著者
辻 毅一郎 佐伯 修
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

住宅部門におけるエネルギー利用の高効率化と環境影響低減化のための方策の一つとして居住者に適切なエネルギー消費情報を提供することにより省エネを図ることの有効性について実証的な研究を行った。主な研究成果は以下のとおりである。1)ライフスタイル・住宅の室温維持特性・機器効率といった指標を説明変数とする、暖房用エネルギー需要に関する精度の高い重回帰モデル(自由度調整済み決定係数0.937)を導出した。同モデルを用い、住宅の室温維持特性の向上により、暖房用エネルギー消費を約35%、住宅全体のエネルギー消費を約5.2%削減できる可能性があることを示した。2)電力日負荷曲線生成のためのボトムアップシミュレーションモデルを改良し、より精度の高いものとした。季節依存性のある機器、日射時間に依存する照明に関して日負荷曲線の再現性を高めるとともに、住宅の室温維持特性を組み込むことにより、集合住宅に対しても適用可能なモデルとした。3)居住者に当該世帯の電力需要に関する詳細な情報を提供し、省エネルギー行動を誘起させることを目的としたエネルギー消費情報提供システム(ECOIS I)を構築し、9軒の世帯への設置した。その結果、平均で電力消費量の約9%が削減された。各機器の日負荷曲線ならびに負荷持続曲線により、暖房時室温を下げることや使用暖房機器の変更などの省エネルギー行動が行われたことを明らかにした。4)都市ガス・灯油に関する情報も表示する改良型のECOIS IIを構築し、10件の世帯への設置し、電力が約18%、都市ガスが約9%、世帯全体の暖房用エネルギー消費量が20%削減された。また、テレビ、電気ポット等に関する省エネ行動の内容を明らかにした。以上述べた通り、消費情報の提供により居住者は自ずと学習し、エネルギー消費に関する最適化コントローラとして働きうることが明らかとなった。
著者
八木 哲也 小山内 実 下ノ村 和弘
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

冷却CCDチップをFPGA(Field Programmable Gate Array)回路と組み合わせた知能バイオイメージングデバイス(IID)を開発した.IIDは,生体画像計測において,画像を取得するのみでなく、画像中の蛍光の部位やパターンなどの特徴を実時間で抽出する.IIDおよび多点電気刺激装置を顕微鏡に組み込むことによって、神経・筋組織の活動を計測かつフィードバック電気刺激し、それら組織の生理学的特性を自動計測することが可能な、新しい自動バイオアッセイシステムのプロトタイプを構築した.
著者
難波 啓一 ROLAND DEGENKOLBE ROLAND DECENKOLBE
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

細菌の運動器官であるべん毛は、20種類の蛋白質から構成される生体超分子で、回転モータである基部体、らせん繊維型プロペラとして働くフィラメント、そしてそれらを連結してユニバーサルジョイントとして働くフックと、おおまかに3つの部分からなる。べん毛フィラメントはフラジェリンが非共有結合でらせん状に重合したチューブ構造で、極低温電子顕微鏡像の画像解析による構造解析法の長年にわたる工夫によってその原子モデルの構築に成功した(Yonekura et al., Nature 2003)。フックの構造については、その直線型構造の低温電子顕微鏡像解析による低分解能立体像と、サブユニット蛋白質FlgEのX線結晶構造解析法による原子モデルを組み合わせ、機能構造である曲がったフックの擬似原子モデルを構築し、それに基づく分子動力学シミュレーションにより、ドメイン間相互作用表面で一定数の水素結合やファンデアワールス接触点を保ちつつ結合相手を順次替えて相互滑りを起こし、各素繊維が約30%にもおよぶ伸縮をしてユニバーサルジョイント機能を実現することを明らかにした。(Samatey et al.Nature 2004)Roland DEGENKOLBE研究員は、べん毛基部体の蛋白質であるFliMとFliN、そしてべん毛蛋白質輸送装置の基幹サブユニットFliIとFliHが形成する複合体について、電子顕微鏡とX線回折法を組み合わせた超分子立体構造解析手法によるその全体構造の解析をめざしている。この複合体はべん毛の自己構築過程で、輸送の効率化を計るための非常に大切な役割を果たしており、構造が解けて原子モデルが構築できれば、べん毛蛋白質輸送のしくみについて大きな手がかりが得られると予想され、大変楽しみな研究プロジェクトである。そこで、DEGENKOLBE研究員は、この複合体の構成蛋白質を共発現する大腸菌大量発現系を用いた蛋白質試料の調整法、精製法の工夫を行い、結晶化とX線結晶構造解析、そして電子顕微鏡による立体構造解析をめざした研究作業を着実に進めてきた。いくつかの条件で微小な結晶が結晶化ドロップに現れ、それを拾い上げて実験室のX線回折装置にかけて回折能を確認したが、まだ良好な回折像は得られていない。結晶化条件をさらに工夫することにより結晶をより大きく成長させ、高分解能の回折反射を観測できるよう日夜がんばっている。この種類の仕事はリスクが大きく、本来ならば、2年間のJSPS特別研究員の短い期間中に挑戦するのには多大な困難が予想されるが、DEGENKOLBE研究員はこの難しい問題に果敢に挑戦し、質の高い成果を上げようとしており、その姿勢は高く評価できる。
著者
宮崎 慶次 浜田 勝彦 井上 正二 堀池 寛 折田 潤一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、高い安全性を確保しつつ高速増殖炉の経済性の向上を図るため、中間熱交換機と蒸気発生器を一体化して簡素化する独自案AIHX(Advanced Intermediate Heat eXchanger)の展開研究である。本科研により昨年度に制作した長尺加熱装置を試験部本体として熱媒体ガリウムを追加し、本年度に購入した液体金属ガリウム循環ポンプおよび液体金属循環装置用架台を付加して昨年度の自然循環実験に引き続いて、中間熱媒体ガリウムの強制循環(Pe【less than or equal】500)熱伝達実験を行った。(1)新型中間熱交換機(AIHX)内の液体金属Gaの強制循環熱伝達特性加熱ヒーター群側では熱伝達特性はSubbotinの式(Nu=5+0.025Pe0.8)と比較して、中流速領域(100【less than or equal】Pe【less than or equal】500)では高い熱伝達を示し、Nu=5+0.05Pe0.8となる。ヘリカル状冷却管側ではHoeの式(Nu=0.43+0.228Pe0.67)に比べて高く、中Pe領域で6.34+0.256Pe0.67となった。これらの結果については、尚、精査し確認を要するが、良好な熱伝達特性を示す結果である。(2)温度揺らぎの測定と局所的な流体移動・伝達メカニズムの解析経路が単純形状の加熱側では、相互相関による局所流速は電磁流量計流速と一致する。温度揺らぎのRMS値は流速増加とともに一旦増加してから減少する。これは発生メカニズムが加熱面近傍の温度勾配に流れの乱れが加わって発生することを示している。(3)高速増殖炉実用化への適応性の検討強制循環させれば優れた熱伝達特性が得られるが、実機のような長尺では自然循環でも「もんじゅ」同等以上の特性が期待される。実験結果を精査して、詳細検討を行い、結果は学会誌に発表の予定。
著者
石黒 浩 浅田 稔 板倉 昭二 細田 耕 宮下 敬宏 神田 嵩行 港 隆史 池田 徹志 MACDORMAN K.F.
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

知的な情報システムを実現する方法には2つあり,人間のように,比較的数の少ないセンサと;脳が行うような高度な情報処理機能を組み合わせる方法と,ロボットだけでなく環境もセンサでくまなく覆い,目的達成のために必要な情報をより直接的に得る方法である.本研究では後者のアプローチにおいて,知的な情報処理システムを実現する研究に取り組んだ.具体的には,本研究とは独立に開発してきた知覚情報基盤プロトタイプ(多数のセンサからなる次世代のコンピュータネットワーク)を発展させ,これまでに開発してきた人間との対話を目的としたロボットを組み合わせることで,人間の行動に応じて知的に振舞う知的情報処理システムを実現した.研究期間における研究は,(a)行動に関する知的情報処理,(b)ロボットの行動支援のためのセンサネットワーク,(c)環境一体型ロボットの知的情報処理の主な3項目からなる.行動に関する知的情報処理では,ロボットの歩行や腕の制御,皮膚感覚の学習等,ロボットの基本機能と,ロボットやアンドロイドの見かけの問題をはじめとする人と関わるロボットに関する研究に取り組んだ.センサネットワークに関する研究では,基礎アルゴリズムに加え,床センサやカメラネットワークの利用法を研究した.環境一体型ロボットに関する研究では,センサネットワークと連動して活動するロボットを実装すると共に,遠隔操作等,それに関わる機能について研究を行った.
著者
前迫 孝徳 片山 滋友 山内 裕平 菅井 勝雄 久保 和彦 横尾 能範 木原 俊行 水越 敏行
出版者
大阪大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、教育現場で利用可能なセンサーインタフェースを開発し、ハイパーメディア上で統合させることにあった。まず、国産のパーソナルコンピュータが現場で扱い易いセンサーインタフェースを有していないことから、パラレルポートを利用してデジタル入出力とアナログ入力を行う汎用のセンサーインタフェースを開発した。次に、センサーのアナログデータを電圧・周波数交換して、微弱電波や赤外線で伝送する無線方式のセンサーインタフェースを開発した。パソコンへはシリアルポートを通してデータを転送する。さらに、これらのセンサーインタフェースを利用する授業実践を行う中で改善を加えた。一方、環境や身体情報り測定が重要な意味を有するようになってきたことを考慮し、簡単な3次元地震センサー学習状況の把握に役立つ心拍呼吸性変動測定装置を開発した。さらに、インターネットの普及の中で重要性が増したHTMLを対象とすることで、センサー情報のハイパーメディアへの統合を実現する基礎研究を行った。すなわち現場校で気象等の授業を行う際、各種の情報や他地域との比較が望まれたことから、センサーの測定結果を扱う分散データベースと、Java及びJavaスクリプトを利用しインターネットを介して情報交換を行うハイパーメディアシステムの試験運用を行った。このように本研究では、ハードウェアとして、測定対象が卓上から屋内、そして屋外の測定へと拡大しつつある状況に対応可能なセンサーやインタフェースの開発と、ソフトウェアとして、インターネット上のWWWサーバを基本要素とする分散データベース上でリアルタイム測定データを扱う統合したハイパーメディアシステムを実現する基礎が確立できたと考える。今後もシステム運用を継続する中で改善等の活動を行う予定である。
著者
宮本 匠
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度当初は、前年度より継続していたアメリカ合衆国デラウェア大学災害研究所での研究を行い、筆者が実施した新潟県中越地震や阪神淡路大震災の被災者への復興曲線を用いたインタビュー結果について、同研究所の研究者らとその分析について議論を行った。議論の中では、被災者の心理的な回復の様子をその描かれた曲線の形状に即して吟味すると、1、短期間で回復していくもの、2、長期間で回復していくもの、3、一度回復したのちに再び大きく心理的に落ち込んでしまう「2番底」を経験するもの、4、曲線の一部分あるいは全体が複数の線によって重ね描きされ心理的な不安定さを表現するもの、5、曲線が底部で停滞したまま心理的な回復がなされていないことを強調するもの、等の特徴によって類型化できることが分かった。このように類型化できる一方で、ひとつひとつの曲線、つまりひとりひとりの復興が、決して普遍的な復興モデルに回収されることのない単一性(singularity)をもっていることを強調しておくことが、復興支援にとって重要であることも強調した。また、被災者の心理的な回復場面、曲線でいえば、被災者の心理的な変化を表す曲線が下降から上昇へと転じる屈折部分で起こっている現象を理論的に明らかにするために、筆者の中越地震被災地でのアクションリサーチを記録したエスノグラフィーを柳田國男の遠野物語拾遺における説話についての社会学的考察を援用して考察し、論文にまとめた。これらの一連の被災者の心理的な回復がどのようなに現象し、どのように支えることが可能なのかについての論考は、甚大な被害を及ぼした東日本大震災からの復興や今後予期されている首都直下地震や東南海地震のような巨大災害からの復興への備えとして実践的な意義をもつと考えられる。
著者
河崎 善一郎 牛尾 知雄 森本 健志
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

降雨および雷放電をこれまでになく高精度かつ高時空間分解能で観測するシステムを開発した。このシステムは,Ku帯広帯域レーダおよびVHF帯広帯域デジタル干渉計から構成され,時間分解能1分,空間分解能十数メートルで雷嵐の降雨構造および雷放電進展構造を標定することが可能である。さらに本システムを実時間で運用するシステムを開発し,試験観測を行った結果,雷嵐の詳細構造が明らかとなり,有用性が示された。
著者
佐治 文隆 木村 正 大橋 一友 松崎 昇 鮫島 義弘 古山 将康
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

ヒト初期胚の着床過程において、初期絨毛と子宮内膜細胞の相互作用について検討した。(1)子宮内膜細胞における細胞外マトリックスとこれを分解するプロテアーゼ(MMP)子宮内膜細胞におけるMMPの発現を期質含有ポリアクリルアミド電気泳動法を用いて検討し、72KDと92KDゼラチナーゼの発現パターンが性周期によって変化していることを明らかにした。また異所性子宮内膜細胞はその伸展に従ってMMP産生が亢進したが、TIMP(インヒビター)産生は不変であった。(2)子宮内膜における細胞外マトリックスの分泌免疫組織学的検討により基底膜の細胞外マトリックス(ラミニン、IV型コラーゲン)は内膜腺上皮の基底膜と間質細胞周辺のマトリックスに存在した。間質の細胞外マトリックス(フィブロネクチン、ビトロネクチン)は子宮内膜の間質全体および内膜腺上皮の基底膜部分に局在した。(3)胎盤絨毛の増殖分化とサイトカイン胎盤絨毛ではIL-6とそのレセプターによるhCG産生系が存在し、この系はIL-1とTNF-αにより分泌亢進がみられ、TGF-βでは制御がみられた。しかし初期絨毛ならびに培養絨毛癌細胞系ではTNF-αによるhCG分泌阻害が観察された。また初期胎盤から得られた絨毛細胞はフィブロネクチンと特異的に接着することが判明し、着床過程におけるフィブロネクチンの関与が示唆された。
著者
江草 宏 矢谷 博文 佐伯 万騎男 横田 義史
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究計画は、小分子化合物をId2遺伝子欠損マウスに由来する骨芽細胞および破骨細胞に作用させることで、新たな細胞内分子機構を探索することを目的として行われた。その結果、小分子化合物harmineは、破骨細胞分化に重要な役割をするNFATc1の活性をリン酸化酵素DYRK1Aの阻害を介して増強するが、同時に破骨細胞の分化抑制因子として作用するId2の発現を増強する結果、破骨細胞分化における細胞融合を著明に抑制することを明らかにした。
著者
青木 正治
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ミューオン電子転換過程は、超対称性シーソー理論などにおいて10^<-14>程度の頻度で観測できる可能性が示唆されている。ミューオンの異常磁気モーメント測定からも、10^<-14>レベルでミューオン電子転換過程が起る可能性が指摘されている。これは、素粒子の標準理論を超えたTeV領域の物理現象であり、発見されれば宇宙・素粒子の研究に大きなインパクトを与える。本研究の目的は、プロダクションターゲット中に生成されるミューオニックアトムから直接放出される電子を測定することによってミューオン・電子過程の探索を行う実験方法の開発を行うことにある。本年度は、J-PARC MLFで行う実験のデザインを具体的に行った。まず、カナダ国TRIUMF研究所と協力して、大立体角新設ビームライン(Hライン)のコンセプトを確立した。本ビームラインは多様な用途に使用する事ができるように設計されており、ミューオンg-2測定実験等、他のミューオン物理とのシナジーが大きい提案とすることができた。また、J-PARC MUSEグループとの共同研究において、プロダクションターゲットとしてシリコンカーバイドを使用する事に思い至った。プロンプトキッカーや検出器のデザインも行い、その結果をJ-PARC実験プロポーザル(P41)として提案した。また、KEK物構研S型課題としても申請を行った。いずれの審査委員会においても、本実験提案の物理的な意義などに対して非常に高い評価を得る事ができた。加速器からのパルス陽子ビームの時間構造に関しても、J-PARC RCS加速器グループと共同で測定を進める事ができた。これまでの測定では、本実験に必要とされるプロトンビーム時間構造の達成は可能であるとの感触を得ている。これに関しては引き続き研究を進める予定である。
著者
藤元 優子 藤井 守男 山岸 智子 ターヘリー ザフラー 佐々木 あや乃 竹原 新 アーベディーシャール カームヤール 佐々木 あや乃 鈴木 珠里 竹原 新 タンハー ザフラー ターヘリー 藤井 守男 前田 君江 山岸 智子 山中 由里子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究はイランにおける多様な文学的言説を、ジェンダーを分析的に用いて総合的に検証することで、文化的周縁に置かれ、常に歪められてきたイラン女性の実像を明らかにし、ひいてはイスラーム世界に対する認識の刷新を図ろうとした。古典から現代までの文学作品のみならず、民間歌謡、民話、祭祀や宗教儀礼をも対象とした多様なテクストの分析を通して、複数の時代・階層・ジェンダーにまたがる女性の文学的言説の豊潤な蓄積を立証することができた。
著者
浅野 富美子
出版者
大阪大学
雑誌
Gallia (ISSN:03874486)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.50-62, 1958
著者
小泉 圭吾 平田 研二
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本申請研究では電池駆動の無線通信器と小型センサとの組み合わせにより、地盤災害監視装置および都市環境モニタリングのためのセンサユニットのハードとソフトを開発することを目的とした。平成18年度の研究成果は下記の通りである。(1)防水機能を有するハウジングの開発を行った。また、車を利用した環境モニタリングのためのハウジングの開発を行った。(2)センサからの出力データを汎用ソフトで分析し、データベース化するシステムの検討を行った。(3)温度、湿度、照度、気圧、加速度が計測できるマイクロセンサを入手し、無線通信によってデータが出力されることを確かめた。温度センサ、湿度センサについては、精度検証を行った。また、無線通信システムについては、アドホックネットワークの確認、および屋外での通信距離の確認、遮蔽物による通信障害の影響についても実験を行った。(4)ヒートアイランドモニタリングに応用可能な、移動体による環境モニタリングシステムの基礎的研究を行った。平成19年度の研究成果は下記の通りである。(5)現場実証実験として、屋内の温湿度をリアルタイム監視できるシステムを構築した。その際、最適なセンサの配置形状の検討を行うとともに、防火扉などの無線通信が困難な環境下におけるシステムの安定性を実現した。(6)屋外の実証実験としては、高速道路沿いのり面において、センサネットワークの通信実験を行い、最適な通信距離およびセンサの配置形状について検討を行った。センサについては傾斜計、水位計、雨量計、サクション計、土壌水分計、カメラについて検討を行い、実証実験が行えるよう通信手法とセンサの設置手法に関する基本設計までを終了した。(7)道路沿いのり面監視および都市環境モニタリングに関する基礎データベースを作成した。
著者
阪田 弘一
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

非建築材特にコンテナや車両を用いた建築物(以下コンテナ建築とする)の実態について、事例調査により明らかになったのは以下のことである。1) 現行法規ではコンテナ建築を建設するには仮設建築物として認められたもの以外、多くの制約がある。2) コンテナ建築の使用者による評価は、コスト、工期、建設や撤去の容易さなどの面で優れているが、一方で居住性に問題があるという結果となっている。さらに居住性を向上させるために加工を施すことがコスト高を招くなど、本来のメリットが失われていくことも明らかとなっている。これをふまえ、コンテナ建築の利用可能性について分析・考察をおこなった。1) 通常の建築物と比較した場合、コンテナの持つ利点(1)高気密 (2)コンパクト (3)リサイクル (4)仮設性(5)初期コスト小 (6)工場生産 (7)規格化 (8)移動性2) 通常の建築物と比較した場合、コンテナの持つ欠点(1)居住性 (2)法的規制 (3)加工コスト大3) コンテナ建築利用の方向性利用の方向性として、(1)恒久的、(2)仮設的(平常時)、(3)仮設的(非常時)が考えられるが、特にコンテナ建築では(2)および(3)での利用がその特性を生かせると考えられる。具体的には、住宅系 :(1)(2)部屋増築、物置等 (3)応急的住宅・倉庫商業系 :(1)貸スペース (2)店舗、貸スペース、屋台 (3)応急的店舗・事務所農業・畜産系:(1)(2)倉庫、動物檻、温室等医療系 :(3)応急的診療所・救護所等公安系 :(2)(3)派出所、検問所、拘留施設等などが有効な利用法として挙げられるであろう。
著者
藤本 和貴夫
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究はチェチェンを除けば最も中央と対立しているとされる沿海地方の政治と中央権力との関係、および地方の動向が中央政治におよぼす影響を解明することにある。ロシア沿海地方におけるナズドラチェンコ知事の立場は強力である。94年10月に始まる第1期沿海地方議会選挙では25%以上に達した選挙区が少なく、1年たっても全議員の選出が終わらなかったが、当選者の圧倒的多数は企業・組織の長と行政長官=知事の任命した行政の長であった。その結果、沿海地方には行政府が圧倒的優位性をもつ政治体制が創りだされた。さらにナズドラチェンコは95年12月に、初めて知事選を実施し圧勝した。議会は行政のチェック機関の役割を果たさなくなった。他方、ナズドラチェンコは中口東部国境線確定交渉でロシア領が中国に引き渡されるとして反対し中央と激しく対立した。97年3月の内閣改造でチュバイスとネムツォフが第1副首相に任命されると、中央は沿海地方の燃料エネルギー危機と予算の目的外支出疑惑のキャンペーンを大々的に行った。そして沿海地方の社会的経済的混乱の責任をとって知事の退陣を迫ったが、選挙で選出された知事=連邦会議(上院)議員を解任することは不可能であった。このような混乱状態は12月7日に第2期沿海地方議会の選挙が実施され正常化に向かった。この選挙から公的な職務についた人間の議員との兼職が禁止され、その結果行政関係者の候補者が激滅した。前議員のうち再選されたのは4人にすぎず、議長をはじめ大物議員の多くが落選した。そして当選者の多くを経済界代表が占めた。株式会社(公開型・非公開型)と有限会社の関係者のみで16人を数える。議会は官僚主導型から経済界主導型へ移行し、市場経済の進行の政治への影響が見られる。また97年11月に北京で中口共同宣言が署名され国境線確定問題が決着したが、地元の反対にもかかわらずロシアが領土の一部を中国に引き渡したことは注目されてよい。
著者
幡野 弘樹
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

私生活・家族生活の尊重を定めるヨーロッパ人権条約8条と、婚姻をし、家族を形成する権利を定める同条約12条に着目し、これらの条文における「家族」の意味は何かを検討することを目指した。その際、ヨーロッパ人権条約が、フランス国内の家族法における理論的・実務的影響も視野に入れて検討を行った。