著者
酒井 憲司 星野 義延 神崎 伸夫 笹尾 彰 渋沢 栄 岡本 博史 田村 仁 浅田 真一
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

研究背景:本研究のモチベーションは農林地の時空間変動を引き起こすメカニズムの究明に必要な方法の探索である。即ち、耕地、果樹園、森林の各種属性パラメータの時空間変動が内在的な決定論的ダイナミクス、確率過程、環境外乱の何れによるものか、もしくはそれらの貢献度を定量化したいということである。そこで、本研究では、耕地、果樹園、森林、草地など生物生産の場における時空間変動メカニズムの解明のための技術として、カオス時空間解析手法を開発し,耕地、果樹園、森林における時空間変動データに対して当該解析手法を応用して変動メカニズムの解明を行い、その有用性を実証することを目的とした。農林生態系を対象として工学的なアプローチを実施しようとした場合、(1)データサイズ問題、(2)オブザベーション問題、(3)マニピュレーション問題、の3課題を克服しなくてはならない。データサイズ問題とは、農林生態系の諸現象においては年に1点というようなスケールでしか時系列データが得られない場合も多く、非線形時系列解析などが数千点以上のデータサイズを要求するのに対して極めてデータサイズが小さい。この極めて短い時系列データを如何にして非線形時系列解析の枠組みに適用させるかという問題がデータサイズ問題である。これについては、第1部で扱った。ここでは、データサイズ問題をアンサンブル時系列によるダイナミクスの再構成として課題化した。大域的線形・局所線形ダイナミクスの再構成を試み、1年先の収量予測によって手法の妥当性を示した.第2部ではオブザベーション問題を扱った.特に,航空ハイパースペクトル画像,マルチスペクトル画像を用いて温州みかんおよびコナラの個体レベルでの収量推定の可能性を明らかにした.
著者
久保 成隆 大里 耕司
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本科学研究補助金による4ケ年間の研究を通じて、下記の各項について以下の様な成果が得られている。先ず、(1)user friendlyな非定常流シミュレーションモデルに関しては、陰差分法をベースとしたモデルの開発に成功した。そのモデルをベトナム紅河デルタでの排水解析に適用しその有効性を実証した。同時に非定常流モデルを水文解析のタンクモデルとしても使えることを示した。次いで、(2)広域な低平地における排水解析に関しては、タイ国のチャオプラヤデルタの浮稲地域を研究対象として、水収支計算により、デルタの浮稲地帯の持つ遊水能力を検討した。その結果、雨季における洪水問題と乾季における水不足問題を軽減する遊水地と調整池の設置構想を提案して、それによって二つの問題をある程度解決することが可能であることを示した。(3)感潮河川における堰の建設がもたらす異常潮位の解析に関しては、摩擦項の非線形性を考慮した理論解析に成功した。その結果、堰の河口からの位置によって異常潮位の振幅を予測する近似的な理論式を提案することができた。(4)水位観測による用水路の流量推定に関しては、村高用水での現地観測と実験室における模型実験によってその可能性を検討した。その結果、水位観測データによる非定常流解析が、流量を推定する上で非常に有効であることが実証された。しかし、同時に、模型実験においては縮尺比率が大きい場合、摩擦項の取り扱いに関して疑問点が指摘され、それに関しては今後の課題となった。(5)用水路系では水理操作は定常から次の定常を目指して行われるわけであるが、それの遷移過程に関しては、その理論解析に成功した。その結果、水路の長短は支配方程式の無次元化によって分類でき、短い水路での定常への遷移過程は波の往復によって、一方、長い水路で定常への遷移過程は拡散現象によって実現されることが判明した。
著者
渡邉 敏行
出版者
東京農工大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

二次の非線形光学材料を用いて効率よく第二高調波を発生させるためには位相整合条件を満たさなければならない。位相整合法にはバルクによるものと導波路を利用したものがある。非線形光学高分子はこれまで導波路を用いた位相整合法のみが研究されてきた。高分子は延伸、ポーリングにより屈折率を変化させることが可能である。その屈折率を制御することができれば任意の波長において非臨界位相整合をとることができる。本研究の目的は非線形光学高分子の各誘電主軸の屈折率制御とその屈折率制御を利用したバルク位相整合SHGの実証である。本実験で用いたポリウレアは縮重合により合成した。このポリウレアは主鎖にベンゼン環が入っており、分子鎖方向の分極率が最も大きくなると考えられる。キャスト法により作製した膜を異なる倍率で延伸した後、172℃(Tg=175℃)、8KVでコロナポーリングを行った。m-ライン法により各延伸倍率の屈折率の測定を行い、メーカ・フリンジ法により波長(1064nm)の非線形光学定数を求めた。1.7倍延伸ポーリングした膜の非線形光学定数はd_<11>=1.4、d_<13>=0.6、d_<12>=0.2pm/Vとなった。d_<13>≠d_<12>となるのは延伸、ポーリングすることにより点群mm2の対称性を持つようになるからだと考えられる。この高分子の二次の非線形特性は尿素基に由来するものである。尿素の非線形光学感受率はβ_<xzz>>β_<xyy>≒0となっており、延伸とポーリングにより膜のd_<13>に対してβ_<xzz>が有効に作用するようになりd_<13>>d_<12>になると考えられる。1.7倍延伸した試料の位相整合特性を調べた所、θ=90、φ=49.2において高分子材料では初めてバルク状態で位相整合が達成されていることが確認できた。
著者
生原 喜久雄 戸田 浩人 石橋 整司 喜多山 繁 WU Jiling HUANG Baolong 呉 季陵 黄 宝龍
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

中国にはおよそ63百万haの過湿地がある。その面積は世界の3番目で、その一部は森林育成がなされている。中国における過湿地での健全な森林を育成するため、江蘇省での地下水位別の池杉およびポプラのバイオマス、養分量、土壌の理化学的性質、根の生理生態、土壌微生物バイオマス等を調査し、過湿地造林地の生態的特性を明らかにした。池杉及びポプラの成長は地下水によって大きく異なり、池杉人工林の場合、高水位の強行直径は低水位の56%、樹高は69%、幹材積haは22%であった。同様の傾向がポプラにも見られた。年間リターフォール量と樹体増加量を合計して、地上部の年間養分吸収量を求めた。池杉の窒素の吸収量はポプラよりも多かった。カリウムを除いて地上部の養分吸収量の9割程度はリターフォールとして土壌へ還元された。深さ50cmまでの土壌の三相組成では、池杉では気相率は15%以下と低くかった。交換性に対する水溶性塩基の割合は、K、Ca、Mgではほとんど1%以下なのに対して、Naは50%以上であった。池杉の根は2ヶ月ぐらいの浸水であれば、浸水しない細根よりも高かった。しかし、浸水期間が3ヶ月以上になると、根の活性は低下した。高、中、低水位の気根数は14、6、4個/本であった。高水位の気根の形態や分布は中水位および低水位と比べて、大きく異なっていた。過湿地の微生物バイオマス炭素、窒素は日本の森林土壌の1/3と少なかった。雨季に測定した池杉の高水位のメタンのフラックスは9〜60mg/m^2・hと大きかった。一方、地下水位が表層土壌以下になると、メタンのフラックスは著しく減少した。
著者
若林 敬子 聶 海松 馮 文猛 左 学金 周 海旺 周 大鳴 麻 国慶 李 強
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は中国人口問題についての社会学的実証調査研究であり、特に国策として位置づけられている"人口と環境"問題について、今回は、高齢化・社会保障・出生性比の視点から多角的なアプローチを行ってきた。都市(上海市、北京市)、農村(湖南、海南、内モンゴル)の5地区で本格的社会学的サンプリング調査、量的・質的調査をこれまでに行い、その問題点を総合的にあぶりだすことに成功した。また、その理論的・実証的な比較と総括をまとめあげ、中国の人口問題の社会学的研究の最新結果の公表・刊行した。
著者
覧具 博義 合田 正毅 新田 英雄 三沢 和彦 箕田 弘喜 平島 由美子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

初中等から大学にわたる20名ほどの教員からなる研究グループで,「物理教育の研究」についての調査と検討を進めた。調査研究を進める上での主要なリファレンスとしてE. F. Redishの著書"Physics Education with the Physics Suite"を選択した。特に注目したのは,認知科学などの急速に発展している関連領域の成果も取り入れながら,「物理教育」を科学的な研究の対象としてとらえるそのアプローチで,教育の改善や改革の方向をカンや信念からではなく,科学的な裏付けをもとに導き出すものである。この「物理教育の研究」は初中等から大学にわたる様々な段階の物理教育に関わる教員達が交流し議論する上で共通の視点と言語を提供し,この研究課題が目的とした教員連携の形成に非常に有効であった。特に,active-learningや,学習者自身の活動をうながす実習教材,CADAA(computer-assisted data acquisition and analysis)などの日本の教育現場への導入について検討し,その有効性を,複数の高校および小学校の授業場面で試行により検証した。小学校から大学にわたる広いスペクトルにわたる教員がこれらの試行を見学しその内容について討議に参加した。さらに,京都・和歌山地域で物理教育研究を続けているアドバンシング物理研究会メンバーや,認知心理学をベースにした教育学の研究を推進している東京大学大学院の市川伸一教授を講演会(2007年12月に開催)に招聘して交流した。現実の教育現場での状況は多様な側面を持っており,著作や講演による紹介だけではうかがいきれないところが多々ある。そこで,研究グループの中から2名が2007年10月に米国出張を行い,メリーランド大学のRedish教授およびディケンソン・カレッジのLaws教授を訪問して,物理教育の世界的な指導者である彼らが開発し実施している物理授業を複数日にわたって実地に見学し、その調査結果を2008年春物理学会春季講演会等で発表した。
著者
長澤 和夫 山下 まり
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

電位依存型NaChには9つのサブタイプが存在し、これらは各々が、痛覚、心拍、筋肉伸縮等の重要な生命活動と密接に関係している。本研究では電位依存型NaChの阻害剤である貝毒サキシトキシン(STX)類縁化合物を、NaChサブタイプ選択的なリガンドとして開発するための基盤構築を目的とした。その結果、STX類の一般的な合成法の開発に成功し、種々のSTX類縁体の合成に成功した。また合成研究過程で新規STX骨格(FD-STX)を見いだし、これをもとにFD-STX, FD-doSTX, FD-dcSTXの合成に成功した。得られた化合物のNaCh阻害活性について評価した結果、今回合成した誘導体類はいずれも天然のSTXに比べ1/10~1/100倍阻害活性が低下した。一方、サブタイプ選択性では、FD-dcSTXが、テトロドトキシン-抵抗型のNa_V1. 5に対して、非可逆的に結合することを見いだした。
著者
澁澤 栄 ROY Swapan Kumar
出版者
東京農工大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,試作中のリアルタイム土中光センサーを用いて複数ほ場における土壌分光反射スペクトルを収集し,地力推定アルゴリズムと精密な土壌マップの作成,及び作物生育・収量マップと合わせて,投入量削減・品質向上のための土壌管理モデルを提案することにある。平成15年度には,すでに収集してあるマレーシアの大規模水田における土壌マップデータと収量マップデータを用いてマネジメントユニットマップを作成し,土壌窒素マップによる収量マップ推定アルゴリズムと少数収量データより水田全体の収量マップ推定アルゴリズムを用い,新たに土壌管理に関する短期的処方箋(可変施肥)と長期的処方箋(土壌改良)を区別して提案した。カリ分布と連動したコクリーギングによる収量分布推定を行い,推定精度の若干の向上が得られた。これらの成果は,精密農法ヨーロッパ会議等で発表したほか,農業機械学会誌へ論文として投稿中である。ArcViewを基本にしたGISシステムを用意し,データベース蓄積を開始した。特に,東京農工大学付属農場の長期栽培実験畑地(クロボク土)において,リアルタイム土中光センサーで収集した土中カラー画像による画像マップデータにつき,画像テキスチャ解析を行い,化学肥料のみで管理した土壌と牛糞堆肥を用いた土壌の評価分類が可能なこと,さらには土壌有機物含量や水分分布の推定が可能なことを確認した。さらにこれらの傾向が地表面勾配と相関の高いことを見いだし,水分移動や作業管理の長期にわたる影響を受けている可能性が示唆された。以上の成果は,農業機械学会関東支部において発表したほか,学術論文として投稿準備中である。
著者
百鬼 史訓
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度研究課題:剣道具(突き垂・顎垂)の形状および構造の安全規格値作成のための基礎的実験研究1.目的:前年度の突きの衝撃力の測定実験結果を踏まえて、面部の突き垂および顎垂の材質や形状さらには相互の位置関係などによる緩衝性能の相違を明らかにし、より安全性の高い剣道具の開発を行うと同時に安全性の観点からの規格値を作成する基礎的資料を収集したものである。2.方法:自製の突き力測定装置(キスラー社製3分力ロードワツシャー形式9067を使用)を使用し、突き力発生試験機を改良し、前年度成果より成人剣道選手の平均的水平分力(150kgf)と同じ条件で突き力を発生させ、一般的に普及されている合計9種類の面材料を対象とし、その材料や突き垂と顎垂の間隔、突き垂形状、突き垂の突く位置などの相違による緩衝性能について実験的に検討を行った。3.結果:(1)突き垂と喉までの間隔が突きの緩衝性能を高めていることが明らかになった。(2)突き垂の部位の突く位置により緩衝性能は異なり、中央より下部での緩衝性能はかなり劣ることが明らかとなった。(3)突き垂の厚みと硬さが突きの緩衝性を高めていることが明らかとなった。但し、突き垂の表面形状が丸みを帯びている場合には、滑って顎垂もしくは喉元に力が直接的に作用することが明らかとなった。(4)突き垂・顎垂の形状及び芯材の種類やその構成、さらには突き垂と顎垂れの位置関係が緩衝性能に及ぼす影響については今後詳細な検討を行う必要がある。
著者
鵜飼 正敏 横谷 明徳 藤井 健太郎 斉藤 祐児 福田 義博 島田 紘行 住谷 亮介 安廣 哲 深尾 太志 南 寛威
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

DNAの放射線損傷と損傷を回避するための細胞系の自発的修復とを熱力学的緩和過程の観点から統一的に研究するための分光法の開拓を目的として、既存の液体分子線・シンクロトロン放射光電子分光法を発展させるとともに、新規に、光励起とは相補的な高速電子線エネルギー損失分光システムを開発した。また、光励起と電子エネルギー損失に後続して誘起される分子の非定常状態とその反応を時間発展的に観測するための分光学的研究法を開発した。
著者
久保 隆文 荻田 信二郎 笹本 浜子 川合 伸也 荻田 信仁郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、(1)アカマツ(Pinus densiflora)の不定胚形成細胞(ECs)誘導および不定胚形成、(2)スギ(Cryptomeria japonica)の不定胚形成とその制御要因、(3)プロトプラスト化、細胞融合による体細胞雑種作出と植物体再生系、(4)FLORICAULA/LEAFY遺伝子と相同性を持つスギ由来のCjNdly遺伝子の単離と解析、について検討し、多くの成果を得ることができた。(1)未成熟胚から誘導されたアカマツのECsの継代には、1250mg/l濃度のL-glutamine及び1000mg/lのPVPを添加したmDCR培地が、不定胚の形成には30μMのABA、6%のマルトース、及び10%のPEG8000を添加したmDCR培地が効果的であった。(2)カラマツ、エゾマツ、スギ培養細胞の組織形態観察と内生アミノ酸のHPLC定量により、各培養細胞特異性が分かった。この結果を受けて外生アミノ酸を適宜改変することにより、難培養スギにおいて不定胚からの植物体再生系が確立できた。すなわち、内生アミノ酸量をモニターすることで細胞の分化特性解析・評価および、高分化性細胞の早期選抜ができると結論した。(3)微小培養シャーレを用いたプロトプラストアッセイ手法によってカラマツ、スギのプロトプラストの単離・最適培養条件が早期に検索できた。また、プロトプラスト中の微量内生植物ホルモン量を定量することによって培養条件検索の効率化が可能になった。さらに、針葉樹プロトプラストの融合可能、カロース特殊繊維の形成条件を明らかになった。(4)花芽分化に関与する転写因子をコードする遺伝子族FLORICAULA/LEAFY familyと相同性を有するスギ(Cryptomeria japonica D, Don)の遺伝子CjNdlyの単離と解析を行い、CjNdlyは被子植物においてFLORICAULA/LEAFY familyが花芽分化に重要な役割を果たすのと同様な機能を裸子植物であるスギにおいても果たしていると推察した。
著者
谷脇 徹
出版者
東京農工大学
雑誌
フィールドサイエンス (ISSN:13473948)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-15, 2006-03-31

アカマツ丸太におけるクロタマムシ(以下クロタマ)および穿孔虫類4種の直径階別および樹皮厚別の脱出孔分布を調査した。脱出孔密度はマツノマダラカミキリ(以下マダラ)では細くて樹皮の薄い部分,ムナクポカミキリ(以下ムナクボ)およびオオゾウムシでは太くて樹皮の厚い部分,クロタマではこれらの中間的な部分で高かった。ウバタマムシの脱出孔密度が高かったのは,太くて中間的な樹皮厚の部分であった。丸太単木ごとにみるとクロタマとムナクボの脱出孔はほとんど混在しなかった。一方,クロタマとマダラの脱出孔には混在が認められ,幼虫期における生息域の重なりが推察された。タロタマの脱出孔分布は,基本的には親成虫の産卵様式に依存すると考えられるが,マダラとの脱出孔の最大混在密度が直線回帰されたことから,種間関係によってクロタマ本来の脱出孔の分布型が変化した可能性がある。
著者
森島 圭祐 古川 勇二 吉田 真
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

燃料電池の燃料として,バイオマスから生産されるバイオ燃料や,生物の生体触媒機能によって生産されるエネルギーを利用することで,化石燃料に依存しない発電が可能となる.このような,生体エネルギー変換機能に依存したバイオ燃料電池は,地球環境に対する適合性が高く,研究開発が盛んに行われている.本研究では,光合成細菌であるシアノバクテリアを燃料とし,その代謝反応において生産される還元物質を,導電性高分子であるポリアニリンによって細胞内から直接抽出ることで発電する,直接光合成型バイオフューエルセル(Direct Photosynthetic Bacteria Fuel Cell:DPBFC)を開発してきた.しかし,シアノバクテリア自体の還元物質生産能力が低いため,電池出力は5.3μW/cm2と低く,細胞内から還元物質が抽出されるため,細菌活性も著しく低下し,電池寿命は約2時間と短い.そこで,有機酸を炭素源として代謝を行い,遺伝子操作によって還元物質生産能力を制御することができる紅色光合成細菌Rhodopseudomonas palustrisを新たな燃料として選定し,遺伝子操作による還元物質生産能力の向上によって,DPBFCの出力向上を図った.その結果,遺伝子操作によって,細胞内での還元物質生産能力を向上させた電子蓄積型R.palustrisを使用した際、出力を向上させることができた.また,有機酸を炭素源としていることから,その供給による細菌活性の維持によってDPBFCの長寿命化を図った.有機酸の供給方法には,蒸発現象と吸水性ポリマーの吸水力による流体駆動方法を提案し,外部ポンプを用いることなく,最大流量32nl/minを得ることが出来た.この供給方法を用いた培地還流型DPBFCを試作し,電子蓄積型R.palustisを燃料として使用した結果,12時間以上の発電を確認することが出来た.さらに,試作した薄型DPBFCは、従来型の3分の1程度に厚みを減少させることに成功し,その出力が57μWと従来 のフレキシブルDPBFCとほぼ同等であることを確認した.
著者
朝岡 幸彦 南里 悦史 降旗 信一 小川 潔 能條 歩 石崎 一記 福井 智紀
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本プロジェクトに関連してすでに活動を開始している「自然体験学習実践研究会」に自然保護教育や自然体験キャンプなどで取り組まれてきた手法を積極的に位置づけ、その評価を通して自然体験学習に関わる指導者養成のあり方を体系的に提起することを目標とした。指導者養成のためのカリキュラム作成及び実践モデルの実施をめざした総合的研究であり、自然体験学習実践研究会を中心に自然体験学習の指導者養成システムに関する幅広い論点の提起と整理がなされた。
著者
澁澤 栄 荻原 勲 千葉 一裕 南石 晃明 小島 寛明
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

土壌情報及び農作業の記録データに基づき,農家の判断プロセスを模倣した農業AIシステムと知農ロボットスキームを提案した。農産物流通プロセスの記録技術を基礎にして,情報付き農産物の新流通スキームとアグロメディカルフーズの生産構想を提案した。本庄PF研究会が生産出荷する「本庄のトキメキ野菜」のブランド化に成功した。生産者と仲買・卸および小売の役割や利害関係の裏付けを入手するのが困難であった。
著者
山田 晃
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、鉄橋等の交通路上の監視領域内の渦状の突風風速場を非侵襲、遠隔的に測定できる音波トモグラフィ計測法の実現に向けた検討を行った。そのために、交通路の両サイドに数mおきの荒い間隔で設置した音波センサ間の送受信伝搬時間データから、領域内に回転対称な渦が一つだけ存在するという仮定のもとに、領域水平断面内の渦の風速ベクトル場を再現するトモグラフィアルゴリズムを考案した。最初に、提案法に基づいたシミュレーション評価試験を行い、種々の前提条件(風速場の2 次元近似、音波の直線経路伝搬モデルなど)の妥当性や、監視可能な渦の風速場の範囲、センサの設置間隔と風速場の再現精度の関係、などの最適構成条件を明らかにした。さらに、監視領域の両サイドに10 対の音波送受信センサを配置した構成の1/250モデルの模擬試験装置(路幅50cm, 路長40cm)を構築した。本装置では多チャンネル経路間の伝搬時間をリアルタイム測定するために、多チャンネルデジタル信号処理ハードウェア回路を実装した。本試験装置を用いて、伝搬時間の取得精度や時空間的に変動する渦の風速場の再現性能を検証した。特に、実際の場合を想定して、監視領域上を通過する渦の風速場の再現試験を行った結果、想定される突風の通過時間内(1[s]~2[s]程度)に渦の風速場を準リアルタイムで精度よく再現できる性能を確認した。
著者
佐藤 健 鈴木 明夫
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、マルチメディアを用いた外国語としての英語教育の効果を最大化することを目的とし、文字、音声両方における英語テキストの意味理解を促進するために開発したアプリケーション(2次元/3次元アニメーションを用いた語彙学習アプリケーションと、解答時間制限機能が付いた語彙学習アプリケーション)が、実際に利用者のリーディングやリスニング活動を通した英語テキスト理解を促進するかについて、研究期間中様々な設定の元で実証的に検証を行ってきた。結果としては、1)イメージを用いた語彙学習アプリケーションは、語彙学習そのものを促進するだけでなく、学習した語彙を含むリーディング、リスニング両方のテキスト理解を促進するが、イメージのマルチメディア化による差異(2次元アニメーションと3次元アニメーション)は見られなかった。また、2)英単語の意味想起の自動化を補助する時間制限機能付き語彙学習アプリケーションは、単語の意味想起の自動化を促進するだけでなく、学習した単語を含むリーディングのテキスト理解も促進することが分かった。これらの研究成果は国内外の学会で発表し、また研究論文として公表することができた。実際の教育利用を想定した上での教材開発と効果検証を行った結果、マルチメディアの言語教育が持つ意義を再度認識させることが出来たという意味で、本研究は成功であったと判断することが出来る。
著者
本郷 智子 山崎 真弓 広田 妙子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

留学生を対象とした日本語教育において、会話を言語行動、非言語行動を含む総合的なコミュニケーション活動と捉えた教育活動実践記録のデータベース化を行った。それにより、各学習者が会話授業で何をどのように学んでいるかを教員間で共有化することが可能となり、教育改善に向けたシステムが構築された。
著者
石井 隆寛 桑原 繁 桑原 誠 内田 武次 熊倉 充
出版者
東京農工大学
雑誌
フィールドサイエンス (ISSN:13473948)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-36, 2002-10-25

東京農工大学農学部付属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センター(FSセンター),FM大谷山(旧大谷山演習林),FM草木(旧草木演習林),FM唐沢山(旧唐沢山演習林),FM秩父(旧埼玉演習林)およびFM多摩丘陵(旧波丘地試験地)において,底生水生昆虫の種類と生息状況が2002年に調査された。その結果,61種の水生昆虫が,合計944頭捕獲され,標本として保管された。
著者
岡野 一郎
出版者
東京農工大学
雑誌
東京農工大学人間と社会 (ISSN:13410946)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.25-39, 2003-08-29

Anonymity, once a notable feature of cyberspace, is now threatened by technology and politics of surveillance. We are now entering the post-anonymity era of cyberspace, where our personal information can be easily exploited by other people or institutions. We always think of interactivity of the Internet as beneficial to us. We must be aware, however, that electronic interactive communication can be sometimes very dangerous because governmental agencies or businesses can easily collect our personal information through such interactivity. Most of our personal information is in a sense not personal. It is shared and supported by friends, families and many other communities around us. We need an equivalent of such layered network in the cyberspace to protect our personal information in the era of post-anonymity.