著者
大澤 吉博 STEBLYK C.P.
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

京都の六十年代のアヴァンギャード芸術、展覧会、などの研究。・京都国立近代美術館。近代の美術(日本の六十年代の芸術者)。草間彌生展。1月6日(木)〜2月13日(日)60年代アメリカ前衛芸術の最前線で活躍し、現在も日本を拠点に国際的な美術家として旺盛な制作活動を続ける草間彌生(1929年、長野県生)の新作を中心にした大規模な展覧会です。(インスタレーション、作品)・何必館(かいはつかん)・京都現代美術館 概要・京都芸術センター。京都市東山区祇園町北側271 芸術振興の拠点施設、Exhibition "CRIA"。Date:8th(sat.)-30th(sun.), January, 2005 センターでは、さまざまな自主事業を展開。信夫北脇:京都のアヴァンギャアド芸術者。Japan Avant-Garde Artists Association、1947.・映画監督者:大島渚(1960‘s)京都のしょちく映画館・近代のアビャンギャアド。Tranqroom.(トランクルーム)京都市左京区浄土寺真如町162-2。展覧会、エヴェント。Art Complex 1928:ギャラリー。アートショプ。発表会>The Japanese Avant-Garde and Ono's Instructional Paintings. San Francisco State University. February 17,2005.発表会>Murakami Haruki and 1960s Japan.(ノルウェイの森)Japan Society, New York. February 22,2005.発表会>What is it Love? Iimura Takehiko. Ponja Genkon conference on post-War Japanese Art. Yale University, New Haven, April 22,2005.
著者
末廣 昭 中村 圭介 丸川 知雄 上村 泰裕 株本 千鶴 木崎 翠
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は東アジア7カ国・地域(中国、台湾、韓国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア)における国家の社会保障制度の仕組みと企業内福祉の実態を比較することを目的とした。国家の社会保障制度については、(1)年金制度、(2)健康保険、(3)労災補償、(4)失業保険の4分野に注目し、企業内福祉については、(1)有給休暇、(2)社宅、食事手当、子弟の学資補助、退職金制度などの福利厚生の提供の有無、(3)労働総費用に占める法定福利と法定外福利の比率、(4)企業内福祉に対する経営側の方針、の4つを主な調査対象とした。企業内福祉に関する国際比較は初めての試みである。平成17年度は文献調査と予備的な現地調査を実施し、その成果として『東アジアの福祉システムの行方:論点の整理とデータ集』(2006年2月、398頁)を刊行した。次いで、平成18年度は企業アンケート調査を実施し、約800社について回答を得た。平成19年度には回収した企業アンケートの集計とデータ・べースを作成し、平成20年2月に、372ページの最終報告書『東アジアの社会保障制度と企業内福祉:7カ国・地域の国際比較』をとりまとめた。調査から得られた知見は以下のとおりである。(1)有給休暇については、各国・地域とも労働法が定める有給休暇の枠内で提供しているが、各国に固有の休暇が存在すること。(2)企業が提供する福利厚生については、モノ志向ではなく金銭志向(補助金の支出)が強いこと、韓国の場合には、子弟の学資補助が際立って高かったこと。(3)法定福利の現金支給に対する比率は、中国、シンガポール、韓国、台湾と続き、タイ・インドネシアが低かったこと。他方、法定外福利の比率は韓国・台湾が高く、シンガポール、中国が低かった。(4)企業内福祉への方針は、いずれの国・地域でも9割以上が重視する意見を示したが、賃金・ボーナスをより重視すべきという質問には国・地域でばらつきが見られた。
著者
村井 章介 豊見山 和行 石井 正敏 佐伯 弘次 鶴田 啓 藤田 明良
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

研究代表者1名・研究分担者27名・海外共同研究者15名・研究協力者9名を5つの班に分け、基本的に各班ごとに、海外調査・国内調査・研究会・シンポジウム等の活動を行った。構成員全員を対象としたものも含め、研究会・シンポジウムの報告の多くは研究成果報告書に収録されており、現地調査の記録は本プロジェクトのホームページhttp://www.l.u-tokyo.ac.jp/~phase817/に掲載している。構成員全員で行った活動としては、(1)発足時の研究会、(2)秋田・青森両県調査、(3)中国石浙江省調査、(4)総括シンポジウム「海をかける人・モノ・情報」、(5)研究成果報告書の刊行、の5つがある。第1班「博多・対馬・三浦と日朝(韓日)関係」は、多島海域という特色をもつ日朝間の境界領域で活動する諸人間類型に着目し、(1)韓国慶尚南道・全羅南道調査、(2)九州大学・対馬調査、(3)シンポジウム「中世日韓交流史」、を実施した。第2班「使節・巡礼僧の旅」は、日中間を往来した旅人たちの足跡を文献研究と現地調査との両面からたどり、(1)中国江蘇省調査、(2)五島列島調査、(3)『参天台五台山記』研究報告会、を実施した。第3班「琉球ネットワーク論」は、福建地方との関係を軸に日本列島から東南アジアまでを結ぶネットワークとしての琉球の役割に注目し、(1)中国福建省調査、(2)久米島調査、(3)シンポジウム「朝鮮と琉球」、を実施した。第4班「倭寇ネットワーク論」は、東アジア・東南アジアの沿海民やヨーロッパ人までも含む倭寇という集団を対象に経済・政治・信仰などの諸側面から海域世界の成り立ちに迫り、(1)台湾調査、(2)薩摩半島・島嶼部調査、(3)五島列島・平戸調査、を実施した。第5班「世界観と異文化コミュニケーション」は、異なる文化や民族の相互間に生じるコミュニケーションのあり方を通訳と古地図に着目して追究し、(1)ポルトガル調査、(2)7回におよぶ地図・絵図調査(国内)、(3)シンポジウム「物・人・情報の動きから見たアジア諸地域の交流史」、(4)4回におよぶ研究会、を実施した。
著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

科学者の社会的責任の内実は時代とともに変容してきた。現代の責任論は、原爆を作った物理学者の責任論にとどまらず、生命科学、食品安全にかかわる諸科学、環境科学など範囲も多様化している。本研究では、まず専門主義の源泉について考え、次に現在科学と社会との間でおこっている公共的課題の特徴を整理した。さらに、責任概念と倫理との差を検討した。責任(responsibility)とは、他者と対峙したときのresponseとして生じ、応答(response)の能力・可能性(ability)に由来する。責任を「過去におこしてしまったものに対して生じるもの」ととらえる見方だけでなく、「応答可能性」「呼応可能性」といった形で解釈する必要がある。これに対応して、科学者の社会的責任論も、過去に科学技術が作ってしまったものに対して生じるものだけでなく、市民からの問いかけへの応答可能性として定義されうるものへの考察も必要である。これらをふまえた上で再整理すると、現代の科学者の社会的責任は、(1)科学者共同体内部を律する責任、(2)製造物責任、(3)市民からの問いへの呼応責任の3つに大きく分けられることが示唆された。
著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題の目的は、科学者の社会的責任の現代的課題について、責任論と科学コミュニケーション論の接点にあたる課題を中心に、事例分析をもとに分析をすすめることである。科学者の社会的責任の現代的課題は、(1)科学者共同体内部を律する責任(ResponsibleConductofResearch)、(2)製造物責任(ResponsibleProducts)、(3)市民の問いかけへの呼応責任(ResponseAbility)の3つにわけることができるが、科学者の社会的責任と科学コミュニケーションの重なりあう領域においては、この〓組みの1つには留まらない問いが喚起される。本研究ではこのような領域における事例分析をすすめ、科学者の社会的責任の現代的課題を考察した。
著者
伊規須 素子
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

顕微赤外分光法を先カンブリア時代微化石試料と現生微生物試料に適用した結果、次のことが明らかになった。脂肪族炭化水素(CH_2とCH_3結合)に着目すると、現生原核生物細胞、脂質はそれぞれドメインレベルで区別される。そのため、本手法は迅速かつ簡便なドメイン識別法として有用であることが期待される。また、約5. 8億年前の微化石がこれまで形態的特徴によって決定されてきた分類以上に多様な生物を起源とする可能性がある。
著者
永田 晋治
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

昆虫の摂食行動に関わる生体内分子の探索を行なった結果、カイコ(Bombyx mori)の幼虫から新規のペプチド性因子を2 つ見出すことができた。ともに機能は未知であるが、脂肪体で発現し体液中に分泌するペプチドであり摂食行動や栄養要求に関連することが示唆された。
著者
藤原 晴彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

ヒトなどの高等な生物の染色体で最もメジャーな転移因子の一種LINE(非LTR型レトロトランスポゾン)の転移機構を、特定の位置にのみ転移する因子(部位特異的LINE)を用いて詳細に調べた。その結果、「LINEの蛋白質の翻訳がどのように制御されるのか」、「LINEの蛋白質とmRNAの複合体がどのように組み立てられるのか」、「その複合体がどのようにして核内の標的に近づくのか」というLINEに特有な未知の機構を解明した。
著者
林 薫平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

農村共同体における土地利用・土地配分の構造およびその人口圧力下における変容過程を明らかにするために,以下の通りに研究を実施した。まず準備として,資源一般の配分・利用を規制する共同体的メカニズムに関する事例研究を,主に文化人類学の領域を対象として広く渉猟した。成果として,灌概コモンズと漁場コモンズにおけるローテーションや細分化といった様々な共同体的アレンジメントを包括し比較分析することのできる理論フレームを構築した。第二に,上の理論フレームを共同体的土地制度の事例研究に応用した。具体的には,鹿児島県下甑村において極めて人口圧力が高かった昭和20年代の共有田制度を取り上げた。その結果,共有田利用権の配分のさいに細分化とローテーションの組み合わせ方が決定される集合的選択のメカニズムを解明することができた。第三に,以上の知見を東西の土地制度史と照らし合わせ,共同体的土地保有の理論モデルを構築した。具体的には,土地の配分・利用における共同体の規制と各メンバーの個人性の対立関係を描いた。土地資源の利用をめぐる共同体的なメカニズムについては従来の経済学は正面から分析して来なかった。むしろ共同体の影響が除去され土地が私有化されたあかつきの効率性分析に主眼がおかれて来た。本研究の意義は,共同体メンバーの集合的選択によって,個々人への土地配分と各々の土地利用に対して強力な共同体的規制が課される仕組みを,理論的かつ実証的に明らかにした点にある。特に,人口圧力のもとでは,メンバーを養うために規制が強化されることがあるが,従来の理論では説明されなかったこの実態に合理的説明を与えることに成功した。この成果は,政策への含意として,現在発展途上農村地域において広範に行われている土地私有化改革について,推進派と反対派の対立点をクリアにする意義を持つ。
著者
野村 幸世
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

Hcmizygote F1マウスは50頭しかそろえられず、50頭にメチルニトロソウレアを投与した。そのうち、投与開始より1年間生存したものは36頭であった。メチルニトロソウレア投与により、その投与濃度にかかわらず、ほぼ100%胃癌の形成が認められた。また、100%に胃以外の臓器にも癌が認められた。担癌臓器はリンパ節、肝臓、肺、脾臓であった。肺以外は胃癌の転移と考えられた。採取した胃はまだすべての解析が終わっていない。すでに解析が終了した5頭においては、すべて組織学的にも担癌であった。5頭のうち2頭は癌が多発していた。これを含む9病変のうち4病変はポリクローナルであった。しかし、これが衝突癌である可能性は否定できるものではない。以上のすでに解析済みのものは、凍結切片にて施行したが、凍結切片では、HE染色像もあまりクリアでない。クローナリテイの解析に使用しているX-gal法そのものは凍結切片でないと不可能であるが、β-galactosidascの免疫染色であれば、パラフィン切片でも可能である可能性があり、今後、これによる解析を検討中である。現在のところ、パラフィン切片に対するβ-galactosidascの免疫染色自体の条件が確率できていない。また、ポリクローナルに見える腫瘍において、真に上皮細胞がポリクローナルであることを証明するために、連続切片におけるケラチンの免疫染色を検討中である。また、発癌剤投与により、X染色体不活化そのものに影響が出た可能性も否定できないため、現在、Homozygousのマウスを作成中であるが、これは出生率が低いため、今だにいる。これが得られたあかつきには、再び、これらにMNUを投与する予定である。
著者
鈴木 宏二郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

太陽光や太陽風を利用するセイル型宇宙機を惑星大気圏飛行させ、その際に発生する空気力を併用することで燃料不要のままセイル型宇宙機の航行能力を向上させる可能性について、高速気体力学の観点から研究を行い、以下のことを明らかにした。1.FullPIC法による磁気セイルまわりの太陽風プラズマ流れ数値解析を行い、磁場生成コイルの姿勢や太陽風条件の影響を明らかにした。姿勢によっては軌道面外を向く力がセイルに働くこと、発生する推力は同じ大きさのソーラーセイルと比較して著しく小さいことなどから、ソーラーセイルの方が実現は容易と考えられる。2.ソーラーセイル機では、セイルを惑星周回軌道投入用の空気ブレーキとして2次利用することで燃料がほとんど必要ない低コスト惑星探査機が実現できることを示した。このような低弾道係数大気突入では、許容突入条件幅、空力加熱、空力荷重が大幅に緩和されるメリットがある。3.フープ支持の膜構造大気圏突入飛行体が極超音速流中で機能することを風洞実験で実証した。フープを形状記憶合金で製作すると空力加熱で自動展開する飛行体が実現でき、小型低コスト大気突入プローブへの応用が期待される。また、複数のフープを組み合わせてデルタ翼とし形状最適化すれば、5程度の揚抗比が期待される。4.外惑星大気飛行模擬希薄水素プラズマ風洞を開発して各種膜材料の空力加熱実験を行った。高強度材と高耐熱材をコーティングや接着で組み合わせるものが有望であることがわかった。5.ソーラーセイルと大気圏飛行時の揚力利用によるエアログラビティアシストの組合せを検討した。全長約220m、総重量410kgの機体に対し軌道最適化の結果、30km/sの太陽系脱出速度が得られることを示した。これはカイパーベルトまで約30年で達する速度であり、第1世代の恒星間領域探査機として有望と考えられる。
著者
長澤 泰 山下 哲郎 岡 ゆかり BARUA Sanji
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

初年度には途上国型「癒しの環境」研究として、バングラデッシュ農村部での伝統助産婦による分娩と都市部産科病院での病院分娩を比較した。また、スリランカではその殆どが施設分娩であることから、病院の大小や 病院へのアクセス、療養環境が施設選択に与える影響を調べた。第2年度は先進国医療施設型のフィンランドを事例として、先進国でも分娩の環境には家庭回帰が見られることを、病院のしつらえを限りなく家庭に近づける事例を用いることにより実証した。最終年度の今年はオランダにおいて、助産婦の活動を追跡することを中心に、家庭分娩が望まれる理由、その環境、社会的背景を調査・分析した。全分娩の1/3が家庭分娩であり、その背景に助産婦の社会的地位が高いこと、オランダの地理的条件が、緊急時に患者を早急に病院へ搬送することができることなどがある。それだけではなく、サービスを受ける側の意識に分娩は病気ではないので病院は必要なしとの判断が働いていることも確認された。今年度は同時に、周辺のヨーロッパ諸国の状況を示し、何故似たような地理的・文化的背景を持ちながらオランダが特異な例であるかを証明した。3年間に途上国および先進国の自宅型・施設型分娩の比較を行った。出産の場の選択にあたっての行動様式は、地域の社会や文化に依拠しながら、お産は「家庭的な」雰囲気のなかで行われることを最良とする文化の多いことがわかった。同時に社会の発展段階により、「安全」に対する要求が高まり、その「安全」の確保が充分な段階になると再び「家庭的な」環境を求めることとなる。今後の日本を始めとする先進国型医療施設の技術進歩に伴い、医療技術の優先度はある程度弱まり、より患者の療養環境を重視する声が高まることと思われる。分娩環境のこのような文化・社会・経済状況の違いの中での相違は、産科の療養環境を越えて広く一般医療の患者環境に示唆を与えるものである。
著者
柿澤 昌
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度には、主に薬理学的実験により、申請者自身が見出した一酸化窒素(NO)依存的な小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおけるLTPが細胞内のカルシウム上昇に依存することが示された。しかもイメージング法を用いた解析により、このCa上昇は、申請者自身の先行研究により示されていた、LTP誘導に必要なNOシグナルと空間的に一致することが示された。これらの結果は、LTP誘導時に小脳プルキンエ細胞内で活性化されるNOシグナルとCaシグナルの間に強い関連性があることを示唆する。そこで平成19年度は、両シグナルの関連性を明らかにすることを目標に研究を行った。先ず、NOシグナルによりCaシグナルが活性化される可能性を検討するため、マウス小脳スライス標本においてNO供与体を細胞外から投与し、プルキンエ細胞内Ca濃度に与える影響をイメージング法によって調べた。その結果、NO供与体投与により、プルキンエ細胞内Ca濃度に上昇がみられることが明らかとなった。引き続き、平行線維刺激により産生される内因性NOによってもプルキンエ細胞内Ca濃度上昇が見られることが明らかとなった。さらに、NOシグナルがプルキンエ細胞内Ca上昇を引き起こす分子機構を解明する一環として、細胞内NO受容タンパクである可溶性グアニル酸シクラーゼの関与を調べた。しかし、可溶性グアニル酸シクラーゼの阻害薬等を投与したところNOシグナルによる細胞内Ca上昇に阻害効果は見られなかった。
著者
佐藤 比呂志 岩瀬 貴哉 池田 安隆 今泉 俊文 吉田 武義 佐藤 時幸 伊藤 谷生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度には、2003年7月26日に発生した宮城県北部地震の震源域を横断する反射法地震探査を行い、中新世に形成された正断層が逆断層として再活動することによって発生した地震であったことが判明した。この北方の宮城県北部で1900年以降に発生したM6.5を越える内陸地震は、2003年の震源域の北方の領域から、南方に破壊してきたことが明らかになった。この一連の地震は、中新世の日本海の拡大時の最末期に形成された北部本州リフトの東縁のリフト系の再活動によるものであった。このリフト系の延長である水沢地域における石油公団が実施した反射法地震探査データと、現地の活断層調査によって、この地域の活断層はリフト系のハーフグラーベンを限る西傾斜の正断層が逆断層として再活動して形成されたものであることが明らかになった。また、リストリックな形状の正断層の再活動に伴って、浅層の高魚部分をショートカットして形成された、footwall short cut thrustも見いだされた。同様の再活動は、このリフト系の東縁の延長である三戸地域でも見いだされ、地表地質と重力から推定される密度構造から、中新世初期に活動したハーフグラーベンの東縁の断層が鮮新世以降再活動し、現在、活断層として知られる折爪断層はこの再活動によって形成されている。東北日本の太平洋側に分布する活断層は、仙台市周辺の長町-利府断層も含め、こうした中新世の背弧海盆の拡大に伴って形成されたかつての正断層が再活動したものである。したがって、震源断層は均質な物質中で形成される30度前後の傾斜を有するものではなく、50度前後の高角度のものとなる。本研究プロジェクトで検討した、中央構造線活断層系や糸魚川-静岡構造線活断層などの成果も含め、現在の大規模な内陸地震は、既存の断層の再活動によって発生しており、深部の断層の形状は地質学的なプロセスと密接に関連している。
著者
山口 梅太郎 茂木 源人 山冨 二郎
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

わが国の石灰石鉱山では、数100mにも達する長大な立坑を利用した露天採掘が行われる。近年になって、ようやく、この立坑内での岩石塊の挙動が解明されるようになってきたが、これらの研究を踏まえて、立坑に投入された鉱石(石灰石)の品位調整を行うことの可能性を得ることを試みた。鉱石は、立坑ヘトラックで運ばれて投入されるので、トラック毎の品位変動が立坑排出口での品位変動にどう影響するかを、立坑現場での実験とこれをモデル化した実験とによって観測し、さらに立坑内での鉱石の挙動のシミュレ-ションによって解析した。その結果1.垂直立坑システムよりも、斜坑システムにおける方が鉱石の混合が促進される。2.斜坑システムの混合特性は鉱石の粒径によって異なる。これは斜坑内において粒度偏析がおきるためと考えられる。3.斜坑システム内の混合特性は、斜坑内での鉱石の降下挙動、とくに不連続性による混合特性と、シュ-トホッパ-部におけるファンネルフロ-に起因する混合特性の合成したものと考えられる。4.斜坑システム内での鉱石の降下挙動は、単純な速度分布を仮定することによってモデル化することができる。5.これによって、鉱石立坑における鉱石の混合特性の推定が可能になった。6.鉱石立坑が使用年月と共に拡大して、容量が変化した場合の混合特性の変化を求めることができた。7.投入鉱石の品位変動が立坑の排出口でどうなるかのシミュレ-ションを行った。等を結論として得ることができた。
著者
西平 直
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1、教育におけるスピリチュアリティの問題、あるいは、現代社会における青少年のスピリチュアリティの問題を、シュタイナー教育の調査を通して解明するという研究の趣旨は、聞き取り調査を手がかりとした理論研究の形で、最終報告集にまとめられた。(報告集、第一章)2、同校の卒業生に対する聞き取り調査を通し、彼らは、学校教育から影響を受けるのと同じだけ、(場合によってはそれ以上に)こうした学校にわが子を送る保護者の価値観・人生観から強い影響を受けることが明らかとなった。しかしながら、そうした保護者の価値観・人生観の解明のためには、スピリチュアリティの地平を理論的に整理する必要が生じ、最終報告集にその一部がまとめられた。(報告集、第二章)3、ハワイのホノルルシュタイナー学校、京都の京田辺シュタイナー学校など、定期的に参与観察を続ける中で、シュタイナー教育の本質を、日本古来の「芸道思想」との関連で整理する視点が明確になり、東洋思想の理論的研究を蓄積した。その成果もまた最終報告集にまとめられた。(報告集、第三章)4、とりわけ世阿弥の稽古論との関連が注目され、世阿弥の稽古をめぐる思想の解明が進められた。(報告集、第四章)5、総じて本研究は、卒業生への聞き取り調査を基盤としながら、そこで得られた知見を教育人間学的に解明するための理論構築の作業において、大きな成果を得た。
著者
鎌倉 真音
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、有形文化資源の3次元デジタルアーカイブデータの利活用について、データの計測作業と取得データを用いた解析と考察を通して、その有効な方法や今後の展開、可能性について3ヶ年で考察、検討するものである。最終年度である本年度も昨年度に引き続き、特に有形文化資源のデジタルデータの利活用に関して、考古学、美術史学、建築史学、など多分野にわたって具体的な解析や活動を通して研究を遂行した。主に、以下の2点に着目して研究を行った。(1)カンボジア、アンコール遺跡バイヨン寺院の大きな特徴である尊顔に関して、3次元デジタルアーカイブデータを用いた解析による考古学的考察を行った。12世紀に寺院を建立したとされる王(ジャヤヴァルマンVII)の坐像顔面デジタルデータと寺院尊顔の類似度等を検証する解析、アンコール遺跡群の中でもバイヨン期の寺院にだけ存在する尊顔の制作背景について考察を行った。解析、考察の結果は、バイヨン期の寺院建立の歴史等を明らかにし、多分野横断型研究の結果としても極めて重要なものとなる。(2)3次元デジタルアーカイブデータを用いた具体的事例をもとに、従来では文化資源そのものに対して行ってきた利活用活動を、デジタルデータの特長に着目し、広く文化資源全般にわたってデータとして利活用していく、プロセスデザインを行っている。サーバなどに蓄積されるばかりの文化資源デジタルアーカイブデータを有効に利活用するために、(1)のように具体的な対象を用いた解析、考察を行い、同様に様々な対象に対しても適用していくことは有意義である。本研究の成果は、国内外を問わず文化資源における保存・デジタルデータ化・利活用に関する俯瞰的な考察を可能にし、文化資源を基軸とする多分野にわたる研究領域での具体的研究プロセスモデルの提案につながる。とりわけ国土も狭く、資源にも乏しい日本国において、あらゆる文化資源を有効な手段で保護、保全、保存、そして活用していくことは極めて重要である。
著者
兵藤 晋
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

軟骨魚類が海に生きるために、体内に尿素を蓄積することは必要不可欠で、複雑な構造を持つ腎臓での尿素再吸収がそのことを可能にしている。ゾウギンザメで新規尿素輸送体を複数同定し、飼育下のドチザメでは尿素輸送体が環境浸透圧の変化によって細胞膜への集積が可逆的に制御されることを見出した。進行中の広塩性アカエイや培養系での解析とあわせ、軟骨魚類の腎機能、脊椎動物での腎機能の進化の解明に大きく貢献した。
著者
高山 守 榊原 哲也 西村 清和 小田部 胤久 中島 隆博 藤田 正勝 美濃部 重克 安田 文吉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

哲学、芸術、国家の密接な関係が、「家族」、「理性の目的論」、「ケア」、「場所の記憶」、「国民文化」、「日本的な自然」、「自然の人間化」、「世俗化」、「啓蒙」、「近代の超克」、「新儒家」、「家」、「お店」、「かぶき(傾き)-歌舞伎-」、「道理」、「鬼神力(怨霊)」、「観音力」、「まつろわぬもの」等々の概念を媒介に、深層レベルで明らかにされた。
著者
平尾 一郎 三井 雅雄 池田 修司 森山 圭
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

A-TとG-Cの塩基対に人工の塩基対を加えることにより、遺伝情報を拡張し、RNAやタンパク質中に新たな構成成分を部位特異的に導入する技術の創出を目指して、生物のシステム(複製・転写・翻訳)で機能する人工塩基対の開発研究を進めた。申請者は、既に、転写と翻訳で機能する人工塩基対(s-y塩基対)を開発しているので、その知見に基づいて、複製においても機能する人工塩基対の開発に挑戦した。その結果、ユニークな性質を示す種々の人工塩基対(v-y、s-z、s-Paなどの塩基対)を開発することができ、最終的に、複製と転写において相補的に機能する人工塩基対(Ds-Pa塩基対)を作り出すことができた。すなわち、このDs-Pa塩基対を含むDNAをPCRで増幅することもでき、また、どちらの人工塩基(DsとPa)もRNA中に転写で取り込ませることができる。さらに、申請者らが開発したyやPaなどの人工塩基に機能性の置換基(蛍光色素、ビオチン、ヨウ素、アミノ基など)を結合させた転写用の基質を合成し、人工塩基対による転写系でこれらの基質をRNA中に取り込ませ、種々の機能性RNAを作り出し、本技術の応用化の可能性を示した。以上のように、申請者は、従来の遺伝子操作技術に代わる遺伝情報拡張技術を可能とする人工塩基対の開発に世界に先駆けて成功した。今後は、この人工塩基対システムを幅広い分野に利用したベンチャー企業を設立し、本技術の普及を図ると共に医療に役立つ技術と製品を社会に提供したい。