著者
石田 貴文 古澤 拓郎 大橋 順 清水 華
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インドネシアで新たな公衆衛生的課題となっているストレスやうつ病を進化医学的に分析し、リスク要因としての遺伝的多型と、社会の個人主義化の影響を明らかにする研究である。セロトニン・トランスポーター遺伝子やオピオイド受容体遺伝子等の多型がうつ病やストレスと関係することが知られているが、最近の研究によればこのリスク型はアジアの集団主義的社会に多く、そのような個人が個人主義社会に移住することや、人間関係の急変により疾病を発症する可能性が指摘されている。個人主義化が進むインドネシアにおいて、国立中核病院等を拠点としたケース・コントロール研究と、地域社会での横断的研究を用いた研究デザインにより、この因果関係を検証する画期的研究であると同時に、その成果から健康社会の在り方を提案する社会実装型研究である。現在、マカッサルのハサヌディン大学と共同研究を推進しているが、他の研究協力校を開発するため、スマトラのメダンを訪問した。また、トラジャ族を調査対象集団としているが、マカッサルの南西に住むカジャン族の集落の現状を視察した。セロトニントランスポーターをコードするSCL6A4遺伝子のプロモーター領域内に位置する挿入欠失多型(5-HTTLPR)は、うつ病との関連が、μオピオイド受容体をコードするOPRM1 遺伝子エクソン1に位置するアミノ酸置換(rs1799971) は統合失調症との関連が報告されている。インドネシア人患者サンプル46名について、SCL6A4遺伝子の5-HTTLPR 多型をPCRと電気泳動 により、OPRM1 遺伝子のrs1799971をTaqMan法により遺伝子型を決定した。一方、ストレス指標としてテロメア長をPCRで定量した。
著者
加藤 淳子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

再分配における平等の問題は、福祉国家研究のみならず、哲学や思想などでも重要課題である一方で、その背後にある動機付けや心理過程については、直接のデータをもって分析されることはなかった。本研究は、福祉国家の所得階層構造(高中低所得層)を踏まえ実際の再分配の問題を考えるため、仮想社会における再分配ルール決定の際の参加者の脳の活動をfMRIで計測することで、平等をめぐる心理過程の解明した論文を自然科学英文専門誌に掲載し、社会科学の分野から複合分野である脳神経科学へ参入に成功した。また、脳神経科学実験を行う際に、政治学の行動分析の知見がどのように役に立つか方法論的考察も行い社会科学専門誌にも寄稿した。
著者
阿蘇 瑞枝
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1972

博士論文
著者
平田 秀
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2015

審査委員会委員 : (主査)東京大学准教授 小林 正人, 東京大学教授 林 徹, 東京大学教授 西村 義樹, 東京大学名誉教授 上野 善道, 日本女子大学教授 松森 晶子
著者
奥谷 文徳
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本提案では、折紙工学を用いて今までの材料では不可能な「動き」を可能とする。上述したように折紙の技術は工学の分野に応用されてきたが、折紙構造の静的な状態、つまり展開状態と折られた状態の2つの状態のそれぞれの活用に留まっている。折紙はそれらの状態以外に、折り畳まれつつある状態を持つ。この折り畳まれつつある状態こそ、弾性変形や局所的な幾何学的な制約を利用した折紙の真髄である。折り紙構造の動きを最大限に活用した円筒形状ロボットを実現し、「動き」を活用した折紙構造の実用化により、紙から折るだけで作れる構造により「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」製造できる技術を実現する。
著者
松尾 宇泰 相島 健助
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

現代科学・工学では,微分方程式の数値計算に基づくシミュレーションが必須であるが,扱う問題が飛躍的に大規模化する一方,ムーアの法則の終焉により,並列(高性能) 計算のみに頼った性能向上は以前ほど望めなくなっている.本研究は,この状況を本質的に打開するために,数値解析学における最先端の2大トレンド,「構造保存数値解法:方程式の数理構造を活用することで物理的に適切な数値解を保証する手法」,および「モデル縮減法:大規模方程式を低次元近似することで数理的に計算量を削減する手法」を組み合わせ,数理的手法により,物理的に正しい数値シミュレーションを高速に行う,新しい数値計算法の枠組を創出することを目指す.平成29年度は,まず非線形シュレディンガー方程式に対してSymplecticモデル縮減法を適用し,良好に動作することを確かめた.またカーン・ヒリヤド方程式など散逸型の方程式に対して,最新の(非構造保存的)モデル縮減法をいくつか実装し,それらの有効性をある程度確認した上で,構造保存的でないモデル減ではこれらの方程式のモデル縮減に限界があることを初めて明らかにした.以上の成果は,「構造保存的モデル縮減」という考え方がモデル縮減においては必須であり,その方向の研究が望まれることを改めて示すものである.また動的モード分解法について検証し,その新しい拡張を与えた.さらに,一般線形系に対するある種の乱択アルゴリズムについて,初めて理論的収束証明を与えた.
著者
元木 英
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

リンパ浮腫は悪性腫瘍治療によるリンパ節郭清や放射線治療などの後に四肢が肥大し、生活の質を著しく低下する慢性の進行性疾患であるが、術後にどのような機序によってリンパ浮腫に至るのか、その発症機序はまったく不明である。リンパ浮腫の発症機構の解析を行った。リンパ浮腫患者のリンパ管では他の炎症性血管疾患同様にリンパ管平滑筋細胞が形質変換し増殖しリンパ管壁を肥厚していることがわかった。さらに私が確立したマウスモデルでは、透過性の亢進した新生リンパ管とリンパ球と単球・マクロファージを主体とした免疫細胞の集積を認めた。炎症プロセスが、リンパ管新生をもたらしている可能性が高いことが示唆された。
著者
安冨 歩 深尾 葉子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、満洲・華北・黄土高原の三地域を研究対象として選定し、歴史的研究とフィールドワークによる研究を併用し、一般的な中国農村社会モデルの構築を目指した。本年度は、第一・二年度における、長距離走破調査の成果をもとに、2006年8月に黄土高原で追加的調査を行うとともに、文献調査とモデルによる考察を推進し、中国農村社会の一般モデルの提唱という目的の実現を目指した。研究成果としては以下の二点が主たる成果である。(1)安冨が兼橋正人(東京大学大学院情報学環博士課程)と協力して、満洲の人口分布を各種の人口統計を用いて解明した。さらに、1970年代から得られる人工衛星画像を利用して、満洲と山東省の集落分布の変遷を調査した。この結果、安冨(2002)が主張した県城のみが突出し、村落との間に中間的な町が見られないという構造が、1970年代には中満と北満に明瞭に見られ、それが改革開放以降、徐々に見えにくくなっていることが判明した。これに対して山東省では、1970年の時点で既に多階層の構造が見て取れる。このような構造的な違いを視覚的に確認することができた。(2)深尾と石田慎介(大阪外国語大学学部生)が共同で高西溝村の社会と環境の現代史を明らかにした。高西溝村は黄土高原のなかにありながら、唯一、まとまった森林と草原を村内に形成し、バランスのとれた高能率の農業を展開し、澄んだ水のため池を持つことで中国全土に知られている。なぜこのようなことが可能であったのかを長期の滞在型調査により明らかにした。現在のところ重要であったと考えられるのは、共産党革命の過程で、村の内部で政治的亀裂が入ることを回避しえたことであり、これによって実行不可能なノルマを主体的に拒絶し、生産性を挙げるために本当に必要なことを村という単位で考えることが可能になったことである。
著者
安冨 歩
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

20世紀前半の満洲(中国東北地方)の歴史には二つの大きな特徴がある.まず第一はその急激な経済発展である.清末におけるこの地域は,長い封禁政策の影響により明らかに辺境性を色濃く残した「後進」地域であった.しかるに辛亥革命以降,満洲は急速な「近代化」に成功し,他の地方とは比較にならない重化学工業地帯がこの地域に出現する.第二の特徴は,この地域が東北軍という中国国内で最も強力な軍隊を有していたにもかかわらず,満洲事変における関東軍の軍事行動に対して脆弱であり,その後の反満抗日運動も,華北等に比して短期間で勢力が衰えたことである.この二つの特徴がなぜ満洲に見られたのかという問題に対し,本研究により一つの回答を提案することができた.まず,満洲における定期市の分布を調査し,中国本土に広く見られる定期市の稠密な分布が満洲には見られないことを示した.満洲における商品流通は定期市ではなく,県城を中心として展開されていたのである.このようなシステムが形成された理由は,(1)モンゴルからの安定した家畜の供給と朝鮮国境からの広葉樹材木の供給に支えられた荷馬車の広汎な使用,(2)冬季の道路面・河川の凍結による荷馬車輸送コストの低下,(3)鉄道の敷設率が高く,華北からの移民が鉄道周辺から開拓を進めていたこと,に求められる.農民が荷馬車を使用することで長距離移動が可能となり,県城商人との直接の売買が主流となった.この接触と鉄直輸送を結合することで,大豆モノカルチュアとも言うべき輸出指向農業が展開し,農民はより強く県城商人に依存するようになった.この県城商人と農民の直接の接触により,県城が農村を掌握する政治力が強く,県を単位とする政治的な凝集性が満洲にあったと予想される.この凝集性こそが張政権の基盤であり,圧倒的な軍事力で華北を支配する原動力となった.逆に満洲事変の際には関東軍に県城を占領されることで県全体が掌握されるという事態をもたらし,県城を占領されても根拠地を維持しえた華北と対照的な結果となったのである.研究成果は「満洲における農村市場」(『アジア経済』投稿中)および「満洲事変と県流通券」(福井千衣と共著:投稿準備中)として纏めた.
著者
平野 恵美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

豊かな芸術文化の国として知られるロシアは、バレエや音楽などで常に優れた才能を輩出している。ボリショイ劇場(モスクワ)やマリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)は、その象徴であり、ロシア芸術を代表する存在だと言える。しかしこの広大な国の音楽芸術文化の諸相は実に様々で、モスクワとペテルブルクの二都市だけでも、無数の劇場やコンサートホールがあり、その運営方法も公的なものから私設のものまで幅広い。特に19世紀半ば以降、資本家が台頭し、芸術家のパトロンとなって私立のオペラ団を経営する者も現れ、その水準や革新性は、マリインスキー劇場やボリショイ劇場のような帝室劇場に匹敵するか、凌駕し、影響を与えるほどだった。またこのことは、ロシアの貴族文化の伝統とも関係があると考えられる。ヨーロッパの貴族は昔から、自分達の邸宅に小劇場を持ち、使用人を出演させたり、時に自らが出演して演劇を楽しむという習慣があった(それは自分達の楽しみだけではなく、賓客をもたらしたり、支配者たる王を讃えたり、あるいは自分達の財力を誇示し、権威を高めるために行うこともある)。ことロシアにおいては、農奴劇場というものがあり、農奴俳優や農奴音楽家の存在が知られている。一方、上流階級の貴族達も、非常に高度な音楽教育を受けていたことが明らかになりつつあり、私達が現代の常識や物差しで想像しているだけでは、その本当の姿を知ることはできない。本研究では、当時の新聞や批評など一次資料を用いて、19世紀後半のロシアにおける、音楽・劇場文化の実態を明らかにして、日本でも人気の高いロシア音楽のさらなる理解を深め、最終的には政治や経済の状態に左右されずに、日本とロシアの友好的な関係を築くことに貢献するのを将来の目的に据えている。
著者
大木 研一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

研究の目的であげた二つの目的を実行するため、光遺伝学を駆使してスパインレベルの機能イメージング法を開発し、個々のシナプスに入力する情報を可視化し、その変化を継続的に観察し、脳の情報処理の素過程と、学習・記憶の素過程をシナプスレベルで解明する。さらに、細胞集団のイメージングと組み合わせて、これらの素過程がネットワーク全体としての学習にどのように寄与しているのかを解明する。最後に、細胞集団を光遺伝学を用いて人工的に活性化し、細胞集団の活動が知覚・学習と因果関係を持つかどうかを検討する。
著者
広渡 清吾
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、グローバル化の下で、先進諸国にとって共通の課題となっている国際移住(international migration)について、それに対する政策と法制度の対応をドイツと日本を対比しながら検討し、今後の日本の政策的課題を明らかにすることを目的とした。現代の国際移住は、(1)労働移住、'(2)家族の後追い移住、(3)難民の3つに大別される。移住は、一時的なものと継続的なものの両者を含むが、継続的なものに関して、受け入れ国の政策的、法制度的対応がとくに必要になっている。移住に関わる政策においては、受け入れ国の対応体制を求める移住者の側の視点と、他方で労働市場政策および人口政策を勘案する受け入れ国の側の視点2つが絡み合っている。ドイツについては、2004年に成立した移住法(Einwanderungsgesetz)の分析を行った。同法の目的および法システムの編成は、国際移住の基本カテゴリーへの対応、移住者側の視点および受け入れ国側の視点の両者の顧慮、なちびに定住化する移住者の社会的統合措置へのシステム整備などにおいて、国際移住に関する法制度を論じるための準拠モデルとみなせるものとなっている。ドイツの立法動向は、EUの政策動向と結びつけて論じる必要のあることが研究の過程でいよいよ明確になってきたので、国際移住に関するEUの政策と法制度についても検討した。日本政府は、この10年間、もっぱらその関心を国内の景気回復、行財政の効率化に向けて外国人労働者問題を重要な政策的課題としてとりあげることがなかった。それゆえ、ドイツやEUの政策的制度的議論に比すべき展開がみられない。このなかで日本経団連の外国人労働者の受け入れに関する政策提言が注目すべきものである。また、アジア諸国との経済連携協定の締結は、労働移住・国際的人的交流のネットワークの形成の展望と関連づけて議論されており、今後の重要な検討材料である。移民政策は社会の少子化との関連で日本、ドイツまたEUでも論じられている。移民政策が少子化をくいとめることができるかどうかは、今後の一層の検討を要する課題である。
著者
酒井 仙吉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2009年、牛乳中に存在し、自己分解で過酸化水素を発生する低分子物質を発見したことを明らかにした。従来から牛乳中には過酸化水素分解酵素(ラクトパーオキシダゼ)とサイオシアネートの存在が知られ、過酸化水素が存在すると強力な抗菌機構が生まれる(ラクトパーオキシダゼ/過酸化水素/サイオシアネート抗菌システム)。今回の発見は過酸化水素の供給があることになり、乳房炎発症を低めると考えられた。しかしながら程度の実態は不明で、証明するには多くの乳牛で調べる必要があった。本年度(1年目)、230頭の乳牛から920検体の分房乳を採取し、過酸化水素水発生能と電気伝導度の違いによる異常性の関係を調べた。その結果は、「過酸化水素産生能の低い乳牛から高い割合で異常乳が出現する」ことを明らかに出来た。前年に報告した「乳房炎は過酸化水素産生能の低い乳牛に多い」とした結論と一致した。両者の結果から「過酸化水素産生能は乳房炎抵抗性と関係する」と断定でき、研究上と産業上で貢献できる大きな前進が見られた。さらに内因性物質であることから副作用は考えられず、過酸化水素産生物質は乳房炎治療薬として極めて有用と考えられた。申請書に記載した目的、過酸化水素産生物質の同定と構造決定が大きな意義を持つことになった。そのため生成を開始した。最初にゲルろ過で粗精製を行い、次にイオン交換クロマトグラフで精製した。ほぼ単一な状態にしたが、本物質は酸素存在下で分解することで、その後の精製は困難を極めた。
著者
森 裕司 武内 ゆかり
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

牛乳は国民の健康に欠かせない重要な生鮮食料品であるが、牛乳を生産する乳牛の繁殖障害は年を追うごとに深刻化しており、その克服が喫緊の課題となっている。本研究では、従来のホルモン等を用いる方法に代わる新たな乳牛の繁殖障害の治療・予防手段を開発することを念頭に、フェロモンを活用するための基盤研究として雄牛フェロモン(Bull Pheromone)を同定することを目的とし、さらには天然フェロモンの分子構造に関する情報をもとに人工フェロモンを合成したうえで、容易に着脱可能なフェロモン徐放デバイスを開発し、雌牛の生殖機能に対する雄牛フェロモンの効果を検証する。こうした一連の研究により、牛の繁殖障害に対するフェロモンを用いた斬新な予防・治療方法を開発するための基盤技術を確立する。平成26年度には、現時点で雄牛フェロモンが存在すると考えられる雄牛の被毛採材を、(独)家畜改良センター(ホルスタイン種)および岐阜県畜産研究所飛騨牛研究部(黒毛和種)にお願いして入手した。これらの被毛サンプルを分包し、東京大学附属牧場および東京農工大学(ホルスタイン種)と(独)畜産装置試験場および名古屋大学附属農場(黒毛和種)における雌牛の発情周期を同期化した上でそれぞれ卵胞期と黄体期に雄牛被毛を暴露し、その前後4時間について10分ごとの頻回採血を行った。残念ながら本実験途中で課題が廃止となったために、血液中の黄体形成ホルモン濃度を測定できず、現時点で雄牛フェロモン効果の有無は判定できていない。また、フェロモンを分析する上で不可欠となるガスクロマトグラフ質量分析計と水素発生機を導入し、分析のための基礎検討を行ったが、こちらについても課題廃止のために実際のフェロモン分析までには至っていない。
著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

個別化疾病予防のため、食品の効能に対する個人差をゲノムレベルで解明することが重要であるが、日本人集団を対象とする研究は乏しかった。本研究は食品因子と一塩基多型(SNPs)の関連の解明を目的とし、大規模日本人SNPsデータベースと食品摂取に関するアンケート調査を用いてゲノムワイド関連解析を実施した。着目した4つの食習慣に有意に関連するSNPsを同定し、インターネットによるゲノムコホート研究が有用であることを示した。特に、遺伝型によって魚の摂取頻度が変化することを初めて明らかにした。さらに、ヨーロッパ系集団と異なるSNPが日本人集団では食習慣に影響することを示した。
著者
大和 裕幸 渡辺 岩夫 小山 健夫
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

「SES型高速艇(側壁型エアクッション艇)の運動制御システムの研究」は平成6、7年度の二カ年に渡り行われた。このタイプの高速船では、ある海象条件以上では、波浪に対する船体運動応答とそれにより生ずる推進性能の低下が起こり、高速が出し得ないという定時性の重要視される高速交通機関では致命的な問題がある。本研究では、シミュレーションを通して、この船舶の波浪中の推進性能、運動応答を把握し、その特性を理解することから始めた。SES型高速艇の運動は、いわゆる非線形影響の無視できない力学系で、制御系としての取り扱いも難しく、船体に取り付けられたルーバーとフインを用いてバンバン制御やファジ-制御で俊敏な応答が必要であることがわかった。また、波高に対する船体推進性能の特性をシミュレーションに抵抗成分を取り入れることで大雑把に把握したが、このことは制御系設計により船体計画の段階から取り入れる手法を示し、今後の船舶設計のあり方として非常に示唆に富むものと考えられる。非線形影響の大きい系に対して、理論的に制御システムに取り込むことは困難であるため、スライディングモード制御手法を用いて非線形に応じた制御入力を設定出来るシステムの有効性について検討した。スライディングモード制御は基本的に非線形性の比較的弱いところに有効でかなり強い非線形影響をもつSES型高速船の運動には工夫が必要であることがわかったため、それを改良した修正スライディングモード制御手法を提案、本システムでシミュレーションを用いて検討した。これらSES型高速艇の制御手法を運動応答の解析と、非線形制御手法の検討から本研究を取りまとめた。本研究は、今後のSES型高速艇実用化への最も重要な課題を一つとなるもので、研究的にもまた実際の設計上も重要なものであると自負している。
著者
溝上 恵
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1966

博士論文
著者
金田 博彰 正路 徹也 高木 秀雄 小林 祥一 加藤 泰浩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

中国の地質区は、ほぼ東西の境界線で北より、シベリアプレート(Siberia Plate)、タリム〜北中国プレート(Tarim-North China Plate)、中央オロジェニックベルト(Central Orogenic Belt)、南中国プレート(South China Plate)、チベット〜雲南プレート(Tibet-Yunnan Plate)、インドプレート(Indian Plate)に分けることができる。現在、日本を始め世界の先進国においては新たな資源の発見・開発はほとんど無いといってよい。特に、日本は資源品国の代表である。これに対して、開発途上国の代表である中国は、今でも全土から数多くの新たな鉱物鉱床の発見がみられる。中国において、1993年以降発見、開発が進められてきた鉱床および鉱化地帯は70箇所におよぶ。これらの鉱床のほとんどは、本研究での調査地域の中国中部〜南部域に分布する。すなわち、上述の中央オロジェニックベルト、南中国プレート、チベット〜雲南プレートに分布する。各鉱床が産出する主要鉱種は、銅、鉛、亜鉛、金、銀、錫、タングステンなどである。また、数は少ないもののマンガン、鉄、ウランなどもある。鉱床によっては、希土類元素、ニッケル、モリブデン、金・銀、アンチモンなどの副産物を随伴する。銅鉱床規模を、Super large (Cu総埋蔵量:100万t以上)、Large(100万t〜50万t)、Medium(50万t〜5万t)、Small(5万t以下)に4区分すると、Super LargeとLarge規模のほとんどの鉱床は本研究の調査地域に分布する。予測される銅(Cu)埋蔵量は、Super Large=100万t以上、Large=281万t以上、Medium=55万t以上、Small=1.2万t以上と見積もられる。また、鉛・亜鉛鉱床は6地域と銅に比べ少なく、全てSouth China Plateに分布する。6鉱床中5つがLarge規模(Pb+Zn=100万t〜500万t)である。予測される資源量は、166万t以上である。金銀鉱床は、ここ10年間で30箇所発見・開発されている。ほとんどの鉱床は、South China PlateとCentral Orogenic Beltから発見されている。これらから予測される埋蔵量は、金=305t以上、銀=6300t以上と見積もられる。錫・タングステンは中国を代表する資源である。これらはSouth China Plateより新たに4鉱床発見された。予想埋蔵は、90万tと見積もられる。以上、近年中国で新たに発見・開発されている鉱物鉱床は、そのほとんどが本研究調査・研究地域に分布する。
著者
松山 芳彦
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1952

博士論文