著者
水谷 慎作 有上 幸治 小林 喜男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部研究発表梗概
巻号頁・発行日
no.59, pp.16-22, 1970-11-30

NAAと蔗糖の併用処理の効果はデコラの発根にわずかながらみられたにすぎず、印度ゴムの挿木ではその効果はあまり期待出来ない様である。2.NAAとリン酸の併用処理は発根および芽の伸長に相当の効果を示し、特にクライギーの発根および両品種にわたってNAA 25ppmとの併用処理でその効果が大きかった。P_2O_5で0.4%と言う高濃度であったにもかかわらず、相当の効果を示しているので、NAA処理との関連で更に検討を進めたい。3.NAAとホウ素の併用処理の効果は発根についてはデコラでわずかにみられたにすぎないが、芽の伸長については、両品種にわたって多少その効果がうかがえたので、ホウ素の処理濃度が芽の伸長におよぼす効果の検討を進めたい。4.発根におよぼすNAAの影響は顕著であり、処理濃度別にみれば、デコラでもクライギーにおいても50ppm処理の方が25ppm処理よりすぐれていた。品種別にみれば、デコラでは25ppm処理の成績は50ppm処理の成績に比してさほど劣らなかったが、クライギーにおいては著しい差異を示した。芽の伸長を抑制する作用はNAA処理濃度の高い方が著しく、品種間の差異は少ない結果となったが、本実験ではカイネチン処理の影響がおよんでいるので、将来これを除いてNAAのみの影響として、発根・発芽の品種間差異を再検討したい。5.TTPは二、三の要因との間に交互作用があらわれ、発根・芽の伸長ともに目的とする効果を示さなかった。これは本実験の様な処理方法で100ppmと言う濃度に問題があると思われるので再検討したい。6.カイネチンは本実験でNAA50ppmとの併用処理が発根を促進したが、NAA25ppmとカイネチン1, 000ppmの組合せはよくないようであったし、デコラでは芽の伸長をそれほど抑制しないのにクライギーで抑制が著しかったのは、NAA処理の結果と併せ考えて、品種間のオーキシンレベルの差とオーキシンレベルとカイネチン濃度との均衡の上から興味ある問題である。
著者
村山 幸栄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会北陸支部会報 (ISSN:0388791X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.12-14, 1967-03-25

新潟県には, 平年でも積雪2m, 融雪期4月中〜下旬の山間多雪地が少なくない。これらの地域には第1表に示すように豪雪とか, 春季降雪あるいは春季異常低温などが原因して自然融雪期が5月上〜中旬におよぶ年もしばしば訪ずれ, 稲作の作期や作業手順を狂わせ作柄を不安定にしている。このように甚しく融雪遅延が予想される年には, 散土, 雪割等の人工消雪法が行なわれるが, 最も実用化されている散土消雪も, 土取場がないとか, 土取場の地理的関係がわるい等の制約が多く, また, 散土消雪の効果は1週間前後しかないので, 広範囲な普及はみられない状況にある。たまたま, 昭和40年春季降雪と低温による融雪遅延が動機となり, 41年に県農地部, 農林部の企画のもとに流水により消雪をはかる"無雪苗代施設"の設置が試みられた。ここに, その概要を紹介する。筆者は企画に参画し, 成績の取まとめに当っただけで, 現場における調査は, 土地改良区職員および農業改良普及員によってなされたものであることを附記し, その労に多謝するものである。
著者
安江 多輔
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部研究発表梗概
巻号頁・発行日
no.58, pp.35-38, 1970-07-31

1969年3月はじめから1970年2月末日まで1カ年間、文部省在外研究員として、カリフォルニア大学(デービス)に出張中、カリフォルニア稲作試験場や稲作地帯を訪れる機会があったので、当地で見聞したカリフォルニアの稲作の概況を紹介する。カリフォルニアは農作物の種類も豊富で、146種の農作物が栽培されているが、この中で棉、大麦などのスモールグレイン、シュガービート、トマトについで米は第5番目に重要な農作物である。カリフォルニアで栽培されている稲は日本と全く同じジャポニカタイプである。500〜700エーカー(200〜280ha)の大規模経営で、大型トラクター、飛行機、コンバインを駆使する徹底的に省力機械化されたかなり粗放な直播栽培であるにもかかわらず、平均収量はエーカー当り5, 000ポンド(籾)、10a当り437kg(玄米)であり、エーカー当り7, 000ポンド(籾)、10a当り612kg(玄米)の高い収量もまれではない。カリフォルニアの稲作は実にめぐまれた稲作であり、病虫害や悪天候、災害との苦闘に終始する日本の稲作をみなれた目にはまったく信じられないような気がする。
著者
松永 亮一 高橋 将一 小松 邦彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.67, pp.62-64, 2001-05-15

九州で栽培されている大豆品種は九州農業試験場で育成された良質多収品種である「フクユタ力」が3分の2以上を占め, 残りのほとんどは「フクユタカ」に放射線を照射して白目化した「むらゆたか」が栽培されている. 両品種とも子実の蛋白質含粒率が高く, 主に豆腐の原料として利用されており, 納豆の原料となる小粒品種の栽培はほとんどないため, 九州の納豆製造会社では国産の小粒納豆製品の原料として北海道産あるいは関東産を使用しており, 九州で栽培できる納豆用小粒大豆品種の育成に強い期待があった. この要望に応えるために, 九州農業試験場では新たに納豆用小粒大豆品種として「すずおとめ」を育成した. 本報告では, 「すずおとめ」の主要な栽培特性を明らかにするとともに, 「すずおとめ」を原料とした試作納豆の試食アンケートを一般の消費者を対象として実施することによって, 試作納豆の官能評価を得るだけでなく, 今後の納豆用品種育成に役立てるための納豆製品に対する消費者ニーズの調査を行った.
著者
下野 裕之
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.341-351, 2014 (Released:2014-11-04)
参考文献数
16

わが国の食料の生産基盤である耕地は減少を続け,食料安全保障に多大な影響を及ぼしうる.本研究では,わが国の食料の生産力の現状を世界の各地域と比較評価するとともに,潜在的な生産力を現在ならびに将来について推定した.解析は,FAOSTATの主要作物14品目のデータを用い熱量に換算した.わが国で自給している主要作物からの一人あたり一日当たりの供給熱量は1961年の2497 kcalから低下を続け,2010年には795 kcalとなった.この水準は世界平均の26%かつアフリカ地域の37%である.供給熱量を最大化するため,すべての耕地にイネとイモ類を植え付けた場合でも1626 kcalと,アフリカ地域の76%にとどまった.同様に,将来について,人口の減少傾向に加えて,耕地と単収の変化を考慮して4シナリオを比較した.シナリオ1では耕地が減少を続け,単収が増加しない場合,シナリオ2では耕地が減少せず,単収が増加しない場合,シナリオ3は耕地が減少せず,単収が増加する場合,シナリオ4では人口減少がない場合とした.なおシナリオ1~3は人口が減少するとした.2030年において,シナリオ1では1608 kcalと現状と同程度に対し,耕地面積が減少しないシナリオ2では1826 kcalに,それに加えて現在の単収の増加傾向が続くシナリオ3では1976 kcalまで増加が推定された.一方,シナリオ4として人口の減少がないとした場合では1464 kcalまでの減少を予測した.本研究により,わが国の食料安全保障を考えた場合,現在からの耕地面積の減少を回避するとともに,単収の持続的な増加は欠かすことができないことを示した.
著者
森田 茂紀 根本 圭介
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.359-362, 1993-09-05

水稲根系の形態について研究していく場合, 根系の枠組みを構成している1次根の伸長方向は, 重要な形質となる. 著者等は, 1次根の伸長方向を定量的に推定するための方法を開発改艮してきた. しかし, ある根系における1次根の空間的な分布を評価したり, 異なる根系を相互に比較する方法は, いまだ確立していなかった. そこで, 1次根が空間的に均等に伸長していることを仮定した水稲1次根均等伸長モデル (均等モデル) を想定した. この均等モデルの特性について検討を行なった結果, 1次根の走向角 (1次根と水平面とがなす角度) をθとした場合, 走向角別の1次根の頻度分布がcos θであること, 走向角の平均値が約32.7゜であること, 走向角が0-30゜と30-90゜の1次根の数が等しいことなどが分かった. 実際に, 水稲品種むさしこがねおよびIR50の根系における1次根の走向角別頻度分布を均等モデルと比較したところ, いずれの品種も斜横方向が若干「空いて」いるが, 斜下方向が若干「混んで」いるという傾向を示した. さらに, 両品種の差異についてみてみると, IR50に比較してむさしこがねが下方向で1次根の相対的な密度が高いことも分かった. 以上のように, 均等モデルは1次根の空間的分布における品種間差異の解析にも有効であることが分かった.
著者
清水 康弘 安井 利昭 長谷川 航 大成 忍 白石 真貴夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.79, pp.1-3, 2013-05-15

極早生〜早生品種を比較した結果,高温登熟条件下で品質低下が少なく,収量性が高く,良食味である「つや姫」が有望であり奨励品種に採用した.
著者
市原 泰博 舩場 貢 古賀 潤弥 土井 謙児 大脇 淳一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.79, pp.4-7, 2013-05-15

1.気温と日長を用いて出穂期を予測するDVR関数式を検討した.早生品種である「コシヒカリ」,「つや姫」は気温のみまたは気温と日長を気象要素とする関数式が,中生品種である「ヒノヒカリ」,「にこまる」は気温と日長を気象要素とする関数式が出穂期を高い精度で予測することが明らかになった.2.「コシヒカリ」,「つや姫」は気温のみを,「ヒノヒカリ」,「にこまる」は気温と日長を気象要素とするDVR関数式を水稲生育予測システムに採用した.3.新たな生育予測システム用いて適作型を推定した結果,近年の温暖化が進んだ長崎県央平坦部には「ヒノヒカリ」栽培は適応しにくく,「にこまる」栽培は適応できることが明らかになった.
著者
川田 信一郎 石原 愛也 角田 昌一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.68-74, 1967-03-10

The seminal root tips of the rice, var. Norin No. 29 were used as materials. Two root tips were grown in each flask containing 15 ml of liquid medium. Cultures were maintained at 26〜27℃ in the dark for the periods from half to one month, until the root growth ceased. The following subjects were studied. First, the effects of yeast extract, peptone, casamino acid (casein acid hydrolysate), tryptophane and indole acetic acid on the growth of excised root tips have been investigated. These substances were added singly or in combination to the basic components of medium, i. e., modified White's inorganic salts (containing 0.4 mg per liter of Fe in the form of ferric citrate) and sucrose or dextrose. Among the substances tested, casamino acid were most stimulating to the growth of root tips. Other substances were without noticeably favorable effects. Basing upon these results, the "original medium" were obtained, which was consisted of modified White's inorganic salts, 4 percent sucrose and 0.2 percent casamino acid. Next, the several factors involved in the preparation of the "original medium" have been examined to study their respective effects on the growth of excised roots. The points which have emerged from these experiments were as follows: i. the optimum PH of the medium is . 4.0, ii. the concentration of Fe may be increased to 4.0 mg per liter, iii. the optimum concentration of sucrose is relatively high, about 6 percent, and iv. the autoclaving of the medium at 1.0 kg per cm^2 air pressure for five minutes shows best results. In addition to these, it was found that the vitamins (thiamin, pyridoxine and nicotinic acid each in the concentration of 0.5 mg per liter) accelerated the growth of excised root tips distinctly unless they had been sterile-filtered. By all accounts, "improved medium" were constituted as follows: modified White's inorganic salts (containing 4.0 mg per liter of Fe in the form of ferric citrate), 6 percent sucrose, each 0.5 mg per liter of thiamin, pyridoxine and nicotinic acid and 0.2 percent casamino acid. Superiority of the "improved medium" to the "original medium" for the growth of excised root tips of rice were verified. Nevertheless, incapability of "improved medium" to sustain the unlimited growth of excised rice roots were the problem remaining for future work.
著者
中澤 芳則
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.80, pp.16-18, 2014-05-15

多数の品種系統を供試し,塩化マグネシウムを凝固剤として濃度を変えた豆腐を加熱絞り法で作成し,その破断応力を測定した.その破断応力の変化から凝固剤濃度を変えたときの最大破断応力を推測し,豆腐の製造条件別にタンパク質含有率との相関関係をしらべた.その結果,塩化マグネシウムを凝固剤として加熱絞り法で豆腐を作成した場合,最大破断応力とタンパク質含有率は必ずしも有意な相関関係を示さないことが明らかになった.
著者
黒田 俊郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.40, pp.30-31, 1999-07-29

東北タイとラオスはおおむね熱帯モンスーンの地帯にある。したがって雨の降る雨期と雨の降らない乾期とが季節的に巡って来る。そしてたいていの稲作は雨の降る雨期に行わる。灌漑設備があれば乾期にイネを作ることは可能であるが、残念ながら人工的な灌漑設備のある水田は多くない。人工的な灌漑設備をもたない水田-天水田-では、村人は豊作を祈って年々の雨の降り具合に一喜一憂することになる(第1・2表)。
著者
山本 朗
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.37, pp.7-15, 1996-08-06

水稲ときめき35の種子を催芽後, 育苗器で出芽させハウス内にトンネルを設けて育苗することにより, 2月下旬の極寒期の播種でも無加温で3月下旬〜4月上旬に稚苗を得ることができた.3月中にビニルハウス内水田にときめき35の苗を移植することにより, 簡易な管理で6月上旬に出穂させ, 7月中〜下旬に収穫することができた.露地栽培では, 3月下旬〜4月上旬の早植えにより5月上旬植えに比べて収量性を損なうことなく, 出穂期では5日程度, 成熟期では8日程度早めることができた.従って, 島根県東部平坦地域においてときめき35を4月上旬に移植すれば, 8月中に出荷が可能であり, ハウス栽培と早植え栽培を組み合わせることにより, 7月下旬から連続して出荷することができる.なお, 極端な早植えは霜害・凍害をまねき生育停滞や枯死につながる危険性があるので水管理を適切に行う必要がある.
著者
白岩 立彦 橋川 潮
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-8, 1993-03-05
被引用文献数
4

ダイズ個体群における捕捉日射エネルギーの乾物への変換効率 (EPAR) の安定性および変動要因を検討した. 1989年に品種エンレイを異なる播種期, 個体密度および畦幅で, 1990年に品種タマホマレを異なる個体密度で, それぞれ圃場栽培した. ダイズ個体群による光合成有効放射 (PAR) の捕捉量と地上部全乾物重の推移を測定したところ, 両者の関係は密接であった. しかしそれは, 生育時期を問わず直線的であるとは単純にはいえず, 両者の比であるEPARは生育初期には増加し, その後やや安定的に推移した後, 子実肥大始 (R5) を過ぎる頃から低下した. このような推移には, 第一に個体群光合成能力の変化が関与すると思われるが, このことに加えて, 生育初期のEPAR増加過程には葉面積増加による光飽和葉の減少が, また生育後期におけるEPAR低下過程には維持呼吸量増大の影響が, それぞれ関与することが示唆された. 安定期におけるEPARは, ほとんどの処理区で2.1〜2.3gMJ^<-1> (1989年) あるいは2.4〜2.5gMJ^<-1> (1990年) の範囲にあり, 播種期, 個体密度あるいは畦幅によっては大きくは変動しないものと思われた. EPARの若干の変動をもたらす要因を検討したところ, EPARは, 葉面積当りN含量とは無相関だったが, 群落吸光係数 (KPAR) との相関は比較的明瞭 (r=0.651) だった.
著者
斎藤 邦行 杉本 充
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.91-93, 1998-03-05
被引用文献数
2

自然光下で生育した水稲の暗呼吸速度(Rr)の日変化と日変化に影響する要因を検討するため以下の3つの実験を行った.水田に生育した水稲を用いて, 18時から翌日18時までの24時間連続して暗黒下におけるRrの経時変化を測定した(実験I).Rrは暗期移行後急速に低下して翌朝までほぼ一定で推移し, 午前5次をすぎると, 生育初期には急速に低下, 最高分げつ期以降には上昇し("morning rise"MRと略記), 最大値を示す時刻は登熟後期ほど遅くなった.各時刻のRrは生育の進みに従い小さくなった.早朝から夕刻まで3段階の遮光処理を行い, 18時以降Rrの測定を行った結果(実験II), 遮光率が大きくなるとRrは低くなったが, 暗黒下においた個体(100%遮光)のRrは80%遮光区に比べ高くなった.ポット栽培し, 野外で孤立状態にある個体を早朝6時から, 18時まで3時間おきに5回, 明所から暗黒下のチェンバーへ移してそれぞれ3時間のRrの経時変化を測定した(実験III).各3時間の測定において, いずれの測定時刻においてもRrは測定開始直後急速に低下した後に上昇して極大値を示し, その後低下する経時変化が認められた.Rrの最大値は午前中に認められ, 夜間に比べ日中のRrは1.3〜2倍の値を示した.実験IIより暗呼吸速度は夕刻になるほど高くなると考えられたが, Rrの日変化のピークは午前中にみられ, この日変化とMRを示す時刻がよく一致したことから, Rrの日変化は主として内生的なリズムにより制御されている可能性が示唆された.
著者
宋 祥甫 縣 和一 川満 芳信
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.107-112, 1990-03-05
被引用文献数
4

水稲の子実生産は, 出穂期前に稈・葉鞘部に蓄積された非構造性炭水化物 (NSC) と出穂後の葉身光合成による同化産物とによって決まることから, 本報ではそれぞれの指標となる茎葉中のNSC%と葉身窒素濃度 (N%) の動態に注目して, F_1ライスの多収性を検討した。F_1ライスの葉身中のNSC%は普通稲品種に比べて大差はなかったが, 稈・葉鞘部では顕著に高かった。各品種とも出穂後NSC%は急減したが, 普通稲品種では登熟期後半に再び高まった。これに対してF_1ライスは登熟末期まで減少を続け, その減少率も大きかった (第1図)。出穂期から登熟末期にかけてのNSC%の減少と稈・葉鞘部から子実への乾物の転流分との間には高い正の相関々係が認められた (第3図)。また, 玄米収量との間にも高い正の相関々係がみられた (第4図)。これらの結果は, 子実への転流の主体はNSCであること, 稈・葉鞘部のNSC%は玄米収量と密接な関係にあることを示し, F_1ライスの多収性は高いNSC%に負うところが大きいことが示唆された。各品種とも葉身のN%は稈・葉鞘部に比べて高く, 生育段階が進むにつれて減少した。F_1ライスの N%は葉身, 稈・葉鞘部とも普通稲に比べて低く, 減少割合も小さかった (第5図)。葉身のN%と玄米収量との間には, F_1ライスを除いた場合, 両者間に有意な正の相関々係が認められた (第6図)。以上の結果から, F_1ライスの子実生産は普通稲品種に比べて, 出穂期前に稈・葉鞘部に蓄積された炭水化物に依存する割合が大きいことが明らかになった。
著者
森田 敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.391-399, 2000-09-05
被引用文献数
15

ポット栽培水稲を用いて人工気象室による温度処理実験を行い, 中国地方平坦部の福山市のおける平均的な8月の気温が登熟に及ぼす影響を解析した.人工気象室で登熟期に福山平年区(32°C/23°C;最高/最低気温), 低温区(28°C/19°C)および高温区(35°C/26°C)の3区を設けた.玄米1粒重と良質粒歩合は低温区に比べて福山平年区で有意に低下し, 高温区ではさらに低下した.高温による玄米1粒重の低下は粒厚の減少を伴った.また, 高温による玄米1粒重の低下は全ての節位の1次枝梗で生じた.福山平年区では低温区より発育停止籾歩合が高く, 高温区では不稔歩合が著しく高かった.高温による玄米1粒重の低下程度には品種間差異が認められ, 高温区の粒重が低温区のそれより10%以上低下した品種は, 森田早生, 大粒のジャワ型品種のArborio, 極穂重型で登熟不良となりやすい日本型品種アケノホシなどであった.高温区での粒重低下程度が5%未満であった品種は, 環境による品質の振れが小さいと言われるコガネマサリ, 小粒のジャワ型品種のLakhi Jhota, アケノホシと兄弟であり極穂重型で登熟が良いインド型品種のホシユタカであった.
著者
平野 貢 山崎 和也 TRUONG Tac Hop 黒田 栄喜 村田 孝雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.551-558, 1997-12-05
参考文献数
16
被引用文献数
12

水稲品種あきたこまちとひとめぼれを供試して, 基肥窒素無施用一8葉期以降追肥の施肥体系と疎植の組合わせ栽培が慣行栽培に比べて低収である原因と改善の可能性について検討した. 基肥窒素無施用-疎植栽培区では葉面積や分げつなどの栄養生長が緩慢で最大葉面積指数も4程度と小さかった. また有効茎歩合が慣行区に比べてやや大きかったにもかかわらず, 登熟期におけるm^2当たり穂数はかなり小さく, m^2当たり籾数は3万粒を下回った. 登熟歩合は慣行区よりも明らかに大きかったが, 収量は慣行区より5-10%低かった. 穂揃期の有効茎数を株あたりで見ると, 1次分げつは慣行区と基肥窒素無施用-疎植栽培区で大差がなかったが, 2次分げつでは後者で多く, 全有効茎数も多くなった. 有効茎となった1次分げつおよび2次分げつの発生部位は慣行区では下位節に, 基肥窒素無施用-疎植栽培区では上位節に偏る傾向があった. しかし, 基肥窒素無施用-疎植栽培区の2次分げつ穂は1穂重, 穂長および1穂当たり生葉重が大きかった. 穂ばらみ期および登熟期の個体群内部の相対光強度は基肥窒素無施用-疎植栽培区で明らかに大きかった.