著者
柴崎 隆一 青山 和浩 加藤 浩徳 村上 進亮 川崎 智也 新井 洋史 鳥海 重喜 渡部 大輔 和田 祐次郎 坪田 建明 古市 正彦 松田 琢磨 杉村 佳寿
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本課題は,研究代表者らがこれまでに蓄積したモデル構築やデータ分析に関する知見を活用し,全世界のすべての輸送モードを包含する統合的な国際物流シミュレーションモデルを構築して,世界各地の物流インフラ投資や越境抵抗削減などの実際の諸施策や,船舶大型化や新航路開拓(パナマ運河,北極海航路など)などの技術進歩が,輸送パターンにもたらすインパクトを定量的に予測するものである.
著者
鈴木 道生 鈴木 庸平 アーサン ナズムル
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

黄鉄鉱ナノ粒子を合成したという報告は数多いが、再現性および安定性の面から実用化は困難であった。応募者らはウロコフネタマガイが特定の生体高分子タンパク質と黄鉄鉱ナノ粒子が共に含まれることに着目し、市販のタンパク質を用いて水系の溶液で非常に効率よく粒径の揃った黄鉄鉱ナノ粒子を合成することに成功した。本研究ではウロコフネタマガイ由来のタンパク質を組み換え体として準備し、より粒径の小さい黄鉄鉱ナノ粒子を、高効率で大量に合成する手法を検討し、太陽光発電のデバイス開発に応用する。
著者
三浦 徹 越川 滋行 林 良信
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

環形動物門多毛綱シリス科の種では、出芽のように個体の一部から生殖腺を持つ個体(ストロン)が繁殖のために出現し、親個体から分離したのち遊泳し、放 卵・放精を行う(ストロナイゼーション)。本研究課題では、シリスの示す無性生殖様式であるストロナイゼーションの発生機構を明らかにすることを目的としている。特に後胚発生 において体軸の途中に頭部ができる仕組みについて焦点を当てる。2019年度は、ミドリシリスにおいて確立した飼育誘導系を用いて、効率的にストロナイゼーションを誘導し、その過程で起こる組織学的な変化について詳細に観察した結果、ストロンの 頭部になる部分の内部の神経節が肥大成長し、「脳」に相当する神経節を形成することで、自律的な遊泳活動や異性の認識などが行えるようになることが明らかとなった。また、トランスクリプトームデータに基づいた遺伝子データベースが構築され、発生や再生、繁殖に重要な役割を果たす遺伝子群の配列を網羅的に把握することができた。2020年度は、ストロナイゼーションの過程において、主要な発生制御因子の発現解析を、リアルタイム定量PCRを用いて行った。その結果、本体(親個体)の前部側において、幼若ホルモンの合成系遺伝子が発現上昇し、繁殖系列の遺伝子群の発現がそれに続き起こり、その下流で、ストロンのボディプラン形成が誘導されることが示唆された。また、佐渡において前年度に採集した分岐するタイプのシリスは、形態学的および分子生物学的解析の結果、新種であることが明らかとなり、現在論文を作成中である。また、このタイプのシリスは隠岐においても確認され、日本海側に広く分布する可能性が考えられている。この分岐するシリスにおいてもトランスクリプトーム解析を推し進めている。
著者
岡井 崇 桑原 慶紀 海野 信也 上妻 志郎 岡井 崇
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

人工羊水中胎児保育装置の開発を目的として、装置及び管理方法の改良を行いながらヤギ胎仔を対象とした動物実験を行ってきた。平成2年度において新たに安定したincubationを行う為のsystem構築を行い、平成3年度より、胎仔の各生理的パラメーターの厳密な観測に基づいた胎仔保育実験を続行した。その結果、子宮外保育中の胎仔の状態悪化が、未熟動物を対象とした体外循環による生命維持systemに本質的なものではなく、むしろ、胎仔の活発な生命活動に起因する可能性が高いことが示唆された。これを証明する目的で平成4年度に胎仔の胎動抑制による長期間子宮外保育実験を行い、これまでの記録を大幅に延長する20日間以上の安定した子宮外保育とそれに続く肺呼吸への移行を実現した。これにより、我々の開発してきたsystemが、未熟個体の長期間の維持に適したものであることが示され、今後の臨床応用の可能性が示唆された。
著者
宮崎 徹 新井 郷子 新井 郷子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

AIM に結合するタンパク質の候補が複数得られた。ヒト血中AIM 濃度測定系(ELISA 法)を確立した。これにより、動脈硬化あるいは大動脈瘤や脳心臓血管障害など動脈硬化を基盤とする疾患や、他のメタボリックシンドロームと血中AIM 濃度の関連性、もしくは疾患の進行度と血中AIM 濃度の関連性を解析することが可能となった。適時不活性化が可能なAIM コンディショナルノックアウトマウスのターゲティングベクターの構築を行った。
著者
新井 郷子 宮崎 徹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージが産生する分泌タンパク質AIM (apoptosis inhibitor of macrophage) は肥満やそれに伴うインスリン抵抗性惹起等の生活習慣病に深く関る分子であり、体内AIMの機能や量の制御は、AIMが関る疾患の予防や病態進行の制御に有効である可能性がある。本研究では、AIMの機能および量的制御方法の探索を行い、また肥満由来の自己抗体産生および脂肪肝由来肝がんについてAIMと疾患の関連性を明らかにした。さらにヒトにおいて健常者および肝疾患患者における血中AIM値測定を大規模に行うことで、AIMによる疾患の制御の可能性および疾患マーカーとしての有用性を見出した。
著者
太田 邦史 岡田 泰和
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

同じゲノムの個体が種々の表現型を示す表現型の可塑性は、生物全体に見られる現象であるが、その機構はわかっていない。本研究では、表現型可塑性が武器形質に見られる昆虫オオツノコクヌストモドキを用いて、発生時の栄養と武器形質を結びつけるエピゲノム分子機構を明らかにした。RNA-seqにより未同定のエピゲノム因子を多数同定し、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)などの遺伝子をノックダウンしたところ、大顎形質が特異的にHDAC摂動の影響を受けることを見出した。また、HDAC摂動により翅では大顎と反対方向にサイズ変化が生じることも明らかになった。以上から表現型可塑性にはエピゲノム制御が重要なことがわかった。
著者
保原 喜志夫
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1966

博士論文
著者
真鍋 祐子 金子 毅 李 美淑 藤岡 洋
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

1921年生まれの現役画家・富山妙子の作品世界は、1970年代以降、社会参与を通して世界の歴史的動態に働きかけてきた。特に1980年に韓国で起きた光州事件では、いち早くその惨劇を版画作品にし、日本からドイツ、アメリカなどを中継して世界中に周知させる役割をはたし、それが非合法に韓国にも入り民主化運動を励ましたと評価される。本科研はそうした富山妙子の思想と作品世界がどのように構築され、また制作された作品がどのように世界へ伝播し、その意味世界が世界の歴史的動態にどのような波紋を与えたかを明らかにする。あわせて富山所蔵の作品や資料の歴史学的価値に鑑み、それらのデータベース化と公表を目指している。
著者
梅田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

電子捕獲型超新星とは重力崩壊型の超新星のうち最も質量が軽い星の爆発である。一般に星の数は軽い星ほど多いため、この型の超新星が実在するのであれば超新星の光度曲線などの観測にも、元素の起源に関しても重要なはずであるが、これまでそれらの研究対象としてあまり考えられて来なかった。その主な理由の一つは、より重い鉄の核を形成するものとその進化過程が大きく異なり複雑なため親星の計算がほとんどなされていなかった事があげられる。今回我々はほぼ30年ぶりにその進化計算を更新された物理を用いて計算することができた。この親星モデルを爆発させることにより、今後この超新星に関する理解が深まることが期待できる。
著者
中原 雅人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は、昭和初年代にアルス版『フロイド精神分析大系』の訳者であった林髞(木々高太郎)の小説『網膜脈視症』(「新青年」昭和9/11)について考察した。同作はS.Freudの原典に依拠しており、それは高太郎が1920年代のFreudにおける自我とエスへの転回(第2局所論)を正確に捉え、紹介していたことを反映している。また同作はOtto Rankを高く評価することで、RankがFreudと異なり不安Angst神経症の治療のために反復Wiederholenを重視していたことを、物語の中で表現していた。高太郎の執筆活動は、精神分析学・日本文学史・精神医学史などの中で新たな評価が与えられる。以上を日本近代文学会にて口頭発表した。また多分野で広く言及されるJacques Lacanのセミネール"Les quatre concepts fondamentaux de la psychanalyse"(1973)の、国内外でいまだ読解が不完全な部分について読解を行った。Lacanは Tinbergenら本能行動についての動物行動学の研究を参照する一方で、その説がとりわけ擬態を適応adaptationとみなす点をRoger Cailloisの説によって批判し、まなざしregardの理論へ発展させた。それは視覚における欲望の原因を、擬態を含む絵tableauの効果によって説明する。この関係を光学における虚像と実像の比喩によって示したことは、江戸川乱歩『鏡地獄』(「大衆文藝」大正15/10)にも通じるものである。以上は、「言語情報科学」に受理・掲載された。これらの研究は、変態心理学および変態性欲学が動物一般の本能行動を措定し、そこからの逸脱を人間の欲望の本質たる特徴とみなすものとすれば、その広範な影響の下に日本に導入された精神分析という学問形態においてこれを発展させ、一般理論の構築と日本文学への応用を志したものであり、これによって本研究の総合がはかられたと言える。
著者
長谷川 修司 平原 徹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

今まで我々は10年以上にわたって,マイクロ4端子プローブ法という新しい実験手法を開発し,それらを用いて表面・モノレイヤー(単原子層)の伝導物性の研究を展開してきた。本研究では,さらにその装置性能を向上させ、ミリケルビンの超低温(0.4K)および7Tまでの強磁場中でのマイクロ4端子プローブ測定を可能とし、モノレーヤー(単原子層)超伝導の探索やモノレーヤー磁気輸送の研究に発展させる。
著者
高木 周 関 和彦 神保 泰彦 榛葉 健太
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

超音波の脳神経系の刺激に関しては,神経細胞レベルで発火が観測されている複数の報告がある一方,マウスを用いた動物実験では,脳への超音波刺激による運動誘発は脳神経系への刺激ではなく,聴覚を刺激する音の影響によるものとする異なる内容の報告がなされている.申請者らは,超音波が神経細胞の活動を誘発し,生体の運動誘発が達成できる可能性について,独自の実験系や数値解析手法を利用して,その詳細を調べる.本実験で得られた知見は,今後,脳神経系に損傷を与えない低強度の超音波による脳活動の活性化などへの応用に繋がり,将来的にはリハビリや認知機能の改善などへの革新的技術へと展開していくことが期待できる