著者
綿村 英一郎
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

裁判員裁判で運用されている「量刑分布グラフ」によるアンカリング効果について、心理学的実験を行い検証した。一連の検証の結果、①量刑分布グラフのピーク(最頻値)が裁判員の量刑を誘導すること、および②検察官からの求刑と調整されることの2点について明らかした。また、従来の裁判員研究は評議を含めたものが少なかったが、本研究ではそれを含めており、生態学的妥当性の高い結果を示すことができた。以上の成果は、現在国際誌への学術論文としてまとめている。
著者
打越 文弥
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本研究では、学歴結合が夫婦関係の解消(離別)に与える影響に着目した。具体的な課題として以下の二つを検討した。まず、 70年にわたる出生コーホートにおいて学歴結合と離別の間に関連があるか、及びこの関連がコーホート間で変化しているかを解明することとした。この際、計量分析によって得た推定値をもとに、本人・配偶者の平均教育年数や学歴ごとの平均初婚年齢、失業率と いった離別行動に影響する要因を調整した数理シミュレーションを行う。次に、学歴結合と離別の関連かがなぜ生じているかを説明する要因を解明する。特に、婚外子を持つことが難しい日本的な文脈において特徴的な婚前妊娠が、妻下降婚と関連を持つことから、学歴結合パターンと離別行動の関連が;、婚前妊娠やこれに伴う早婚により説明されるかを検討することを目指した。採用期間(2018年4月-8月)における当初の計画については、概ね達成された。提出した研究計画では、4-7月期において課題①「学歴結合が離別に与える影響のコーホート比較」を進めつつ、研究成果をアメリカ人口学会と国際分析社会学ネットワークで報告するとした。後者の学会については日程の都合上キャンセルしたが、前者では予定通り学会報告を行った。8-11月期では、研究課題①の成果をまとめ、学会誌への投稿を行うとしたが、予定通り課題についてはすでに学術雑誌に投稿し、査読を経て掲載が決定した。また、並行して進める予定だった日本の婚前妊娠カップルの特徴を先進諸国で増加する非婚カップルとの比較から検討する計画については、その成果の一部を学会において報告した。研究課題②「婚前妊娠と早婚に着目した学歴結合と離別行動の分析」については、本特別研究員を途中で辞退することになったため、十分に進めることができなかった。
著者
大沢 真理 小笠原 祐子 ロバーツ グレンダ 田中 和子 合場 敬子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、経済グローバル化のもとで、「ニュー・エコノミー」として生じているとされる産業構造や労働組織など変化について、英、独、米および日本について、ジェンダー関係との関連を比較分析するもの。たとえば、産業や労働の組織の「フラット化」や「柔軟化」が語られながら、じつは社会的格差の拡大が懸念されること、また、近年の規制改革や福祉国家改革のベクトルでも、規制緩和や民営化ばかりではなく、再規制化やセーフティネット強化の要素が見逃せないこと、これらの事象のいずれもジェンダー関係と交差していること、が指摘される。対象4国は、今日の世界経済で大きな比重をもち、かつ相互に意味ある好対照をなしている。なにより4つの国は、異なる性格のジェンダー・レジームを持っている。アメリカは女性の就業を促進する方向に最も進んでおり、日本は女性の世帯内役割を最優先するジェンダー・レジームであるように見える。福祉と産業労働、家庭を横断するジェンダー・レジームは、収斂しているのか、あるいは強い経路依存性のもとで分岐しているのかなどの論点が、本研究で解明され発表されてきた。すなわち、2002年9月3日には東京大学において、公開シンポジウム「グローバル時代の「ニュー・エコノミー」-日米欧の比較ジェンダー分析」を開催し、本研究のコンセプトについて研究グループの外部から意見等を得た。その内容は、雑誌『現代思想』31巻1号(2003年1月号)の特集「トランスナショナル・フェミニズム」として発表された。2003年9月末にはブレーメン大学、2004年3月初めには日本国内で、海外共同研究者との研究会を集中的に開催した。研究の成果を広く社会に還元するべく、2004年3月4日に東京大学において、公開シンポジウム「グローバル時代の「ニュー・エコノミー」-日米欧の比較ジェンダー分析II」を開催(第18回東大社研シンポジウム)。
著者
蕪城 俊克 澤村 裕正 馬淵 昭彦 田中 理恵 徳永 勝士 寺尾 安生 花島 律子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

眼瞼痙攣患者584人からDNAサンプルを収集した。臨床データの解析が終了した331症例(男性:95例、女性:236例、63.0±12.9歳)の臨床病型の内訳は、本態性眼瞼痙攣238例、薬剤性眼瞼痙攣90例、症候性3例であった。そのうちの191サンプルを用いて、正常人コントロール419例を対象としてDNAマイクロアレイ(Axiom Genome-Wide ASI 1 Array Plate)によるゲノムワイド関連解析を施行した。眼瞼痙攣患者と正常人の間のアレル頻度の比較で、差が大きかった(P<10^-6)疾患感受性の候補領域が数十箇所絞り込まれた。残ったサンプルについても解析を継続する。
著者
若林 久嗣
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

滑走細菌群のFlexibacter columnarisは、種々の淡水魚類の皮膚、鰭、鰓などの体表面に感染病巣を形成し、病害をもたらす。本研究では、環境水中あるいは魚体表面に存在する他種の細菌との水中あるいは体表での競合関係について検討した。1. F.columnarisの生存性のすぐれた「調合水」は、蒸留水にNaCl、KCl、CaCl_2・2H_2O、MgCl_2・6H_2Oをそれぞれ、0.03%、0.01%、0.002%、0.004%溶かしたものであった。2. 調合水にF.columnarisを約10^6CFU/mlとA.hydrophilaまたはC.freundiiを約10^6、10^7、10^8CFU/ml加え、この中にドジョウを入れて一定時間毎に実験魚の一部をとりあげ、体表粘液をサンプリングし、間接蛍光抗体法でF.columnarisの菌数を、またDAPIで総菌数を測定した。競合菌濃度が10^8CFU/ml、すなわちF.columnarisの100倍存在する場合には、F.columnaris菌数が増加せず発病しなかった。3.競合菌を混入する時期と感染妨害との関係について検討した。C.freundiiをF.columnarisと同時に加えた区と30分後に加えた区では発病も斃死も見られなかったが、1時間以後に加えた区では、発病・斃死が認められた。また、C.freundiiをF.columnarisと同時に加えた区と30分後に加えた区における体表粘液中のF.columnaris菌数は、前者で8時間後まで若干増加したほかは増加せず、やがて減少して行った。一方、1時間以後に加えた区での体表粘液中の菌数は、24時間後まではC.freundiiも増加したもののF.columnarisの増加に及ばず、48時間後にはF.columnarisがさらに増加したのに対し、C.freundiiは減少した。これらのことから、競合菌C.freundiiによるF.columnaris感染妨害は、ドジョウ体表面への付着時ないしは付着直後の増殖開始時に起こることが推察された。
著者
藤本 忠
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

カントの『純粋理性批判』における「超越論的論理学」を批判の論理学として把握するとともに、カント以前の論理思想、及び、18世紀のドイツ学校哲学の論理学、学校哲学の形而上学を射程に入れつつ、文献学的な解明を行なってきた。本年度は、ライプニッツ、マイヤー、ヘーゲルといったカントと関係のあるドイツ近世思想全般へ研究を広げ、また、現代の意味論や論理学、科学論との関係を探ることを研究の目的とした。ライプニッツはカント哲学に通じる論理学の内包的視点を構築しており、認識論的な概念枠組みを多く用意したことが理解できた。但し、ライプニッツにおいては、概念の結合法的要素が多分に含まれており、概念の外延的視点も無視できない。また、カントと比べて、統覚や意識といったタームが、より広い存在論的脈絡の中で使われており、カントとの単純な比較ができない場合もある。マイヤーは、カントの論理思想に直接影響を与えており、カントは、マイヤーが用意した体系論に従って、とりわけ『理性論綱要』に従って、『純粋理性批判』を作り上げていったことが、研究の成果として明確に理解できる。特に、カントが『純粋理性批判』の中で論じた「分析論」と「弁証論」との区別が、すでにマイヤーの『理性論綱要』の中に見られる。ヘーゲルの論理思想はカントやライプニッツなど、ドイツ近世の論理思想における論理と概念の内包思想を極限まで推し進めた論理思想であると推察できる。したがって、ヘーゲルの論理学を正しく評価するには、ライプニッツのモナドにおける意識や表象の階層理論やカントのカテゴリー論における意味論的な理解が必要不可欠である。以上、カントを中心とした近世ドイツの論理思想(ライプニッツ〜ヘーゲルの論理思想)にながれる思想的軸を考察し得た。
著者
大知 正直
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究ではSNSデータを用いた早期の社会課題検出のための人工知能を開発する.現状では社会課題は社会全体の大きな問題となってから認識され,解決に膨大な資源を費やし持続的成長を大きく阻害している.本研究ではSNSのデータにネットワーク分析や機械学習の技術を用い,特定の集団では課題となっているが,社会全体では認識されていないような社会課題の芽を明らかにする.そして社会課題を早期に発見し,解決のための研究,施策の検討を開始することを可能にする.本研究の成果によって社会の持続的発展を促進できるだろう.
著者
馬ノ段 梨乃
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者の増加に伴い、近年、労働者のストレス対策の必要性が高まっている。本研究では、労働者を対象とした個人向けストレス対策プログラムを開発し、プログラム実施の効果を検討することを目的とした。本年度は、研究成果の発表を中心に以下の2点を実施した。(1)個人向けストレス対策に関するシステマティックレビューの結果(60研究、昨年度実施)に最新研究(5研究)を追加して、データを再検討した。(2)ストレス対処法に関するweb学習プログラムの効果に関して、マルチレベル分析によるデータの再解析を行った。(1)システマティックレビューの結果から、ストレスマネジメント教育が労働者のストレス対策に有効であること、介入効果を維持するためにはフォローアップセッションなどの継続した学習が必要であること等が概観された。また、効果評価研究におけるデータの再解析の結果から(2)ストレス対処法に関するweb学習プログラムの実施により、受講者のストレス対処法に関する知識の改善が認められた。さらに、複数回(3回以上)に分けて学習した分散学習者においては知識の改善に加えてストレス対処法(問題解決)に関する得点に有意な改善が認められた。このことから、学習を複数回に分けて実施することの有用性が確認された。受講者の動機づけを高める工夫と継続した学習を促進するための方法論の検討が今後必要とされる。
著者
栗田 敬 市原 美恵 熊谷 一郎 久利 美和
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

・実験課題の整備:従来の課題の整備以外に、Dancing Raisin、Rootless Eruption実験、火炎実験、降伏応力流体の落球実験、ペットボトル噴火実験などの新しい実験課題を整備した.その幾つかは授業、研究会、一般公開の場で利用された.また実験内容は地球惑星科学連合大会、European Geosciecne Union年会、日本火山学会などで発表されるとともに、Web上に公開されている(http://kitchenearth.sblo.jp/ ).小冊子「キッチン地球科学 レシピー集」を作成し、配布するとともに上記Web上に公開した.・キッチン地球科学研究集会の開催:2019年9月1日、2日に東京大学地震研究所にて40名余の参加者を得て開催された.・大学、高校における実験講義の試行:東京大学教養課程・惑星地球科学実習、明星大学理工学部・プロジェクト研究実験「身の回りのものを使った考える流体実験」、都立八王子東高校・化学部特別実験、聖星高校・科学部実験講義などの機会を利用して学生の実験を指導した.実験の題材は味噌汁対流実験、綿飴実験、ベッコウ飴クラック、ペットボトル噴火実験などである.学生の興味を引き出す手法として不確定要素を含む実験課題が有効であることを確認出来た.・キッチン地球科学の広報活動:はまぎん子供宇宙館、東京大学地震研究所一般公開、次世代火山研究者育成プログラム、地球惑星科学連合大会における「キッチン地球科学」セッション、ホイスコーレ札幌生涯学習セミナーなどの場を借りて教育における実験の役割、その具体的な利用法の宣伝活動を行った.
著者
井上 雄介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

トランスポゾンは生物のゲノム上を転移するDNA配列であり、あらゆる生物種に普遍的に存在する。その転移は遺伝情報を変化させるため、宿主生物種のゲノム進化に寄与していると考えられている。当研究室の先行研究により、メダカDa変異体の原因因子として少なくとも42 kb以上である大型の新規DNAトランスポゾンが見出され、Albatrossと命名された。Albatrossの挿入が原因と推定されるメダカ変異体は他にも複数報告があり、メダカゲノムにおいて転移していることが示唆されていた。しかし、その全配列は決定されておらず、サイズ、内部配列の由来、転移活性の有無などは不明であった。昨年度までに、Albatrossはヘルペスウイルスゲノムと一体化した、長さ180 kbを上回る巨大なpiggyBac型DNAトランスポゾンであり、さらに転移活性を保持していることを示した。これより、Albatrossはトランスポゾンの転移機構を二次的に獲得して宿主ゲノム内に内在化したヘルペスウイルスである可能性が示唆された。今年度は本現象の普遍性を検証するために、他の生物種におけるAlbatross様配列の探索および系統解析を行った。その結果、ゲノムが解読されている約60種の真骨魚類のうち16種について、Albatrossと相同性の高いヘルペスウイルス様配列が検出された。系統解析の結果、これらのAlbatross様配列は互いに近縁であり、魚類・両生類感染型ヘルペスウイルス内で一つのクラスターを形成した。さらに、いくつかの種についてはAlbatross様配列がゲノム内で複数コピー存在していることが示唆され、メダカと同様にAlbatross様配列がゲノム内で増幅している可能性が示唆された。以上より、ゲノムに内在化する性質をもった新規のヘルペスウイルスの一群が存在している可能性が示唆された。
著者
蜂巣 泉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Ia型超新星は、いろいろな超新星の中では最も明るく、遠方まで見える。そのため遠方の銀河までの距離を測る距離指標として使われ、宇宙膨張の加速の発見につながった。しかし、どのような天体が爆発し、Ia型超新星になるのかは今だ判明していない。このような状況下で、本研究の成果は、Ia型の超新星の最新の観測結果を統一的に説明する、新たな連星進化モデルを構築し、Ia型超新星の起源を理論面から明らかにすることができたことにある。
著者
菊水 健史
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

われわれは初生期環境の研究モデルとして,幼少期の早期離乳ストレスに注目し,ストレスを負荷されたマウスおよびラットでは数種の不安行動試験において不安傾向が上昇すること(Physiol. Behav. in press),その変化は成熟後長期にわたり持続すること,縄張り性の攻撃行動が変容すること(J. Vet. Med. Sci, in press)を既に見出してきた。同じくマウスにおいてこのような早期離乳ストレスが、成長後のメスにおける母性行動およびオスにおける性行動の発現を抑制することを見出し、早期離乳が繁殖活動を抑制することが明らかとなった。また我々は幼少期における母子分離ストレスによって精神覚醒作用をもつコカインに対する感受性が増加し,薬物依存のモデルとされる行動感作が脆弱化する事も明らかにしてきた(Psychopharmacology under reviewing)。また同様に早期離乳ストレスを負荷されたラットにおいても、数種不安評価テストにおいて不安行動が上昇していることが確認された(Behavioral Brain Research, under reviewing)。次にテレメトリー発信機をラット体内に埋め込むことで,自由行動下における自律神経系の変動が測定可能なシステムをセットアップし、精神的ストレスに対する自律機能の反応性を調べた(Physiol. Behav.2000)。早期離乳されたラットを新規環境や警報フェロモンに暴露すると、特異的な体温上昇が観察され、またそれと並行して行動学的にも動物が緊張状態を示していることが明らかとなった。離乳期前後にラットの母親は母性フェロモンを糞中に放出することが知られており、その成分はデオキシコール酸であるとの報告がある。上記早期離乳群においては、離乳期の母性フェロモンを摂取することができなくなることが想定された。そこで早期離乳群に母性フェロモンのデオキシコール酸を餌に添加した群を設け,成長後の情動行動に対するフェロモン効果を調べた。デオキシコール酸添加群では不安行動の軽減および攻撃行動の抑制が認められ、母性フェロモンが成長後の行動様式に大きな影響を及ぼすことが示唆された。これらのことから離乳前後における親子間の社会的接触を剥奪することにより、仔の成長後の行動・自律機能・生殖内分泌といった生体機能全般にストレス反応の増大が引き起こされることが明らかとなった。
著者
廣瀬 通孝
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1982

博士論文
著者
藤田 博之
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1980

博士論文
著者
畑村 洋太郎
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1973

博士論文