著者
大串 和雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

当初の計画通り、平成30年度は現地調査を実施せず、前年度の現地調査のインタビューを整理するとともに、文献資料に基づいて研究を進めた。平成30年度は、コロンビアの動きを追うことにやや多めに時間を割いた。コロンビアでは、国内最大のゲリラ勢力FARCと政府との2016年の和平合意に基づき、移行期正義のシステムが設置された。中でも、ゲリラ及び治安部隊の人権犯罪を修復的正義のアプローチで裁き、加害者が真実の解明と賠償に協力すれば服役を免れるという「特別和平司法」(JEP)の仕組みは、国論を二分し、2018年の大統領選挙の争点となった。大統領選挙ではJEPが「ゲリラに甘い」として反対する勢力が勝利し、現在では、国際社会を含むJEPを支持する勢力と、JEPを骨抜きにしようとする政府及び与党との綱引きが続いている。このような流動的状況を背景として、コロンビアでは全国レベルでは和解どころかJEPをめぐってヘイトスピーチが飛び交う状況が続いている。ただその一方で、ミクロなレベルでは、旧武装勢力と犠牲者との和解の実践も観察される。コロンビアとともに本研究が重点を置くペルーでは、移行期正義は多くの国民の関心事ではない。人権侵害等の罪で収監されていたアルベルト・フジモリ元大統領が、当時の大統領とフジモリ派との政治的駆け引きの結果として2017年末に特赦を受けた際には、犠牲者たちと彼らを支援するNGOが米州人権裁判所にアピールし、結果的にペルーの最高裁が特赦を無効とした。この件に見られるように、ペルーでは移行期正義は、犠牲者を含む一部の活動的なアクターにおおむね限定された関心事となっている。また、ミクロなレベルにおける和解の実践もペルーではあまり観察されない。農村では元ゲリラが出身の共同体に再び受容されていることがあるが、和解というよりは緊張を孕む共存として描写されている。
著者
吉内 一浩 山本 義春
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

日常生活下の情報取得法であるEcological Momentary Assessment(EMA)を発展させ、摂食障害患者の過食行動治療のため、ス マートフォンによるEMAで得られたデータを機械学習を用いてリアルタイムに解析し、その場で治療介入するEcological Moment ary Intervention(EMI)のシステムの開発を行うことを目的として以下を実施する。 1.過食衝動・行動の評価・介入システムの開発:コンピューター適応型質問票を含めて症状・行動の評価システムとEMIを行う ための機械学習を用いたシステムの開発を行う。 2.身体活動度による過食衝動・行動の予測モデルの開発:EMAで得られた情報を用いて、身体活動度による過食の予測モデルの 開発を行い、治療介入タイミングの同定を行う。 3.摂食障害患者における使用感の調査とマイクロランダム化試験による有効性の検証を行う。2018年度は、過食症状の評価・介入システムの開発を行った。具体的には、スマートフォンを用いて、過食衝動 ・行動、排出行動、気分の記録システムを実装した。そして、機械学習を用いた介入システム開発のための基礎的データを収集するために、日常生活下において、スマートフォンによる症状・行動の記録と、加速度計による身体活動度の記録、自律神経機能の評価のためのRR間隔の記録、過食の前の唾液中のコルチゾールとアミラーゼの記録のシステムのセットアップを行い、倫理委員会での承認を得た。現時点で、4名の被験者からのデータの取得が終了しており、2019年度中にデータの取得を終了させ、介入システムの開発を行う。
著者
吉内 一浩 山本 義春 米田 良 大谷 真
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

ストレス関連疾患の治療法の一つにリラクセーション法があるが、習得の補助および習熟度の評価が困難であった。本研究では、EMAを応用したスマートフォンによるツールの開発を行うことを目的とした。方法は、スマートフォンによる自覚的習熟度や気分を入力するシステムを開発し、日常生活下においてリラクセーション法の前後における心拍変動による自律神経機能と自覚的な習熟度や気分との関連を検証した。結果は、習熟度の得点が高いほど、LF/HFが有意に低く、充実度が有意に高いという関連が認められた。従って、自覚的習熟度は、習得の程度を評価することが可能で、リラクセーション習得のための補助ツールとなることが示唆された。
著者
山本 義春 北島 剛司 佐々木 司 森田 賢治 吉内 一浩 中村 亨
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

うつ病の予防を目指した日常生活下における行動・心理動態のモニタリングシステムを構築するとともに、疾患発症・病態変化に伴う行動・心理動態の変容を評価・予測する客観的・定量的指標の開発を行った。さらに、行動・心理動態の変容とその移現象に関わる背後の生体システムの動力学的構造をデータ駆動型で推定することにより、開発指標の動力学的意味付けを行った。また、疾患発症・病態遷移の早期検知に資する動力学的機序に関する知見を得た。
著者
山田 薫
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

ワクチン療法はアルツハイマー病(AD)の現在最も有効な根本的治療法と考えられている。その有力なメカニズムとしてsink仮説が広く受け入れられているが、これまで抗体が実際に血中でAβの引き抜き(sink)効果を示すかについては、実験的に確かめられていなかった。そこで抗Aβ抗体の受動免疫とBEI法を組み合わせ、sink仮説の実験的検証を試みた。マウスに抗Aβ抗体m266を受動免疫した後にBEI法を行い、抗体の存在下でAβの脳からの排出速度の変化を観察した。その結果、m266の投与によって引き抜き現象は生じず、Aβの排出速度が逆に遅延していることを見いだした。さらにこれまで末梢血中で機能すると考えられてきたm266が脳内に一部移行し、Aβと結合することを見いだした。この結果はm266はAβ引き抜き作用以外のメカニズムで作用していることが示唆するものであった。そこでワクチン療法における抗Aβ抗体の新たなメカニズムを明らかにするために、脳内にAD様のアミロイド蓄積を再現するAPPtgマウスを利用し、m266を投与した場合の脳内のAβの存在様式を調べた。Aβモノマーは構造変化を起こしてアミロイド線維化する過程で、Aβオリゴマーを形成し、それが神経細胞障害性を有すると考えられている。申請者はモノマーAβを特異的に検出するELISA系を樹立し、これを利用して、m266抗体を投与したAPPtgマウスの脳内のAβ量を測定すると、抗体の投与により、Aβのモノマーとオリゴマーの総和は変化しないにも関わらず、毒性のないモノマーAβが増加していることを見いだした。この結果から、抗Aβ抗体は脳内においてAβを毒性のないモノマーの状態で安定化することで構造変化を抑制し、毒性分子種Aβオリゴマー形成を阻害するという結論に至った。
著者
宇野 重規 谷澤 正嗣 森川 輝一 片山 文雄 石川 敬史 乙部 延剛 小田川 大典 仁井田 崇 前川 真行 山岡 龍一 井上 弘貴 小野田 喜美雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究の二年目にあたる平成30年度は定例の研究会を続け、通史的な視点の確立と全体的枠組みの決定を目指した。その目的は、共和主義、立憲主義、リベラリズムを貫く座標軸を見定めることにあった。この目的に向けて、まずは18世紀における共和主義と立憲主義の関係について集中的に検討を行った。その成果は、社会思想史学会において分科会「アメリカ政治思想史研究の最前線」を企画し、石川敬史が「初期アメリカ共和国における主権問題」報告することにつながった。この報告は主権論に即して、初期アメリカにおける思想対立をヨーロッパの思想との連続性において捉えるものであった。第二にプラグマティズムとリベラリズムの関係についても考察を進めた。具体的には研究会を開催し、研究代表者である宇野重規が「プラグマティズムは反知性主義か」と題して報告を行なった。これはプラグマティズムをアメリカ思想史を貫く反知性主義との関係において考察するものであり、プラグマティズムの20世紀的展開を検討することにもつながった。さらに小田川大典が「アメリカ政治思想史における反知性主義」と題して報告を行い、アメリカ思想史の文脈における反知性主義について包括的に検討した。さらに上記の社会思想史学会においては、谷澤正嗣が「A・J・シモンズの哲学的アナーキズム」と題して報告を行っている。これは現代アメリカのリベラリズム研究におけるポイントの一つである政治的責務論において重要な役割を果たしたシモンズの研究を再検討するものである。人はなぜ自らの政治的共同体に対して責務を負うのか。この問題を哲学的に検討するシモンズの議論は、アメリカ思想におけるリベラリズムと共和主義の関係を考える上でも重要な意味を持つ。シモンズを再検討することも、本年度の課題である通史的な視点の確立に向けて大きな貢献となった。
著者
李 光輝
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2014

審査委員会委員 : (主査)東京大学教授 淺間 一, 東京大学教授 太田 順, 東京大学准教授 山下 淳, 東京大学准教授 大竹 豊, 東京電機大学教授 鈴木 剛
著者
浅間 一
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1989

博士論文
著者
柴山 真琴
出版者
東京大学
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.211-220, 1994-01-31

Rapid growth of Thai economy in the 1980's brought about a dramatic increase of Japanese sojourners, which affected Japanese community and socialization environments for Japanese children in Bangkok. This paper is to describe characteristics of socialization environments surrounding children in 1990 comparing with those in the middle of the 1970's which Ebuchi described. One year's participant observation in 1990-1991 found : (1) a drastic increase in the number of Japanese sojourners, along with fewer residential quarters considered to be appropriate for foreigners to live in Bangkok, caused high concentration of Japanese families in a same apartment house, which resulted in a particular pattern of children's circle, that is, playing with the same Japanese children in the same building, (2) the move of Japanese school from the central Bangkok to its suburb forced Japanese school children to be confined in a school bus for an hour or so which curtailed their direct contact with Thai society, (3) an increse of vehicles and poorly equipped traffic facilities prevented Japanese children from going out alone to spend time with their friends without adult supervision, (4) prevalent among Japanese children were Japanese TV games, Japanese video-tapes and Japanese magazines and so on, (5) very limited ability to understand Thai language prevented Japanese children from getting acquainted with social realities of Thailand through mass media, and (6) social contact with Thai people in and out of their families and school remained at the superficial level; consequently their understanding of realities of Thai society is poor. These findings indicate that realities of Japanese children growing up in Bangkok is far from the ideal of overseas education advocated by the Ministry of Education. In order to mitigate unfavorable socialization environments, three proposals were made. (1) The concept of child rearing currently prevailing among Japanese parents and teachers in Bangkok was that children must be prepared for making a smooth transition academiccally and socially at the time of their return to Japan. This concept should be transformed into fostering strength in children to overcome difficulties under unfavorable circumstances. (2) The Japanese school in Bangkok should be re-organized as a center for understanding Thai culture and society for both children and parents. And (3) Japanese parents should be provided with the inter-cultural training which enabled them to understand their problems they faced in Bangkok.
著者
齊藤 宣一 土屋 卓也 谷口 雅晴 降籏 大介 村川 秀樹 菊地 文雄 河原田 秀夫 牛島 照夫 宮下 大
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究プロジェクトでは,構造保存型の数値解法として理工学各分野で広く応用されている有限体積法に対する数学的な基盤理論の開発とその現実問題への応用を行なった。基礎的な面では、離散ソボレフの不等式、補間誤差不等式の最良定数、離散Rellichの定理、離散最大値の定理、離散微分形式などについて応用指向の進んだ結果を得ることができた。応用面では、細胞性粘菌の数理モデルに対して、構造保存型の有限体積法を開発し、いままで未解決だった離散エネルギー不等式の証明に成功した。また、離散微分形式の応用としてLagrange力学に基づくエネルギー保存型数値解法の有限体積法への拡張を行なった。
著者
久恒 辰博
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

近年、記憶にかかわる海馬においては、どんなに年をとっても新しくニューロンが生み出されていることが発見され、この現象が大いに注目されている。ところがこの新生ニューロン数は加齢とともに激減することも知られており、新生ニューロンを増やす諸条件の検索が望まれていた。本研究ではマウス脳梗塞モデルを用いて、その脳保護作用が確認されていたフラボノイド(カテキン)を使用して、ニューロン新生に対する効果を検証した。核酸アナログであるBrdUを成体マウス(8週令以上)に投与し分裂中の神経幹細胞をラベルした。そして、この2週間後ならびに6週間後にマウスより脳を取り出し、新しく生み出されたニューロンの数をダブルブラインド条件下で共焦点顕微鏡解析することにより、計測した。有意差検定の結果、カテキンによって、わずかではあるが、統計的に有意に新生ニューロンの数が増加することがわかった。この効果の仕組みを探るために、カテキンが血管内皮細胞に作用していることを想定し、マウス血管内皮細胞由来培養細胞株であるbEnd3細胞を用いて、生化学的な解析を行った。この細胞が、神経栄養因子の産生を誘導するeNOS分子を発現していることをウェスタンブロッティング法で確認した。そこで、bEnd3細胞をカテキンで刺激することで、NO産生が起こるかどうかを調べた。数回の実験において、カテキン刺激によりNOの産生が高まる傾向が見られたが、その応答にはばらつきがあり、なかなか再現性のよい結果が得られなかった。仕組みの解明には、他の細胞ラインあるいはインビボの実験が必要であると思われた。本研究の結果から、詳細な応答機構は未解明ではあるが、フラボノイド類により、海馬ニューロン新生が高められ、海馬回路の機能が保持されていることが推測された。
著者
長島 優
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-04-01

顕微鏡画像から画像特徴を抽出する試みは数多い。しかし、ノイズのある条件下で、観測者の主観に依らず、測定対象についての事前の知識なしに、元信号の定量性を保ったまま、特定の画像特徴に相関する信号成分を取り出す方法は、従来限られていた。生物の視覚情報処理の数学的モデルとして提唱されたスパースコーディングは広義の独立成分分析の一種であり、過完備な独立基底の推定に用いられる。我々はこれを用いた新規の画像解析法を考案した。顕微鏡画像を画素毎に波長の情報を持つ3次元配列(x, y, λ)と捉えて、スパースコーディングを用いて線形過完備な独立基底の推定を行った。一般に、このとき得られる独立基底は3次元の配列となる。次に、この3次元の独立基底をその特徴(色・テクスチャー・形など)に基いて分類・弁別し、特定の特徴に相関のある独立基底のみを抽出した。抽出した独立基底を、特徴群毎に加算して元画像のdimensionに再構成することで、もともとの顕微鏡画像の信号の線形性を保ったまま、特定の画像特徴に相関する信号成分のみを抽出することができた。polystyrene(PS), polymethyl methacrylate(PMMA), polyurethane(PU)ビーズをプレパラート上で混合し、自発ラマン分光顕微鏡でイメージングした。二次元のラマン分光画像は、空間的な一ピクセル毎に一つの波長方向のスペクトルを持つ3次元配列のデータ構造を持つ。このデータを非負スパースコーディングを用いて8個の独立基底に分解した。求めた8個の独立基底を、in vitroで測定しておいたPS, PMMA, PUの三種類の物質のラマンスペクトルと比較し、最も相関の高い独立基底をそれぞれ一つずつ選択した。選択された独立基底単独の空間分布を、元画像の二次元座標上に再構成してみると、ビーズの形状・空間分布を得ることができた。
著者
一戸 猛志 森山 美優
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸内細菌叢がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に役立つ理由は不明である。今回、36℃で飼育したマウスは、22℃で飼育したマウスと比較して、インフルエンザウイルス、ジカウイルス、SFTSウイルスの感染後に誘導される免疫応答が低下することを見出した。36℃で飼育したマウスは摂食量が低下しており、この摂食量の低下が免疫応答の低下につながる要因のひとつであった。そこで36℃で飼育したマウスに腸内細菌由来代謝産物である酪酸、プロピオン酸、酢酸やグルコースを投与すると、低下していたウイルス特異的な免疫応答が部分的に回復することを見出した。
著者
明石 博臣 吉川 泰弘 本藤 良 森川 茂 遠矢 幸伸 久和 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究実績計画に基づき以下の研究を実施した。1)エボラウイルスおよびBウイルス研究エボラウイルスについては、核蛋白を安定的に発現するHeLa細胞を用いた蛍光抗体法とバキュロウイルス発現抗原を用いたELISAによる抗体検出法を確立した。この結果、霊長目の抗体調査が可能であった。Bウイルスについては、組換え抗原を用いてヒトヘルペスウイルスとの鑑別法が確立され、霊長目におけるBウイルス特異的抗体検出を行うことが可能となった。2)翼手目の免疫系解析抗コウモリIgG血清を用いたELISAの手法を開発した。この抗コウモリIgG血清は大翼手亜目、小翼手亜目ともに95%以上の高い交差性を示した。また、オオコウモリのCD4、IgFcRnについて蛋白コード領域を決定した。さらに、IFN-αの1subtypeとIFN-βのprotein cording regionの塩基配列を同定した。3)翼手目のウイルス病抗体検索法2)で確立したELISAを用いて、わが国でコウモリから分離されたヨコセウイルスの抗体調査を行ったところ、東南アジアのコウモリ血清151例中フィリッピンの1例(2.7%)、マレーシアの5例(19%)が陽性であった。陽性率が低かったため、ヨコセウイルスのコウモリに対する病原性を検討する目的で、ルーセットオオコウモリに実験感染を行った。ウイルス感染は成立したが、コウモリ体内での増殖性は悪く、ヨコセウイルスの自然宿主としてコウモリ以外の生物の存在が示唆された。
著者
勝田 俊輔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

19世紀前半のリムリック州における農民反乱の実態が解明された。反乱の動機面では、反乱農民は地域の農業経済上の問題の解決だけでなく社会変革も志向していたのであり、この点で政治性をもっていた。他方組織面では、同州での農民反乱は従来考えられていたよりも発達した地下組織に支えられていた。反乱農民は、ダブリンの秘密結社とネットワークを構築しており、組織構造をダブリンの結社から流用した一方で、州内各教区の「委員会」を基盤とする独自の組織を形成するにいたっていた。