率は大阪市西部が3.2で最も高く、ついで泉州の3.1、堺市の2.9などの順であった。75歳以上の者では、最も高い泉州(12.0)と最も低い豊能(9.1)の差は百人当たり3人であった。(3)長期入院受診率(被保険者千人当たり):6ケ月以上の長期入院受診率は泉州が11.6で最も高く、最も低い北河内(7.0)と泉州との差は4.6であった。75歳以上の者では最も高い泉州(54.5)と最も低い豊能(29.4)の差は25.1であった。(4)診療実日数の割合:入院診療実日数に占める割合をみると豊能、大阪市南部では65歳以上の者が全入院総数のそれぞれ66.1%、66.0%を占め、最も高率であった。(5)診療点数の割合:高齢者が入院診療点数に占める割合は、三島、豊能、南河内では65歳以上の者が全入院総数の65%を占め、高率であった。
著者
内藤 林 森 淳彦 箕浦 旨彦 高木 健 別所 正利 一色 浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

次の研究成果を得た。1)船首可動翼の制御について考察を深め、可動翼を制御するための入力信号を明確にすることが必要であることから、船首船底圧力を制御信号に選定することにし、その可能性を調べる実験を行った結果、船首船底圧力と、翼への流入迎角の間には明確な相関関係があることが実験的にも明らかになった。船首船底圧力の計測は容易であり、圧力計測装置は安価なことから、良い制御信号であるとの結論を得た。2)船首船底圧力と、翼への流入迎角の間の周波数応答関数(A)を求めた。更に、その結果を使い時間領域のインパルス応答関数(A)を求めた。それを使い、規則波中で予測した流入迎角と、その実測値を比較し、船首船底圧力を使って船首翼への流入迎角を十分な精度で予測できることを示した。3)船首船底圧力を使って不規則波中における船首翼制御の初歩的な検討を、下記の手順で計算機シュミレーションを行い、検討した。(1)船首翼が最も推力を出す場合の、船首船底圧力と翼への流入迎角の間の周波数応答関数(B)を求める。(2)それの時間領域の表現である、インパルス応答関数(B)を求める。(3)船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(B)から求められた信号をリファレンス信号とし、船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(A)から求められた信号の差を補償する制御回路を設計した。(4)船首固定翼の場合と可動翼の場合について推力を計算比較した所、可動翼にすることで固定翼が発生する推力の1.5倍以上の効果があることがシミュレーション上で確認できた。(5)翼への流入迎角が15度以上になった時、翼は失速するが、その影響は統計的等価線形化手法を使って考慮した。本来、失速しないように制御することが可能であり、今後その制御法を考察する。4)船首翼を制御することで、推力発生だけでなく大幅な横揺れを軽減できることを昨年の研究で示した。更に、コンテナー船等の場合、ラッシングレスコンテナーにすることの可能性について検討を行い、その可能性が大きいことを示した。これはアンチローリングフィンは船体中央に設置することよりは、改良を加えて船首に設置する方が、よりフィンの有効性を拡大することになり、効果的であることを示すものである。5)波エネルギーの有効利用の可能性をより一層広げるために、船首にムーンプールを作り、そこに設置したウェールズタービンでエネルギーを吸収し、それを船内電源に利用する方法に関する基礎的検討を行った。ムーンプールを作るために船内空間を一部使用することになる経済的損失との兼ね合いがあるが、一つの大きな可能性を示すものである。
著者
堀池 寛 福田 武司 鈴木 幸子 山岡 信夫 近藤 浩夫 峰原 英介 宮本 斉児 峰原 英介 宮本 斉児 近藤 浩夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ピコ秒パルスを持った高輝度の自由電子レーザーを利用して、原子炉や燃料集合体等の大型構造体の非熱解体技術への適用性を実験的に調べた。軽水炉用燃料被覆管材料であるジルカロイ4等を用いて、市販最新鋭レーザーと切削形状を比較した結果、これら原子炉材料の効率的(狭切削幅)非熱プロセスが実現可能であることを示した。また、ナノ秒パルスレーザーを用い、加工切削形状へ与える基礎的な条件を確認し、厚肉構造材を加工するために必要なレーザー光および導光のための光学系が備えるべき条件を実験的に確認した。
著者
大谷 順子 大杉 卓三
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中央アジアを調査地域として、社会開発の現状と課題の調査をおこなった。人間の安全保障の概念を取り入れ、特に、保健分野、教育分野、災害、ICT(情報通信技術)の利活用促進による社会開発、地域コミュニティ開発とマイクロファイナンスの取り組みについて調査をおこなった。これらは国連ミレニアム開発目標(MDGs)を達成するための課題でもある。本研究は、先行研究である九州大学教育研究プログラム・拠点形成プロジェクト(P & P)アジア総合研究「アジア地域における人間の安全保障の観点による社会開発に関する新たなフレームワークの研究(研究代表:大谷順子)」の成果を踏まえ発展させて調査をおこない、先行研究において調査が困難であった地域を中心に調査を実施した。
著者
松沢 佑次 PARK Y.B. KOSTNER G.M FUJIMOTO W.Y 山下 静也 KYUNG Y.B.Park KOSTNER G.M.
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

最近、動脈硬化の最も大きな基盤である脂質代謝異常に人種的・地域的な特徴が存在することが明らかになった。本研究では、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の遺伝子異常と、LDL受容体の遺伝子異常の各タイプ別頻度を国内外で調査し、動脈硬化の国別の遺伝子基盤の相違を明らかにするために以下の検討をした。1.CETP欠損症CETP欠損症の変異は従来6種発見されているが、この中で比較的頻度が高いことが推察されるイントロン14の異常(IN14)及びエクソン14変異(EX15)を中心とする4変異について検討した。CETP欠損症の遺伝子異常としては、6種類発見されているが、IN14とEX15が大部分を占め、G181X変異も頻度は少ないながら、共通変異であった。IN14のホモ接合体は、全例がHDL-C100mg/dl以上を呈し、EX15のホモ接合体ではこれより低値を示す例が多かった。また、CETP遺伝子変異を有しても、HDL-C値が正常のものもあった。これに対して、国外ではCETP欠損症の頻度は極めて少なかった。日系米人の調査では、HDL-Cが90mg/dl以上のものが計27人あり、その中で、EX15のヘテロ接合体が4人、EX15とIN14の複合ヘテロ接合体が1人発見された。また、韓国においても日本人の共通変異が2種見出された。日系米人でも変異は日本人と共通していた。また、ドイツ人の高HDL血症例で新たな変異が見出され、これは日本人には存在しない変異であった。一方、米国及び欧州ではCETP活性の正常な高HDL血症例が存在し、そのリポ蛋白像はCETP欠損症と異なり、CETP欠損症以外の成因による高HDL血症の存在が示唆された。2.LDL受容体異常(家族性高コレステロール血症、FH)LDL受容体異常に関しては、我が国での遺伝子異常として見つかっているものには、約26種類の変異があったが、この中5つは共通変異で、日本人のFHの約1/3がこれらの変異で説明できた。これらの共通は日本全国で分布し、特定の地域への集積は認められていない。一方、欧米のFHではわが国で見出された変異は見つかっておらず、日本人の起源を推定する上で、アジア地区にも対象を広げて解析する必要がある。
著者
田中 一朗 戸田 保幸 松村 清重 鈴木 敏夫
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

船首尾部で発生する3次元剥離の発生機構及びその船型要素との関係を明らかにするとともに、これらの影響を考慮した船体まわりの流場、船体に働く流体力の計算法を開発することを目的とする。以下に調査法とその結果について述べる。1.通常船型を横断面積分布、偏平度分布、へこみ度分布を用いて表し、この船体が斜航する場合の流場の計算法を示した。この結果、剥離渦の強さ及び剥離線はへこみ度分布に強く依存することがわかった。2.上記計算法には剥離渦の発生初期の形状を必要とする。これを得るために、剥離渦を伴う円錐まわりの自己相似流場について調査し、剥離線近傍の剥離渦の形状を摂動法により求めた。この解はレイノルズ数が無限大の時に起きる剥離構造を示すことがわかった。しかし、この解析解は渦の端が無限遠方で渦の巻き込みを表せないため、この解を元に渦の局所的流速を用いて解を大局化させる反復法による計算法を示した。この結果、渦層は円錐からあまり離れず、有限レイノルズ数の渦層形状とはかなり異ることが明らかとなった。3.厚い境界層理論と簡易プロペラ理論を用いてプロペラ作動時の実用船型まわりの流場の計算法を開発した。その結果、プロペラ作動時においても計算結果は実験結果とよい一致を示すことがわかり、また、プロペラ作動時の方が船体表面圧力分布に及ぼす粘性影響が小さいことがわかった。また船体横断面形状をフレアーを持つように変形することで粘性圧力抵抗が軽減されることがわかった。4.船首砕波する流場を低フルード数という仮定で解析的に求めた。その結果、渦を伴っていない局所波は実験で得た波形によく似た形状となることがわかった。
著者
林 行雄 上林 卓彦 柴田 政彦 真下 節 駒村 和雄 畔 政和
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

(1)ラット脳死モデルの確立Pratschkeらの方法(Transplantation 67:343-8,1999)に基づいて、脳死導入時の循環動態の安定と脳死導入後に長期(ほぼ3-4時間)に循環動態が維持できるモデルを確立した。(2)脳死における揮発性麻酔薬の心筋感作作用現在臨床で広く用いられているイソフルレンおよびセボフルレンはハロセンに比べると心筋感作作用は弱かったが、麻酔薬を投与しない脳死ラットに比べて心筋感作作用を増強した。この事は脳死患者でのこれらの使用は不整脈の危険性が潜在的にある。(3)脳死後の心機能保護に関する研究脳死後、心臓を致死的な不整脈から守るため循環抑制が少なく、抗不整脈作用を有する薬剤のスクリーニングをハロセン-エピネフリン不整脈モデルを用いて行い、ミトコンドリアATP感受性Kチャンネル開口薬であるニコランジルがこの目的に一番かなう薬剤と考えられた。(4)周術期中枢神経による循環制御周術期不整脈のモデルであるハロセン-エピネフリン不整脈を用いて不整脈発生における中枢神経の役割を検討した。イミダゾリン受容体1が不整脈の発生を抑制することを見いだした。(5)心臓移植周術期における内因性体液調整因子の変化心臓移植手術および重症心不全に対する左心補助人工心臓植え込み術を対象にしてアドレノメデュリンに着目し、その周術期変化を調べ、人工心肺離脱後に著明な上昇を認め、心臓移植術の方がその上昇はより著明であった。人工心肺時間はほぼ同じであるが、心停止時間が心臓移植術でより長い点に着目し、本結果はアドレノメデュリンが心筋障害と関連が深い事を示唆するものであると考えている。(6)心臓移植術の麻酔管理のモニタリングの研究心臓移植術の麻酔管理では右心機能のモニターを有するスワンガンツCCO/CEDVサーモダイリューションカテーテル^<【○!R】>の有用性を示した。
著者
八木 厚志 都田 艶子 長渕 裕 毛利 政行 斉藤 誠慈 大中 幸三郎
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

準線形放物型編微分方程式の安定性を調べる問題を,適当な関数空間における時間変数についての準線形常微分方程式の安定性を調べる問題と定式化し,次にこの常微分方程式に定常解が存在したとしてそのまわりで方程式を線形化してそれに放物型抽象方程式の理論を適用することにより定常解の漸近安定性結果を示した.すなわち,関数空間において解析半群の生成作用素A(u)を係数作用素とし,u=u(t)を未知関数とする準線形常微分方程式du/dt+Au(u)u=f(u),0<t<∞,を考え,それの一つの定常解A(u_0)u_0=f(u_0)を考えた.次に,方程式をu_0のまわりで線形化dv/dt+A(u_0)v+A(u_0)(v,u_0)-f_u(u_0)v=g(t),0<t<∞,し,このときに現れる線形化作用素A_0=A(u_0)+A_u(u_0)(・,u_0)-f_u(u_0)に着目してこの作用素がスペクトル条件{λ∈C;Reλ【greater than or equal】8}⊃σ(A_0),δ>0,をみたせば線形化方程式の基本解V(t,s),0【less than or equal】s【less than or equal】t<∞,は指数関数を用いて評価できることを示した.さらに,公式v(t)=V(t,0)v_0+∫_0^tV(t,s)g(s)dsを用いてu_0の近傍からでる解はすべて時間t→∞と共にu_0に漸近することを示した,併せてその差は時間と共に指数関数的に減衰することも示した.本研究の以上の成果により,準線形放物型方程式に対する定常解の安定性問題はその定常解の線形化作用素がスペクトル条件をみたすかどうかを調べる問題に帰着されることが一般的な枠組みの中で示されたことになる.本研究結果の応用に際しては,具体的な方程式に対してスペクトル条件がいつ成り立つかを調べる問題が生ずる.これを確かめるための一般的な判定条件は,本研究では得ることができなかった.そこで,いくつかの例について数値的にこれを確かめる試みを行い計算データを集めた.このデータから,便利な判定条件を探すのが今後の課題である.