著者
西川 義晃
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度の実績は以下の通りである。本年度は研究期間の最終年度に当たる。1.従前と同様に、明治23年商法制定以降、昭和25年商法改正前(以下、「旧商法下」とする)における会社法について、これを大規模公開企業法制と位置付ける観点から研究を進めた。まず、株式会社の設立規制および発行市場法制に関して、資料収集及びその分析を進め、成果を発表した。旧商法下においては募集設立が原則と考えられており、設立と同時に発行市場の形成が想定されていた。一方、設立時には、発起人による払込金の取込詐欺や払込の仮装などの違法行為が問題となっていた。そのため旧商法は厳格な設立規制を構築すると同時に、学説は公募に応募する公衆の保護を強く主張していた。一方、平成17年制定の新会社法は設立規制を緩和したところ、ここでは設立にまつわる弊害対策という観点が乏しいように思われ、設立規制は再検討が求められるように思われる。2.旧商法下の発行市場における相場操縦の研究を進め、その過程で現代の相場操縦規制に関し、相場操縦にかかわる民事責任について判例研究を執筆し公表した。3.新たに大規模公開企業の取締役の責任に関して、旧商法下における取締役の私財提供を研究し、成果が間もなく公表される(本年4月15日)。日興コーディアルグループにおける3億円の私財提供など、近時、私財提供は話題に上ることが多い。旧商法下において私財提供は、主に昭和2年金融恐慌の際に行われており、これと昭和13年商法改正による損害賠償請求権の査定制度との関連について考察した。査定制度は訴訟で確定すべきものを、裁判所の後見的判断により迅速に明確化するものであり、民事訴訟による責任追及と私財提供の中間的な位置づけにあったと言えるように思われる。4.昨年度、金融商品取引法の沿革について文章化したが(上村達男(編著)『金融商品取引法』中央経済社)、発行が遅延している。
著者
宍戸 宏造 鳥澤 保廣 久山 哲廣 新藤 充
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

2年間にわたり、細胞接着分子誘導阻害活性を持つ2種の海洋産天然物、ハリクロリンおよびラソノリドAの合成研究ならびにハリクロリン合成中間体の生物活性評価を行い以下1-3の成果を得た。1、ハリクロリンの合成研究:前年度に確立した三環性コア部分の合成法を基盤に、全合成に向けて研究を展開した。その結果、全合成には至らなかったものの、重要鍵中間体までの大量合成ルートを確立することができ、数種の化合物を3で述べる生物活性試験に供することができた。また、光学活性体の合成をめざして検討を行い、鍵となるアザスピロ環部のエナンチオ選択的合成を達成した。この方法も短工程で収率も高く効率的なものである。今後、光学活性体としての全合成に大きく寄与できる結果である。2、ラソノリドAの合成研究:全合成において鍵となる2種のヒドロピラン環部のうち、C1-C16セグメントの高立体選択的合成法を確立することができた。また、C18-C25セグメントの合成も行ったが、予期に反し、C21位でのエピ化が起こり、目的物のジアステレオマーが得られた。今後、この点の解決と全合成の完結に向けて検討を加えたい。3、ハリクロリン合成中間体の細胞接着・浸潤を制御する新規医薬品リード化合物の探索:ハリクロリンを範とし、動脈硬化や難治性炎症疾患治療に有効な薬物の開発につながるリード化合物の創製を目的に、今回合成した中間体を用いて、その生物活性評価を行った。正常およびガン由来細胞株を用いてスクリーニングを行った結果、一つの化合物にアポトーシス様の現象が観測された。このものは、最もハリクロリンに類似した骨格構造と官能基を有しており、天然物そのものもアポトーシスを誘導する可能性が期待され、全合成の意義がますます大きくなった。今後、本来のVCAM-1誘導阻害活性のみならず、アポトーシスの誘導に関する生物活性についても詳細な検討を加え、分子機構の解明と新規リード化合物の創製をめざしたい。
著者
有馬 卓也
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.A57-A73, 1998-02-20
著者
西良 浩一
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

(臨床的観測)肘頭の形態と各種肘頭過労性骨障害の出現率との関係を検討したところ、肘頭疲労骨折では肘頭が台形のものに、いわゆるVEO(vulgas extension overload injury)では尺側凸のものに、疲労骨折類似型ではドーム状のものに多発することを確認した。さらに、肘頭および肘頭窩の形態と肘頭過労性骨障害との関連について検討した結果、肘頭が尺側凸型で肘頭窩が外側陥凹型では60%、肘頭が尺側凸型で肘頭窩が肘頭陥凹型では28.6%、肘頭が台形型で肘頭窩が外側陥凹型では22.2%で障害を認めた。以上より、疲労による肘頭障害は、肘頭自身の形態に加え、相対する肘頭窩の形態とのコンビネーションにも大きく影響されることが分かった。(有限要素解析)33歳男性の肘関節を1mm間隔でCTを撮影し、Mark Mentat softwareを使用して、コンピューター上で、3次元にて再構成した。作製した有限要素モデルに外反伸展負荷を与え、肘頭での応力集中点をVon Misesの解析を用い検討した。その結果、台形型では疲労骨折と同様な部位に応力集中を示し、尺側凸型では肘頭尺側先端にのみ応力集中を認め、いわゆるVEO発生部位に一致した。ドーム状の肘頭では肘頭全体に一応な応力集中を示した。有限要素からみた理論的疲労障害発生メカニズムの検討からも、各種疲労障害発現には、肘頭の形態が重要であることを示している。
著者
後藤 寿夫
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

環形動物の細胞外ヘモグロビン(Hb)は分子質量が3.5MDaに及ぶ超分子であり、ヒトHbの約50倍、リポゾームの約2倍のサイズである。これまでに、構成要素として4種のグロビン鎖(a, A, b, B)と2種の非ヘム蛋白(リンカー、L1,L2)の存在し、12個のサブ構造体(S)がリンカーによって連結されていることが知られている。本研究では、サブユニット構成、リンカーの役割、リンカーとグロビン鎖の結合様式の3点に焦点を絞って調べた。主な結果は以下の通りである。1.アオゴカイHb等のサブ構造体の分子質量をESI-Tof-MSにより直接測定することに成功して、その構成が(3(a・A-b-B))であることを明らかにした(Green, B.N., Gotoh, T., et al., J.Mol.Biol.309,553,2001)。2.アオゴカイHbを蛋白質分解酵素で処理するとリンカー鎖が優先的に消化されることを見つけた。これを利用してサブ構造体を単離し、光散乱法により分子質量を計測した。サブ構造体がグロビン鎖の12量体(3(a・A-b-B))であるとの結論を得た(後藤寿夫ら、動物学会中国四国支部会・山口・2001.5.12,13)。3.アオゴカイHbのグロビン鎖のうち3種類((a, b, B)のアミノ酸配列を決定した。配列から求まる質量値はESI-Tof-MSで求めた値によく一致し、これらのグロビン鎖に糖鎖が含まれないことを示している。また、分子系統樹を描き、2系統あることを確認しするとともに、これら2系統(サブファミリー)は脊椎動物のヘモグロピンとミオグロビンが分岐した時期とほぼ同じ頃に分岐したことを明らかにした(本年度の動物学会中国四国支部会・高松で発表の予定)。4.リンカーは超分子構築の最終段階に効いていることを明らかにするとともに、リンカーの活性を検定することに初めて成功した(Gotoh et al.Arch.Biochem.Biophys.,360,75[1998])。なお、2と3については論文を準備中である。
著者
兼松 康久
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1,亜硝酸による脳虚血再灌流時、血中一酸化窒素(NO)増加の証明ラットに亜硝酸ナトリウム(NaNO_2)を投与した後、中大脳動脈に塞栓糸を挿入し脳虚血を行った。静脈血を採取し、電子スピン共鳴法にて血中HbNOを測定することにより、血中NO量の指標とした。脳虚血後、NaNO_2投与群は非投与群と比較し有意に血中NO量の増加を認めた。また非虚血群においてNaNO_2投与による血中NO増加は認めなかった。以上より、亜硝酸投与により脳虚血時、NO産生が増加することを証明した。2,脳虚血時における亜硝酸由来のNO産生系の証明増加した血中NOが投与した亜硝酸由来か確認するため、安定同位体の亜硝酸ナトリウム(Na^<15>NO_2)を投与し脳虚血を行った。検出されたHbNOは、投与した安定同位体からなるHb^<15>NOではなく内因性に存在する窒素原子(^<14>N)からなるHb^<14>NOであった。亜硝酸からのNO産生にxanthine oxidaseが関与することが知られている。xanthine oxidase阻害剤であるallopurinolおよびNO合成酵素(NOS)阻害剤であるL-NAMEを前投与し同様の実験を行った。亜硝酸投与によるNO産生増加はallopurinolで変化せず、L-NAMEにて有意に抑制された。よって、亜硝酸投与により増加した血中NOは、外因性に投与した亜硝酸由来でなく、内因性のNOS活性に由来することが示唆された。3,亜硝酸による脳虚血時、血中NO増加のメカニズムの解明亜硝酸投与による血中NO増加が内因性NOS活性に由来するかを検討するため、亜硝酸投与後、虚血脳組織局所でのNOSの発現変化およびリン酸化を調べた。虚血脳組織局所で各種NOS発現およびリン酸化に有意な変化は認めなかった。すなわち亜硝酸投与後の血中NO増加は、虚血脳組織局所でのNOS活性に起因しなかつた。
著者
森根 裕二 島田 光生 居村 暁 池上 徹 金村 普史 中村 隆範
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では肝再生における新たな調節因子をなりうるソニック.ヘッジホッグ(SHH)の作用機序についてラット肝切除モデルを用いて検討した。PCNAlabering index(L.I.)は術後24時間が最も高値で、非実質細胞ではPCNAL.I.は術後経時的に上昇した。全経過において、肝実質細胞.非実質細胞ともにPCNAL.I.は90%肝切除モデルが有意に高値であった。Shhに関しては90%・70%肝切除モデル間に発現強度の差はないが、肝実質細胞では術後24時間で最も高値で、術後経時的に上昇した非実質細胞は異なる発現パターンであった。肝実質細胞では各Zoneに均等に発現していたが、非実質細胞ではZone 1にのみ発現増強していた。Gli-1はShh発現と同様の発現パターンを呈した。本研究はShh pathwayが肝再生において、肝実質細胞・非実質細胞の再生と肝組織構築に重要な役割を果たすことを示唆した。
著者
佐藤 健二 余語 真夫 河野 和明 大平 英樹 湯川 進太郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、トラウマの筆記表現(筆記開示)が心身の健康増進・高次認知機能に及ぼす影響に関して、文化心理学・健康心理学的観点から検討することであった。自由に感情や思考を筆記する従来の方法は、健康と認知の効果に関して、統制条件のそれを上回れないことが我が国とベルギーでは示唆された。しかしながら、トラウマに対する認知的再体制化が促進される構造化開示は、精神的健康(外傷後ストレス反応の低減)および高次認知機能(ワーキング・メモリー容量の増大)を改善させることが我が国において示唆された。
著者
丹黒 章 宇山 攻 保坂 利男 清家 純一 山井 礼道 丹黒 章
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

食道癌術後、急性期(術後1週間)の栄養管理について臨床例について経静脈的栄養と経腸栄養を比較、検討したところ、術後合併症発症ならびにThl/Th2バランスに代表される免疫能には差を認めなかった。術前栄養投与に関する検証が必要であることが示唆された果実や樹皮に多く含まれるtnterpenoid(以後 ; TT)の抗腫瘍効果と抗癌剤との併用効果を食道癌cell line(yes-2)を用いたinvitroならびにin vivoで検討を行った。TTのうちbetulinic acid(BA)、ursolic acid(UA)、oleanolic acid(OA)について調べたところ、単剤のIC50はBAで13, 9μM、UAで33.3μM、OAで121.3μMで、BAが最も低く、OAが最も高かったさらに、抗癌剤(CDDP, 5-FU, CPT-11)との併用効果についても検討したところ、BAと5-FUでは相乗効果、BAとCPT-11、UAと5FUで相加効果を認め、supplementの併用投与は一部の組み合わせで、相乗、相加効果があり、抗癌剤減量の可能性が示唆された
著者
足立 昭夫 内山 恒夫 山下 知輝 野間口 雅子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

HIV-1は霊長類であってもヒトとチンパンジーにしか感染せず、かつ、ヒトにのみエイズを発症させる。このため、病原性ウイルスの研究に最も重要な個体レベルの実験・解析が不可能であった。このような状況の下、我々は世界に先駆けてサル・ヒト細胞指向性HIV-1の構築に成功した。このウイルスはGag-CAの一部(シクロフィリンA結合領域)とVifとがSIVmac由来である。本研究課題では、このウイルスを基に、1.サル細胞指向性を決定するウイルスゲノム領域の決定、2.サル細胞指向性のメカニズム解明、3.サル細胞での増殖に馴化したウイルスの構築とその特徴、4.サル細胞指向性R5ウイルスの構築、5.アクセサリー遺伝子変異体の構築とその性格、などに取組んだ。プロトタイプのサル細胞指向性HIV-1(X4ウイルス)はブタオザル、アカゲザルおよびカニクイザル由来の末梢血単核細胞に感染可能であるばかりでなく、ブタオザルとカニクイザル個体にも感染し、免疫反応を惹起させることがわかり、病原性発現機構の解明に向け大きく前進した。しかし、このウイルスはサル細胞でのTRIM5αによる抑制を解除できておらず、増殖効率がSIVmacに比較するとわるかった。この抑制に関与するGag-CA領域も解明して、増殖効率の向上したウイルスが構築された。また、細胞馴化によりSIVmacと同程度の増殖性を示すウイルスクローン(X4およびR5)も得られている。現在、上記全ての変異を持つHIV-1分子クローンとそのアクセサリー遺伝子欠損体を保持しており、個体内ウイルス複製機構/病原性発現機構の解明、アクセサリー蛋白質の役割解明、臨床応用を目指した近い将来のサル感染実験に備えている。
著者
塩田 洋 江口 洋 四宮 加容
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼疾患の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択薬として使用されている。本研究は角膜ヘルペスに対し水溶性でかつ安全な治療薬の開発を試みた。1)DNAポリメレース遺伝子発現の抑制を狙いDNAポリメレースを規定する遺伝子配列をよく検索し、HSVに特徴的な21塩基配列の部を選択し、二本鎖RNA (dsRNA)を合成した。これは21塩基対からなるsiRNAであり、理論的にはDNAポリメレース遺伝子発現を抑制する。角膜ヘルペス感染防止実験として、兎角膜にHSVを接種し1時間後から、A群はsiRNA点眼液を、B群は対象として溶解液を点眼し、HSV接種48時間後の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも樹枝状潰瘍を形成し、siRNA点眼液には感染防止効果は認められなかった。次に角膜ヘルペス治療実験として、兎角膜にHSVを接種し48時間後から、C群はsiRNA点眼液を、D群は対象として溶解液を点眼した。5日間の治療後に両群の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも地図状潰瘍を形成しており、siRNA点眼液に治療効果は認められなかった。2) carbocyclic oxetanocin G (C. OXT-G)点眼液の治療効果我々が開発中のC. OXT-G点眼液と欧米で市販されているtrifluorothymidine (TFT)点眼液との治療効果を比較した。兎角膜にHSVを接種し樹枝状潰瘍の出来た48時間後から0.1%C. OXT-G点眼液群、1%TFT点眼液群と生理食塩水点眼群に分け4日間治療した。その結果、C. OXT-G点眼液とTFT点眼液は同等の優れた治療効果を示した。研究中のC. OXT-Gは、角膜ヘルペスの新しい水溶性治療薬になり得るものと判断した。
著者
本仲 純子 村上 理一 金崎 英二 森賀 俊広 藪谷 智規 村井 啓一郎 中林 一朗
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度はルーマニア(ブカレスト市)と日本(徳島市)で大気から採取された採取された粉じん試料の分析を行った。その結果、大気粉じんに含まれる重金属の組成に明瞭な地域差が確認された。特徴は鉛の濃度がブカレストで高く、日本で低いものであった。本試料採取時には、ルーマニアは欧州で残された数少ない有鉛ガソリン消費国の一つであったため(2005年1月より全面使用禁止)高くなったものと思われる。また、日本では貴金属元素が相対的に高い結果が得られている。これは、ガソリンの無鉛化とともに、排ガス浄化用の貴金属触媒起因と考えられる。また、得られた大気環境のデータの解析に利用するためルーマニアにおける環境調査および行政の対応等の精密な調査を行った。とくに化石燃料を大量に消費し、温暖化ガスを排出する産業であるセメント産業の環境改善に関する取り組みに対して調査を実施した。これに加え、環境試料からの金属抽出に関する論文を提出した。これは、低揮発性かつ高イオン伝導性を有するイオン性液体を金属抽出用溶媒として利用するものである。さらに、窒素酸化物および大気富裕粒子状物質の削減を指向した貴金属触媒を開発した。以上の成果は、複数の国際学会(内一つはルーマニアで開催された国際会議の基調講演に選出)および国際誌への掲載がなされた。
著者
佐久間 亮
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

英領植民地における野生動物保護政策、とりわけ国立公園設立のプロセスの比較検討を 1930 年代に焦点をおいておこなった。その結果、英領アフリカにおける国立公園形成においては英本国の保護団体の影響力が行使され、それが現地社会の著しい軋轢をもたらしたこと、これに対して、英領アジア(とくにマラヤ)においては現地社会との媒介を果たすローカルな保護団体の存在が、保護政策をスムーズなものとしたことなどが明らかとなった。
著者
斎藤 博幸 田中 将史
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

血中や脳内での細胞外脂質輸送を制御しているアポリポタンパク質の遺伝子変異や多型は、脂質異常症やアミロイドーシスなどの疾患発症を引き起こす。その構造的機序解明を目的として、ヘリックス型アポリポタンパク質であるアポA-I及びアポE変異体の高次構造、安定性、脂質結合性並びにタンパク質凝集性などを調査した結果、変異によるN末ヘリックスバンドル並びにC末ヘリックス構造の破壊が疾患発症の構造的基盤であることが示唆された。
著者
宮本 賢一 桑波田 雅士 瀬川 博子
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

Klothoマウスはヒトの老化症状によく似た変異表現型を有するマウスである。Klotho蛋白の動物個体における真の役割については未だ明らかではないが、生体のカルシウム・リン代謝調節に深く関与していることが考えられている。とくに、Klothoマウスに見られるカルシウム・リンの代謝異常は、寿命決定の最も重要な要因であり、事実、低リン食でKlothoマウスを飼育し、高リン血症を是正すると、表現型の回復と、寿命の延長が観察される。Klotho蛋白とリンセンサー(type IIc Na/Pi cotransporter)は、脳脊髄液のリン濃度維持に関与しており、リンセンサーからのシグナルは脳脊髄液関門から分泌される未同定のリン調節因子の量を調節して末梢組織(腎臓など)に作用させるリン代謝ホルモン(寿命ホルモン)分泌を支配する統合性受容体(センサー)である。本研究ではリンセンサーノックアウト動物を作製し、リン代謝ホルモンの分泌を検討した結果、脳脊髄液関門においてこれらのホルモンの分泌過剰が予想された。そこで、リンセンサーノックアウトマウスおよび野生型マウスより分離した初代培養系脳脊髄液関門細胞を用いて、分泌亢進が見られる蛋白を分離し、質量分析計を用いて同定を試みた。さらに、DNAチップにより発現亢進の見られる分泌型遺伝子について解析した。これらの結果、4種類の機能不明蛋白(PKOS1, PKOS2, PKOS8, PKOS12)の発現亢進が確認された。現在、これらの機能についてノックアウトマウスを作製し検討している。さらに、klotho蛋白とPKOS12について発現部位が一致しているため、現在、蛋白相互を検討している。
著者
浅田 みちる 境 泉洋
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学総合科学部人間科学研究 (ISSN:09199810)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.125-143, 2008

This study investigated how parental attitude affects young people in thestate of "hikikomori". Thirteen mothers of "hikikomori" children wereinterviewed at the Clinical Psychology Counseling Service established in theUniversity of Tokushima .The thirteen cases divided into four groups . Type 1 :"Hikikomori" causedby hating school during teenage years, Type 2 :"Hikikomori" caused bystudent apathy,Type 3 :"Hikikomori" caused by frustration with work andType4 :" Hikikomori" caused by other reasons.Results of the data analysis by the KJ method show that parents considergood attitudes to include getting support from specialists, accepting"Hikikomori" completely,encouraging "Hikikomori" to be active (for instanceby giving them allowances) and showing gratitude for help offered by"Hikikomori". Patients consider bad attitudes to include ignoring theopinions of"Hikikomori", getting angry, forcing "Hikikomori" into actionand the self-righteous nurture manner for children.Accordingly this study, the recommendable attitude of patents toward"Hikikomori" is showed to a certain extent. I hope this study couldcontribute to"Hikikomori" getting out their difficulties.
著者
苫米地 英人
出版者
徳島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

理論的な問題解決においては、以下の二点に焦点をあてた。1)制約の超並列処理の枠組みの確立。2)非記号的情報と記号的情報の混在・融合の枠組みの確立。第一点に関しては、現在提唱中の超並列制約伝播の手法を導入した。この手法は、制約記述に情報内容の包摂半順序関係を表す有向グラフを利用し、このグラフの超並列的な伝播により制約処理を行うという特色があった。また、第二点に関しては、ニューラルネットのベクトル空間の状態と超並列制約伝播グラフの活性化状態をベクトルとグラフの変換を利用することにより関連づける手法をとった。また、工学的には特に音声情報と視覚情報の両方を利用するマルチモーダルなシステムを構築した。これには、音声認識と視覚認識に時間遅れニューラルネットと環帰型ニューラルネットをそれぞれ利用することにより、非記号的なマルチモーダル入力を実現した。これらの入力を上記の二手法により記号的な制約と超並列的に融合していくことにより、実時間システムを実現した。
著者
田島 俊郎
出版者
徳島大学
雑誌
言語文化研究 (ISSN:13405632)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.109-139, 2005-12

Dans les Trois Mousquetaires, Anne d'Autriche, reine de France, et le Duc de Buckingham, favori du roi d'Angleterre ont un rendez-vous secret dans le palais du Louvre. Lors cette entrevue ils se souviennent de leur rencontre trois ans auparavant dans un jardin d'Amiens. Cette rencontre n'est pas une invention de Dumas. Plusieurs memorialistes ont laisse des temoignages de cet episode dans un jardin d'Amiens. Une autre anecdote celebre, celle des ferrets en diamant remis par la Reine a Buckingham, voles par Milady et parvenus dans les mains de Richelieu, n'est pas nonplus inventee par Dumas. La Rochefoucauld donne, dans ses Memoires, une autre version de l'aventure des ferrets. L'objectif de cette etude est de comparer ces temoignages et de distinguer entre la realite historique et les elements de fiction ajoutes par Dumas. Dans la premiere partie, nous voulons examiner l'affaire du jardin d'Amiens. Ensuite, nous etudions la version que donne La Rochefoucauld de l'aventure des ferrets. Et a la fin, nous voyons des reactions des contemoporains a travers certains ceuvre litteraires. Ce qui nous impressionne le plus, c'est que, a l'epoque, l'amour de la reine et du favori du roi d'Angleterre etait pris pour un fait reel que l'on pouvait evoquer ouvertement. Vincent Voiture a ecrit un poeme sur l'affaire d'Amiens. Le Poete l'a recitee devant Anned'Autriche elle-meme, et la reine l'a non seulement acceptee mais aussi appreciee.
著者
藤守 義光 樫田 美雄 岡田 光弘 寺嶋 吉保
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学社会科学研究 (ISSN:09146377)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.57-73, 2007-02

本研究は,エスノメソドロジー研究,特にヴィデオ・エスノグラフィーという手法によって,医学教育におけるOSCEを分析したものである。あらかじめインタビューなどのフィールドワークを実施した上で,実際の試験場面をヴィデオ録画し,繰り返し検討する形で経験的な研究を行った。論文の前半でエスノメソドロジー研究,ヴィデオ・エスノグラフィ,フィールドワークといった調査の手続きについて詳しく述べた後,後半では,ヴィデオ録画に基づき,OSCEに特徴的な論理について詳らかにした。OSCEは,特有の実践の論理を持つ。たとえば,「身体検査を行うという側面」と「医学知識の評価という側面」を不即不離に合わせ持っている。探求の結果,OSCEが,医学生,模擬患者,そして評価者がそれぞれの関心に基づいて,「身体検査をするという課題」と「試験として成り立たせるという課題」を重なり合わせながら,自分達に望まれているさまざまな役割を協調的に遂行していく形を取っていること,すなわち共同的な諸行為の特有の実践の論理を持った集積として理解できることがわかった。