著者
長尾 真
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-8, 1991

今日,情報は社会のすみずみにまで行きわたるようになり,人それぞれによりそれぞれの仕方で活用されるとともに,また種々の影響を社会と個人に与えるようになってきた.従って,情報・情報技術の社会における実態とその影響をよく観察し,情報と人間との相互作用,相互関連性について考えることが必要である.即ち情報社会というものに対する生態学的研究が今日必要とされていると言える.本稿では,これを「情報社会の生態学」と名づけ,その試みを示す.情報の代表的な表現媒体は言語であるが,音や図形・画像,さらには動作などによっても行なわれている.かっては,印刷物に固定された情報以外はすべてその場で消滅してしまうものであったが,電子技術・計算機技術によって,各種の情報が記憶され,処理され,種々の形に変換されて利用されるようになってきた.情報爆発という言葉が示すように,情報表現技術によって膨大な情報が利用できるようになってきているが,それに従って,1人の人間にとって必要な情報の割合が極端に小さくなり,真に有効な情報の取得が困難となってきている.ここでは,社会と情報,個人と情報との関係として検討すべき課題を列挙し,情報の有効性と危険性について考える.
著者
林 賢紀 瀬尾 崇一郎 阪口 哲男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.11-28, 2016-02-25 (Released:2016-04-15)
参考文献数
21

Web技術によるデータ公開の方法としてLinked Open Data(LOD)が注目されている.しかし,既存のWeb上の情報資源の多くは人が読む利用形態に適したデータ構造のままであるなど,構造化が不十分であることが指摘されている.本研究においては,異なる性質の要素を持つ複合的な情報資源に対し,相互運用性を持ちかつ情報損失を起さずにLODを適用する方法について検討を行った.この結果,対象となる情報資源に記載されている情報を元にして,文書の構造や使用されている語彙などを分析することにより,LODへの再構成を効率的に行うことが可能であることを明らかにした.また,関連付けが可能な他の情報資源を用いて不足している情報を補うことを前提とした構造化により,人が読む利用形態に適したデータ構造に基づいていても適切なLOD の適用を可能とし利活用しやすくするための一手法を示した.
著者
吉川 次郎 高久 雅生 芳鐘 冬樹
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.21-41, 2020-02-29 (Released:2020-03-27)
参考文献数
48
被引用文献数
4 2

英語版Wikipedia 上のDOI リンクを対象に,(1) DOI リンクと編集者に関する状況,(2) 各研究分野における編集者ごとのDOI リンクの追加件数の偏りおよび占有度を明らかにするための分析を行った.結果として,まず,研究分野が特定可能な学術文献として約93 万件の参照記述を取得可能であり,ESI 分類における22 の研究分野と照合可能である.これらの参照記述を追加する編集者のうち,User は34,062 名,Bot は31 名,IP (非ログイン編集者) は16,349 名である.次に,既存の参照記述に対してDOI リンクを追加する編集を大規模かつ機械的に実行する編集者の存在により,User およびBot における研究分野全体でのジニ係数は0.93 であり,総体的に偏りが大きい.また,多くの研究分野においてそれぞれ偏りが大きい.
著者
村井 源 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.117-122, 2010-05-15 (Released:2010-07-10)

本研究では、テキストを解釈し批評する行為を科学的にとらえるためのケーススタディとして、著名な文芸批評家個人の批評テキストを網羅的に収集し、計量的な分析を行った。テキスト中の評価的語彙の共起情報の分析からは、「新しさ」「美しさ」「深さ」などが重要であることが分かった。また、テキスト中の人名から、批評家が影響を強く受けている作家・思想家を分析し、テキストの評価軸となる思想的な背景を抽出することができた。
著者
林 正治 林 洋平 田邉 浩介 青山 俊弘 池田 大輔 行木 孝夫 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.366-369, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
19

近年、高等教育機関・研究機関における機関リポジトリの普及に伴い、機関リポジトリが持つ可能性とその活用に向けた議論が盛んである。その議論の中心にある、オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)の次世代リポジトリWG では、世界中に分散した機関リポジトリを地球規模の学術コミュニケーション・ネットワークとして位置付け、新たな付加価値サービスの展開を想定したユースケース及び技術の検討を行っている。我々の研究グループでは、こうした状況を鑑み、主要なオープンソースリポジトリソフトウェアの技術比較を行ってきた。本発表では、技術比較結果の考察および技術史的な視点から、次世代リポジトリソフトウェアに求められる技術的な機能像を明らかにする。
著者
岡本 一志 丸茂 里江 佐野 悠
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.2017_010, (Released:2017-06-30)
参考文献数
13

RFID システムを用いた資料の図書館内利用調査を2 年間実施し,資料が書架から持ち出された回数およびその利用時間に関するデータ分析法を提案する.分析結果より,館外貸出に比べ3 倍程度の持ち出しが起きていること,利用時間のピークは2~4 分であり立ち読み的利用が中心であること,持ち出し回数と利用時間のピークは一致せず時期によって資料の利用形態が異なること,大半の資料が持ち出された回数はごく数回にとどまっていること,といった従来の貸出統計などには現れなかった利用傾向が確認された.得られたデータや分析結果を踏まえ,RFID システムを用いた資料利用調査の実施における検討事項についても議論する.
著者
田辺 和俊 鈴木 孝弘
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.247-267, 2019-10-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
93

近年のわが国の重大社会問題の一つである自殺には地域差が存在するため,都道府県別の自殺死亡率に有意な影響を与える要因の解明を目的とする実証研究を試みた.47都道府県の男女別年齢調整自殺死亡率を目的変数,それとの関連が推測される健康,経済,社会,自然分野の指標54種を説明変数としてサポートベクター回帰分析を行い,自殺死亡率に対する決定要因を探索し,その相対的影響度を推定した.その結果,男女別にそれぞれ12種の要因が得られ,男性では精神保健福祉士数,家計収入,患者数などの要因,女性では悩み相談,出生率,残業時間などの要因の影響が大きいことを見出した。また,これまで未検証の精神保健福祉士数や残業時間,精神状態が有意の影響を与えるが,自殺率との関係が深いとされてきた失業率や離婚率は決定要因にはならなかった.さらに,自殺率が最も高い秋田県について決定要因の結果に基づき自殺対策の提言を試みた.
著者
佐藤 知恵 村井 源 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.132-137, 2009-05-16 (Released:2009-06-27)
被引用文献数
1 1

本研究では,特定の作家の小説を特徴づける語彙とそれが所属する概念カテゴリーの特徴を調べるため,星新一ショートショート作品の特徴的概念と,その構造を計量的に抽出した.データとしては,ショートショートの第一人者である星新一氏の初期(1968年~1973年)における全720作品を電子化したテキストを対象とし,出現頻度の高い語彙の共起ネットワーク化を行うことで,星作品における概念構造を可視化した.また,各作品に特徴的な語彙を抽出し,そのカテゴリー分類を行うことで,ショートショートの特徴を計量的に抽出した.
著者
佐藤 翔 吉田 光男 安蒜 孝政 逸村 裕
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-162, 2010-05-28 (Released:2011-06-25)
被引用文献数
1

本研究では情報探索行動の起点としてのWikipediaの有効性について検討することを目的に,日本語版Wikipediaの外部リンク約119万件について,URLの詳細やアクセス障害・リンク切れの状況について調査した.結果から,1)日本語版Wikipediaからのリンクの11%程度でアクセスに障害がある,2) edu,co.jp,go.jpドメインの外部リンクでアクセス障害が多い,3) 新聞社が運営するニュースサイトで特にアクセス障害が多いこと等を明らかにした.
著者
下間 浩平
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.146-151, 2015-05-23 (Released:2015-07-11)
参考文献数
11

本稿では,『出版指標年報』『出版年鑑』『出版物販売額の実態』『特定サービス産業実態調査』の問題点と矛盾点について考察する.まず前者2者について,掲載される範囲と除外される範囲の検 討を行い,これらは出版社全体の売上のうち限られた部分しか掲載しておらず,さらにどの程度の割合が掲載されているか不明瞭であることを明らかにする.次いで後者2者について,金額を推定した根拠が明確でないこと,数字に不可解な変動が見られることを示す.その上で,4者に掲載されている数字を比較検討し,これらの間に多様な矛盾点があることを示す.結論として,出版業界に関する定量的な研究は,現状ではほとんど意味をなさないことを指摘する.
著者
小川 雄太 宮本 行庸
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.252-259, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
17

本研究では全盲の視覚障害者がテレビゲームを楽しむための必要な支援について,スーパーファミコンを用いた実践を通して明らかにした.3つのソフトについて具体的に検討したところ,構成や付加されている音声情報によっては支援がほとんど無くとも,全盲の視覚障害者がプレーできることが分かった.また,晴眼者からの必要最小限の支援によって全盲の視覚障害者と晴眼者が共に楽しめる可能性を見出すことができた.
著者
石川 一稀 村井 源
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.313-320, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
11

二次創作作品に関する物語研究は,原作が同一の作品群を対象に行われることが主だった.そこで本研究では原作が異なる二次創作群に対して,二次創作作品間の特徴の違いや共通する特徴がないか比較分析を試みた.その結果,二つの作品群に共通する『ネガティブ死亡』タイプや『キャラクター間関係変遷』タイプ,『ミーム具現化』タイプなどの二次創作作品の特徴的な物語タイプが発見できた.
著者
石井 大輔
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.85-90, 2007 (Released:2007-06-27)
参考文献数
8

音楽著作物は歴史の中で次第に社会性を帯び大量消費されていくことにより,著作権制度自体に大きな影響を及ぼし,著作権を集中管理するためのシステムがつくられていく.本稿はフランスにおける,アンシャン・レジームから革命期を経て19 世紀にSACEM の設立に至る法制度的,社会的側面から音楽著作物の流通・利用と音楽著作権の生成,発展の過程を追う.そこでは楽譜出版の歴史,フランス著作権制度,音楽著作権の管理団体の勃興が取り扱われる.
著者
船守 美穂
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.309-322, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
23

2013年にG8科学大臣会合において研究データのオープン化を確約する共同声明が調印されてから,「オープンサイエンス」という標語による施策が,各国で展開されるようになっている.一方で,その標語の概念が広く曖昧であるためか,アカデミアにおいてこの考え方は十分に浸透していない.大学等学術機関についても,これについてどこまで対応すべきなのかが明確に理解されていない. ここでは,オープンサイエンスを3の大分類,10の小項目に分け,それぞれの項目についてアカデミアの受容可能性と大学等としての対応を検討し,オープンサイエンスを進めていく上での大学等の役割と課題を考察した.大学等は公的研究資金を得た研究成果の公開や研究不正に対応した研究データ保存といった義務化に対応するだけでなく,オープンサイエンスに関わる啓蒙・普及活動と環境整備を機関内で進め,学術が新たな次元に移行していることへの対応を図ることが肝要と考えられる.
著者
村井 源 松本 斉子 佐藤 知恵 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.6-17, 2011-02-23 (Released:2011-04-13)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

本論文では,計量的な物語構造の分析を実現するために,人文的な物語分析の古典的手法であるプロット分析を援用し,分析結果に対する計量的解析を行った.プロット分析は人文学的手法であるが,一致度の計算を実施することでプロット分割と分類の正当性の数値的評価を行った.プロット分類の結果に対してn-gram分析を行うことで物語構造の連続的パターンを抽出した.また同様にχ二乗検定を用いて頻出プロットの時代的変化を抽出した.さらに,テーマとプロットの関係を分析するために計量的手法で物語のテーマ語を抽出し,作品をテーマごとに分類した.このテーマの分類結果を用いて,各テーマのプロット的な特徴を抽出した.本論文での分析はプロットへの分割と分類を計量的指標を用いつつも人手で行うという点で,完全な自動化の実現ではないが,本論文の成果は将来的な物語分析の完全な自動化の基礎になると期待される.
著者
田辺 浩介 高久 雅生 江草 由佳
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.219-228, 2013-07

本研究では,FRBR のWork・Expression のエンティティを,既存の運営母体によって作成・管理された書誌・所蔵データと連動して扱える,疎結合構成の実装モデルを提案する.この提案手法は,Work・Exprsesion の記述のためのシステムを,Web 上で提供されている既存の目録システムと独立して運用することを可能にしている.本研究では既存の目録システムとしてCiNii Books を用いたシステムを試作し,その実現可能性を示した.We propose a loosely coupled implementation model that allows cataloging systems to record FRBR Work and Expression entities connecting bibliographic records maintained by existing libraries. The proposed model enables a cataloging system that records Work and Expression entities to operate in-dependently from existing cataloging systems. We have developed a prototype system that uses CiNii Books as an existing cataloging system and showed its feasibility.
著者
小川 雄太 宮本 行庸
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.416-419, 2022-12-18 (Released:2023-01-27)
参考文献数
8

本稿においては共生社会の実現に資するため,全盲の視覚障害者とテレビゲームを楽しむ際に晴眼者に求められる認識について,スーパーファミコンを使った実践を通して考察を行う.盲学校に所属する教員の晴眼者であっても全盲の視覚障害者とテレビゲームの繋がりをほとんど認識していなかったが,全盲の視覚障害者とテレビゲームで遊ぶ体験がその認識を大きく変化させた.また,全盲の視覚障害者が格闘ジャンルのスーパーストリートファイターⅡ ザニューチャレンジャーズに対応できていたことを踏まえて,激しいゲーム展開が予想される他のジャンルもプレーできるという期待を持つに至った.したがって,全盲の視覚障害者とテレビゲームを楽しむため,晴眼者には全盲の視覚障害者もテレビゲームができるという先入観のない認識が必要である.
著者
工藤 彰 村井 源 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.18-36, 2011-02-23 (Released:2011-04-13)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

本論文の目的は,作家の作風変化を科学的に検証することである.対象としたデータは,現代の日本を代表する作家,村上春樹の長篇12作品とした.12長篇の中で近似的作風を持つ作品群を明示化するため,テクストから得られた語彙を計量化して品詞と意味カテゴリの両分類から特徴ベクトルを抽出し,それぞれの特徴ベクトルからクラスタ分析を行った.その結果,品詞分類からは通時的な区分によってのクラスタが形成され,村上の文体が時代とともに変化しているのが確認できた.また,意味分類からは主題や内容に影響されたクラスタが形成され,村上の関心が個人から社会に向かっていくのが実証できた.
著者
三和 義秀
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.92-110, 2013-02-20 (Released:2013-04-18)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究では,主人公への理解が成立する小説においては読者のパーソナリティ特性と物語理解における認知的評価との間には因果関係があり,その関係を介して読後の感情状態が形成されるモデルを仮説とした.そして,111 名の被験者の性格と共感性,4 点の短編小説に対する認知的評価,及び読後の感情状態を測定し,共分散構造分析によって仮説モデルの妥当性を検証した. その結果,主人公に対する理解が成立した2 点の素材においては仮説モデルが採択され,外向性や協調性が高い読者ほど共感や同情が強まる因果関係が認められ,その関係が読後の否定的な感情状態の形成に影響する傾向が示された.一方,主人公の理解が抑制された2 点の素材においては仮説モデルが採択されなかった.これらのことから,主人公に対する理解が成立する小説においては,読者のパーソナリティ特性と認知的評価との間の因果関係を介して読後の感情状態が形成される可能性を示唆した.
著者
西川 開
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.213-233, 2019-10-15 (Released:2019-11-15)
参考文献数
117
被引用文献数
1 2

本論文はOstrom & Hessにより提起された知識コモンズ研究系統化の試みの現在までの成果を明らかにしたうえで、その結果について理論的考察を行い、同プロジェクトの基礎付けを行うことを目的とする。知識コモンズ研究とは1990年代に台頭した、共有される知識資源とその管理制度に関する研究領域である。まず、ProQuestなど4つのデータベースを用いて抽出した88件の文献を対象とするシステマティックレビューを行い、自然資源を対象とするコモンズ研究の方法論を「知識」資源の性質に合わせて修正・応用するアプローチが確立しつつあることを明らかにした。次いで、同アプローチにおける「コモンズ」という概念の明晰化、既存のコモンズ研究における同アプローチの位置づけの再検討、同アプローチの課題点の整理とそれを踏まえた今後の研究の方向性の提案を行った。