著者
石川 健治 小島 慎司 宍戸 常寿 岡野 誠樹 西村 裕一 山羽 祥貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は,およそ,五・一五事件が生じた1930年代初めから,内閣に憲法調査会が設置された1950年代半ばまでを対象とし、そうした体制変革期における憲法および憲法学を考究する。その際、当該時代における日本の憲法学を連続するものとして捉えること,それらを歴史的・理論的に考究するだけでなく、そうした歴史研究と理論研究の有機的結合を試みること、の2点に注力する。それらの歴史的解明は,個々の論者の理論枠組みを踏まえてはじめて果たすことができる一方(「理論」を踏まえた「歴史」研究),個々の理論や解釈論も,当時の政治的文脈に置いてこそ、その真価を問うことができるからである(「歴史」を踏まえた「理論」研究)。
著者
佐藤 勝彦 橋本 正章 鈴木 英之 山田 章一 長滝 重博 固武 慶 滝脇 知也 渡辺 元太郎 大西 直文 住吉 光介 藤本 信一郎 木内 健太 岩上 わかな 澤井 秀朋 安武 伸俊 西村 信哉 諏訪 雄大 中里 健一郎 長倉 洋樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では大質量星が進化の最後におこす重力崩壊型超新星及びガンマ線バーストの爆発機構・源エンジンについて世界最先端の研究を行い、多くの成果を挙げた。大規模数値シミュレーションによる研究を豊富に行い、場合によっては京コンピュータを用いた世界最高レベルの数値シミュレーションを実現した。またこれらの現象に付随して起こる重力波・ニュートリノ放射、r-process元素合成を含めた爆発的元素合成、最高エネルギー宇宙線生成、等々について世界が注目する成果を数多く挙げた。以上の様に本研究課題では当初の予想を上回る、世界最先端の成果を修めることが出来た。また同時にこの分野に於ける将来の課題・展望を提示しつつ5年間のプログラムを終了した。
著者
白波瀬 佐和子 盛山 和夫 ホリオカ チャールズ・ユウジ 杉野 勇 上野 千鶴子 武川 正吾 赤川 学 中田 知生 村上 あかね
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、日本の急激な人口高齢化が社会の階層構造に及ぼす影響を、社会調査データによって実証的に明らかにすることにあった。そこで本研究では、2010年に50~84歳を対象にした「中高年者の生活実態に関する全国調査」(有効サンプル6,442ケース)を実施し、2年後にはその3,193ケースについて追跡調査を行った。高齢期の階層は、所得や仕事内容、資産といった経済的要因のみならず、だれと暮らすか(世帯構造)と密接に関連していた。
著者
出口 剛司 赤堀 三郎 飯島 祐介 伊藤 賢一 渡會 知子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、社会学の公共性を実現する条件を理論及び学説史の研究によって明らかにすることにある。上記課題を実現するために五つの論点の考察した。1.ヴェーバー「価値自由」テーゼの批判的継承、2.批判的社会理論とN.ルーマンの社会システム論の再検討、3.ドイツにおける国法学、公共性研究とフランスの中間集団論との比較、4.ドイツにおける社会理論と法学の関係についての考察、5.ネット時代の個人化と社会的連帯の変容の解明である。その結果、理論が自己の正当化実践を行うことを通して、また社会的現実を別様に記述することにより、政策課題を設定=再設定することで通して、社会学の公共性が実現しうるという結論を得た。
著者
横山 順一 カンノン キップ 仏坂 健太 伊藤 洋介 茂山 俊和 道村 唯太
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

重力波を用いた宇宙物理学の研究を包括的に展開します。具体的には、①独立成分解析によってノイズを効率的に除去し、KAGRAによる重力波の初検出を目指します。②連星ブラックホールの質量分布関数とパルサーの周期擾乱で観測される長波長重力波背景放射を用いることにより、予想外に多数存在することがわかったブラックホールの正体を明らかにします。また、③連星中性子星合体については、マルチメッセンジャー宇宙物理学において、光学対応物となるガンマ線バースト及びキロノバの物理過程を数値相対論によって明らかにすると共に、r過程元素合成を計算し、銀河の化学進化の観測と照らし合わせて、金や銀などの起源を明らかにします。
著者
萬屋 博喜
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度は、前年度に引き続き、(1)デイヴィッド・ヒュームの因果論と(2)現代因果論におけるヒューム主義を主な課題として研究し、その成果を口頭や論文の形で発表した。(1)第一に、ヒュームの因果論に関しては、自然法則に関する見解について研究報告を行った。これについては、『人間知性研究』を主なテクストとして用い、(a)従来の解釈ではヒューム哲学が自然法則と偶然的一般化を区別できないという困難に直面することになるという点を指摘した上で、(b)自然法則の信念成立において数学的表現による数量化という手続きが不可欠であるという「数量化可能性の条件」という論点をテクストから析出することで、そうした困難の解消を試みた。(2)第二に、現代因果論におけるヒューム主義に関しては、(1)行為の道徳的評価における因果性の役割、(2)共同行為における因果性の役割に分けて研究報告を行った。まず、行為の道徳的評価における因果性の役割については、(a)行為の善悪を評価する原理の一つである二重結果原理の内実を明らかにした上で、(b)その原理において因果性が果たす役割の重要性を示したのちに、(c)その原理は傍観者視点での概念的直観ではなく当事者視点での経験的直観によって根拠づけられるということを示した。次に、共同行為における因果性の役割については、この論文では、(a)共同行為の定義や成立条件に関する黒田亘の見解を検討したのち、(b)黒田の議論が、合理性、暗黙の相互期待、意志表明の言語ゲームにおける<原因としての意志>の共有、という共同行為成立のための三条件を提示するものであった、ということを明らかにした。
著者
角森 史昭
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、岩石の一軸圧縮に伴うガス放出の過程を調べた。岩石破壊の直前に大量にガスが放出されることから、地震発生前のガス濃度増加にかなり関与していることが示唆される。地球化学的地震予知研究では、地下水に溶けているガスやイオンの濃度の時間変化が時間に応答するという観測結果に基づいて、そのメカニズムモデルの構築や的確なシグナル観測の技術開発を行ってきている。そこで本研究では、メカニズムモデル構築のための基礎データを得ることを目標とした。使用した試料は、稲田花崗岩でφ50、L100の円柱である。この形状の花崗岩の場合およそ25tの荷重、約2mmの軸方向の変形の後破壊に至る。試料は真空容器内に入れ、4.2kg/sの荷重速度で圧縮した。このときの荷重はロードセルを使用して同時にモニターした。また同時に、破壊に至るまでの亀裂生成率はアコースティックエミッションでモニターした。アコースティックエミッションセンサーは真空容器内で岩石に貼り付けられている。亀裂生成に伴って放出されるガスを精密に分析するために、英国HIDEN社の四重極質量分析計HAL201を使用した。測定をした質量数は、時間分解能を上げるために2,4,5,16,18,28,32,36,40,44とした。これらの質量数をスキャンするのに要した時間は10秒であった。アコースティックエミッションの頻度は、破壊に至る時間の80%程度の時間から指数関数的に増加した。測定されるアコースティックエミッションのシグナルの強さとガスの放出パターンに相関が確実に見られるのは指数関数的な増加が始まってからと判断された。放出されるガスの組成には系統性があるとは言い難く、指標とできるガス種についてはさらに詳細な実験が必要である。一方、当初目標としていた亀裂生成の三次元可視化は、使用したシグナル解析装置の不備により実現できなかったが、解析装置の改良を行うことで可能になると考えられ、ガス発生を引き起こすアコースティックエミッションを特定が可能になることが期待される。
著者
川北 優子 酒井 慎一
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.127-139, 2010-01-28

The Special Project for Earthquake Disaster Mitigation in the Tokyo Metropolitan Area has been ongoing (2007−2012). Under this project, the Metropolitan Seismic Observation network (MeSO-net), which consists of about 400 observation sites, has been constructed. The correlations of waveform from local and teleseismic events are high because observation sites are deployed at about 2 or 3-km intervals. In addition, the later phase is easily identified although artificial noise is very intense. However, we are attempting to improve quality by characterizing the various types of noise. In the metropolitan area, various human activities are observed that generate noise such as trains, automobiles, aircrafts, factories, and electrical power. These adversely affect our observations. We recognize various types of noise from continuous records. A spectral graph and a spectrogram in each station are useful for characterizing signals and noise. We also discovered a form of system noise obtained from the relationship between sensor and electrical circuit. We named it Aurora Noise. The strength of Aurora Noise was reduced by improving the electrical circuit. Our study will lead to improving the quality of observed data, and contribute to a new assessment of seismic hazard in the Tokyo Metropolitan Area in Japan.
著者
笠原 敬司 酒井 慎一 森田 裕一 平田 直 鶴岡 弘 中川 茂樹 楠城 一嘉 小原 一成
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.71-88, 2010-01-28

To better assess the seismic hazards produced by a magnitude 7 or greater (M 7+) earthquake in the Tokyo metropolitan area, we have launched the Special Project for Earthquake Disaster Mitigation in Tokyo Metropolitan area (2007−2011). This requires establishing a highly dense seismic-array observation network in and around Tokyo to monitor ongoing micro-earthquakes with relatively high precision even if noise levels are generally high. We have started developing the Metropolitan Seismic Observation network (MeSO-net). Deployment of MeSO-net seismic stations is currently underway. The number of observatories at project termination will be 400 with a 2−5km interval in space. In this paper, we summarize how we solved technically difficult and practical problems involved in MeSO-net construction. We start with a review of related work to better understand the technical difficulties involved in deploying stations in metropolitan areas such as Tokyo. Next, we explain our approach to verifying a meaningful design of an observatory and its deployment at local sites. We further describe our decision-making process in practice for implementing station deployment. We hope that establishing the MeSO-net will support a new assessment of the seismic hazards produced by M 7+ earthquakes in the Tokyo metropolitan area.
著者
三崎 義堅 川畑 仁人
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ (Peroxisome proliferator-activated receptor-γ : PPARγ)は、主に脂肪細胞分化と糖代謝に関わると考えられているステロイドホルモン核内受容体スーパーファミリーに属する核内転写因子である。リンパ球にもこの分子が発現しているが、その機能は明確でなかった。我々は、このPPARγ欠損マウスを作成し、そのヘテロ接合体(以下PPARγ+/-)(変異アリルのホモ接合体は致死)脾臓B細胞において、NFκBの核内移行が亢進し、増殖応答亢進、アポトーシス遅延を示すことから、B細胞機能にPPARγが深く関わっていることを見出した。また抗原特異的免疫応答はT細胞増殖試験で8-15倍、特異的抗体価で3-4倍と増強されていた。そこでPPARγ機能を修飾することにより、抗原特異的免疫応答を増強する手法が開発可能であると考えられ、免疫系細胞におけるPPARγの役割を検討することにした。PPARγ+/-由来T細胞は、in vitro抗原刺激培養すると、+/+由来T細胞と比較して、それぞれPPARγ+/+由来脾樹状細胞上においては約2倍、+/-由来上では約5倍のインターフェロンγ(以下IFNγ)を産生することが認められた。なお、IL-2、IL-4産生については明確な変化は認められない。従って、PPARγ発現量の減少は、T細胞においてINFγの誘導を増強することが明かとなった。現在、今後IFNγレセプター信号伝達系にPPARγが及ぼす影響を中心に解析を進めていく。以上の結果は、細胞障害性T細胞誘導も期待できるTh1型免疫応答で、かつ抗体産生も増強されるという、感染症に対するかなり理想に近い抗原特異的免疫応答増強法が、PPARγという一つの分子を標的にすることで、達成可能であることを示唆すると考えられる。
著者
土井 正男 奥薗 透 山上 達也 山口 哲生
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

固体基板上の高分子溶液の乾燥過程における薄膜形成のメカニズムおよび乾燥後の薄膜形状の予測・制御に関する実験および理論・シミュレーションによる研究を行い、以下の成果を得た。蒸発速度に対する弾性効果を考慮し、乾燥時に溶液の表面にできるゲル状の皮膜の形成条件を明らかにした。薄膜形状の初期条件依存性および気相中の蒸気の影響を明らかにした。薄膜形状の制御に関するいくつかの方法を提案した。
著者
土井 正男 森田 裕史 住野 豊 山口 哲生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

固体基板に粘着させたゴムや粘着剤などの高分子物質を剥がそうとすると、高分子と基板の接触面の境界(接触線)近傍には、キャビティやフィブリルなどのμmオーダのメソスケール構造が表れる。本研究では、高分子の粘着や摩擦において見られるこれらのメソスケール構造を実験的に調べ、構造の変化と粘着・摩擦特性の関係を幾つかの例について明らかにした。特に、粘着性ゴムの接触線運動のモデルを得た。また、基板上をすべるゴムの中の歪みの空間分布を求める方法を提案し、地震現象との関連を議論した。