著者
田中 敏幸
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

めまいはその原因が複雑かつ多岐に渡るため、正確な診断を行うためには専門的な知識と経験を持った医師の診断が必要であるが、現在めまいの専門医は非常に少ないのが現状である。本研究ではめまいに伴う異常眼球運動(眼振)を動画像処理に基づいて解析するめまいの診断支援システムの実現を目的とする。提案手法には、まばたきの検出、瞳孔位置の特定、回旋性眼球運動の回転角算出が含まれており、まばたきなどのノイズ強く、かつ水平・垂直・回旋の 3つの運動の解析を可能にしている。
著者
木田 邦治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.141-164, 1990

「権力が暴力を用いるとき,権力はもっともつよいのではなくもっとも弱いのである.権力がもっとも強いのは,それが力に代わる魅力,すなわち,除外よりは魅惑と参加,絶滅よりは教育などの手段を採用しているときなのである」."抑圧する権力"観に準拠するかぎり,教育関係に権力が作用するのは体罰のような逸脱的事態かカリキュラム化された政治教育が為される場合に限られると考えられ続け,教師の狡智が円滑に実現しているかぎり,鏡視と生徒の関係の権力性は隠蔽され続けるであろう.しかし教師の狡智とここで呼んでいる機制は,ルソーが『エミール』ですでに提示していたものなのである.「若き教育者よ,わたしは一つのむずかしい技術をあなたに教えよう.それは訓戒を与えずに指導すること,そして,なに一つしないですべてをなしとげることだ.……生徒がいつも自分の主人だと思っていながら,いつもあなたが主人であるようにするがいい.見かけはあくまで自由に見える隷属状態ほど完全な隷属状態はない.こうすれば意志そのものさえとりこにすることができる.……もちろん,かれは自分が望むことしかしないだろう.しかし,あなたがさせたいと思っていることしか望まないだろう.……あながは思いのままにかれを研究し,かれは教訓をうけているなどとは夢にも考えていないのに,あなたがあたえたいと思っている教訓をかれの身のまわりにすっかりおぜん立てすることができるだろう」.このように生徒を包囲し,自発的で自由意志に導かれている服従を引き出す狡智的な〈教師-生徒〉関係の機制を,イリイチは学校の内部だけでなく学校外の〈専門家-依頼者〉関係にも見出しており,学校における過程は学校を含み込むシステムの狡智的機制に内属するものとして捉えられるのである.以下で検討するのは,〈教育と権力〉との内在的関係を分析する際の視覚としてイリイチ的アプローチがもちうる意義と限界についてである.
著者
一戸 渉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

〈和学〉とは近世期の日本に発生した、日本の古き文物をめぐる学問および、その学問に基づいて行われた文芸創作をも含んだ、多様な実践のことを指している。本研究では、さまざまな機関が所蔵する一次資料の調査と研究とを通じて、18世紀日本における〈和学〉という知的実践の史的展開を総合的に解明しようとしたものである。本研究の成果として、近世期の和学者たちの知的な交流のありようや、伝記に関する新たな知見を多く得ることができた。
著者
長瀬 健一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究課題では、再生医療への応用を目的とし、細胞治療に用いる細胞を温度変化のみで分離するインテリジェント型分離基材の設計を行なった。ガラス基板、微細加工基板、マイクロファイバーの表面に温度応答性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)を修飾し、37℃で細胞を接着させて20℃で細胞を脱着させる基板表面を作製した。この際、細胞種ごとの接着性の差を大きくする基材設計を行なう事で細胞の分離効率の向上を試みた。
著者
前島 信 仲田 均 田村 要造 安田 久美 鈴木 由紀 佐々田 槙子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

確率論における重要な確率分布である無限分解可能分布の代表的なものに自己分解可能分布がある。それを拡張した新しい概念「α-自己分解可能分布」を提案し、新しい数学的な結果を得ると同時に、そのもとでそれまでの関連する結果を統一的に整理した。その応用の一例として、2次元ガンマ分布は自己分解可能ではないが、それが属するクラスを拡張したクラス群の中から特定した。また、狭義安定分布のレヴィ過程に関する確率積分による特徴づけの完全な証明に成功した。
著者
林 英一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

2011年4月に日本学術擁興会研究者海外派遣基金第2回優秀若手研究者海外派遣事業にて派遣されていたガジャマダ大学文化科学学部歴史学科から戻り、1年間にわたる現地調査(現地の公文書館における文献収集と聞き取りを中心とするフィールドワーク)で得られたデータを整理した。その上で9月に『Merekayang terlupakan:Memoar Rahmat Shigeru Ono.Yogyakarta:Penerbit Ombak(邦題『残留日本兵の記憶』2011年、波出版社)』という著書をインドネシアで出版した。これはインドネシア語ではじめて残留日本兵について論じた本で、そのため様々な反響が現地で起こった。その模様については、『共同通信』、『毎日新聞』、『読売新聞』、『JAPAN TIMES』、インドネシアで最も影響力のある時事週刊誌といわれている『TEMPIO』などで記事が出た。また12月には『皇軍兵士とインドネシア独立-ある残留日本人の生涯』(2011年、吉川弘文館)という著書を日本で刊行した。これはインドネシア独立戦争後に残留日本兵がいかに国籍・市民権を取得し、現地社会に「内なる他者」として再統合されていったのかを、インドネシア残留日本人の典型的な人物であるフセン・藤山秀雄氏のライフヒストリーを描くなかで明らかにしたものである。以上のように現地語で研究成果を発表するとともに、現地側の視点から研究対象をとらえ直すことによって、従来、ジャーナリスティックな観点あるいは政治外交史の視角から、その歴史的役割が論じられていたインドネシア残留日本兵の実像に、社会文化史的な視点から迫ると込う.当初の目的をある程度達成することができた。
著者
浅野 雅樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

主に大学の授業で使用する新しいタイプの語彙学習を中心とした中級中国語テキストの作成に向けた研究を行った。従来の本文(課文)や文法項目中心のテキストから、語レベルの特徴や難易度に応じた語彙の導入や、日本語の漢語語彙との関係性を利用した語彙の提示方法について考察を行った。また「語彙論体系知識」を教育内容に含めることを提起した。「語彙論体系知識」の中で、いくつかある項目のどれを取り入れるのかという問題に対して、学習者に対するアンケート調査も何度か行い、その結果に依拠して、大筋の結論を得ることができた。さらにテキストの試用版を作成し、その一部を授業等の教育現場で使用することができた。
著者
鈴木 晃仁 脇村 孝平 杉田 聡 橋本 明 飯島 渉 杉田 米行 加藤 茂生 廣川 和花 渡部 幹夫 山下 麻衣 永島 剛 慎 蒼健 ヨング ジュリア 香西 豊子 逢見 憲一 田中 誠二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

疾病・病者・医者の三つのエージェントが会して構成される「医療」という動的な場は、どのような歴史的な構造を持つのか。疾病環境の変化、人々の病気行動の変化、そして医療者の科学と技術の変化の三つの相からなる医療の構造変化は、近現代の日本の変化とどのような関係があり、世界の中の変化とどう連関したのか。これらの問いが、急性感染症、スティグマ化された疾患、帝国医療の主題の中でとらえられた。
著者
細谷 亨
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、戦時中に満洲に送られた日本人農業移民(満洲開拓民)を、敗戦後の海外引揚をふくめて総合的に検討することにより、これまで別個に論じられる傾向の強かった満洲移民史と海外引揚史の接続をはかることである。研究の遂行過程においては、開拓民を最も多く送り出した長野県下伊那郡の農村を対象に、政策展開をふまえつつ海外引揚における母村の対応を明らかにした。分析からは、従来あまり言及されることのなかった引揚者援護事業における公的扶助(生活保護)の役割が大きな比重を占めていたことが確認できた。現金給付と現物給付からなる公的扶助は、必ずしも引揚者のみを対象にしたものではなかったが、敗戦後の生活困窮者問題や占領期における社会福祉政策の拡充とも相まって引揚者援護とも結びついていく。もちろん、そのことがただちに引揚者の生活再建を意味するわけではないが、これまで「差別」の視点で語られることの多かった地域における引揚者問題を再検討する手がかりを得たといえる。満洲開拓民の送出についても重要な成果を得ることができた。長野県諏訪郡の農村を対象とした研究では、開拓民が満洲への移住に際して、自家の農地を親戚・知己に貸与して出かけており、敗戦後の農地改革の際、農地を返還してもらい、母村の自作農に復帰するケースを明らかにすることができた。かかる傾向は、当該村だけでなく、程度の差を含みつつも多くの村で確認できることであり、満洲開拓民(分村移民)の遂行が農家の存在形態や母村の対応に大きく規定されていたことをよく表している。上記の研究は、実態面および政策面の双方において、より詳細な検討が必要であるが、満洲開拓民を戦時と戦後の歴史過程のなかに位置付けるうえで重要な貢献をなし得たと考えている。
著者
金子 仁子 標 美奈子 増田 慎也 宮川 祥子 三輪 眞知子 渡邊 輝美 及川 智香子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、青年期の人々が容易に学習機会の得られるインターネットを使用して、子育てをバーチャルに体験しながら、人を世話することの楽しさや人間として成長していくことを実感でき、また人間関係の取り方を学べる子育て学習支援プログラムの開発である。まず、大学生を対象に子育ての経験、子育てのイメージに関する質問紙調査を行った。525名のデータについてクラスター分析を行った結果、子育てに関して5つのタイプに分けられ、学習内容の興味関心もそのタイプによって違いがあった。ドラマ部分の作成は、研究者メンバーの話し合いから導き出した、「12の意図」(子育ての生活のイメージ、子育ての楽しさ・子育ての大変さ、予測していなかったできごとへの対応、子どもの成長を実感(2歳まで)、子どもとのコミュニケーションの取り方、仕事を続けていく母親の子育てについて等)により、その内容を考えさせるものとした。ドラマはフラッシュを用いて漫画を動画化し5話のドラマとしてウェブサイトから配信した。ドラマの配信は平成18年6月から行い平成19年3月までの10ヶ月間のアクセス数は985件で、視聴するための登録者は35名で、うち6割が学生であった。ドラマの内容についてはウェブサイト上のアンケートでは第1話では、仕事との育児の両立を考えながら視聴していることがわかり、また、第2話では結婚・出産・育児についてのことが最も印象に残ったとしていた。このドラマの評価のためのグループインタビューを行った。その中で、学生達は乳児期の育児、仕事と育児の両立について関心が高いことが明らかになった。このドラマを見ることによって、大学生は仕事と育児の両立について具体的にイメージすることができたと考える。登録者同士の交流を図るため掲示板を設けたが記載する人は少なく、登録者を増やすための、ウェブデザインの改良等が必要である。
著者
岡田 あおい
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、宗門改帳を史料とし、ここからデータベースを構築し、徳川後期の農民世帯の家族構造を明らかにすることが目的である。本研究で用いる史料は、東北日本2地域(会津山間部4か村・二本松平野部3か村)と中央日本2地域(美濃平野部6か村・信州山間部2か村)である。結果的には、当初予定していたデータベースの完成には至らなかった。データベースの完成にはまだ時間を要するが、完成度の高い東北日本の一農村のデータを用いて、徳川後期農民社会の家族構造を解明するための基本的指標の分析を試みた。
著者
野村 伸一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

東アジアのうち、東シナ海を中心にした祭祀と芸能について、40余りのウエブサイトを公開した(後掲一覧参照)。そして、その具体的な資料に基づいて、野村伸一編著『東アジアの祭祀伝承と女性救済』(風響社、2007年)を刊行し、さらに野村伸一著『東シナ海祭祀芸能史論序説』(2009年、7月刊行予定) をまとめた。これらにより、中国、朝鮮半島、日本につづく基層文化のいくつかの基軸を明確に示すことができた。そうした基軸の提示は従来の縦割りの研究組織からはなされていない。このことが最も大きな成果といえる。
著者
石川 透 屋名池 誠 佐々木 孝浩 堀川 貴司 小川 剛生 津田 眞弓 佐藤 道生 小秋元 段 神作 研一 柳沢 昌紀
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

室町時代から江戸時代に作成された、写本と版本については、これまでばくぜんと、室町時代までの写本の文化が、江戸時代の版本の文化へと置き換わっていったと、考えられていた。しかし、江戸時代前期に作成された奈良絵本・絵巻を見るだけでも、明らかに版本から写本へ作られたものが、相当数存在している。そして、写本と版本の両方を作る人物として、仮名草子作家として著名な浅井了意や、日本史上初の女性絵本作家というべき居初つな等が存在することが明らかになってきたのである。本研究では、これまで、中世文学と近世文学の研究として別々に扱われていた写本と版本の関係を、新しい資料を利用しての解明を試みた。
著者
佐藤 俊朗
出版者
慶應義塾大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011-08-24

炎症性腸疾患は原因不明の慢性炎症性腸疾患であり,免疫統御療法により治療される.しかし,難治性炎症性腸疾患では,その効果が乏しい.我々は,そのような難治症例では粘膜の再生障害が原因であると考え,粘膜再生治療の開発を目指している.粘膜再生治療実現のための,非臨床試験として,マウス大腸より培養大腸上皮オルガノイドを作成し,マウス腸炎モデルに対して経肛門的投与を行い,投与したオルガノイドの生着が確認できた.また,オルガノイド移植群は非移植群に比して腸炎に対する治療効果を認めた.長期間培養した組織幹細胞を移植し,生着させる技術は他の臓器を見ても例がなく,今回の成果は粘膜再生治療を実現させるため,重要な進展となった.次のステップとして,ヒト腸管上皮幹細胞培養技術の開発が求められる.我々は,既にマウス腸管上皮幹細胞培養を確立しているが,本培養方法ではヒト腸管上皮幹細胞の培養は困難であった.そこで,マウス大腸上皮細胞培養の条件に加え,Nicotinamide,A83-01(Alk inhibitor),SB203580(p38 inhibitor)を追加したところ,世界で初めてヒト腸管上皮幹細胞の長期培養に成功した.長期培養されたヒト腸管上皮細胞は染色体異常など,形質転換をすることはなく,正常な分化を保持していた.本成果は粘膜再生治療のみならず,ヒト上皮細胞疾患の研究に非常に有用な技術である.
著者
飯島 正
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

既に社会基盤として広く活用されている情報システムのトラブルは,社会的に大きな混乱を引き起こしかねない.しかし,企業や自治体で長く運用されている情報システムも大規模化し,トラブルを未然に防いだり,トラブル発生後の復旧が難しくなってきている.利用者を取り巻く環境の変化から,次第に使い勝手が悪くなることもある.そこで,利用者と開発者,異なる立場の利用者間や開発者間で,相互理解を深めるための共通の土台が必要である.本研究は,情報システムに,それ自身の挙動を説明するための説明文や深い理解をもたらすゲームなどを生成する機能を与える基礎技術を構築したものである.
著者
廣松 勲
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本年度は、マルティニック島の作家ラファエル・コンフィアンとハイチ系ケベック移民作家ダニー・ラフェリエールの小説作品を中心にして、研究活動を続けた。同時に、分析上の方法論の精緻化を目的として、トランスカルチャーという鍵概念および社会批評分析(Sociocritique)関連の書籍を収集・分析してきた。まず、昨年度の研究対象であったパトリック・シャモワゾーとエミール・オリヴィエに関する研究は、論文や研究発表として公表した。「社会批評分析」という方法論については、受け入れ研究者である堀茂樹先生のゼミが制作した論文集に、研究論文として投稿した。本論文「文学研究における社会」では、文学研究において「社会的なるもの」がいかに読まれてきたのかを検討することで、「社会批評分析」の系譜を辿った。この方法論の再検討は、トランスカルチャーが文体・テーマ・思想を介していかにテクストに書き込まれているのをより説得的に分析するために、非常に重要なものであった。次に、本年度の研究対象であるコンフィアンとラフェリエールに関しては、新刊が5冊程度刊行されたこともあり、それらを収集した上で、研究対象となる作品の選定を改めて行うことになった。いずれも多作の作家であり、新作刊行も予想してはいたものの、この再選定の作業には、予定以上の時間を要してしまった。とはいえ、本年度の研究結果は、今後、以下の2つの学会において公表する予定である。まず、ラフェリエールに関しては、彼を含めたケベック移民作家に関する口頭発表を、2014年5月25日にお茶の水女子大学にて開催予定の「日本フランス語フランス文学会全国大会」において行う予定である。今回の発表は、「カナダ文学の現在 : ケベックを中心に」と題されたワークショップの一環である。次に、コンフィアンに関しては、2014年11月1日に韓国の高麗大学において開催予定の「Association d'études de la culture et des arts en France (CFAF)」において発表を行う予定である。
著者
田村 俊作 高山 智子 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 越塚 美加 八巻 知香子 須賀 千絵
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公共図書館の医療・健康情報サービスを適切にデザインするための知見を得ることを目的に,医療・健康情報サービスの現状調査を行ない,アクションリサーチによりサービス普及を試行した。がん相談支援センターとの連携によるサービスには可能性があり,大規模図書館を中心にサービスは普及しはじめているが,実施自治体は公共図書館設置自治体の2割に達しておらず,普及に向けて多くの課題があること,特に公共図書館員に関連知識・技能の修得機会を提供する必要のあることが明確になった。
著者
山口 徹 棚橋 訓 吉田 俊爾 朽木 量 深山 直子 佐藤 孝雄 王 在〓 下田 健太郎 小林 竜太
出版者
慶應義塾大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

今みる景観を自然の営力と人間の営為の絡み合いの歴史的産物と位置づけ、オセアニア環礁(低い島)と八重山諸島石垣島(高い島)のホーリスティックな景観史を、ジオ考古学、形質人類学、歴史人類学、文化人類学の諸学の協働によって明らかにし、その中で人とサンゴ(礁)のかかわり合いを遠い過去から現在まで見とおした。立場や系譜が必ずしも同じではない人々のあいだに、サンゴ(礁)とのこれからの「共存」のあり方への共通関心を喚起する目的で、研究成果を活用したアウトリーチに積極的に取り組んだ。
著者
大石 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

加齢性難聴の病態を、有毛細胞が障害される感覚細胞障害型と、らせん神経節細胞死による神経障害型モデルに分け解析した。それぞれのモデル動物に対して、小胞体ストレスをブロックする薬剤TUDCAを長期投与した。その結果、感覚細胞障害型モデルではTUDCAの治療効果は認められなかった。一方、神経障害型モデルでは、TUDCA投与により難聴の進行が統計学的に有意に抑制される傾向を認めた。小胞体ストレスの予防が加齢性難聴の進行を抑制させる可能性について、意義のある結果が得られた。
著者
井関 裕靖
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は離散距離空間の高次元的な構造を見出すことにより離散距離空間の「形」を捉え、さらにこれを離散群の剛性理論等へ応用することを目標としていた。離散距離空間の「高次元的な構造」を満足な形で捉えることは叶わなかったが、その研究過程で得られた観察や結果から、ある種のランダム群が非正曲率空間に対する強い固定点性質をもつことを示すことができた。また、離散距離空間の非正曲率距離空間への埋め込みに対するスペクトルギャップの幾つかの評価を与えることにも成功した。