著者
堀之内 宏久 塚田 孝祐 河野 光智
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

腫瘍組織では、腫瘍循環が未熟なため低酸素を呈する。細動脈における酸素拡散について、担癌状態でどのように変化するかを測定した。パラジウムコプロポルフィリンの燐光の減衰による組織酸素分圧測定を行った。Nd-YAGパルスレーザーで励起を行い、ピエゾ素子を用いた移動ステージ上に動物を固定し、細動脈壁の酸素拡散係数を求める方法を開発した、Balb/cマウス背部に設置したDorsal skinfold chamberから観察される内径40~70μm壁厚20μm前後の皮下細動脈を観察した。Balb/cマウスおよびマウス乳癌細胞であるMMT060562を用いた。ドナーマウスより皮下移植腫瘍を摘出、1ミリ大の移植片としてWindow内に移植し、48~72時間後に直径が2mm程度となったところで腫瘍近傍の細動脈について測定した。また、左上肢腋窩部に腫瘍細胞浮遊液を移植、移植後9~10日後に腫瘍径が10mmを超えた時点でマウス背部にWindowを設置、4日後に測定を行った。細動脈壁酸素拡散係数は無処置群では5. 3±1. 1×10^<-11>[(cm2/s)(ml O_2. cm^<-3> tissue. mmHg^<-1>)]であった。腫瘍移植後の酸素拡散係数はウィンドウ内腫瘍群では3. 9±0. 4×10^<-11>[(cm2/s)(ml O_2. cm^<-3> tissue. mmHg^<-1>)]、腋窩腫瘍群では3. 1±0. 6×10^<-11>[(cm2/s)(ml O_2. cm^<-3> tissue. mmHg^<-1>)]であり、担癌動物において明らかに酸素拡散係数が低下し、細動脈領域で酸素を通しにくくなっていることが明らかとなった。
著者
鈴木 正崇
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.439-461, 1990-12

文学部創設百周年記念論文集ITreatiseThe festival called Shoreisai or Toshiya-Matsuri is held on the final day of the winter peak, at the end of the confinement of two Matsu Hijiri (ritual practitioners). At present it is a very lively annual festival for Toge villagers on the foot of Mt. Haguro in Yamagata prefecture of Japan. According to a traditional writing of Haguro sect of Shugendo religious groups of practicing for magico-ascetic powers on the mountain, the festival began about A.D. 705, when a fierce and ugly, three-headed evil spirit appeared on mountain area of northern Japan. He sent forth a poisonous vapor from the mountains, which caused widerpread sickness in these areas. Many people died so that the land went back to wilderness. At that time the seven-year-old daughter of the man serving Haguro-gongen became possessed and hand down an oracle. According to it, twelve genja (ascetics) had been stationed in the main room before Haguro-gongen, and had them burn a large torch in the form of the evil spirit, after that the evil spirit was driven away to a small of the north sea. This is the reason why two huge mock insects were made of rice straw and were burned on Shoreisai. This paper analizes with Shoreisai from the satndpoint of ritual killing and presents some interpretations of ritual symbolism. Under the influence of Shugendo, the festival not only bespeaks agricultural rituals of competition which divinate the year's crops, but also include the aspects of ascetic confinement. However, the main theme of this festival focuses upon the supernatural power through a regeneration of the death performed by ritual killing.
著者
倉林 修一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の成果として,Web動画像・音楽メディアを対象とした感性自動分析・個人化・配信システムを構築し,Web上の実データを対象としたメディア処理機構として公開した.特筆すべき成果として,Web分野における国際会議であるICIW2012 (The Seventh International Conference on Internet and Web Applicationsand Services) において,実現したシステムに関するデモンストレーション発表を行い,Best Papers Awardを2件受賞した.本研究の国際的展開として,スロベニア・リュブリャナ大学,フィンランド・タンペレ工科大学との間において,感性自動分析・個人化・配信システムの国際共同研究を行った。
著者
鈴木 秀男
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,Fornellら(1996)によって開発されたACSIにおけるモデルで採用している尺度変数、潜在変数を参考にしながら、サービス品質,顧客満足度,顧客ロイヤルティの関連性を示した構造モデルを示した.また,Schmitt(2000)により発展した経験価値の概念の導入を検討した.これらのモデルに基づき,サービス品質,顧客満足度,顧客ロイヤルティのスコアを算出した.調査対象としてプロ野球のサービスを取り上げ,インターネット調査を2009年,2010年および2011年の1月下旬に行った.モデルとして,サービス品質(チーム成績,チーム・選手,球場,ファンサービス・地域貢献,ユニホーム・ロゴ)→総合満足度→応援ロイヤルティ→観戦ロイヤルティの構造モデルを構築し,チームごとに構成概念スコアを算出した.また,経験価値に関するモデル構築およびスコアの算出を行った.最後に,算出された構成概念スコアの妥当性を検証するために,それらのスコアと平均観客数との関係性について調べた.
著者
真屋 和子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
藝文研究 (ISSN:04351630)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.109-89, 1993

はじめに1. 「カルクチュイ港」をめぐって2. "メタファー"の発見3. 反主知主義の芸術観4. "遠近法の効果"をめぐってむすび
著者
三嶋 恒平
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は日本企業の国際的な競争優位の源泉としてトランスナショナル化(本社と海外拠点が相互依存の関係であり共同で優位性を構築し共有するようになること)に着目し、既存研究では不十分であった(1)新興国の市場・拠点でのイノベーションの発現、(2)そのグローバルな組織における共有経路・形態、(3)それらが組織全体の競争優位へ及ぼす影響の3つを明らかにすることを目的とした。目的(1)は企業や販売現場の実態調査を繰り返すことで特定の新興国におけるイノベーションを明らかにすることができた。目的(2)(3)は実態調査に加え、国際経営論を巡るサーベイと学会報告での議論を通じて概ね達成することができた。
著者
山田 健人 林 睦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

CD26は広汎なヒトがんに発現している。ヒト化抗CD26抗体(Ab)でがん細胞を処理するとがん細胞の増殖抑制と共にCD26とAbは細胞質内から核内に移行した。クロマチン免疫沈降法にてCD26とPOLR2Aの転写調節領域が特異的に会合することを同定した。Abに抗がん分子Xを結合させたところ、X結合Abが、Abのみよりも極めて高効率にCD26依存性にがん細胞の増殖能の極度の低下を誘導した。一方、CD26を発現する正常ヒト内皮細胞やTリンパ球では、Ab核内移行はなく増殖抑制は認められなかった。X結合Ab-Xをマウスへ投与したところ、異種移植したヒトがんの増殖抑制能は、Abよりも強い効果が得られた。
著者
石崎 秀和
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.91-129, 1979-03

二つの教育大国家庭教育と絵本トッテの世界歪められる「トッテの世界」トッテとトミーちゃん 1. 原題『かたづける』、邦題『くまくんどこ?』に関する比較考察 2. 原題「外に出かける」、邦題「おしたく できたよ」に関する比較考察 3. 原題「ケーキをやく」、邦題「けーきをつくる」に関する比較考察私達のしつけ観と西洋人形「トミーちゃん」It is well known fact that the translation of books entails some adaptation of the originals. To what degree we should permit this inevitable change must be judged from many different aspects. Cultural, social, historical and even geographical differences between "exporting" countries and "importing" countries of the books might be taken into account, needless to say about linguistic questions per se. Further in the field of children's books, we see a quite exceptional condition will decide much of the direction the adaptation is to steer in. This condition is attributed to the attitude of the translator who inclines to accmodate his version to the parents' wish that their children should be provided only with "good" books. It may then be reasonable to expect that the translation or the adaptation of children's books mirrors out some standard of goodness which prevails in the importing country in question so long as child upbringing is concerned. In this respect the Japanese version of "Totte series" is closely examined here, in comparison both with the originals in Swedish and their English version as one of the most extreme translations seemingly. The reason I choose these books, originally written by Gunilla Wolde, for this purpose is not only because they have gained world wide success, but rather because these original books contain plenty of vivid educational stimuli which should have given some significant impact upon all the younger children in the world in spite of national borders.
著者
前田 富士男
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

西洋絵画は近世以降、物語性に即して線描・明暗・色彩を統合して自然主義的な再現を実践してきた。しかし、1800年頃に始まる近代では、19世紀後半の印象主義の登場や20世紀初頭の抽象絵画の成立が告げるように、色彩表現が圧倒的に重要な役割を演じるようになる。しかし、こうした問題を絵画作品の構造問題として追究する試みは、従来なされていない。われわれが本研究で「色彩メディア」概念をあえて使用するのは、作品構造の変革に対応する色彩表現の変容を追究するためにほかならない。その意味で、本研究では、「オーバーラップ」をキー概念として提示する。印象主義時代に始まる点描やクロワゾニスムは、本質的には、色彩を重層化、オーバーラップする方法以外の何ものでもない。点描やクロワゾニスムについて、画面平面内のある色相と他の色相とのコントラストや視覚混合がこれまで重視されてきた。しかし、そうではない。ある画面層内における色彩の関係づけにとどまらず、その画面層と別種の関係づけをもつ他の画面層とを重ねることが重要なのだ。つまり、色彩の関係化の関係化が問題なのである。それをオーバーラップと呼ぶ。この方法は言い換えれば、画面層そのもののオーバーラップ、つまり、画面のポリフォーカス化を含意する。セザンヌからピカソに連続する表現革新は一般に、色彩とは無関係に論じられるが、そうではない。また、開かれた作品として特徴づけられる近代美術の特性も、色彩とは別次元で理解されてきたが、そうした理解も不十分なのである。本研究は、19世紀後半からの色彩研究の一次資料をドイツ・スイスにて実証的に調査し、その資料の分析にもとづき、色彩メディアのもつ絵画における特性を「オーバーラッブ」と統括し、色彩のオーバーラップこそ、近代絵画の作品構造の変革をも照らしだすとの、新しい視座を提起する。
著者
佐藤 元状
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究「英国ドキュメンタリー映画の伝統とブリティッシュ・ニュー・ウェーヴの総合的研究」は、イギリスのリアリズム映画の表象が、1930年代から1960年代にかけて、どのように変容してきたのかを時代ごとに総合的に検証し、20世紀のイギリス映画史を把握するための一つのパースペクティヴを提唱するものである。本研究の成果は、『ブリティッシュ・ニュー・ウェイヴの映像学--イギリス映画と社会的リアリズムの系譜学』(ミネルヴァ書房、2012年)に結実した。
著者
坂本 好昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

マウス背部の組織の肉眼的所見としては、創作成後14日目に隆起・発赤が強くなっていた。この変化は28日まで確認できたが、その後は徐々に軽快していく状態であった。同部の瘢痕を回収して免疫染色を行ったところ、通常の瘢痕と比較して、張力を負荷した肥厚性瘢痕モデル群においては優位にT細胞の発現を認めた。これはヒトに近いブタ瘢痕モデルにおいても同様の結果を得た。そこでT細胞の発現を抑制するスプラタストトシル酸塩の経口投与を行ってマウス背部に張力をかけて瘢痕の形成を試みたが、肥厚性瘢痕の形成は認めれらなった。
著者
小泉 仰
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.45-71, 1962-09

I have tried in this paper, first, to describe main trends of present-day American moral philosophy and, second, to give a list of the important books and articles written by those philosophers who are representatives of the trends. I adopt the categories which are coined by Professor William K. Frankena of the University of Michigan and are ordinarily made use of in American philosophy: normative ethics and meta-ethics. Meta-ethics is still further subdivided into four: ethical naturalism, anti-descriptivism, intuitionism, and others. The list of books and articles follows the order of the categories mentioned above. I choose the books which are the most important and are very often debated by many philosophers in the field of normative ethics and meta-ethics, and the articles which I find important in the following magazines from 1930 to January 1962:- Ethics, Journal of Philosophy, Mind, Philosophical Quarterly, Philosophical Review, Philosophical Studies, Philosophy and Phenomenological Research.
著者
中野 泰志 佐島 毅 小林 秀之 氏間 和仁 永井 伸幸
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

拡大教科書を選定するための評価方法は確立されておらず、適切な教科書の選択がなされていない。そこで、拡大教科書を利用する際の諸条件が読書の効率に及ぼす影響を明らかにした上で、拡大教科書選定支援のための検査バッテリーを試作した。また、試作した検査バッテリーの有効性を検討するために、試用調査を実施した。さらに、本検査バッテリーを非専門家が簡便に利用できるようにするためのマニュアルを作成し、拡大教科書を利用している弱視児童生徒の担任教員に配布した。
著者
村松 怜
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、年度内に学位を取得できるように博士論文を提出するということを大きな目標として研究を進めた。昨年度の末から本年度の初頭にかけてはまず、占領期における法人税制の問題に関する研究を行った。今日、シャウプ税制はわずか数年のうちに「崩壊」し、戦後日本の「非シャウプ的・資本蓄積型税制」が形成されていったと評価されている。その一つの証左とされるものが、シャウプ税制以降の法人課税に関する改正であり、中でも租税特別措置ないしは引当金制度等の導入・拡大である。しかし一方で注目に値するのは、同時期に法人税率の引き上げが行われていることであり、必ずしも「非シャウプ的・資本蓄積型税制」化という視点からは捉えきれない面も持っている。そこで、占領期末に租税特別措置の拡大と法人税率の引き上げという政策がいかにして行われるに至ったかを明らかする研究を行った。それは2012年春のうちに論文としてまとめ、雑誌『証券経済研究』へ投稿した。その結果、採択が決定され、同誌の9月号に掲載された。以上の研究と同時に、これまで行ってきた研究を博士論文としてまとめる作業を進めていった。博士論文は、シャウプ税制がどのようにして当時積極的に受入れられ、そしてどのようにして「崩壊」ないしは「解体」されていったのか、という大きな問いを、豊富な一次資料を駆使した上で明らかにしようとするものである。年度内に学位を取得できるよう、秋までに博士論文「占領期日本税制史研究」をまとめ上げ、11月に慶應義塾大学へ提出した。その後、2013年1月に博士論文の口頭審査が行われた結果、年度内に学位が授与されることが正式に決定した。年度末には、今後の研究の資料収集のため、米国国立公文書館に滞在し、GHQ/SCAP資料の閲覧・収集を行った。
著者
西山 晃生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.205-220, 2007-03

研究ノート0. はじめに1. 予備的考察2. クールノーの偶然論 2.1. 定義 2.2. 帰結 2.3. 問題点3. ベルクソンの偶然論 3.1. レヴィ=ブリュール批判 3.2. 根本的経験 3.3. 意図の後退 3.4. 問いへの答え結論Nous disons pour un evenement qu'il est le result d'un hasard, et pour un autre evenement, nous ne le disons pas. Alors quelle est la difference entre les deux? Dans quelle condition un evenement est appele fortuit? C'est notre premiere question. Et pouquoi nous avons idee de hasard plutot que nous ne l'avons pas? C'est la seconde question. Nous essayons de repondre a ces deux question, a l'aide de deux theories de hasard, celle de Cournot et celle de Bergson. Pour Cournot, un evenement est le resulat d'un hasard quand il est constitue par la rencontre de plusieurs series causales indepandantes. Cette definition est caracterisee par la realite objective de ces series. Ainsi Cournot se debarrasse de tous les elements subjectifs de l'idee de hasard. Mais c'est justement pour cela qu'il n'arrive pas a expliquer la formation de l'idee. Un evenement est appele fortuit quand nous cherchons saa raison et pourtant n'arrivons pas a la trouver. Selon Bergson Cette raison est d'abord supposee comme intention de la nature, puis perd ses contenus a. cause du developpement de la science. Ce processus meme est celui d'une formation de l'idee de hasard.
著者
尾上 弘晃 岩瀬 英治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,自然界の生物の持つ皮膚の色や模様の変化機構を模した,柔軟で伸縮可能な表示装置を構築する手法を提案することである.その目標のために,まず電場応答性のPAMPSゲルを利用した色素型ディスプレイを開発した.3 x 3のドットマトリックスアレイをPAMPSゲルと電極配線を用いて構築し,ゲルの屈曲を利用することで表示の切り替えに成功した.また,構造色による表示装置の開発のために,複数種類のフォトニックコロイド結晶をPDMSシート内にマイクロパターニングする「Channel-Cut Method」を開発を行った.2種類の発色を示すシートの構築に成功し理論式通りの反射波長ピークを確認した.
著者
鈴木 正崇 浅川 泰宏 市田 雅崇 織田 達也 中山 和久 宮坂 清 宮下 克也 谷部 真吾
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、「道の宗教性」という観点から、「文化的景観」との関連を探ることによって民俗宗教の再構築や現代民俗の生成を検討する試みであった。研究を通じて、「道の宗教性」がもつ創造性や、「文化的景観」をめぐる新たな民俗の生成、遺産化をめぐる諸問題が浮き彫りにされ、動態的な宗教民俗学の構築へと展開することが可能になった。