著者
田村 隆雄
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

吉野川流域および那賀川流域の森林流域を対象に大雨時の洪水低減機能と斜面崩壊危険性の関係について考察した.特に那賀川流域について日雨量の日本記録(当時)を更新した昭和51年台風17号や平成16年台風10号等を対象に行った流出解析から,流域の貯水能が最大になっても直ちに斜面崩壊が発生していなかったと推測され,洪水低減機能(貯水能)の大きさが斜面崩壊危険性の増大に直接繋がることはないこと,地中水量よりも直前の降雨強度がより大きな影響を与えているという推論を得た.
著者
板倉 光夫 井上 寛 森谷 眞紀 国香 清 棚橋 俊仁
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

多遺伝子性疾患の疾患感受性座位を探索する遺伝統計学手法として、患者/健常者を対象とした関連解析、および連鎖不平衡解析が多く用いられる。我々は、異なる人種で疾患感受性が報告されている候補座位に対し『遺伝子領域に配置した等間隔・高アレル頻度SNPsをマーカーとして用いる2段階絞り込み関連解析法』を独自に開発し、日本人の2型糖尿病(T2D)の疾患感受性遺伝子を探索し、遺伝統計学的に3番染色体上に新規疾患感受性候補遺伝子(ENDOGL1)を見出だした. 糖尿病発症に係わる機序を探索した結果、1)ENDOGL1遺伝子は膵β細胞に高発現し糖尿病の病態で発現が増加すること、2)ENDOGL1タンパクはミトコンドリアに局在すること、3)200mgの量ポリクローナル抗体精製に成功したこと、4)DNA/RNA nucleaseファミリーのEndo G遺伝子(アポトーシス刺激によりDNAの断片化を引き起こす)と約40%のホモロジーを持つ本遺伝子の発現が、アポトーシス誘導時に増加すること、さらに、5)ERストレスにより本遺伝子の発現量が増加することを見出だした。作製した抗体を用いて糖代謝、アポトーシスに及ぼす影響を継続して検討中である。
著者
安井 夏生 松浦 哲也 二川 健 西良 浩一
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

オステオアクチビンは膜結合型の糖タンパクで、細胞外ドメインと膜貫通ドメインをもつ。我々はスペースシャトルで無重力を体験したラットの筋肉にオステオアクチビンが高発現していることを報告した。オステオアクチビンは機械的ストレスの感知機構に何らかの役割をはたしていると考えられてきたが、延長仮骨における発現は現在まで調べられていない。本研究ではマウス下腿延長中にオステオアクチビンがタンパクレベルでも遺伝子レベルでも過剰発現していることがわかった。またオステオアクチビンの細胞外ドメインは延長仮骨には多数存在するが、延長を行わない骨切り部には存在しないことが明らかとなった。延長仮骨においてはMMP-3も高発現していたが、これはオステオアクチビンの細胞外ドメインに誘導された結果と考えられた。さらにオステオアクチビンは延長仮骨における骨吸収を抑制している可能性が示唆された。最近、我々はオステオアクチビンのトランスジェニックマウスの作成に成功し、徳島大学動物実験委員会に届け出た上で交配・繁殖させてきた。このマウスを用いて下腿延長術を行い正常マウスと比較した。予想されたとおりオステオアクチビンのトランスジェニックマウスではMM-Pが過剰発現しており、同時に延長仮骨の吸収が著明に抑制されていることがわかった。
著者
井上 哲夫 森 篤史 柳谷 伸一郎 鈴木 良尚
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

平成18年度はPbS(赤外線検出素子)、ZnS(発光材料)、CuCl(シンチレーター)、タンパク質をゲル成長させ、磁場の影響について研究した。ゲル成長を行う場合、そのプロセスは大きく二つに分けられる。一つは成長の場となるゲルの作成段階(プロセス1)、もう一つはゲルの中で実際に結晶を育成する段階(プロセス2)である。そこで磁場の印加時期も、プロセス1においてのみ(Case 1)とプロセス2のみ(Case 2)、およびプロセス1と2の全プロセスに亘って印加する場合(Case 3)の3種類を試みた。また磁場下でゲルを作成したとき磁場がゲル構造に及ぼす効果を計算機シミュレーションにより研究した。得られた結果は以下のようである。1.PbS:無磁場下では正8面体であったのが、磁場印加(Case 1)すると、八方に角の生えた形状(骸晶)になった。またCase2の場合には球晶となった。2.ZnS:磁場の有無にかかわらず、球晶が成長した。しかし球晶のサイズは磁場印加(Case 3)により大きくなった。透過電子顕微鏡(TEM)によると、球晶は5nm位のナノ球晶から構成されていることがわかった。これらの球晶の光吸収スペクトルの短波長端はバルク結晶よりも短波長側へシフトしており、サイズ効果が観察された、3.CuCl:無磁場下では正四面体であったのが、磁場印加(Case3)すると、長い針状結晶へと変化した。4.タンパク質(リゾチーム):リゾチームの配行に磁場が影響することがわかった。無磁場下ではランダムに配向するが、磁場下ではc軸が磁場に平行に配行する傾向があった。しかし、この傾向はリゾチームの濃度が高くなるにつれ弱くなった。また磁場効果として核精製頻度や成長速度を抑制することが分かった。5.計算機シミュレーション:磁場が強くなるにつれ、ゲルネットワークは平行方向に長く伸びる(セルの形状が細長くなる)傾向があった。
著者
今井 昭二
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、ファーネスアトマイゼーションの領域において黒鉛炉原子吸光法における原子化装置の中の電熱黒鉛炉の表面と分析元素の相互作用に関する基礎的成果を得た。更に、新規の分析法を提案した。(1)基礎的研究:溶液中において炭素材料に金属イオンを吸着させた場合、ある種の元素において炭素材料中の細孔に単原子状態で分散していることが分かった。この炭素材料の加熱によりイオンは原子に還元され、つづいて原子が脱離して原子蒸気の発生する。その発生する原子蒸気に関するデータから計算によって原子化の活性化パラメーターを求めることが可能となった。炭素材料の細孔の原子サイズレベルの表面の凹凸状態を示す指標の表面フラクタル次元とその原子化の活性化パラメーターに強い相関性があることが分かった。(2)新規の分析方法:本方法を用いて、炭素材料中の細孔の内壁表面の幾何学的構造を示す表面フラクタル次元を測定する新規な方法が見いだされた。表面フラクタル次元は、細孔の比表面積と関係式で結ばれ、本方法でこの表面フラクタル次元を求めることでサブナノメートルレベルの径をもつ微細孔の比表面積も求める方法が示唆された。(3)システム化:炉内での原子蒸気の発生およびそのときの温度の計測とデータ処理を最新のPCシステムを用い測定装置がシステム化された。自動分析も可能なシステムが完成した。(4)応用分析:表面のナノサイズでの制御は、分析元素の分散、共存物質の化学干渉、原子化装置表面への浸透および還元反応などを制御することで分析が困難であった環境有害微量元素のカドミウム、鉛およびヒ素の高感度分析を可能にした。(5)最近の動向:黒鉛炉原子吸光分析法における本体装置開発、関連装置開発、最新の分析方法、ナノテクノロジーおよびナノサイエンスの導入についての動向が明らかにされた。
著者
内藤 直樹
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ケニア・ダダーブ難民キャンプ複合体において、ソマリ系長期化難民と地域住民であるケニア・ソマリが構築した社会.経済的関係の様態に焦点をあてた現地調査を実施した。2011年末の時点で40万人を越える難民の大量流入がもたらすインパクトは、難民と地域住民との間に対立関係を生み出す要因となっている。その一方で、難民と地域社会の人びとの双方は、約20年もの長期にわたる相互交渉の過程で、生活上の争いを回避する制度や、商品の委託販売関係、土地の貸借・売買制度などの共生を可能にする方途を練り上げてきたことが明らかになった。
著者
長山 勝 山之内 浩司 藤澤 健司 林 英司 鎌田 伸之 布袋屋 智朗 中野 孝三郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

完全合成無蛋白培地PF86-1は組成中に血清および細胞成長因子等の蛋白成分を一切含有しない特徴を有し、多くの口腔扁平上皮癌細胞株が継代培養されてきたが、一方で継代培養が不可能な細胞株も存在する。これは増殖に必須な因子の欠乏が原因の一つと考えられる。そこで癌の問質や周囲組織の細胞が産生するサイトカインに着目し、無蛋白培養下における口腔扁平上皮癌細胞株の増殖に及ぼすこれらのサイトカインの影響を検討した。その結果、無蛋白培養下の口腔扁平上皮癌細胞株の増殖にIL-1αがオートクラインまたはパラクライン機構を介して関与している可能性が示唆された。さらに我々は新規完全合成無蛋白培地PFM-7を開発し、口腔粘膜上皮細胞の増殖に対する影響を検討したところ、この培地は従来の増殖因子を添加した培地と比較して、形態、増殖因子に対する反応、各種増殖因子およびその受容体の発現を変化させることなく口腔粘膜上皮細胞の増殖を支持した。これを用いて、同一患者由来の癌細胞と口腔粘膜上皮細胞を同一条件で培養することにより、両細胞の生物学的性状の詳細な比較検討が可能となった。そこで完全合成無蛋白培地中で継代培養している同一患者から分離培養した口腔扁平上皮癌細胞と口腔粘膜上皮細胞のmRNAからcDNAを調整し、癌細胞で発現の上昇あるいは抑制の見られる遺伝子をサブトラクションライブラリー法を用いてクローニングした。これらのうち、正常細胞に特異的に発現している遺伝子は全長430bpのcDNAで、S100蛋白との相同性を持っていた。さらに同遺伝子の発現をノーザンブロッティングにより検討したところ、多くの扁平上皮癌細胞でその発現の低下が認められた。同遺伝子の機能についても解析した。
著者
北村 嘉章
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

スギ花粉症患者において、ヒスタミンH_1受容体拮抗薬による初期療法群は無治療群と比べ、くしゃみ、水様性鼻汁などのアレルギー性鼻炎症状が抑制され、同時にその鼻粘膜のヒスタミンH1受容体遺伝子発現が抑制された。花粉症に対するヒスタミンH_1受容体拮抗薬による初期療法の分子メカニズムとして、鼻粘膜におけるヒスタミンH_1受容体遺伝子発現の亢進を抑制し、効果を発現することが示唆された。
著者
三浦 哉
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では若年者の動脈機能と身体活動量との関係を明らかにするために,10歳代の男子高校生おおび大学生を対象に血管拡張反応検査,血圧,身体活動量計によるエネルギー消費量などを測定した.多変量解析の結果,血管内皮機能には身体活動量が有意な正の影響を,収縮期血圧,年齢がそれぞれ有意な負の影響を与えることが明らかになった.したがって,若年者における身体活動量の増加は優れた血管内皮機能の維持に貢献することが示された.
著者
藤澤 健司 宮本 洋二 石川 邦夫 湯浅 哲也
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

われわれは水酸化カルシウムを出発物質として、焼結反応なしに低結晶性炭酸アパタイトの開発に成功している。炭酸アパタイトの粒径の違いによる吸収と骨形成に及ぼす影響を検討したところ、顆粒径の小さいものほど吸収が大きく、また骨形成が大きくなることが示された。さらにウサギのサイナスリフトの実験では、骨置換性と吸収性に優れ、骨補填材として有用であることが示唆された。
著者
樋口 直人 町村 敬志 久保田 滋 矢部 拓也 松谷 満
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

90年代以降の政治を一瞥すると、一見矛盾してみえる諸現象が噴出している(NPOとボランティア、住民投票、改革派知事ブームと無党派知事の当選、ポピュリズムの跋扈、新たなナショナリズムの出現)。これらは第二の近代化を背景とし、55年体制の崩壊をきっかけとして生じた政治変動であり、以下の仮説により整合的に説明できるものと考えられる。客観的条件に基づく安定的な政治的態度は、もはや一部の住民にしか該当しない。代わって、社会的ミリューとその都度の政治状況の共鳴により決定される、不安定な政治的態度が優位になる。そうしたミリューは、個人化の影響を受けて高度に断片化している。上記の諸現象は、断片化したミリューの共鳴により連合が成立した結果と考えられる。本研究の目的は、この仮説の検証により個人の社会的ミリューと政治の関係を解明することになる。今年度行ったのは、東京都でのサーベイ調査である。6区2市の有権者8500人を対象として,「ライフスタイルと政治に関する調査」を実施し、2887票を回収した。この調査は、ドイツにおける社会的ミリュー研究を参考に、日本におけるライフスタイル・ミリューと政治的態度や投票行動の関連に関する分析を行うことを目的としている。具体的には、石原慎太郎・東京都知事など政治家や政党に対する感情温度、2005年衆院選における投票行動に関して設問を用意した。衆院選における投票行動については、郵政民営化の争点効果が独立して認められ、属性の影響が争点効果に吸収されることが確認されている。暫定的な分析の結果については、茨城大学地域総合研究所年報に掲載するとともに、同研究所の研究例会でも報告した。さらに、このデータを用いてエスニック・レストランの利用者像を析出し、多文化主義をめぐる基礎資料として在日外国人に関する論文で使用した。
著者
田村 隆雄
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は入手が容易な河川水位データや地形図データを元に,中小流域以上の河川流域に置いて,雨水流出や物質流出を容易に行うことのできる汎用的な分布型流出モデルを構築することが目的である.平成19年度は,雨水流出については,一級河川吉野川上流域を対象にした流出解析を行い,森林斜面の保水能の評価などを行った.物質流出については,小雨年であったため使用に耐えうる洪水時の水質データを観測することができずモデル解析も行えなかったが,吉野川上流域の本流及び支流(例:貞光川,銅山川など)対象にした,平水時の詳細な水質観測を通して,土地利用状況や地質と水質特性(溶質濃度やヘキサダイヤグラムの形状特性)との関連性を検討し,物質流出を対象とした分布型流出モデル構築のための重要な知見の蓄積に努めた.成果をまとめると以下の通りである.1.雨水流出を対象とした分布型流出モデルを吉野川上流域の洪水時水文データに適用して,小流域毎(1km^2〜25km^2)の保水能の評価を行うことができた.植生の異なる岩木川上流域の森林流域の保水能と比較したところ,スギ人工林である吉野川上流域の保水能とブナ天然林の岩木川上流域の保水能はほぼ等しいという知見を得た.2.貞光川,銅山川,早明浦ダム上流の吉野川の3流域を対象にして,1流域当たり20箇所程度の詳細な平水時水質観測を行い,土地利用状況や地質と水質特性の関連性を検討した.その結果,珪酸は地質地形(崩壊地)及び土地利用(鉱山)の影響を強く受けること.硝酸は田畑や集落の近くで濃度が高いほか,上流での用水取水があるとその下流の濃度が高くなる傾向があることなどが分かった.
著者
樫田 美雄 寺嶋 吉保 玉置 俊晃 藤崎 和彦 出口 寛文 宮崎 彩子 高山 智子 太田 能 真鍋 陸太郎 五十嵐 素子 北村 隆憲 阿部 智恵子 岡田 光弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ビデオエスノグラフィーという新しい研究手法を開発しつつ、実際的な分析にも成果をあげた。即ち、大学生が専門技能を学ぶ実践の状況を相互行為の観点から明らかにした。例えば、医学部PBLチュートリアルにおいて、レントゲン写真をみる'専門的'方法としての「離して見る」という技法が、教師から学ばれ、学生集団のなかで模倣的に獲得されていく状況が確認できた。教育を結果から評価するのではなく、プロセスとして分析していくことへの展望が得られた。ISCAR第2回サンジエゴ大会等で報告を行った。
著者
山内 暁彦
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-36, 1997-02-20

A Voyage to Lilliput, part one of Gulliver's Travels, contains three 'documents'; the 'Inventory' of Gulliver's belongings, the 'Instrument' of the conditions for his liberty, and the 'Articles of Impeachment'. According to the whole setting of the book, we may suppose that Gulliver incorporated these documents that had been written by others in the Lilliputian language into his Voyage. The documents are very conspicuous on the pages of the text because of their different form and style. We can imagine the whole process concerning the incorporation of them provided that we make some efforts to compensate some contradictions in the narrative. When reading, we can appreciate the story through paying attention to the details of the narrative, especially to the element of humour that is remarkable on the surface of the work. One of the most fascinating ways of reading the Voyage is to suppose the Lilliputian documents are composed according to their peculiar manner of writing, to write letters aslant from one corner of the paper to the other. This is imitated in the letter from Mrs Howard, who understood the element of humour of the Voyage. Lilliput is a country that is dominated by law. There is a close relationship between the legal documents and Gulliver's fate. In particular, the affair concerning Blefuscu greatly affects his fate. Gulliver's obligation to fight with Blefuscu is stipulated in the 'Instrument'. His refusal of the emperor's command to conquer Blefuscu is pointed as evidence in the 'Impeachment'. From the view-point of Gulliver's fate, which is determined by these legal documents, we can identify a coherence in the narrative of A Voyage to Lilliput.
著者
後藤田 貴子
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究はシンナーを吸引する人における肝障害について検討することである.トルエン序在下で培養したヒト肝癌細胞で障害が認められ,トルエンを吸入させたラットの肝臓でも障害が認められた.また,ラットのトルエン吸入群で肝線維化が認められ,肝線維化に影響を及ぼす因子も増加していた,よって,トルエンが直接,肝細胞の障害を引き起こし,さらに,トルエン吸入により肝線維化に影響を及ぼす因子が活性化することにより,肝」臓に線維化をもたらす可能性が示唆された.
著者
饗場 和彦
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本がPKOや難民支援のために自衛隊を送ったのは1992年の国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)が初。以後、モザンビーク、ルワンダ、ゴラン高原(シリア・イスラエル)、東ティモールと派遣され、イラクにも特別措置法に基き2003年末から派遣されている。本研究ではこうした自衛隊の活動の実態を検証し、課題を分析、考察した。東ティモールはすでに終了し、イラクは治安が改善しないため現地調査に入れなかったが、ゴラン高原は現地調査を実施し、国内ヒアリングなどを行った。成果としての主な知見は、まず致命的弱点としての現地における適応障害の存在、である。自衛隊は憲法との関係上、宿命的に「軍隊でないこと」を条件付けられているが、PKOをはじめ紛争地における平和構築支援としての活動においては「軍隊であること」を求められるため現場では大きな乖離、矛盾が発生、しわ寄せは現地の自衛隊員に行っている。また、海外における自衛隊の活動の「性質」についての区別、も重要。自衛隊の海外活動は、概念としては、a)日米同盟の観点から日本の安全保障という国益を図る性質の強い活動と(日米同盟のための海外派遣)、b)国連などの多国間協調の観点から国際社会の公共益に資する性質の強い活動(国際社会のための海外派遣)、とに区分でき、この視点を区別しておかないと自衛隊の海外派遣は軍事主義としての危険性をはらむ。さらに、民軍関係の問題も大きな課題としてある。近年の平和構築支援の活動では軍事組織と文民組織が共同して当たる形が多いが、そこでの両者の関係のあり方、協働の仕方は功罪両面あり、自衛隊としても早急に検討され対応されねばならない課題である。
著者
片岡 佳子 有持 秀喜
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

徳島大学病院皮膚科外来にて軽度のアトピー性皮膚炎と診断された患者の自然排泄便の菌叢をTerminal-Restriction Fragment Length Polymorphism法と培養法により解析した。食物摂取頻度調査票を用いて調べた被験患者の食生活には特に偏りはなかったが、菌叢のパターンは健常人とも潰瘍性大腸炎患者とも異なっていた。また、糞便中の総菌数、好気性菌の生菌数は健常人と同程度であり、潰瘍性大腸炎のような菌叢の多様性の減少は見られなかった。
著者
井戸 慶治
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-94, 1997-02-20

Die Teplitzer Fragmente von Novalis kann man fur eine in sich abgeschlossene, zur Veroffentlichung bestimmte Fragmentsammlung halten, obgleich sie tatsachlich nicht zu seinen Lebzeiten erschienen ist. Die vorliegende Arbeit ist ein Versuch, wichtige Fragmente davon zu interpretieren, die Zusammenhange untereinander zu finden und dadurch die Bedeutung der ganzen Sammlung zu betrachten. Im Mittelpunkt der Sammlung steht die Philosophie des taglichen Lebens. Sie enthalt das Historische und das Philosophische, d. h. eine passive Haltung der Beobachtung und Beschreibung des Alltagslebens und eine aktive Haltung des Denkens daruber und des diesem entsprechenden Handelns. Und auf das letztere wird Gewicht gelegt. Also wird eine tatige Einwirkung auf Gegenstande z. B. auf die Gesellschaft, Stimmung empfohlen. Die Frau ist auch eins der Hauptthemen der Sammlung. Sie wird als ein Wesen betrachtet, das voll von Widerspruchen ist und das Hohe und das Niedere zugleich hat, und trotzdem als Ganzes zusammenhangender ist, als der Mann. Aber wegen ihrer Unkalkulierbarkeit und Unbegreiflichkeit reizt sie ihn als ein liebliches Geheimnis. Die Philosophie des taglichen Lebens enthalt auch die Kunst, im Gewohnlichen einen hoheren Sinn zu finden, oder besser gesagt, einen eigentlichen, dem Dinge zugehorigen Sinn wiederzufinden. Dadurch verwandelt sich z. B. das Essen in Genuβ des Geistigen, Erwachen in das Bewuβtsein der Planeten, Schlaf in Tod, ein Tag ins ganze Leben, tagliches Leben in Gottesdienst. So bezieht sich die Philosophie des taglichen Lebens auch auf das Religiose, die Frommigkeit im weiteren Sinn. Mit dieser Kunst kann man frisch und lebendig das tagliche Leben fuhren. Eins der Teplitzer Fragmente erwahnt zum erstenmal den magischen Idealismus, aber dessen Inhalt wird merkwurdigerweise nirgends in der Sammlung erklart. Literaturwissenschaftler haben ihn schon langst als den Kern der Philosophie von Novalis angesehen, und doch davon verschiedene Auffassungen gehabt. Mit einem Wort ist er hochstwahrscheinlich tatiger Gebrauch der Organe. Durch die sinnliche Organe (Sinne) nimmt man z. B. gewohnlich auβere Dinge wahr, d. h. man nimmt sie in sich auf. Tatiger Gebrauch der Sinne ist ein umgekehrtes Verfahren. Man bringt hier durch seine Sinne etwas aus seinem Inneren in die auβere Welt hervor. In einem Fragment auβerhalb der Sammlung steht, daβ Kunstler das tun. Der Musiker hort heraus, d. h. hort eine Komposition schaffend, oder komponiert und hort zugleich. Ebenso sieht der Maler heraus, d. h. sieht im Gedanken ein Bild malend. Es gibt auch den tatigen Gebrauch des Denkorgans usw. Und schlieβlich ist es Poesie, die mit diesem Verfahren aus dem Inneren eine neue Welt in ihrer Totalitat schafft. Magischer Idealismus legt fur die Philosophie des taglichen Lebens einen theoretischen Grund, oder mit anderen Worten, das letztere ist die Anwendung des ersteren auf das Nachste. Auf diese Weise schlieβen sich bei Novalis ein scheinbar sehr spekulatives Denken und ein gewohnliches, praktisches Leben ohne sichtbare Kluft aneinander an.
著者
後藤 直子 佐藤 健二
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学総合科学部人間科学研究 (ISSN:09199810)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.25-39, 2006

The purpose of this study was to investigate the experience rates and gender differences of self-injurious behaviors (SIB) and aggressive behaviors among the healthy undergraduates in Japan. In addition, we tested whether alexithymia, which is a personality construct defined as a difficulty in identifying and expressing emotional experience, mediates between childhood maltreatment, SIB, and aggressive behaviors. The sample was comprised of 300 (143 male, 157 female) undergraduate students. Measures were the Childhood Trauma Questionnaire, the Toronto Alexithymia Scale-20, the Self-Injurious Behaviors Questionnaire, which assessed the lifetime frequency of six methods of superficial self-injury, and the Aggressive Behaviors Questionnaire. As results, there were gender differences in 3 variables of emotional abuse, physical neglect and emotional neglect. Multiple Regression analyses revealed that the correlation between maltreatment and alexithymia was positive also in Japan. The relation was not seen between maltreatment and SIB even in the undergraduates in Japan. And, the relation was not found between alexithymia and SIB. Furthermore, the relation was not found between maltreatment, aggressive behaviors and alexithymia in the undergraduates in Japan. It was suggested that alexithymia does not contribute significantly as the mediational factor between childhood maltreatment, SIB, and aggressive behaviors among undergraduates in Japan. One reason that the hypothesis of this study was not supported may be that the quality of the SIB in this sample differed from that of previous study.