著者
松岡 秀雄 COLLINS Patric 長友 信人 COLLINS Patr
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

現地調査は、平成8年10月のエクアドルと同9年3月のモルジブで行われた。両国では、中央政府や関係する地方政府の関係者や関心のある研究者と会合がもたれ、それぞれの国がSPS2000計画に参加するについての議論が深められた。全てが参加することに積極的であり、レクテナの設置候補地が選定された。両国において必要となる事柄について調査された。エクアドルでは、レクテナ設置候補地については、熱帯雨林、アンデス高地及び沿岸低地となるので、高高度レクテナの研究に向いている。ガラパゴス諸島は、環境負荷がほとんどないことからして、レクテナの設置には好適である。エクアドルのSPS2000用レクテナは、他の組織と協力することになるにせよ、恐らくは独立企業体として運用されることになろう。この方式は、他の国々や未来におけるSPSの民営化へ向けた重要な一歩になろう。キトー(エクアドル)にあるサンフランシス大学の人達は、今後の協力体制へのセンターとして機能することになろう。モルジブでは、土地固有のエネルギー源はない。SPS2000のレクテナ設置にはかなりの関心を示した。モルジブには、ほとんど陸地はなく、リーフ上に広大な浅瀬が展開しているため、この国の最南端にあるアドゥ環礁では、海上にレクテナが設置されることになろう。環礁管理庁や計画・人的資源・環境省の人々が今後の協力体制へのセンターとして機能することになろう。
著者
米田 剛
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

Babin-Mahalov-Nicolaenkoは1997年に「初期値が周期関数におけるNavier-Stokes方程式の時間大域解の存在」を示した.この問題に対して著者は初期値が概周期関数の場合の大域解の存在,より具体的には任意の時間区間内における滑らかな解の一意存在を示した.コリオリカとは地球の自転によって引き起こされる力のことをいい,台風などの発生原理を追求する際にはこの力は無視できない.現在,気象変動などの地球規模の流体を解析するときには,コリオリカ付きの流体方程式を扱うのが主流である.最近はコンピュータを用いたシミュレーションによる気象変動などの研究が盛んにおこなわれており,工学的な技術としても重要な方程式である.コリオリカ付きNavier-Stokes程式の非線形項は,周波数集合の相互作用を分析することでコリオリカに依存する部分と依存しない部分に分けることが出来る.Babin-Mahalov-Nicolaenkoで行われているこの分解法に対して,私は2進数に基づく作用素族を導入して計算がより見やすくなるようにした.コリオリカに依存する部分を取り除いた非線形項をもつ方程式は2次元的なので,ここではextended2D-NSという(E2DNS).その方程式の解はコリオリカに依存しない.このE2DNSが滑らかな大域解を持つということを示すのが,証明の鍵となる.そこでGiga-Inui-Mahalov-Matsuiが2005年に初めてNavier-Stokes方程式へと応用したFMO空間を使った.FMO空間とは,原点に点質量(デルタ測度)を持だない有限ラドン測度のフーリエ逆変換像全体である.私はそのFMO加空間上のmild solutionを使ってE2DNSの大域解の存在を導いた.
著者
小河 勉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

工業用磁気センサーとして用いられている磁気インピーダンス(MI)センサーを、地磁気測定用高感度ベクトル磁力計へ応用すべくその開発を試みた。思索した磁力計から得られた結果は、地磁気の主磁場に対しては感度を持った出力が得られたものの、日変化や地磁気擾乱などの微小な地磁気変化の検出には至らなかった。ただしMIセンサーの地磁気測定用磁力計への活用方法にはなおも追求すべき課題が複数存在することが具体的に判明した。
著者
石井 和之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、光機能性錯体フタロシアニン(Pc)の示す大きな電子吸収・発光・磁気円偏光二色性(MCD)に着目し、(1)シリカ微粒子へPc 錯体を担持した有機-無機複合微粒子の科学の開拓と(2)無機磁性材料へPc 錯体を担持した有機-無機複合型磁性材料における新規磁気光学物性の発現を目的とする。本研究の成果は以下の通りである。
著者
西川 洋一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

12-13世紀は、ヨーロッパにおける、いわゆる実務的文字文化が急速に展開した時代であった。ドイツでは12世紀に、その基本的に開かれた宮廷の構造を媒介として、イタリア、フランス等、王権が関係を持っていた地域の様々な新しい潮流が流入するようになる。それを受けて、12世紀末以降、当時もっとも進んだ証書実務を誇っていた教皇庁の証書を巡る様々な理論や観念が取り入れられる。これに対して後期シュタウフェン朝の書記局は、徐々にシチリア王国の文書行政の要素の影響が強まって、制度化の程度が高まると同時に、南イタリアの官僚制を前提として、特権状から命令状への重心の移行が見られるようになる。これに対して、都市においては、単に社会生活・経済生活の複雑化というような理由のみならず、その共和制的な政体に特有の条件によって文字文化が発展を遂げる。それが特に早期にかつ顕著に進行したのはイタリア中世都市においてであった。教会裁判権を嚆矢とする裁判手続きの文書化とともに、共和制という政体に規定されて、役職者の選挙、役職者のコントロール、あるいは公共的な目的のための租税の徴収等の目的で、多様な文書が作成されるようになる。同じ傾向は、少し遅れるものの、ドイツやフランドルなど、北ヨーロッパにおいても見られた。この地域では、都市初期(Stadtschreiber)が、徐々に法学を学んだ者たちによって占められるようになり、文書行政を担当するのみならず、参事会の顧問、外交、さらには都市の自己意識の表現である歴史叙述等にも携わった。しかし文書を媒介とした法的な専門知識と、伝統的な共和制的な統治の間には、常に緊張関係が残っていた。
著者
富所 敦男 間山 千尋
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

(1)前眼部フーリエドメインOCT(以下、FD-OCT)による隅角微細組織構造の同定、論文掲載輸入摘出人眼の隅角部を前眼部FD-OCTの高解像度スキャンにて撮影することで、隅角部における房水流出経路として重要なシュレム管や線維柱帯の構造を非侵襲的に同定することが可能であった。シュレム管は空隙としてとらえられ、外科的拡張操作の前後にFD-OCTの撮影を行うことでシュレム管であることを確認した。さらに、正常人ボランティア30人60眼において、超音波生体顕微鏡(UBM)、前眼部FD-OCTによる隅角部画像データを取得し解析した。その結果、正常人眼60眼においてシュレム管は87.5%と高い頻度で同定できた。シュレム管の平均長径は347.2±42.3μm、線維柱帯の平均長径は466.9±60.7μm、線維柱帯の平均面積は0.0671±0.0058mm^2であるなど正常な隅角構造の定量的な解析を初めて行うことが可能であった。これらの成果については英文論文として発表した。(2)狭隅角眼を対象とした前眼部画像データの解析原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障患者を含む狭隅角眼を対象として、長期間前向きに隅角構造の定量的パラメータの変化を追跡する他施設共同研究を主導して実施し、最終的に257例451眼が組み入れられた。現在はエントリー終了後、定期的な経過観察FD-OCTや他の臨床検査、取得したデータの解析を進めている。エントリー時における断面的データから、虹彩前癒着のある症例では隅角角度は上下方向で薄く、狭隅角眼が女性に多く女性には男性に比べ遠視、短眼軸、薄い角膜厚の傾向があることなどを国内の学会で発表した。(3)前眼部FD-OCTによる隅角全周解析を用いた狭隅角眼における隅角閉塞領域の検討狭隅角眼43眼において、緑内障につながる隅角閉塞の検出頻度を前眼部FD-OCTとUBMで比較した。UBMでは明所下、暗所下にて各18.4%、44.1%で少なくとも部分的な隅角閉塞が認められたのに対し、前眼部FD-OCTでは各72.4%、75.7%とより高率であり、高速、高解像で隅角全周の解析が可能な前眼部FD-OCTが、閉塞隅角緑内障の診断や発症メカニズムの解明に役立つことが示唆された。これらの成果については英文論文として現在投稿中である。
著者
大方 潤一郎 BOONTHARM Davisi
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究では平成19年度に以下の4つの活動(成果)があった。1つめとして、文献レビューを実施し、既往文献の整理および要約をおこなった。2つめとして、平成19年6月に原宿において「春期・夏期」調査(フィールドリサーチ)をおこなった。具体的には、建物形態の状況調査(描写およびスケッチ)と来街者の行動観察調査を実施し、さらに東京のまちづくり専門家へのインタビュー調査も並行して実施した。3つめとして、展覧会「Made in Harajuku」を原宿現地にて平成19年6月26日〜7月2日に実施した。当展覧会への来場者とのコミュニケーションを通じて、原宿地区(特に「裏原」地区)についての解釈を深めることができた。4つめは、研究成果の公表である。学術雑誌記事「Shophouse and Thai Urbanism:Towards a software approach」において、バンコクのファッション最先端地である「Siam Square」を対象として、タイの都市様式(アーバニティ)の原理として、既成市街地の物的環境と「shophouse」(東南アジアの都市に存在する商業機能を合わせ持つ「長屋」)とについて論じた。本論ではシンガポールを比較対象とし、shophouseを主として物的環境として考慮しているシンガポールに対して、タイ・アーバニティの中では、よりソフトウェア的な存在として位置づけられている点が明らかとなった。また、書籍「Harajuku Urban Stage-Set Q&A」では、東京のファッション最先端地の1つである原宿は、物的・地理的・社会的複雑さが特徴であり、地区自身が「劇場の舞台装置」にメタファーできると捉えて「Urban Stage-Set」と名付けている。
著者
小泉 一二三
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

現在、日本を含め北半球の温帯部には100種以上のトリカブト属が分布している。トリカブトは古来より、食中毒事故を起こす毒草としても有名であり、その葉部でも誤食すれば、嘔吐、下痢、呼吸困難などを起こし、摂取量によっては死に至る。この中毒を起こす成分は、いわゆるトリカブトアルカロイドと呼ばれ、その量はブシあるいはウズと呼ばれるトリカブトの塊根部に多量に含まれている。レペニンは1991年キンポウゲ科トリカブト属ホナガウズより単離、構造決定されたジテルペンアルカロイドである。本化合物は高度に酸素官能基化された六環性化合物であり、3つの不斉四級炭素を含んでいる。その構造の複雑さから未だに全合成は報告されていない。今回、7位の立体化学のみを利用することで四級炭素を含む全ての立体化学を制御することを目的に合成研究を開始した。その結果、分子内ディールスアルダー反応を二度用いることで、4位および8位の四級不斉中心の立体制御に成功した。残る10位の四級炭素構築に関して、ニトリルオキシドおよびニトロンの分子内環化付加反応を用いた構築を検討したが、目的とする化合物は得られなかった。その他種々検討を行い、分子内1位10位に相当する二重結合の酸素官能基化に成功し、これを足掛かりとする10位四級不斉炭素の構築への可能性を示した。
著者
石田 貴文
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

これまでの民族識別へのアプローチは、個人識別のために求められていた多型標識の頻度分布をベースに、民族毎に比較するものであった。近年の解析技術の長足の進歩は、一度に何十万という一塩基多型(SNP)の解析を可能とした。2008年に日本人について14万SNPの解析結果が報告されたこと、汎アジアコンソーシアムによりアジアの75集団のSNP解析が済んだとの情報をえたことから、研究内容に重複の無いよう、本研究も軌道修正をおこなった。汎アジアコンソーシアムで扱われなかったアジア集団、フローレス・セラム人の遺伝的多型解析をおこなった。また、比較のため、スンバ人も検索に加えた。ミトコンドリアDNA超可変領域、Y染色体STR、常染色体STRを調べた。地理的に近く、オーストロネシア語を使っているにもかかわらず、予想に反しフローレス人はノンオーストロネシアとクラスターすることがわかった。フローレス島は、小型人類の発掘でも注目されている場所であり、今後近隣集団の解析を加えることで、人類の移動、特にオーストロネシアンの移動と混交へ知見をもたらすと期待される。また、日本人の成立に関する南方からの寄与にも、オーストロネシアンの解析は必要である。
著者
大杉 満 門脇 孝 植木 浩二郎 窪田 直人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)膵β細胞のIRS-2量調節では、グルコース刺激が重要である。(2)グルコース刺激がCaMK-4、CREBを介してIRS-2を調節している。(3)db/dbマウスなどの膵β細胞代償不全モデルでは、グルコース・センシングに重要なグルコキナーゼ、Glut2の発現低下が見られ、糖流入が減ることにより、IRS-2が低下し、膵β細胞の保護システムが破綻すると考えられる。
著者
末広 潔 末廣 潔 (1994) COFFIN Milla SHIPLEY Thom MANN Paul 篠原 雅尚 平 朝彦 COFFIN Milar
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

ソロモン海域ではオントンジャワ海台が北ソロモン海溝に衝突しており対応する島孤の逆(南)側ではサンクリストバル海溝からインドオーストラリアプレートが沈み込み始めているように見える。またインドオーストラリアプレート上でも西方でウッドラーク海盆で海洋底拡大が進行しつつ海溝に衝突しており,この地域は100kmスケールで見ても複雑な様相を呈している。このような場に見られる過程は現在の地球では特異に見えるが地球史の中では繰り返されてきたことが地質学的にわかっている。海台の沈み込みならびに沈み込み開始線(海溝)のジャンプ・逆転の起きているソロモン島孤海溝系において,地殻深部・最上部マントルの地震・地質構造を精密に調査することは,このように複雑な過程の普遍性を明らかにし,プレートの沈み込みがいかに始まるか,沈み込みにくい海台が海溝で衝突してどうなるか理解するために重要である。本研究は,日本の海底地震計技術と米国の反射法探査技術を有機的に結びつけてその目的達成をはかるものである。平成5-6年度の2カ年計画として実験を計画したが,米国側NSFに採択された調査船利用の反射法実験の実施が米国側の調査船のスケジュールが平成7年度にずれこんだため,当初の計画を変更して,6年度に日本側の海底地震計による自然地震観測を行い,反射法・屈折法による日米共同実験は平成7年度に実施することになった。したがって最終的な構造探査結果をあわせたとりまとめはその結果を待つことになる。5年度にはデジタル海底地震計の信頼性を向上させ,また,過去にすでに現地調査を行っている米国側共同研究者と研究対象域のテクトニクスの調査も行った。その結果,南側で開始されているという沈み込みに伴う自然地震活動の実態を把握することが重要との認識を得た。実際,定常的な地震活動はISC(国際地震学センター)による震源分布に頼るしかないが,これは100kmくらいの震源決定位置の誤差があることが今回わかった。6年度にソロモン諸島国地質調査所の協力も得て,海底地震計(OBS)をソロモン諸島に運び,現地傭船により5台用いて,海底微小地震観測を行った。位置および時刻はGPSによっている。期間は8/28日から9/7日までであった。観測ターゲット海域は強い季節風を避けざるを得なかったが,サンクリストバル海溝が浅くなるガダルカナル島西方とした。データは全台から良好に得られ,36ヶの近地地震を決定した。これは,他の観測網では検知されていないイベントである。また,ISCでは今回の観測域で年間平均10ヶの震源決定がなされている。今回の観測は200倍以上の検知能力を持ったことになる。その結果,あたらしく沈み込みを開始したインドオーストラリアプレート沈み込みは少なくとも50kmの深さまで進行しているが意外なことにその沈み込み角度が50度と他では見られない大きな値を示すことがわかった。また,背孤側に小海盆が見られるが,ここには地震が発生していないことが確認された。一方北側からの太平洋プレートの沈み込みの「痕跡?」として深さ60-90kmにも震源が求められた。はたして沈み込みが停止したかどうかこの結果だけからは結論づけられない。ガダルカナル島直下には地震が検知されなかった。これらは,グローバルな観測網の数10年のデータ蓄積をもってしても窺いしれない結果である。今後は陸上にも観測点を増やしてより長期のデータ収集を続ければ,さらに詳しい結果が得られるはずである。ソロモン諸島国と協力して実施したい。沈み込み角度が大きいことは,さらに観測を重ねてデータを増やして確認する必要がある。しかし,事実だとすると,一般に沈み込み初めの角度は10度未満程度であるので,北側からのオントンジャワ海台の衝突が大きな抵抗となっている可能性がある。小海盆部に地震のないことは他の島孤のリフトゾーンに地震の少ないことと合致する。平成7年度に予定している島孤全体を横断する人工地震実験測線から地殻の全貌を明らかにできればテクトニクス,地震活動との因果関係がさらに解明されるだろう。
著者
末廣 潔 末広 潔 COFFIN Milla SHIPLEY Thom MANN Paul 篠原 雅尚 平 朝彦
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

西太平洋に位置するソロモン海域ではオントンジャワ海台が北ソロモン海溝に衝突しており対応する島弧の逆(南)側ではサンクリストバル海溝から複雑な地形を持ったインドオーストラリアプレートが沈み込んでいる。このような過程は現在の地球では特異に見えるが地球史の中では繰り返されてきたことが地質学的にわかっている。海台の沈み込みならびに海溝のジャンプ・逆転の起きているソロモン島弧海溝系において,地殻深部・最上部マントルの地震・地質構造を精密に調査することは,このように複雑な過程の普遍性を明らかにし,とくに沈み込みにくい海台は海溝でどのような振る舞いをするのか理解するために重要である。本研究は,日本のデジタル海底地震計技術と米国の反射法探査技術を有機的に結びつけてその目的達成をはかったものである。平成7年度に日米共同実験として地震学的反射法・屈折法による地殻構造調査を主に,重力・地磁気観測も行い,当該海域ではじめてコンプリ-トな地殻構造実験が実施できた。7年度の7月には共同実験者とテキサス大学地球物理研究所において綿密な実験打ち合わせを行い,本実験は米国地球物理研究船モ-リス・ユ-イング号にて,10月17日-11月19日に実施した。この間,ソロモン諸島全域の約130チャネルの多重反射法音波探査データ(4050km)を取得し,かつグアダルカナル島西方においてオントンジャワ海台からインドオーストラリアプレート側まで464kmの長大測線に18台の海底地震計を配置した屈折・反射複合探査も行った。人工地震の震源はエアガンアレーで約140リットル,150気圧のエネルギーを約50m間隔でシューティングした。この結果,海底地震観測において地殻深部の情報がかつてない空間的密度で得られる。これまでの反射法の記録の解釈では,オントンジャワ海台は基本的には現在でも沈み込みを続けているという意外な結果である。これまで沈み込みせずに陸側に衝突しせりあがっているという解釈があったが,それは局所的現象のようである。ソロモン島弧のうちマレイタ島,サンタイサベル島の一部はオントンジャワ海台と地質・岩石的に区別が付かないので,せりあがりが起きていることは確かであるが,プレートの大部分は沈み込んでいる。陸側プレートがくさび状に海台を乗せたプレートを割っているか,それともたとえば南海トラフのように付加体を形成しながら沈み込んでいるかのふたつのモデルが考えられていたが後者の可能性が高い。より深部の構造を明らかにして決着をつけるべきであるが,今回得たデータは,まさにそれを可能にする。海底地震計はデジタル型であるのでダイナミックレンジが広くかつ時刻精度も高く,アナログ型では不可能な高品質データを得た。エアガンの信号を見ると,記録は300km以上届いているので,島弧系の全貌が明らかにされるはずである。これまでソロモン島弧はその地殻の厚さも不明であり,上部地殻の一部がしかも一次元的に明らかにされているだけであり,今回2次元的にトランセクトが得られる意義は大きい。これまで海洋性島弧でそのような構造が求められているのは北部伊豆・小笠原島弧だけであり,そこでは海洋性島弧に大陸性カコウ岩質岩石の生成現場としての位置づけがされている。同様な構造がここでも見られれば,海洋性島弧の存在は地球進化においてすなわち大陸地殻の成長に重要な役割を持つことになる。一方,大陸性地殻形成のもうひとつの重要な候補が海台である。海洋リソスフェア中にホットスポットあるいはマントルプルーム活動によって短期的に形成されるとする海台が,沈み込まず大陸に付加すると言う説である。今回の実験はこの両方を同時に検証することになる。プレートの沈み込み角度についてもこの実験により,グローバルな普遍性を検証するものとして位置づけられる。北側と南側とではその沈み込みパラメータは,年代,地殻,移動速度などどれをとってもかなり異なる。にもかかわらず,沈み込み始めは両側とも類似したごく浅い角度であると推定される。その原因はまだ検討中だが,いまのところほかの沈み込み帯の結果も同様であり,地質学的過去よりも単純なダイナミクスで説明できるる可能性が高い。
著者
安藤 宏 GANG Q GANG Q.
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

今年度は、以下の四回にわたる学会・国際シンポジウムで研究発表・講演を行った。1、創価大学日本語日本文学会2006年春季大会発表(2006年5月19日)で、「芥川龍之介の上海・北京観劇」という題で研究発表した。2、「第一回国際芥川龍之介学会・シンポジウム」(2006年9月9日、韓国・延世大学、仁川大学)における講演題目「「南京の基督」における中国表象--同時代的言説の中で--」3、「東アジア日本学研究国際シンポジウム」(2006年10月14日、中国・洛陽)における研究発表題目「芥川龍之介における洛陽という場(トポス)」という題で研究発表した。4、「東アジアで村上春樹を読む国際シンポジウム」(2007年3月30日、韓国・高麗大学)における講演題目「戦後日本の歪みの中の村上春樹」今年度中に活字化した研究成果は、以下の通りである。1、論文「ジブリアニメと2005年の日本」(『日本学研究』2006年11月)2、討論「パネルディスカッション「ジブリアニメの力」」(『日本学研究』2006年11月)3、研究ノート「上海小新聞の一記事から中日文壇交渉を探る」(『日本近代文学』第75集2006年11月)4、論文「芥川龍之介と谷崎潤一郎の中国表象--<支那趣味>言説を批判する『支那游記』」(『国語と国文学』2006年11月)5、論文「芥川龍之介の中国旅行と『支那游記』」(『書品』2006年10月)6、訳書『支那游記』」(中華書局2007年1月)
著者
新野 宏 伊賀 啓太 中村 晃三 鈴木 修 石部 勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

水平格子間隔70m、鉛直方向45層、領域サイズ66.4km×66.4km×15.1kmの非静水圧準圧縮系のメソ数値モデルを用いて、1977年にアメリカ・オクラホマ州のデル・シティで発生した竜巻の環境場の高層観測デーダを水平一様に与えたところ、スーパーセル型積乱雲とこれに伴う竜巻の現実的な再現に成功した。積乱雲が発生して50分が経つと、水平風の鉛直シアと積乱雲の上昇気流との相互作用で高度2km付近に気圧の低下が生じ、この層の下で上昇流が強化される。これに伴って、60分頃になると高度1.2km付近で、水平渦度の立ち上げとその引き伸ばしにより下層のメソサイクロンが形成され、この回転場により1.2km付近での気圧降下が起こって、更に下層の上昇流を加速し、高度1kmでは40m/を越える上昇流が形成される。一方、地表面付近にはストームの降水域から流れ出す冷気流と周辺から吹き込む暖湿な気流のぶつかるガスト・フロントが形成されているが、ガスト・フロント上の水平シアに伴う鉛直渦度が丁度この強い下層の上昇流の下に来て引き伸ばされることによって竜巻が発生することが明らかとなった。このことは、スーパーセルに伴う竜巻が、定性的にはlandspoutと呼ばれる局地前線に伴う竜巻に似た機構で発生することを示している。本研究では、この他、日本付近の積乱雲を含むメソスケール対流の環境場を記述する環境パラメータの気候学的調査、竜巻ないしはダウンバーストと思われる突風被害をもたらした亜熱帯低気圧の構造とライフサイクルの解析、激しい積乱雲を生ずることの多い梅雨期のメソαスケール低気圧の力学の解析も行なった。
著者
羽田野 直道 中村 統太 西野 晃徳 PETROKSY Tomio ORDONEZ Gonzalo
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

量子ドットの電流電圧特性を測定する実験は広く行われています。しかし、それに対応する理論には決定的なものがありません。本研究では従来の手法と独立で相補的な手法を開発しました。我々の方法は、電子間相互作用のない場合に決定的な手法であるランダウアー公式を、相互作用がある場合に自然に拡張した理論になっています。その手法を用いて、簡単な模型において厳密に電流電圧特性を求めたところ、電位差を増やすほど電流が流れにくくなる領域があることを見いだし、その原因を明らかにしました。電子間相互作用のために2つの電子が互いに束縛し合う状態ができますが、その状態が量子ドットを通過できないために起こります。
著者
塩澤 真人 戸塚 洋二 鈴木 厚人 中村 健蔵 伊藤 好孝 久嶋 浩之 西川 公一郎 塩澤 真人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、100万トン実験装置のための、安価で高性能な光センサーを開発するものである。13インチのハイブリッド光センサーの試作をし、動作試験から、改良研究を行った。いくつかの問題点が見つかったが、それに対する解決方法を明らかにした。1.高電圧(25キロボルト)印加できず放電してしまう。-->光電面を製造中にセラミック絶縁体を加熱し、耐電圧を向上させる。2.ダイオードの短時間での劣化がおきる。-->新たに5mmφの光ダイオードを開発した。寿命は改善したようである。3.有効面積が小さい(240mm)-->ダイオードの位置と光電面の曲率を最適化することにより、300mmまで改善できることがわかった。4.HPDの構造全体の最適化-->部品の効率化、フランジの強度改善、光電面の曲率の最適化案を作成した。以上の開発により、致命的な技術的困難はなく、大型ハイブリッド光センサーの優れた基本特性と製作可能性が確かめられたと考える。今後の課題としては、生産性の向上のための光センサーと電子回路の最適なデザイン検討と開発がある。また、コスト低減のために、さらなる大型化の可能性の追求も必要である。
著者
藤本 薫
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

硝酸による脱アルミニウム処理によりZSM-5と同等までSiO_2/Al_2O_3比を高めたモデナイト、およびUSY型ゼオライトを調製し、水素のスピルオーバー効果を得るために含浸法により調製したPd/SiO_2をゼオライトに対して等重量物理混合したハイブリッド触媒を用いて各種C7パラフィンの水素化分解を行った。パラフィンの水素分解反応では、水素のスピルオーバーによりゼオライト上にプロトンが供給され活性が向上するとともに、同時に生成するハイドライドにより中間体カチオンが安定化されるためこれらの重合、および重合物の分解が抑制され分解生成物は少数のパラフィンに限定された。各種C7パラフィンの反応性にはゼオライトにより大きな違いが認められ、モルデナイト、USY型ゼオライトでは2,4-ジメチルペンタン(DMP)>2-メチルヘキサン(MHK)>ヘプタン(NHP)の順となった。これらの序列はH-ZSM-5ハイブリッド触媒と全く逆である。H-ZSM-5ハイブリッド触媒では、2-MHK、2,4-DMPではW/Fを0に外挿したときの分解の選択性は0に近い値になるが、NHPでは40%以上の高い分解の選択性を示すことである。これらの実験結果からモルデナイト、USY型ゼオライトではパラフィンの水素化分解において従来から広く受け入れられてきたカルベニウムイオンのβ開裂により分解が進行するが、その酸強度、および酸量から予想されるよりも遥かに高い活性を示すH-ZSM-5では、プロトン化シクロプロパン環を中間体として分解が進行することが示唆された。ヘプタンの転化率(異性化反応を含む)が酸強度がモルデナイトよりも低いH-ZSM-5が高いことから、H-ZSM-5の狭い細孔構造がプロトン化シクロプロパン環型中間体の安定化に寄与し、優れた炭化水素の反応の場となっている可能性がある。
著者
瀧上 舞
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成23年度は、(1)ナスカ地域における食性の季節差、(2)インカ帝国時代以前の南部海岸地域における定住者の食性の季節変化、(3)インカ帝国時代の食性の地域差、(4)形成期の北部高地における植物栽培・家畜の飼育開始時期について調査を進めた。また、ペルー国内の古代の食物の同位体比を得るためにナスカ地域河内遺跡の食物試料サンプリングを行い、さらにナスカ地域及び北部高地の現生の陸上植物食物、淡水生魚類、海水生魚類、ラクダ科動物の毛の採取を行った。(1)平成22年度にサンプリングを行ったチャウチー野外展示場のミイラの14C年代測定及び、毛髪の炭素・窒素同位体比測定による食性の経時的変化の分析を行った。年代測定の結果、この遺跡のミイラはイカ・チンチャ期(AD 1000-1400)に作成されたことがわかった。また、食性には一年ごとの周期性はみられなかったが、C3植物とC4植物の摂取量が一年を通して変化していたことがわかった。また、海産物摂取量は一年を通してあまり変化していないこともわかった。これらの結果は、ナスカ台地の有機物試料の年代測定による人間が活動した文化期の同定結果と共にペルー文化庁に報告書を提出した。(2)は南部海岸地域から出土した一般人のミイラの毛髪と他の軟部組織の分析を行った。毛髪の食性変化から皮膚や筋肉が反映している食性の時期(亡くなる何か月前の食性か)の同定を試みた。今後、骨の同位体比との比較を行い、体組織の同位体分別の補正値を考えていく予定である。(3)インカ帝国が支配下に収めたペルー北部高地から南部高地までの古人骨の食性推定と年代測定を行った結果、インカ帝国期には食性に大きな地域差があったことがわかった。また、先行研究で報告された生賛の子供のミイラの食性と比較したところ、彼らは帝国全域から集められた子供であったことがわかった。この結果は今後論文にまとめて報告していく。(4)北部高地の形成期の古人骨や動物骨の食性推定を行ったところ、ヒトもラクダ科動物もB.C.800年頃からトウモロコシ摂取が増加したことがわかった。特にラクダ科はB.C.800年頃には、野生のシカとは異なる2種類の食物の混合された食性に変化しており、ヒトによる食物コントロールが行われていた可能性が示された。
著者
米山 忠克 藤原 徹 林 浩昭
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

マメ科植物では篩管を移行する物質が窒素固定する根粒数を決めていること、これにはhar1遺伝子が関与していることを示している。しかし根粒数を制御する物質は未だ不明である。本研究で用いた植物ステロイドホルモンであるbrassinosteroidsは植物の成長において様々なはたらきを行なうだけでなく、最近は病害ストレス応答に関与し、病害抵抗反応をシステミック(全身的)に誘導することが報告されている。このbrassinosteroidsの最も生理活性の強いbrassinolideのダイズ野生株(エンレイ)および根粒超着生ミュータント(En6500)の地上部への処理と、brassinosteroidsの合成阻害剤のbrassinozoleをエンレイの葉部と培地から処理をして、葉部の成長と根粒の着生を調査した。Brassinolideの葉への処理はEn6500の根粒数を23-62%に低下させたが、エンレイでは根粒数は変化しなかった。Brassinolideの処理によって、節間は伸長した。葉にBrassinozoleの処理を続けるとエンレイの根粒数が増加した。また培地へのbrassinozoleの処理は節間を短くし、根粒数を増加させた。このような結果から葉部の,brassinosteroidsが篩管を通じてシステミックに根粒着生を変化させることが始めて明らかとなった。イネ篩管液からメタルの鉄、亜鉛、カドミウム、ニッケル、銅、モリブデンなどを検出した。とくにカドミウムと亜鉛については遊離のイオンでなく、大部分がリガンドと結合していていることを明らかにした。篩管内鉄またはその結合物質は鉄のシグナルとなっていると予想された。本年度から日仏共同研究「植物の炭素、窒素同化のシグナリングと代謝ネットワークの分子基盤とその応用」(代表 長谷俊治、Suzuki Akira)の日本側の研究協力者となった。ここでは代謝とそれを制御するシグナリングを研究することとした。また12月8〜9日と大阪大学蛋白研究所で開催された「植物代謝のネットワークとシグナリングの分子基盤とその応用」セミナーで「植物成長とC/N移行:^<15>Nと^<13>Cによる追跡」と題して本萌芽研究のテーマの長距離シグナリングメタボライトの存在とその重要性について講演した。