著者
米田 美佐子 藤幸 知子 竹内 円雅
出版者
東京大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

ニパウイルスは1998年にマレーシアに初めて出現した新興感染症ウイルスである。2001年 以降バングラデシュを中心にほぼ毎年発生しており、その致死率は70~90%と非常に高いた め対策は急務である。申請者はこれまでに、フランス、アメリカ、バングラデシュ等の共同 研究者と共にニパウイルスの病原性発現機序に関する研究やワクチン開発を行ってきた。本 研究計画では、ニパウイルスの流行地であるバングラデシュにおいて、我々が開発した迅速 診断法を用いて流行ウイルス株の検出を試みる。また、検出されたウイルスの遺伝子解析に より、流行株の特性、病原性に関与する遺伝子配列の探索を試みる。
著者
吉田 真吾 上嶋 誠 中谷 正生 加藤 愛太郎 小河 勉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最近,種々の構造探査により,縦波速度(Vp),横波速度(Vs),電気比抵抗などが同一断面上にマッピングされるようになってきた.それら観測可能なVp, Vs,電気伝導度,Qなどから,どのような物質がどのような状態にあり,どのような破壊・摩擦特性をもっているのか推定できるようになることを目指し,室内実験によりVp, Vs,電気伝導度などと,破壊・摩擦特性を様々な条件下で同時測定できる装置を開発した.同時測定が必要なのは,間隙の形状や連結性に依存する物性パラメターは,(特に高温で間隙水が存在する場合,化学反応が活発なので,)温度・圧力を与えても一意に定まるとは限らないからである.高温高圧下で岩石の電気伝導度を測定する場合,金属ジャケットで岩石試料を覆うことになる.そのような状態で岩石試料の伝導度を求めるのに,金属ジャケットを主に流れてきた電流と試料中心部を流れてきた電流を分離し,それぞれガードリングとセンター電極で測定するガードリング法を用いる.ガードリングに流れ込む電流とセンター電極に流れ込む電流を計算し,適切な配置を検討し,昨年度,ガードリングモジュールを設計・製作した.さらにその測定システムを用い,日高変成帯主帯の泥質変成岩類などの測定を行った.ガードリングを用いても金属ジャケットを用いる影響を完全には取り除けないので,見かけ抵抗から試料の真の電気伝導度を算出する補正係数を数値解から求めた.温度は室温から25℃ごと250℃まで,圧力は10MPaから250MPaまで,周波数は周波数1Hz~1MHzまで変化させて測定した.日高変成帯泥質ホルンフェルスの電気伝導度は黒雲母片岩などに比べ非常に高い.一定圧力のもとで,このホルンフェルスの比抵抗は温度上昇とともに増加し,75℃近傍で最大値をとり,その後減少することがわかった.
著者
五神 真
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、インクジェット印刷技術を用いて作製した多層人工構造によってテラヘルツ電磁波領域における三次元メタマテリアルを実現し、新たな機能光学素子の開拓を行うことを目的とする。初年度においては、インクジェットプリンティング技術を用いて作製した金属メタマテリアルが、確かに三次元的な効果を有する人工光学素子として旋光性を有することを実験的に示した。本年度においては、等方的な光学応答を実現するための、面内異方性の除去についての検討を進めた。インクジェット印刷技術の場合、ユニットセル内のパターンの書き順と、パターン全体の書く順番の両方が異方性に寄与してしまうことを見出し、その影響を最小化するためのインクジェット描画のプロシージャを検討した。これにしたがって実際に試料を作製し、THz偏光回転測定を行うことによって、確かに異方性の除去に効果的であることを実験的に示した。しかしながら、多層化した場合の位置ずれから生じる異方性は除去できておらず、これは今後の検討課題である。また、本年度は、このような三次元メタマテリアルの特性を、回路制御技術を用いて能動的に制御する手法についての検討、及び設計を行った。実際に産業利用されているシリコンプロセスを用いて、単位構造毎にトランジスタを組み込んだ多層金属メタマテリアル構造を設計し、試作を進めている。この試作の結果をふまえ、本研究で検討した有機トランジスタを用いたインクジェットプリンティング技術との融合について検討を進め、三次元アクティブメタマテリアルの実現に関しても検討を進めている。
著者
宮野 真生子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度、私は、日常を生きるうえで、いかにして「偶然」とかかわるかという観点から、九鬼周造の倫理的可能性を問う作業をおこなった。その作業は具体的には、二つの方向からおこなわれた。(1)和辻哲郎が提示する「間柄」に基づく必然性重視の倫理観との比較。(2)田辺元が晩年の『マラルメ覚書』で提示した「行為の偶然性」というアイデアを媒介として、九鬼の偶然性概念を発展させること。(1)和辻の『倫理学』において、分析の基礎となるのは、「日常の事実」である。間柄を分析し、倫理を析出する和辻は、徹底して「日常の事実」に立つ。だが、日常がつねに私たちとともにあるからと言って、それを即座に「自明の前提」として無批判に受け入れることができるのだろうか。その前に私たちはまず、なぜ日常を当たり前の事実、自明の前提として受け入れてしまうのかを問い、この自明性を成立させる「日常性」のメカニズムについて考えることが必要ではないのか。「日常の事実」に立つ思索は、そのときはじめて広い射程を有することができる。以上のような問題意識を出発点として、和辻と九鬼の「日常」観の相違を分析した。(2)九鬼哲学では、「偶然性」は「存在」の問題として扱われてきたが、これに対し、田辺元は『マラルメ覚書』において「行為における偶然性」について論じている。九鬼周造の哲学を「倫理」として展開するためには、「行為」の次元を考えることが不可欠であり、その部分を補うのが、田辺の『マラルメ覚書』である。彼はここで、行為の当否は常に偶然に委ねられており、その偶然を生きることこそが「倫理」であると論じている。つまり、一般に「倫理」とは「必然」を説くものと考えられがちだが、それにたいし、田辺は「偶然」にこそ「倫理」を見た。それは、必然によって自己と他者、あるいは未来を縛る固定的な倫理ではなく、より自由な倫理的関係を可能にするものであると言える。
著者
岡田 吉美 中島 捷久 渋田 博 野本 明男 石浜 明 四方 英四郎
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1984

クローン化されたタバコモザイクウイルスcDNAから感染性RNAを転写する実験系が確立された。この系を用いて130Kタンパクの停止コドンとその近辺に変異が導入された結果、130Kタンパクと180Kタンパクが複製酵素であることが確かめられた。ホップわい化ウイロイド,キュウリペールフルーツウイロイドおよびブドウウイロイドの病原性と分子構造の解析を行ない、これら3種類のウイロイドは塩基配列が若干異なるが病原性は同じであることが明らかにされた。インフルエンザのRNAポリメラーゼはキャップRNA切断,プライマー依存性RNA合成,ポリA付加,誤転写修復機能などの多機能をもっていることが発見された。また血球凝集素遺伝子に部位突然変異法によって多数の変異を導入し、その抗原構造の解析とシアル酸結合部位の解析を行った。HVJの全遺伝子構造を解明すると共に、そのmRNAの合成機構と非構造Cタンパク質の機能について解析した。パラインフルエンザ3型ウイルスの病原性に関与する遺伝子についても変異株の比較で解析を行った。ポリオウイルスの感染性のcDNAクローンを利用し、各種人工変異ウイルスを作製した。それらの複製効率および神経毒性発現を含む生物学的諸性質を調べた結果、ゲノム各領域間の相互作用がウイルスの複製および遺伝情報発現に重要であることが示唆された。バクテリオファージGAおよびSPの全遺伝子構造を決定するとともに、QB,SPの活性のあるRNA複製酵素遺伝子クローンを作製した。またGA→MS2の抗原変化に関与するコートタンパク質のアミノ酸を同定した。リンゴさび果ウイロイドの全塩基配列を決定した。その配列は今までに構造が明らかにされているどのウイロイドとも類縁関係はなく、新しい種類のウイロイドであることが明らかにされた。
著者
和久 大介
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究計画当初に予定していた10個体のニホンカワウソ標本の解析を実施した。その結果、複数個体から目的のミトコンドリアゲノム配列を決定した。このように、本研究実施により新たなデータを得られた。また、当研究計画期間中に日本国内において生きたカワウソが見つかり、その糞からもミトコンドリアゲノム配列を得ることができた。さらに、本研究計画の進行中に全ゲノムによる解析を目指し、ユーラシアカワウソ・コツメカワウソ・ビロードカワウソからドラフトゲノム配列のもととなるデータを得た。これらの結果は今後国際誌に投稿予定である。
著者
中澤 公孝 西村 幸男 荒牧 勇 野崎 大地
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は「ヒトの中枢神経が有する障害後の再編能力を解明すること」を最終目的とし、①パラアスリートの脳の構造的・機能的再編を明らかにすること、②モチベーションが脳構造と可塑性に与える影響を明らかにすること、を大目した。当該年度は前年度に引き続き、下肢切断と脊髄損傷の研究を継続するとともに、先天性上肢欠損、高次脳機能障害、脳性麻痺を対象とした研究を実施した。下肢切断に関しては、断端周囲筋を収縮させる際の同側運動野の活動が運動経験に関連して増大することが明らかとなった。この結果は、パラアスリートに観察された同側運動野の活動を説明するものであり、高レベルの義足操作に同側運動野活動が貢献することを示唆する。脊髄損傷者の脳構造・機能解析も進み、完全対麻痺者において特異的脳部位の構造的特徴が明らかとなった。この結果は、障がい後の代償反応と使用依存的可塑性発現によって説明することができる。先天性上肢欠損は一例ではあるが、先天的障害に対する代償反応としての下肢支配領域の特異的拡張を見出し、学術的価値が高いことから国際誌に掲載された。高次脳機能障害者に対しては上肢トレーニングに伴う機能的変化と脳構造・機能の変化を縦断的に調べた。その結果、上肢機能改善と共に脳支配領域の拡張、半球間抑制の低下、皮質脊髄路興奮性の上昇などを認めた。脳性麻痺については、パラリンピック金メダリストの解析を進め、水泳トレーニングによる脳再編、脊髄反射の関与に関する新たな知見が得られたことから学術的価値が認められ、国際誌に掲載された。
著者
安田 従生 谷岡 利裕 中澤 公孝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

これまで、酸化ストレスと酸素摂取能力(体力レベル)の関連性は、侵襲的な方法(血液、筋組織等)で評価されてきた。その間、唾液等を用いた非侵襲的な方法も試みられていたが、精度の高い定量的分析が困難であった。しかしながら、近年、唾液を用いた非侵襲的な方法でミトコンドリアDNAコピー数の検出が高い精度で可能になりつつあり、学校体育・スポーツ現場で応用できる機会が到来している。その点で、DNA損傷・修復能力と酸素摂取能力に基づいた唾液中ミトコンドリアDNAコピー数の定量化により、生徒の体力レベルやストレス耐性を迅速にかつ簡易的に特定することができれば、部活動水準を至適レベルで設定することが可能となる。
著者
藏本 龍介 清水 貴夫 東 賢太朗 岡部 真由美 門田 岳久 中尾 世治
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

・2015年度:メンバーのこれまでの研究内容を共有すると同時に、「宗教組織の経営」という問題をいかに共通の枠組みで分析しうるか議論した。・2016年度:前年度の議論を踏まえ、経済人類学者(住原則也氏)、宗教社会学者(白波瀬達也氏)を招き、シンポジウムを開催した。そしてその成果を『「宗教組織の経営」についての文化人類学的研究』(2017年、南山大学人類学研究所)として刊行した。・2017年度:前年度までの議論を踏まえ、「宗教と社会」学会(2017年6月)において、宗教社会学者(西村明氏)をコメンテーターとして招き、「宗教組織の「経営」についての民族誌的研究」と題するテーマセッションを開催した。
著者
杉野 駿
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究はフランス啓蒙主義の哲学者ドゥニ・ディドロの美学理論である「理想的モデル」論を、その生成と同時代の理論との関係に着目しながら検討する。「理想的モデル」とは『百科全書』の項目「ADMIRATION」から『俳優に関する逆説』までおよそ20年間かけてディドロが様々な文脈において使用しつつ彫琢した概念である。この概念を中心に展開された理論は、深源をプラトン哲学に持ちながらも、観念論と唯物論の弁証法のなかでの「判断」の契機の特異な位置づけを浮き彫りにする点で18世紀の美学理論のなかでも特筆すべきものである。本研究は、この理論の美学的達成と同時にその政治的含意をあきらかにすることを目指す。

1 0 0 0 学芸志林

出版者
東京大学
巻号頁・発行日
vol.2, 0000

1 0 0 0 学芸志林

出版者
東京大学
巻号頁・発行日
vol.2, 0000
著者
都田 菊郎
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1961

博士論文
著者
金森 万里子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

様々な国において農村の自殺率は都市より高いことが報告されているが、農村に着目してどのような社会環境が自殺率に関係するのか検証した研究は少ない。そこで本研究では、①大規模データの分析によって自殺に関係する社会環境要因を明らかにする:日本老年学的評価研究の調査データおよびスウェーデンの全国民データを用いて分析し、国際比較研究を行う。都市と農村の格差、地域の産業構造、ジェンダー規範等に着目する。②住民のエンパワーメントによる自殺対策の可能性を明らかにする:主に酪農女性に着目し、生き心地の良い地域づくりに向けた住民活動を支援する。住民自らが定義した地域の課題設定を生かし、それをサポートする形で関わる。
著者
御厨 貴
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2010

博士論文
著者
平原 秀一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

本研究テーマに関して、次の2つの重要な成果を得た。(1) 本研究のテーマであるランダム文字列を使った乱択多項式時間アルゴリズムの特徴づけに関するAllenderの予想を本質的に否定する成果を得た。(2) 「ブラックボックス帰着の限界」と呼ばれる証明手法の限界を世界で初めて突破することに成功し、計算量理論の中心的な未解決問題を解決するための新しいアプローチを見出した。(1) 具体的には、コルモゴロフ記述量の意味でランダム文字列(=圧縮できない文字列)かどうかを判定するオラクルに非適応的に質問することによって解ける問題は、乱択多項式時間アルゴリズムで計算できるもののみに限る、と予想されていた。我々は以前知られていた帰着を大きく改善し、特に乱択多項式時間アルゴリズムで計算できないと予想されている問題さえも解けることを示すことに成功した。特に、これはAllenderの予想が他の(より一般的な)予想に反することを意味する。(2) 上述の成果に関連して、(時間制限付き)コルモゴロフ記述量を計算する問題について、最悪時・平均時計算量が同値になることを証明した。普通、アルゴリズムの計算時間は最も時間のかかる入力において測る(=最悪時計算量)が、それに対し、平均時計算量では、ランダムに生成された入力において、期待値の意味で計算時間を計測する。NP完全の問題について最悪時・平均時計算量の同値性を示すことは計算量理論における中心的な未解決問題であり、特に「ブラックボックス帰着」と呼ばれる証明手法では解決することができない。本研究では新しい証明手法を開発することにより、ブラックボックス帰着の限界で初めて突破することに成功した。具体的には前述の通り、コルモゴロフ記述量の計算問題について最悪時・平均時計算量の同値性を示した。