著者
相場 芳憲 戸田 浩人 小池 孝良 生原 喜久雄
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は大きく次の3つの課題について調査した。1. 降水の移動に伴う溶存元素の垂直的変化森林にインプットされた林外雨は樹冠に遮断されるために、土壌へ到達する水量は林外雨量の80%に減少し、水質も大きく変化することを、スギ・ヒノキの壮齢林、ミズナラおよびコナラの優占する落葉広葉樹林で調査した。また、下層植生による影響も大きいことを明らかにした。樹冠を通過することによる濃度増加の要因を樹体に付着した物質からの(乾性沈着)の洗脱と樹体からの溶脱の割合から解析した。2. 土壌水の水質形成土壌系での水質変化を明らかにするため、イオン交換樹脂を用いて、水溶性塩基の移動量を調査した。また、土壌中の窒素無機化が土壌水質に及ぼす影響を調査した。3. 渓流の水質形成渓流の水質形成のメカニズムを明らかにするため、枝打ちや間伐が渓流水の水質形成に及ぼす影響を調査した。また、降水量と渓流水の水質の関係を調査した。森林生態系での主に流出経路としての渓流水質は、土壌層および母材を通過する過程で、溶存物質の吸着や溶出によって物理化学的な平衡状態になる。森林は降雨量の変化にかかわらず水質を一定に保つ機能があることを明らかにした。
著者
秋山 佳丈
出版者
東京農工大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究では、昆虫の心臓である背脈管組織を駆動源するマイクロロボットの創成およびその制御法に関する検討を行った。シリコーンゴム製のマイクロ構造体へ背脈管組織をアセンブリすることで、自律的に一定方向に移動するマイクロロボットの創成に成功した。また、オプティカルフローにより背脈管の拍動を数値化し、その値に基づき電気刺激を行うことで、背脈管の拍動を一定に維持できることを示した。
著者
赤木 右 片山 葉子 土器屋 由起子 五十嵐 康人
出版者
東京農工大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

富士山測候所を利用して、1990年代初めより大気化学観測を続けてきた。しかしながら、2004年9月の測候所無人化が急遽決定され、1992年以来連続観測を行ってきたオゾン濃度をはじめ、大気化学関係の装置の撤収が要求された。その様な状況の中、測候所の協力を得て、特別に割かれた2004年6月18-22日の期間を利用して、従来の体制の中で最後の集中観測を行った。さらに、2005年は太郎坊避難所を中心に集中観測を行い、山頂での測定は、BC、パーティクルカウンターなどに限定して行った。観測項目は以下の通りである。エアロゾルおよび雨水の主要化学成分,粒径分布,雨水の主要化学成分、エアロゾルの粒径分布、^7Be濃度,SO_2濃度,O_3濃度,CO濃度,^<222>Rn濃度、COSの鉛直分布、同位体、NOx、ブラックカーボン。今年度は、梅雨明け前後にあたり、前半は曇りがちで、後半は比較的安定した晴天となったため、降水試料は得られなかった。2002年から2005年までの4年間に行った観測結果を整理し、次の様な結論を得た。まず、山頂と太郎坊とで得られたデータを比較することにより、(1)一般に化学成分の濃度は山頂において低いが、より細かくみると、COS濃度は山頂の方が高い、オゾンは山頂からの変動が先んずる、などの結果を得た。各成分の発生過程、分解過程について制約することが可能である。さらに、(2)自由対流圏の連続観測プラットフォームとしての富士山頂は理想的な地点であり、航空機観測の補完を行い東アジアの大気化学の情報を与える。(3)山体を4000mの観測タワーとみなすことで、微量気体の鉛直分布などの研究が出来る。
著者
山田 哲也
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,RNAi法による花弁老化関連遺伝子(InVPE,InPSR26,InPSR29,InPSR42)の不活性化がアサガオの花弁老化に及ぼす影響を評価し,2種類の遺伝子(InPSR26,InPSR29)が花弁老化を抑制する機能を果たしていることを明らかにした.他の2種類の遺伝子(InVPE,InPSR42)の機能は解明できなかったが,相同性検索により,これらの遺伝子が花弁のプログラム細胞死に深く関与することが示唆された.
著者
斎藤 隆文 品野 勇治 金子 敬一 宮村 浩子
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は,離散構造データの幾何的配置変動が引き起こす複雑かつ大域的な位相構造変化について,理論的ならびに実験的に追究し,諸問題に共通するメカニズムを明らかにすることを目的としている.本年度は,階層的クラスタリングを対象とした安定性評価に関する検討と,CG,可視化,形状処理の各分野における関連課題の検討を行った.階層的クラスタリングの位相構造変化を見る新しい考え方である「仮想要素追加法」を初年度に考案した.当初はクラスタリングを行った結果の階層構造の各ノードに対してだけ,適用していたため,実際には近接した配置であっても,階層構造として離れた位置にあるクラスタ同士の安定性はわからなかった.本年度は,このような場合の安定度の算出方法と,その可視化方法について検討した.その結果,構造全体におけるクラスタ構造の安定性を可視化することに成功した.CG,可視化,形状処理の各分野において,種々の問題に取り組み,関連する課題を検討した.その過程において,人物の顔を撮影した動画像を,実時間でイラスト風に処理する手法や,固定カメラで撮影された長時間にわたる時系列画像をもとに,有効情報を可視化する手法などを提案,発表した.
著者
早出 広司 池袋 一典 FERRI Stefano
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、酸化酵素および脱水素酵素と電極との電子移動反応を行なうためのインターフェイス分子を開発することを目標とした。まず、E.coli B由来水溶性チトクロムb-562(cytb_<562>)と様々な酸化還元酵素において、cytb_<562>が酵素の活性中心と電極間の電子伝達を仲介させる酵素電極反応インターフェイス分子として機能し、センサーの応答を向上させることを目的とした。その結果、cytb_<562>が様々な酸化還元酵素(Lactate oxidase、Cholesterol oxidase、Fructosyl-amino Acid oxidase)を用いる酵素電極反応のインターフェイス分子としてきわめて有用であることが明らかとなり、その汎用性が示せた。次に、cytb_<562>の酵素電極反応インターフェイス分子としての機能を改良することを目的にcytb_<562>への変異導入を行った。特に、PQQGDH-cytb_<562>間への相互作用の導入し、自然界において酸化還元パートナーではないこの2種の分子の間で効率的に電子授受がおこなえるように酵素電極反応インターフェイス分子を設計した。その結果、改良されたインターフェイス分子にはその電気化学的特性を損ねることなく、新たな相互作用の導入が達成され、PQQGDHとともに酵素電極反応を行ったところ、その応答が大幅に改善された。最後に、酵素電極反応インターフェイス分子を用いる新しいバイオプロセスを提唱するために、大腸菌細胞内に酸化還元酵素と酵素電極反応インターフェイス分子の両分子を高発現させることにより、電極応答が行える微生物を構築し、新しい生物電気化学プロセスの可能性を示した。その結果、cytb_<562>はin vivoにおいても、インターフェイス分子として機能することが見出され、組み換え大腸菌を用いて直接電子移動が観察された。このように本研究にて開発されたインターフェイス分子はバイオセンサーへの応用だけでなく、バイオプロセスにも極めて有用な技術であることが示された。
著者
田川 泰敬 梶原 浩一 佐藤 栄児 梶原 浩一 佐藤 栄児 P. STOTEN David
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

振動試験装置に大型の試験体(構造物)を載せ耐震実験などを行う場合、振動台は搭載構造物から大きな力を受け、振動台の動きは目標のそれとは大きく異なったものとなる。これにより、多大な費用をかけた実験において有効なデータが得られない問題がある。そこで、本研究では、実際の大型振動台の挙動を精度よく模擬できる振動台を作成し、我々がこれまで提案してきた種々のモデル化および制御手法を、この装置に適用することにより、大型振動台を用いた実システムの有効な加振実験手法の確立のための基礎を固めることに成功した。
著者
小野 直達 梅木 利巳
出版者
東京農工大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

平成元年及び2年度にて、大規模養蚕複合経営の存在形態を広く把握し、かつ両年度での実態調査を通じて当該経営の経営方式を一般化することを試みた。そのため、調査対象地として東日本地域から四県、西日本から二県を選択し、前述の課題に接近した。1、はじめに大規模養蚕と称しうる経営、なかでも収菌量3トン以上農家は昭和63年 127戸、平成元年 126戸であった。なお、元年度の経営方式を把握することは資料の制約上できなかった。いま昭和63年度での経営方式に関連させた場合、約8割の農家が両年とも3トン以上農家であった。この結果、養蚕大規模といえども他部門との結合が一般的形態であり、特に水稲部門との結合が高い割合を示しており、ついで野菜、畜産などであった。2、さて両年度における調査のうち、福島県安達町は県内でも主要な養蚕地帯を構成しており、経営方式では水稲部門との結合が高く、ついで野菜、畜産、菌茸であった。郡馬県前橋市芳賀地区の場合、多様な結合の展開がみられ、養蚕プラス畜産、野菜、更に水稲などであった。同県吉岡村明治地区は養蚕プラス野菜の結びつき、千葉県八街町は野菜および落花生との結合、西日本地域における鹿児島県姶良地域では生産牛および菌茸、愛媛県大洲市では養蚕プラス野菜、が特徴的であった。つまり各地域における部門結合は、立地条件を強く反映した経営方式の展開であった。要するに、両年度の調査結果から、ひとまず養蚕と水稲をはじめ、野菜、畜産などであった。との四つの経営方式を摘出できた。なお残された課題として当該方式の実現手法の開発に努めたい。
著者
小畑 秀文 小場 弘之 西谷 弘 長谷川 純一 山本 眞司 鳥脇 純一郎 松本 徹
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究では日本人に多い胃がんと肺がんに焦点をあわせ、既に整備済みのマンモグラムデータベースと併せて、主ながん検診用画像のデータベース化の整備を行うことを目的としている。本研究は2年度にわたるが、この間に整備されたデータベースについて以下にその概要を述べる。胃X線二重造影像:本データベースは診断の難易度や病変の種類などのバランスがとれるように選別されたFCR像76枚から成る。このうち65枚が異常陰影を含む。胸部CT像:本データベースでは、肺がん検診に利用されるスライス厚10mmのものと、精密な検査に用いられるより薄いスライス厚のもの2種類を含む。肺がん検診用は症例数70症例であり、25症例が肺癌症例である。精密検査用については、症例数7症例で、いずれも肺癌症例である。胸部単純X線像:本データベースは間接撮影像50症例、直接撮影像50症例から成る。工学サイドの利用者であっても、一般的には撮影法やその読影法の基礎もわからないのが普通である。そのため、アルゴリズムの組立てに助けとなるように、それらに関する解説を用意したり、専門医のスケッチ画や診断所見を各画像ごとに与えるように努めた。
著者
西村 恕彦 乾 伸雄 野瀬 隆 小谷 善行
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は,利用者が自然言語対話を行いつつ,描画を行い,自動的に絵を含む知識を獲得する手法を開発し,創造性や表現力を育成するシステムの開発を目標としている.本年度は,絵を組み合わせ,利用者に提示し,創造性を養うシステムを開発し,実際に実験を行った.本研究では,特に子供が自発的に学習を行っていくようなシステムを目指している.そのため,飽きさせないような工夫が必要となる.そこで,本研究ではロダ-リの手法を採用した.これは,日常的な風景の中に意外なものを挿入することで,子供の創造性を引き出す方法である.絵の構成は自動的に作成することもできるが,子供が選択してもよい.絵の提示は4コマ漫画のような形で行われる.例えば,最初に教室の絵が提示され,次のその中に子供が入り,更に掃除器具が描かれたような絵が提示される.子供は,自分のストーリーを組み立て,コンピュータに言葉として入力する.システムは,絵と文の対応付けを行い,知識として獲得していく.実際に,小学校5年生程度の子供に対して実験を行ったところ,様々な物語を観察することができた.更に,替え歌作りのシステムを作成した.これは,子供が自由に既存の詞を変更していき,できあがったものをならすことができるシステムである.これについても,子供の実験を行ったところ,様々な詞を観察することができ,音としてならすことが創造性をかき立てることを観察することができた.従来はわれわれは自然言語だけを用いた教育システムを開発してきたが,絵や音楽を利用することによって,より豊かな子供の教育システムを提供することができ,その方法論を示すことができたと考えている.
著者
北嶋 克寛 赤木 康宏
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題は、映像(実写映画、アニメ映画、ゲームなど)制作現場において新たな映像編集技術として期待される、実写映像とCG映像のシームレスな合成技術について包括的に研究開発することを目的とする。実写をベースとする映像においてある特定の(気に入らない)樹木の形状と動きをCGに置き換えかつ周辺の様子に合わせて樹木の配色を自動変換する手法、および背景画像に大量に登場する人のリアルな個人顔形状やアニメキャラクタを短時間で生成する手法などを開発した。
著者
寺田 松昭
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、2アドレス方式により移動端末の制御を抜本的に変えた新しいモバイルネットワークを目標に、2アドレス方式による移動端末制御方式の確立、2つのアドレスを用いて移動端末に通信チャネルを設定するための技術、新モバイルネットワークとインターネットとの相互接続技術の開発を進め、以下の成果を得た。1.端末識別のための「ユニークID」とパケットを目的の端末に届けるアドレス「経路制御アドレス」を分けた"アドレス方式"を開発した。モバイルエッジルータ(MER)は新しい移動端末が現れていないかどうかを絶えず監視し、新しい移動端末を発見すると、そのユニークIDを取得し、経路制御アドレスと対にして、位置管理ノード(LMN)に登録するようにした。この方式によって、移動端末の位置とそこへの経路制御を可能にした。アドレスを階層的に付与することによって、高速なルーティングを可能にする方式を開発した。モバイルコアルータ(MCR)用ソフトウェアを試作し、動作を確認した。2.端末位置の発見方法を考案し、実装した。端末の移動に伴うパケット転送ルートの迅速な設定/切替え制御を実現した。モバイルエッジルータ(MER)用ソフトウェアを試作し、動作を確認した。3.複数の新モバイルネットワークをインターネヅトにより接続した実験システムを構築した。モバイル端末を無線LANリンクで接続した状態でアクセスポイントからアクセスポイントへと移動しても通信が滞りなく行えるかを検証した。実験システムを用いて、主に新モバイルネットワーク間での端末移動制御を検証した。4.インターネットと新モバイルネットワークとの通信を可能にするためにプロトコルの変換を行うゲートウェイを開発した。
著者
仲井 まどか 姜 媛瓊
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

バキュロウイルスは、昆虫のみに感染するDNAウイルスであり害虫防除資材として世界中で使用されている。また、タンパク質の発現ベクターとしても利用されている。これまで、約600種のバキュロウイルスが報告されているが、詳細な感染過程や遺伝子の機能が明らかにされているのは、タイプ種を含む一部のウイルス種に限られている。その主な理由は、特に顆粒病ウイルスなどバキュロウイルスの多くの種で感染可能な培養細胞がないため、組換えウイルスが作製できないからである。リバースジェネティクスによる遺伝子機能解析には、特定の遺伝子を破壊した組換えウイルスを用いるが、組換えウイルスの作製には感染可能な培養細胞が必要であり、これまで感染可能な培養細胞のないウイルス種の遺伝子の機能解析はできなかった。そこで本課題は、培養細胞を用いずに組換えバキュロウイルスの構築法を開発することを目的とした。主な成果は、バキュロウイルスのゲノムに大腸菌の複製起点を導入することにより大腸菌内で遺伝子組換えを可能にするバックミドDNAの作製法を確立したことである。
著者
宮崎 隆彦
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、80℃以下の温水を利用して10℃前後の冷水を供給する吸着冷凍機の高性能化を目的とし、新たな吸着冷凍サイクルの提案・実証を行った。シミュレーションによる性能予測から、提案する二段蒸発型吸着冷凍機は従来型の1.5倍の冷凍能力、1.7倍のCOPとなることが予測された。実験機による性能検証の結果、想定した温度・圧力範囲で動作することを確認し、温水温度80℃の条件においてCOPが約1.5倍となることを実証した。
著者
櫛橋 康博
出版者
東京農工大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

(1) 跳躍運動の計測: ヒトの跳躍動作における地面反力,筋電振幅,ならびに,ビデオ画像による跳躍姿勢を同時計測可能なシステムを構築した.本システムを適用し,腕の影響を考慮した上で跳躍実験を行った結果,地面反力は双峰的な振る舞いを示すこと,さらに画像解析と筋電振幅の結果とより,初めのピークが膝の伸展に,2番目のピークが足首の伸展に起因することが確認された.このことは,膝関節伸展動作中の終期において,重心移動速度の垂直方向成分が小さくなり始める頃に,足首関節がトルクを発生し始めることを意味する.(2) シミュレーションプログラムへの実装: 現段階では,ロボット本体の制御は,位置制御を基本として,目標位置を時系列的に与えることによって行っている.(1)で得られた知見をもとに,足首の駆動開始タイミングを遅延させて計算を試みた.その結果,前半は最大時の2〜4割程度の電流値以下に抑えておき,膝関節が最終角度までの中点を通過する近傍で、最終角度を目標角度として足首関節の駆動を開始することによって,双峰性の地面反力波形が得られたとともに,重心の上昇速度が約1割程度増加することが確認された.(3) 実機の改良: 腰,膝,足首角1自由度からなる3関節脚ロボット実機に足首ロール軸を付加して合計4自由度とした.(4) 定格外駆動PWMユニットの開発: 本研究においては,モータの駆動電圧を定格の1.5倍から2倍程度とする.ラッシュ電流が瞬時電機子最大電流を越えないためのリミッタ部とそれらの稼動状態をコンピュータによって非同期に取り込める回路を基本とする専用のPWMドライブユニットを開発し,その有効性を確認するとともに,今後の実機実験の安全性を向上させ,さらに,アクチュエータの長期疲労と短期疲労など昨年度に提案した概念を実験的に検証してゆくことが可能となった.
著者
平田 煕 杉山 民二
出版者
東京農工大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1)りん吸着力の強い黒ボク心土に,CaーP__ーを3濃度段階添加してVA菌根菌共生の有無下でダイズを生育させたところ,感染の抑制される高P__ー施用下であっても,ダイス子実生産とタンパク蓄績を高めることを実証した。2)本学農場の飼料畑(多腐植質黒ボク土)に生息するVA菌根菌の90%以上は,Glomus属およびAcaulospora属であるが,その中の優先種(未同定,黄色壁,Gl etunicatumに酷似、以下gYと略),本圃場には存在の確認されていないGlomus E_3(ヨ-ロッパでは顕著な植物生育促進効果が認められている種)に対するササゲ,キマメ,ラッカセイの生育反応を,γ線殺菌した黒ボク土(Bray IIーP__ー:26.1ppm)を培地として追った。ササゲ,キマメは,gYの共生なしには,その生活史を全うし得ず,子実着生は全くみられなかった。ラッカセイでは,子実着生はみられたものの,稔実は極めて貧弱であった。gE_3は,これらマメ科作物の生育前半には殆んど菌根形成を起さず,終段階でのササゲ,キマメに感染をもたらしたものの,それらの生育へのプラス効果は全くみられなかった。3)りん肥沃度の極めて高い条件下でのgY共生の有無によるダイズ栽培を行なった前年度のサンプルについて,導管出液及び発芽77日目の稔実終期の茎葉部からサイトカイニン画分をメタノ-ル抽出し,高速液体クロマトグラフィによって精製ののち,重水素標識サイトカイニンを内部標準とするガスクロマトグラフィ/マススペトロメトリ-(GC/MS)により,内生サイトカイニンの同定,定量を行なった。その結果,gY共生の有無で,イソペンテニルアデノシン(〔9R〕iP__ー)含量では,導管出液,茎葉部とも差がなかったが,gY共生区のリボシルゼアチン(〔9R〕Z)およびデヒドロゼアチンリボシト(diH〔9R〕Z)のそれは,対照区(非gY共生区)の2倍近い値を得(導管出液20nM/l,茎葉部4〜6pmol/g新鮮重),前年度のバイオアッセイ法による総サイトカイニン定量結果を,物質的に同定,定量することができた。
著者
武田 庄平
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

動物園で飼育されている動物が、動物福祉の達成された生活環境で暮らしている場面を来園者に展示するための施策としての環境エンリッチメントの実施および効果の評価を、動物園の飼育の現場の人間が、特別な訓練を必要とせずかつ日常業務の合間に簡便に行える方法を策定することを目指し、各種の試行実験から注目すべき行動特性について整理し、簡便な実験観察法を策定した。
著者
東城 清秀 渡辺 兼五
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

昨年度の研究結果から、雪室における切花の短期貯蔵は低コストで、生理学的にも安定した貯蔵環境を実現できることがわかった。しかし、一方で貯蔵後の花の開花について、特に赤色の発色に劣化が見られたことから、今年度は低温貯蔵中の切花の品質変化と発色について重点的に実験を行った。雪室の環境条件を低温、高湿度であると単純化した上で、実験室内の低温貯蔵庫を高湿度に維持できるように改造し、雪室の条件に擬して実験を行った。実験は雪室低温区(温度1℃、湿度100%)、一般低温区(温度5℃、湿度88%)、対照区(室温)の3実験区を設け、コーテローゼ(赤)、パレオ(オレンジ)、ティネケ(白)、コールデンエンブレム(黄)の4種のバラを各5本ずつ供試して湿式貯蔵を7日間行った後、室内に取り出しその後の様子を観察した。切花の品質として糖質を測定することとし、花弁のグルコース、フルクトース、スクロースの含量を貯蔵前後でガスクロを用いて測定した。花色は色彩色差計で、花もちは開花度で判定した。貯蔵中から貯蔵後にかけて4種の切花に花色の変化がみられた。ローテローゼは雪室区で花のくすみが観察され、出庫後の発色において他の実験区より劣化が見られた。パレオは雪室区と低温区ともに出庫後の花色の対照区のものより赤みを帯びた色であった。ティネケとゴールデンエンブレムでは貯蔵による花色への影響は観察されなかった。また、花弁の糖濃度の変化は雪室区のゴールデンエンブレムでは貯蔵前よりグルコースとフルクトースが増加したが、ティネケは逆にわずかながら減少した。また、ローテローゼとパレオでは糖濃度の変化はほとんど見られなかった。今年度はカビの発生についての調査も平行して進めたが、これについては今後も継続して調査し、発生防止対策を検討する必要がある。
著者
酒井 憲司 浅田 真一
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

1.温州みかん48個体データに関して実施した1998年〜2005年の収量アンサンブルデータを取得する。これに対して、RSMを用いた大域的モデリングを行い,さらに決定論的非線形予測の意味での1年先収量予測をいった.高精度の予測に成功し,ダイナミクスが有効に再構成されていることが確認された.2.また,データ集合の分布についても予測を行い,おおよその豊凶の予測が集団レベルでも可能であることが示されたが,大域的モデルでは精度向上が限界のようであり,局所モデルの必要性が認められた.3.上記で開発した手法をハイパースペクトルおよびマルチスペクトル画像に適用するためのアルゴリズムを開発した。ニューラルネットワークスを用いた,局所ダイナミクスの同定である.カリフォルニア大学から提供されたピスタチオ収量データについて適用し,有効性を検討した.4.代表的なカオス制御の手法であるOGY法を用いて,同定されたダイナミクスに適用した.良好に不安定平衡点を安定化することに成功した.5.研究成果発表のためのワークショップを,「カオス・複雑系の生態情報学」国際ワークショップと共催した。研究成果報告書を刊行した。6.研究協力者1)浅田真一:神奈川県農業技術センター・主任研究員(温州みかん栽培試験と葉内養分検出)2)Nikolay Vitanov:ブルガリア科学アカデミー教授(時空間データの非線形解析)3)Devola Wolfshon:デンマーク王立獣医農科大学准教授(画像解析による花数計測)4)Alan Hastings:カリフォルニア大学デービス校・環境・生態系学科・教授(生態系のカオス解析)