著者
汪 達紘 藤田 洋史 荻野 景規 筒井 研 佐野 訓明 中村 和行 宮崎 正博 筒井 研 佐野 訓明 中村 和行 宮崎 正博 益岡 典芳
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ヒドロキノン(hydroquinone)、ローソン(lawsone)等日常生活によく使われる化学物質を初代培養肝細胞に曝露し、高濃度になるにつれて、カタラーゼ遺伝子正常(Cs^a)及び変異 (Cs^a)とともに肝細胞生存率が有意に低くなる傾向がみられた。各曝露濃度においては、カタラーゼ活性の低いマウス(Cs^b)の肝細胞の生存率がカタラーゼ活性正常のマウス(Cs^a)に比し著しく低下した。特に美白クリームの主成分であるヒドロキノンの添加により、肝細胞のアポトーシス(細胞死)がみられ、酸化ストレス関連薬物代謝酵素CYP 2E1のmRNA及び蛋白質とともに発現が増加したことが分かった。
著者
岩月 啓氏 辻 和英 山本 剛伸 山崎 修
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.EBウイルス関連NK/T細胞増多症の疾患スペクトラム:本症の診断拠点施設としての役割を担ってきた。集積例の解析からそのスペクトラムを明確にし、悪性転化群の特徴を明らかにした(Arch Dermatol 2006,Eur J Dermatol 2006).皮膚リンパ腫登録制度を発足させ、EBウイルス関連リンパ腫の実態把握を開始。2.非侵襲的診断法および細胞内遺伝子発現解析:痂皮を用いた非侵襲的EBウイルス潜伏感染診断法を開発し(J Microbiol Methods 2007),国際特許申請中(PCT/JP2006/317851)。他のヘルペスウイルス感染にも応用し、ウイルス遺伝子産物とともに細胞内シグナルを解析(Eur J Dermatol投稿中)。3.ウイルス再活性化の証明と潜伏感染パターン変化:重症型では、病変内におけるEBウイルス再活性化シグナル(BZLF-1 mRNA)が明らかになった。一方、軽症の種痘様水疱症では、再活性化ではなく、皮膚病変内での潜伏感染IIへの移行がみられた。4.EBウイルス感染細胞株解析:樹立EBウイルス感染NK/T細胞株にて,PMAおよびある種のサイトカインによって潜伏感染から溶解感染への誘導ができた(論文準備中)。5.宿主免疫応答解析:ウイルス遺伝子発現と反応性CTLを解析して本症の主たる病態を明らかにした。6.治療への取り組み:腫瘍抗原に対する免疫応答誘導を確認し(Int J Cancer 2007),同時に免疫機構からの回避現象を解析した(Cancer Immunol Immunother 2008).EBウイルス感染細胞がHDAC阻害薬に感受性があることを見出した。EBウイルス関連疾患における免疫・薬物療法展開にとって貴重なデータを得た。7.EBウイルス関連リンパ腫を含めた診療ガイドラインを作成した。
著者
山口 信夫
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

十七世紀後半に祖国フランスを迎えられたデカルトの思想は、十八世紀にはその影響力を失ったとされる。このこと自体は間違いないのだが、デカルトの思想がこの時期において死に絶えたわけではない。十九世紀フランスにおいて、デカルト・ルネサンスといべき事態が生じた。そうであるとすれば、十八世紀フランスにおいて、デカルト主義が何らかの形で継承されていなければならない。どのようにデカルトの思想が継承されたかという問題を、デカルト神話の形成と発展を検討しながら論証する。1) フォントネルに継承されたデカルトの批判的方法の展開。十八世紀フランスにデカルト思想を伝達したフォントネルの思想文献にどのようにデカルトの方法にある批判性が継承され、具体的な問題に適用されたかを検討した。2) デカルト神話と称される場合の神話概念の検討。ロラン・バルトやギルバート・ライルなどの神話概念を批判的検討を通して、十八世紀フランスにおけるデカルト主義に関する思想史的研究におけるデカルト神話という概念を定位した。3) これまでの研究成果の再検討と補正。十八世紀フランス思想史に関する研究を参照し、本研究の充実を図った。例えば、デカルトとフェミニズムの問題は、エリカ・ハースの『デカルト的女性と旧体制における合理的言説の変異と転倒』(1992)によって、再検討した。4) デカルト・ルネサンス。十九世紀から二十世紀に復興したデカルト思想をデカルト神話という視点から概観した。5) 文献目録。これまでのデカルト神話に関する研究の網羅的文献目録を作成し、また本研究の資料を整備した。
著者
佐藤 圭子 阿部 康二
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

近年、神経細胞の新生が成体脳でも確認され、新しい神経回路付加に関与することが示されている。本研究では、てんかんおよび神経可塑性のモデルであるキンドリングで、発作発展および全般発作反復による神経幹細胞の増殖とmigrationおよび神経可塑的変化を検討した。ラット扁桃核にテタヌス刺激を1日1回加え、BrdUを6-8回目の刺激前に投与した。部分発作群(PS群)、全般発作3回群(3GS群)と全般発作30回群(30GS群)を作成し、BrdUとPSA-NCAMの免疫組織染色を行った。BrdU陽性細胞数は、PS群では、側脳室下帯(subventricular zone : SVZ)で増加したが、海馬歯状回(dentate gyrus : DG)では有意な変化はなかった。また、SVZのBrdU陽性細胞数は、3GS群と30GS群では対照レベルより有意に減少していた。PSA-NCAM陽性細胞数の増加は、3GS群と30GS群でDG、SVZ、梨状葉においてみられたが、PS群では有意な増加は認められなかった。DGにおいて3GS群では対照群の約2倍に増加し、30GS群では陽性細胞数はさらに増加したが、3GS群に比べ有意差は認められなかった。陽性細胞は、対照群ではDGの顆粒細胞層深部に限局していた。3GS群で陽性細胞の顆粒細胞層内への移動や陽性神経突起の伸長が若干みられたが、30GS群ではより顕著となった。一方、側脳室下帯(SVZ)のPSA-NCAM陽性細胞数は3GS群で対照群の約4倍に増加し、30GS群では3GS群に比較し有意な増加がみられた。てんかん脳で新生神経細胞の増殖やmigrationおよび神経可塑的変化が発作活動依存性に誘導されることが示された。また、神経可塑的変化に加え、新生細胞が形成する神経回路が、てんかん脳の機能変化や神経再構築に関与する可能性が示唆された。
著者
伊達 勲 三好 康之 杉生 憲志 徳永 浩司 小野 成紀 市川 智継 亀田 雅博
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

I型コラーゲンによる足場を形成して、神経幹細胞をカプセル化したところ、カプセル内での幹細胞の生存を確認できた。また、腫瘍形成は認めなかった。カプセル化した神経幹細胞を中大脳動脈閉塞モデルへ移植したところ、行動学的改善を認め、組織学的には、脳梗塞体積の縮小を認めた。また、移植操作に伴う、ドナー細胞への虚血負荷を減らすには、Glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)による前処置が有効であることを確認した。
著者
岡本 玲子 鳩野 洋子 岩本 里織 小出 恵子 草野 恵美子 津田 敏秀 浜田 淳 北脇 知己 芳我 ちより 合田 加代子 山川 路代 岡本 里香 福川 京子 長野 扶佐美
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の目的は、住民と意思決定者に活動の必要性と成果を見せる公衆衛生看護技術を構築し、それを習得する学習プログラムを開発することである。2011年度は、「見せる公衆衛生看護技術」を定義し、①活動の必要性を見せる技術、②活動の成果を見せる技術、③保健師の存在価値を見せる技術について内容を体系化、2012年度はそれをもとにテキスト「見せる公衆衛生看護技術」を作成、2013年5月に出版(岡山大学出版会)。2013年度はテキストを用いた教育プログラムを検討・試行した。2014年度には成果普及に向けたWEB教材を作成・公開した(http://wwwmiseru.fhs.okayama-u.ac.jp)。
著者
吉田 正夫
出版者
岡山大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

1.8種類のウニ(タワシウニ、コシダカウニ、エゾバフンウニ、タコノマクラ、アカウニ、バフンウニ、ムラサキウニ、サンショウウニ)の幼生および稚ウニの飼育を試み、理学部付属臨海実験所レベルの小規模施設における稚ウニ生産技術の確立をめざした。2.タコノマクラを除き、大規模な飼育設備を持たない施設においても、数千個の稚ウニを生産できることが判明し、実験の性質を限れば、研究者にある程度安定的にウニを供給できる目途がついた。3.海水の汚染状況は各地で異なるため一概には言えないが、適当な濾過装置を用いれば幼生飼育可能な海水を得ることができる。4.幼生飼育の餌としては、珪藻Chaetoceros gracilisが最適である。5.変態前の幼生は、30リットルパンライト容器中で、1mlあたり6個体の密度で飼育した。飼育液中に繊毛虫が発生してきたら換水した。6.幼生が8腕期に達し、ウニ原基が十分に発達したら変態誘導をおこなった。予め器壁に付着珪藻を付けておいた500リットルパンライト容器中に、プラスチックの波板を組合わせて作ったコレクターを設置し、変態直前の幼生を入れると直ちに変態を開始した。7.20°Cで飼育して、変態誘導までに要した時間は、アカウニ、21日、バフンウニ、18日、ムラサキウニ、12日、サンショウウニ、9日であった。8.変態後の稚ウニは、アナアオサやモクを餌として与えて飼育し、殻径が5mm〜1cmに達したら海へ放流した。9.500lパンライト容器で生産可能な稚ウニの数は、最大1万であろう。
著者
宮竹 貴久 松本 顕 富岡 憲治 谷村 禎一 松山 隆志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

開花、サンゴの配偶子放出、昆虫の交尾など生殖を行う時刻や季節が決まっている生物は多い。1つの集団内に生息する個体どうしでも、おたがいが生殖するタイミングがずれると交配が妨げられ生殖的な隔離が生じる。このような時間的生殖隔離に関与すると考えられる生態分子遺伝基盤を解明した。具体的には交尾時刻が5時間異なるミバエの集団間で体内時計を支配する遺伝子を調べた結果、クリプトクローム遺伝子のアミノ酸置換サイトに変異が生じていた。
著者
半田 久志
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,部分問題に分割し,部分問題毎に並行して協調的にルール生成を行う新たな進化計算を提案し,提案手法を知識導出に適用する.部分問題に分割することにより多様性を維持しつつ効率的にルールを探索する.この知識導出に確率モデルを用いた進化計算である分布推定アルゴリズムを適用・拡張した.
著者
梶原 毅 綿谷 安男 佐々木 徹
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究期間中に明らかにしたことは概略次のとおりである。1.左右内積をもつ可算生成ヒルベルトC^*双加群が有限指数をもつことと、conjugationを持つことが同値であることを証明し、また有限指数をもつ可算生成ヒルベルトC^*双加群の例を多数構成した。また、一般に直交しない可算生成基底の性質についても明らかにした。これらの結果は、"Jones index theory for Hilbert C^*-bimodules and its equivalence with conjugation theory"において刊行した。2.有理関数によってリーマン球面上に与えられる複素力学系からヒルベルトC^*双加群を構成し、それからPimsner構成によって作られるC^*-環について、単純性と純無限性を証明した。また、いくつかの例において、K-群の計算を行った。これらの結果は、"C*-algebras associated with complex dynamical system"において刊行した。3.縮小写像の組から作られる自己相似集合に対しても、ヒルベルトC^*-双加群を構成し、Pimsner構成によってC^*-環を構成した。適当な条件のもとで、構成されたC^*-環が単純かつ純無限になることを示した。代表的な自己相似集合の例であるシルピンスキギャスケットに対して二通りの構成法で作られたC^*-環が同型でないことをK-群によって示した。またコッホ曲線から作られたC^*-環のK-群も計算した。これらの結果は、"C^*-algebras associated with self-similar sets"において刊行した。4.複素力学系、また自己相似写像から作られるヒルベルトC^*双加群に対して、可算基底の具体的な構成を行った。これはもともとテント写像の場合にウエーブレット基底にヒントを得て構成したものを一般化したものであり、具体的な可算生成ヒルベルトC^*双加群に対して初めて構成されたものである。これはまだ刊行された論文には含まれていないが、複素力学系から作られるC^*-環上のKMS stateの分類を考える際に大きな助けになった。5.超越関数からも同様なやりかたでC^*-環を構成して研究した。特に指数関数から作られる場合に単純になることを示し、日本数学会等で公表した。ただし、この場合ピカールの定理により無限遠点が真性特異点になり、これをどのようにうまく扱うかが未解決な問題である。
著者
河田 政明 石野 幸三
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

従来の高頻度刺激不全心モデルに比較し、より拡張型心筋症に類似した臨床症状を有する不全心モデルの作成に、独自に開発した高頻度刺激プロトコールによって成功した。正常心犬と我々の不全心モデル犬の摘出交叉環流心標本を用いて、左室形成術(PLV)の心機能と心筋酸素消費に及ぼす効果を対比検討した。心機能に及ぼす効果:1)心収縮性-Emaxは左室形成術により有意に増加し、心収縮性の改善を認めた。2)心拡張性-拡張末期圧-容積関係は左室形成術により有意に急峻となり、心拡張性の障害を認めた。3)心弛緩能-時定数は左室形成術術後急性期には不変で、心弛緩能には影響を認めなかった。4)心ポンプ能-一回心拍出量は心収縮性と心拡張性との相反する効果のために変化は一定しなかった。以上の効果は、正常心より不全心でより著明であった。心筋酸素消費に及ぼす効果:左室形成術により左室圧容積面積-心筋酸素消費量関係において有意な左室仕事量の酸素コストの低下、すなわち心筋酸素消費削減効果を認めた。本実験の成果をまとめ,第99回日本外科学会総会「PLVの心機能に及ぼす効果:不全心と正常心との実験的比較」、第63回日本循環器病学会総会「拡張型心筋症モデルにおけるBatista手術の心拡張能並びに心ポンプ機能に及ぼす影響」、第52回日本胸部外科学会総会「左室部分切除術と心ポンプ能-正常心と不全心での効果の違い-」、第3回日本心不全学会・学術集会「EFFECT OF PARTIAL LEFT VENTRICULECTOMY ON DIASTOLIC FUNCTION IN NORMAL AND FAILING HEARTS」等の発表を行った。
著者
津田 誠
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

イネにおける白穂発生は,非生物的ストレスによる減収要因である.白穂発生程度の違いを明らかにするために,新しい遠赤外線乾燥法を用いて穂に含まれる水分の構成を調べた.穂の水分には蒸発しやすい部分(成分1),やや蒸発しやすい部分(成分2)があった.成分2は生育と気象変化に対して安定していたが,成分1は不安定であった.二つの成分が占める割合は品種で異なり,成分1が多い品種ほど塩害による白穂発生が大きい傾向があった.
著者
加藤 内藏進 松本 淳
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.GAME特別観測年であり長江流域の大洪水の起きた1998年6月下旬には,前線帯南方の亜熱帯高気圧自体はゆっくりと遷移しながらもそこでの東西の気圧傾度は維持され,水蒸気輸送を担う下層南風も持続した。この時期は,冬までの顕著なエルニーニョからラニーニャに転じた直後であったが,モンスーン西風の熱帯西太平洋域への侵入やそこでの対流活動は抑制された。2回の長江流域での大雨期は,そのような状況下での熱帯西太平洋域での対流活動の季節内変動の一連のサイクルに伴ったものである点が明らかになった。2.大陸上の前線帯でのメソα低気圧は,1991年,1998年の事例で示されるように,中国乾燥地域の影響を受けた総観規模低圧部に伴う北向き流れと亜熱帯高気圧に伴うそれ(より北へ水蒸気を輸送)とが合体して活発化した梅雨降水帯の中で,降水系がメソαスケールへ組織化されることによって形成されるという過程の重要性を明らかにした。つまり,かなり異なるスケール間の現象の受け渡しで,全体として梅雨前線帯スケールの水循環が維持されるという側面があることになる。3.年によっては春の時期から日本付近の前線帯へ向かって比較的大きな北向き水蒸気輸送が見られるが,東南アジアモンスーンが開始する前の時期(例えば3〜4月)には,中緯度の傾圧帯の中での現象であり,亜熱帯高気圧域内の現象である梅雨最盛期の水輸送システムとはかなり質的に異なる点が分かった。4.冷夏の1993年7月後半〜8月中旬にかけて,西日本を中心に,台風の北上と梅雨前線双方の影響を受けて降水量が大変多くなった。これは,15N付近を145Eから120Eへ向けてまとまりながら西進する対流活動域(〜130Eで最も強まる)が,台風の発達・北上,及び,その後の梅雨前線への水蒸気輸送,という一連のサイクルを引き起こしたこと,それに対して,春からの弱いエルニーニョの影響が季節進行の中での履歴を通して重要な役割を果たしていたことを明らかにした。5.秋雨前線帯での雲活動は,梅雨前線帯以上に東西方向の偏り方の年々の違いが大きい。これは,熱帯西太平洋域の海面水温の特に高い領域は,気候学的には9月頃に最も東方まで広がっているため,夏の熱帯の対流活動のアノマリーの履歴によって,9月の対流活動域の東西の偏りが大変大きくなりやすく,前線帯の南側の亜熱帯高気圧による下層南風強風域の東西方向の年々の偏りが大きいためであることが分かった。6.地球規模の大気環境の変動に対する東アジア前線帯の応答過程の理解を深めるために,1997/98年エルニーニョ時の顕著な暖冬への移行過程を調べた。その結果,地球規模でのアノマリーへの応答が通常11月頃に起こる急激な冬への進行を阻害することでエルニーニョが大きく影響したことを明らかにした。
著者
高橋 亮
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.剰余体のシジジーの直和因子IS.P.Duttaは,ホモロジー予想の研究を通して「剰余体のあるシジジーが射影次元有限な直和因子を持つような局所環は正則である」という定理を与えた。このことから,剰余体のあるシジジーがG次元有限な直和因子を持つような局所環はGorensteinだろうと自然に予想される。私はこの予想が第2シジジーまでなら正しいことを証明した。さらに第2シジジーが直可約なGorenstein環に焦点を絞り,その環の構造を本質的に一通りに決定した。2.剰余体のシジジーの直和因子II半双対化加群は階数1の自由加群とCohen-Macaulay環の標準加群の共通の一般化にあたる加群である。上記1で述べたDuttaの定理は「剰余体のあるシジジーが自由因子を持つ局所環は正則である」と言い換えられるが,これに関連して,剰余体のあるシジジーが準双対化加群を直和因子に持つ局所環は何なのかを考え,それもまた正則になることを証明した。(従ってこれはDuttaの定理を含む。)さらに上記1で述べた(ものと同値な)問題「剰余体のあるシジジーがG次元0の直和因子を持つ局所環はGorensteinか?」が,[環の深さ+2]番目までのシジジーについては正しいことを示した。3.G入射次元有限な有限生成加群「入射次元有限な有限生成加群を持つ環はCohen-Macaulay環である」という定理はかつてBass予想と呼ばれ,1980年代に完全解決したPeskine-Szpiroの交差定理の系として得られる。私は,入射次元が有限な加群はG入射次元も有限であることに着目して,G入射次元有限な有限生成加群を持つ環がCohen-Macaulay環かどうかという問題を考えた。まずFoxby同値と呼ばれる圏同値に留意し,入射次元とKrull次元の間のよく知られた不等式のG入射次元版を与えた。そしてその不等式を用いて,もとの問題が多少の仮定のもとに成り立つことを証明した。
著者
片岡 洋行
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、内分泌撹乱化学物質のin vivoでの毒性評価法として(1)遺伝的に雌雄で体色が異なる性的二色性メダカを用いて、形態及び体色変化をマーカーとした性転換に基づく内分泌撹乱化学物質のスクリーニング法と(2)雌特有の体内リン酸化蛋白質(ビテロゲニン)中の構成ホスホアミノ酸をバイオマーカーとする内分泌撹乱作用(エストロゲン様活性)の定量評価法を開発し、環境中の有害化学物質の毒性評価に応用することを目的とした。(1)では、緋色メダカが雄、白メダカが雌となる性的二色性メダカを用いて、孵化後の性分化が生じる時期にメダカを化学物質に曝露させ、形態学的雌雄(鰭の形状から判別)と遺伝的雌雄(色素斑点の有無から判別)を調べ、性転換魚の出現率を検討したが、稚魚が曝露中に死亡するケースが多く、明確な結論は得られなかった。(2)では、化学物質を含む水溶液中でメダカを一定期間飼育した後、5%トリクロロ酢酸を加えて蛋白質を沈殿回収した、得られた蛋白質を6N塩酸気相中で110℃、2時間加水分解した後、遊離したホスホアミノ酸は、水溶液中から簡単にN-イソプトキシカルボニルメチルエステル誘導体へ変換でき、FPD-GCにより選択的かつ高感度に分析できた。検出限界はGC注入量としてホスホセリン(P-Ser)50pg,ホスホスレオニン(P-Thr)40pgであった。雄の成熟メダカをβ-エストラジオール(E2)に曝露したところ、E2の入っていないコントロールに比べP-SerとP-Thrレベルが顕著に増加した、また、E2濃度(0.5〜10ppb)及び曝露日数(0〜10日)に依存してP-SerとP-Thrレベルは上昇したが、男性ホルモンのテストステロンによる曝露ではほとんどホスホアミノ酸レベルの上昇は認められなかった。さらに、合成エストロゲンであるEE2やDESでも著しいP-SerとP-Thrレベルの上昇が認められ、エストロゲン拮抗剤であるタモキシフェンの同時曝露によりこれらの上昇が抑制されたことから、蛋白質リン酸化レベルがエストロゲン様活性の指標になることが明らかとなった。この手法を用いて様々な環境化学物質の曝露によるエストロゲン様活性を調べたところ、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ビスフェノールA、ノニルフェノール、PCBでは、5日間の曝露でほとんどエストロゲン様活性は観察されなかったが、60日間の長期曝露によりエストロゲン様活性を検出できることがわかった、これらの結果は、メダカを環境水中に曝露、あるいは環境中に生息する卵生生物のホスホアミノ酸レベルを調べることにより、環境汚染や生態系への影響を把握できることを示しており、内分泌撹乱化学物質の新しい毒性評価法として有効な手法になるものと期待される。
著者
那須 保友 公文 裕巳 雑賀 隆史 賀来 春紀 小武家 誠 江原 伸
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は前立腺癌、中皮腫を対象にin vivoにおける実験とくに、われわれが独自に突き止めた、癌抑制遺伝子REICを用いた治療実験を実施した。ヒト前立腺癌細胞PC-3を用いて皮下腫瘍を作成しREIC発現プラスミッド封入ポリマーを腫瘍内に直接投与(計4回)し対照群との腫瘍体積の変化を比較した。腫瘍の消失を伴った治療効果を認め、REIC遺伝子発現アデノウイルスベクターを使用した治療効果とほぼ同等の効果が得られた。中皮腫については、同所移植モデルを用いて 胸腔内投与をおこなったが、腫瘍の消失は認めないものの一定の治療効果を認めた。またREIC遺伝子に関してはそのアポトーシス誘導機能ドメインはわれわれの研究において突き止められており、その結果を応用し機能ドメインを発現したポリマーによるアポトーシス誘導作用も前立腺癌、中皮腫細胞を対象として確認を行った。すなわち機能ドメインのみのフラグメント(フラグメント2)を作成し同じくポリマーに封入した試料を作成し同様の実験系を用いて治療実験をin vitro, in vivoにおいて実施した。その結果、全長のものを用いた場合とほぼ同等の効果を認めた。体重減少を指標とした安全性については特に異常をみとめなっかた。以上の研究より、ポリマーを用いた治療はアデノウイルスベクターを用いた治療とほぼ同等の安全性と治療効果を認めた。アデノウイルスベクターという生物製剤に替わる、新たなドラッグデリバリーを見出すことができた。このことは将来の実用化における汎用性すなわち取り扱いの容易さ、定量性の容易さという点においてきわめて有利な点といえる。今後さらに研究を発展させるに値する研究成果であると考えられる。
著者
加藤 内藏進 加藤 晴子 赤木 里香子 湯川 淳一
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の最終的な目的は,地球温暖化などに伴う地域気候の『変化の兆候』について(東アジアを例に),科学的視点と感覚的視点を双方向に駆使して,いち早く把握出来る『眼』を涵養するための教育プログラム開発にある。本年度は,前年度までの成果を更に発展させて取りまとめた。また,研究遂行の結果,気候変化を捉える際のベースとなる詳細な季節サイクル自体を把握する『眼』の育成が特に重要との認識が更に高まったので,その取り組みも重点的に行った。ドイツにおける5月の雨が子供を成長させるというモチーフの民謡は,気温が季節的に急昇温する時期(5月)の雨という意味が大きいことが,気象データも併せた分析によって示されるなど(論文掲載),日本の春との違いを比較できる格好の素材を提示した。一方,唱歌『朧月夜』を接点とした前年度の中学校での研究授業を分析し,春の温帯低気圧・移動性高気圧の周期的通過に伴う気象状況の特徴について,『朧月夜』の歌詞からもそれなりに的確にイメージ出来ており,気象データによる学習への活用の可能性が示唆された。また,『中間的な季節』にも踏み込んで,日本の季節サイクルと唱歌や絵画の鑑賞や色による季節の表現を軸に,学際的な研究授業を本年度も行い成果を分析した(岡大・教育学部,「くらしと環境」)(論文掲載)。更に,冬から春への進行に注目して,唱歌『早春賦』を軸に,その表現活動と気象・気候の特徴に関する学際的授業を,岡山城東高校で実施した。また,秋から冬への時期に注目し,日本海側での『時雨』を軸に,気象状況の把握と時雨を歌った和歌(新古今集等)の鑑賞に関する国語と連携した授業開発を行った。生物との連携に関しては,地球温暖化に関連するミナミアオカメムシの分布北上の実態,タマバエ類の発生期と寄主植物フェノロジーの同時性のずれなどについて研究成果を発表するとともに,本の分担執筆や各地での講演により,研究成果の普及に努めた。更に,房総半島や日本海側の海岸植生で,キク科植物に虫えいを形成するタマバエ類に関する分布調査を行い,分布北限等を確定した。一方,地球温暖化と日本付近の気候変化の昆虫への影響に関連して,昆虫類の年間世代数の増加,分布域の変化,昆虫と餌植物の同時性のずれ,高温による発育障害や繁殖障害,等,一筋縄ではいかない影響の絡み方を意識させるような研究授業を,岡大・教育学部の初等理科内容研究の講義で実施し,その成果や問題点を分析した(2011年5月に気象学会で発表予定)。なお,学校現場での参考になるよう,3年間の成果をまとめた冊子体の報告書も作成した。
著者
門田 充司 難波 和彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

農産物の生育環境から品質に至るまでの一貫したトレーサビリティを構築するために,収穫と同時に品質評価を行うロボットシステムを開発した。ロボットの操縦と果実収穫は人間が行い,果実の品質評価をロボットに搭載されたマシンビジョンで行う。各株に装着されたICタグの番号から果実収穫が行われた株の特定を行い,品質評価結果と共に保存される。これにより,生産者にとっての情報となる圃場内の果実品質や収穫量に関するマップが生成される。
著者
菅 弘之 入部 玄太郎 毛利 聡 荒木 淳一 實金 健
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

我々は丸ごと心臓における総Caハンドリング量を推定する方法を考案し、正常心のCa動態を明らかにしてきた。不全心においては、筋小胞体から漏れ出たCaが収縮に関与せずに興奮収縮連関に用いられる酸素消費量だけを増加させる(無駄サイクル)ため、従来我々が用いていた方法では、総Caハンドリング量を推定することはできなかった。そこで、我々はこのような無駄サイクルをもつ不全心の総Caハンドリング量を推定する方法を考案し、三種類の不全心に適応して、その方法の是非を検討した。1.ナノモル単位のリアノジンを冠血流に投与すると、左心室のCaハンドリング消費量は減少せずに収縮性が低下する。リアノジン投与後の無駄サイクルは、筋小胞体を介して収縮に関与するCa量の約1.4倍と推定された。2.我々はCa過負荷不全心を作成した。左心室収縮性は40%に減少し、Caハンドリングに費やされる酸素消費量は30%に減少した。しかし、収縮性の酸素コストに変化はなかった。このCa過負荷不全心では筋小胞体を介するCaハンドリング量が増加していることが明らかとなった。そして、無駄サイクルが増加しているか、正常時に比べてトロポニン結合Ca量が左心室収縮性に反映されなくなっている(Caリアクティビティの低下)か、その両方であるかの可能性が示唆された。3.虚血後再灌流心(スタンド心)では収縮性が低下し、収縮性の酸素コストは2倍であった。筋小胞体を介するCaハンドリング量は減少しており、無駄サイクルとCaリアクティビティ関係から、Caハンドリングに費やされる酸素消費量は収縮性の増加を伴わず浪費される方向にシフトしていることが明らかとなった。これらの結果から、我々が考案した新しい方法は無駄サイクルをもつ不全心にも適応可能であることが示唆された。