著者
兵藤 不二夫
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

寒帯林の遷移過程における植物の窒素源の変化を明らかにするために、スウェーデン北部において約400年と5000年の遷移系列を対象にし、その植物及び土壌窒素の窒素同位体分析を行った。その結果、2つの遷移系列において植物の窒素同位体比が有意に変化することが明らかになった。土壌の溶存有機態窒素や無機態窒素の同位体分析の結果と合わせると、この植物の窒素同位体比の変化は、植物が溶存態有機窒素やコケによる窒素固定、そして菌根菌へとその窒素源を変化させていることを反映しているものと考えられる。
著者
大塚 愛二 田口 勇仁 百田 龍輔
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我々は、まず初めにギ酸消化法と血管鋳型法を組み合わせた新しい走査型電子顕微鏡観察法を開発した。この方法により、細動脈・細静脈など微小な血管の弾性線維構造ですら三次元で詳細に明らかにすることができた。さらにこの方法により、壊れた内弾性板の三次元構造を明らかにすることができた。
著者
岡本 玲子 谷垣 静子 小出 恵子 鳩野 洋子 岩本 里織 草野 恵美子 小寺 さやか 岡田 麻里 塩見 美抄 合田 加代子 井上 清美 尾ノ井 美由紀 松原 三智子 岡本 里香 小野 美穂 金藤 亜紀子 田中 祐子 星田 ゆかり 茅野 裕美 福川 京子 俵 志江 長野 扶佐美
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、健康課題の多様化・深刻化に伴い、保健師に求められる役割が拡大・高度化している。本研究の目的は、大学院博士前期課程の科目で実施する、保健師等のコンピテンシーを高めるための学習成果創出型プログラムを開発し効果を検証すること、及びそれを地域貢献に活かすよう普及することである。プログラムは、2回の試行と修正を経て開発された。プログラムのコンセプトは「私の学び、明日への貢献」であり、4か月間にグループ・セッションが5回、その間の個別面接4回で構成されている。期間中参加者は、現場の課題と、それを解決する自分の学習課題を明確にして、自分で決定した到達目標の達成に向けて取り組む。研究者は学習支援者として、参加者の学習成果が最大になるように支援した。プログラムを実施した結果、以下の結果に示す一定の効果が検証された。前後のアウトカム評価では、参加者の専門性発展力や公衆衛生の基本活動遂行能力、事業・社会資源の創出コンピテンシー、住民の力量を高める能力、活動の必要性と成果を見せる能力など多様な能力が有意に高まっていた。さらに、プログラム実施後の参加者の満足度と、費用に見合う効果を得られたと思う程度は高かった。また、参加者の学習プロセスにおいては、1)現状と課題への気づき、2)改善計画の実行、3)改善した成果の確認という3つの必須通過点が確認された。本プログラムは今後、大学院教育や大学と連携した自治体や企業、看護協会保健師職能による現任教育への適用可能性がある。
著者
加藤 内蔵進 松本 淳 武田 喬男 塚本 修
出版者
岡山大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

人工衛星のマイクロ波放射計データ(SSM/Iの19.35GHzと85.5GHz)に基づき,海上も含めた梅雨前線帯付近の広域降水量分布とその変動を評価するとともに,GNS雲データによる雲量や深い対流雲域の出現頻度,及び全球解析データによる水蒸気収支との関係について冷夏・大雨/猛暑・渇水(1993/1994)年の夏を中心に解析を行ない,次の点が明らかになった。1.1993年には,8月に入っても日本付近で梅雨前線帯に対応する降水域が持続したが,前線帯の位置の違いだけでなく,そこでの総降水量自体が1994年に比べて大変多く,それは,例えば5日雨量100ミリを越える「大雨域」の面積の違いを大きく反映したものである事が明らかになった。2.1993年の夏の多量の降水は,すぐ南の(〜28N)亜熱帯高気圧域からの大きな北向き水蒸気輸送により維持されていたが,日本の南の亜熱帯高気圧域内で〜28Nに近づくにつれて北向きの水蒸気輸送が急激に増大しており,単にグローバルな東アジア域への水蒸気輸送とは別に,亜熱帯高気圧自体の水輸送構造の違いが両年の降水分布の違いに密接に関連している事が明らかになった。3.7〜8月頃の梅雨前線停滞時には,1993年についても,5日雨量で見た広域の「大雨」には深い対流雲群の頻出が大きな寄与をなしていたが,台風が日本海まで北上した時には,大規模場の層状雲域である〜38N以北においても,その南側の対流雲域と同等な「広域の大雨」が見られるなど,冷夏年における梅雨前線と台風の水の再分配過程の興味深い違いが明らかになった。また,いくつかの興味深い事例について,個々の降水系のマルチスケール構造とライフサイクルについても検討を行った。
著者
新村 聡
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近代自然法学の国家論の中心をなす社会契約説は、市民政府の起源と忠誠義務の根拠を、契約・合意・同意などから説明した。この社会契約説を批判したのが、デヴィッド・ヒュームとアダム・スミスである。本研究は、ヒュームが、市民政府の起源について原始契約の存在を認めた上で、忠誠義務の根拠を契約に求める見解を批判して利害と慣習から説明したことを示した。さらにスミスが、ヒューム理論を継承発展させた「権威の原理」と「功利の原理」の理論によって市民政府の起源と服従の根拠を説明し、社会契約説への理論的批判を完結させたことを明らかにした。日本では、近年自然法思想およびヒューム、スミスらの思想はしばしば「市民社会論」と呼ばれてきた。本研究は、日本における市民社会論の歴史についても考察した。近代自然法学および重商主義の経済理論を特徴づけるのは、貨幣数量説である。ヒューは、貨幣数量説を国際的金移動の理論と結合して、重商主義の貿易規制策を批判する一方、連続影響説より貨幣数量が産出量水準にも影響を及ぼすことを認めた。本研究は、アダム・スミスが、『法学講義』で貨幣数量説と異なる銀価決定論を述べており、『国富論』では、銀価の変動を歴史的に考察する一方で、ステュアートの理論的影響のもとに流通必要量説を主張し、貨幣数量説と異なる見解を展開したことなどを明らかにした。
著者
山口 健二 赤木 里香子
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

三年間の研究の最終年度である本年度は、美術館ワークショップの調査として、大原美術館の夏休み子ども向けイベントである、チルドレンズ・アート・ミュージアムの来館者を調査した。これは三年間の継続課題であり、総括作業を経たのちに、成果はおって報告する予定である。本調査により、美術館ワークショップ経営を実証的見地から改善支援をするという本課題の目的にとって、基礎的データが得られることが期待される。さらに本年度は、岡山大学の附属図書館と共同開催した子ども向けワークショップの総括事業に重点的に取り組んできた。同図書館では、池田家文庫と呼ばれる江戸時代の古書籍・絵図を多数収蔵している(研究代表者はその普及活動を企画する委員会に参加してきた)。連携協力者である、赤木里香子准教授(岡山大学)とともに、ワークショップ・プログラムの内容、広報体制、ワークショップ支援員としての大学生の教育などについて精査した結果をふまえて、国際美術教育学会(InSEA)と、岡山大学ユネスコチェア事業として開催されたシンポジウム(「文化財の複製を活用した教育普及を考える」)で問題提起し、討議をおこなった。先駆的な取りくみを見せる美術館のケース・スタディも三年間で蓄積が進んだ。昨年度までの訪問館に加え、名古屋市美術館、三重県立美術館、滋賀県立近代美術館、長崎県美術館などで教育普及活動実践から、今後のアウトリーチ活動のあり方について指針をえた。さらに本研究を通じて共同研究を深めてきた岡山県立美術館での動きとして、来年度より学校と美術館の連携関係構築のあり方を検討する委員会が立ち上がった。研究代表はその設立準備に関わるとともに、新たに立ち上がる委員会の委員に任じられることとなり、これまでの研究を踏まえた参画が可能となった。本研究の社会還元的な面での成果といえよう。
著者
鈴木 一臣 入江 正郎 田仲 持郎 山本 敏男
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

インプラント歯科治療における骨の誘導を促すことおよびインプラント上部構造体(クラウン、ブリッジ等)の新規接着材を開発した。チタン製インプラント表面をリン酸化プルラン処理することによって、ラット脛骨に埋移入2週間後でチタン表面に新生骨の形成が促進された。一方、ウレタンジメタクリレートにアミノ酸(シスチン)誘導体を15~20%添加することで、金銀パラジウム合金に対して22.4MPa(SD:1.8)の接着強さを示し、5-55℃熱負荷2万回後においても10%の低下に止まった。
著者
佐藤 健治 溝渕 知司 西江 宏行 中塚 秀輝 佐藤 哲文 水原 啓暁
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

我々はバーチャルリアリティ応用・鏡療法(VR/MVF)を開発し、様々な鎮痛方法でも痛みが軽減しない幻肢痛やCRPS(複合性局所疼痛症候群)患者での鎮痛効果を確認・報告した。当該研究ではVR/MVFの鎮痛効果をより継続させるためVR/MVF治療を音情報に変換し音楽を作成するシステムを開発した。我々はVR/MVF治療では体内に備わる痛みを和らげる機構(内因性オピオイドシステム)が活発になると考えていて、VR/MVF治療中に作成した音楽を家に持ち帰り日常生活の場で聴くことで、体内に備わる痛みを和らげる機構が再び活発となり痛みが和らぐと期待している。
著者
岸田 研作 谷垣 靜子 藤井 大児 張 星源 乗越 千枝
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

介護保険になって、サービスを利用者が選択する仕組みになった。しかし、利用者には、サービスを選択するのに必要な情報が充分提供されてきたとは言い難い。そのため、サービスの選択は、利用者が直接行うのではなく、ケアマネジャーが勧めることが多いといわれる。しかし、ケアマネジャーは、利益誘導のため自分が所属する事業所のサービスを勧める傾向があるといわれる。そこで、本研究では、ケアマネジャーによる利用者に対する事業者情報の提供の実態について調べた。
著者
鈴森 康一 神田 岳文 脇元 修一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

これまでの多くの機構(メカニズム)では、硬い材料が用いられていた。本研究では柔らかいゴム材料のみで構成され、かつ機能性を有する新たなマイクロメカニズムの開発に関して基盤技術の構築と実際のメカニズムの具現化という2つの側面から実施した。基盤技術として、高精度なゴムの成型法や接着法を確立し、機能性ラバーシート、内視鏡用アクチュエータ、マイクロチェックバルブ、大湾曲アクチュエータといった新たなメカニズムを実現した。
著者
田中 秀雄 黒星 学 光藤 耕一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

水中で機能するメディエーター(I)を含む水溶液を分散媒、基質とメディエーター(II)を吸着あるいは固定化した固体粒子(シリカゲル、ポリマー粒子、活性炭など)を分散相とする固体粒子分散-水系電解法について組織的な研究を行い、ろ過-洗浄-濃縮といった簡便な操作で生成物を分取、水溶液(分散媒)と固体粒子(分散相)を回収・再利用する、実質的に廃棄物のない環境負荷O合成プロセスを開発した。
著者
岡 久雄 岡本 基 北脇 知己 岡本 基 北脇 知己
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, スポーツや臨床医学で広く用いられている筋電図に代わり, 筋自身の収縮特性を反映する変位筋音図(MMG)を測定するために, 身体の不随意な動きに影響されない光反射型(フォトリフレクタ)変位MMGセンサを開発した。さらに, 運動中でも測定できるよう, 電気刺激を加えて単収縮変位MMGを計測するシステムについて検討した。さらに等尺性収縮時の筋疲労実験から, 運動単位の寄与について変位MMGを用いて考察した。
著者
松島 良
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

半数体細胞である花粉におけるオルガネラ可視化形質転換体を作出した。この植物体を用いて、従来の方法では遺伝学的に単離不可能であったホモ接合体だと致死になる突然変異体の単離方法を構築した。また、花粉の精細胞のミトコンドリアを可視化できる植物体を作出し、受精時におけるライブイメージング解析を行った。その結果、精細胞と卵細胞ならびに中央細胞とが融合する瞬間におけるミトコンドリアのダイナミックな挙動を世界で初めて捕らえることに成功した。
著者
久保田 尚浩 三村 博美 島村 和夫
出版者
岡山大学
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.17-21, 1988-02
被引用文献数
2

モモ果実の渋味と土壌水分との関係を明らかにするために,コンテナ植えモモ樹の果実肥大,屈折計示度及びフェノール含量に及ぼす乾燥ならびに湛水の影響を調査した. 1)野性モモ台`武井白鳳'について果実発育第Ⅱ期(前期)と第Ⅲ期(後期)に2週間乾燥処理した.果実肥大はいずれの処理時期とも対照区より劣り,特に後期乾燥区で著しく劣った.屈折計示度は後期乾燥区で最も高かった.全フェノール,不溶性フェノール含量ともに対照区よりも両乾燥区で多かった. 2)寿星桃台,ユスラウメ台及びニワウメ台`山陽水蜜'について果実発育第Ⅲ期に約2週間,乾燥及び湛水処理した.果実肥大は各台木いずれの処理区でも対照区より劣った.屈折計示度は,乾燥処理区では対照区に比べて共台とユスラウメ台で高く,ニワウメ台で差がなかった.湛水処理区ではユスラウメ台で差がなく,ニワウメ台で低かった.全フェノール及び不溶性フェノール含量は,共台とニワウメ台では対照区よりも乾燥処理区で多く,ユスラウメ台では乾燥処理区で少なかった.湛水処理区ではユスラウメ台,ニワウメ台ともに対照区よりも多く,特にニワウメ台で多かった。