著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

温暖化防止活動推進員に対する郵送調査によって、推進員は、高学歴者の割合が高く、定年後あるいは定年を目前にした男性と活動的な専業主婦が主力であり、男性では、これまでの経験を活かし社会的に有意義な活動に貢献したいという意欲が高く、女性では婦人会役員などが行政の勧誘によって推進員になっている場合が多いことなど、男女別の相違点が明らかになった。3年間の各都道府県代表の全国大会応募申請書をもとにデータベース化を行い、関係主体間の連携と環境学習を重視し、地域資源を活用したすぐれた実践が多いことが明らかになった。
著者
佐藤 文博
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本期間においては,磁界を介したエネルギー伝送により複合型発熱素子の励磁加温を実現した.最終年度までの検討により,より実用化に近い励磁コイル形状として,平面型スパイラルコイルを用いて実験を行った.平面型スパイラルコイルは,素子の刺入を考えた場合の励磁方向への磁束の指向性の問題と平面型スパイラルコイルによる励磁での圧迫感の軽減や自由度の増加といった利点がある.これを用いて将来の生体応用を想定し,血流の存在するマウスにおいて,実際の腫瘍に対する効果の検証を行っている.動物実験に用いている腫瘍はB-16メラノーマである.このB-16メラノーマは細胞増殖が比較的早いことから選択した.マウスに植え込んだ腫瘍に素子を挿入してハイパーサーミアを行い1週間後の腫瘍のサイズとマウスの様子を確認した.何もしていないコントロールマウスと比べて,熱を加えたマウスは明らかに腫瘍サイズに差が生じた.温熱以外の作用は加えていない為,素子の発熱によって組織温度が上昇し,腫瘍組織を壊死させることが確認できたと考えられる.このように,複合型発熱素子の発熱による熱的効果によって腫瘍の縮退がみられ,ハイパーサーミアの有用性が実証できた.まとめにあたり,簡易自動治療システムの一連のプロトコルを考え,上記治療結果を得た事は大きな成果である.ハイパーサーミアは種々の方法で臨床応用されているが,どの方式が最適かというコンセンサスすら確立されていないのが現状である.そのため医師やがんで苦しむ患者に浸透していないのが現状である.上記成果より簡易的な治療法に一定の指針ができた事で,完全治癒可能なハイパーサーミアが現実に近いものになったと言える.
著者
陳 キュウ
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現状では、膨大なゲノムの配列データがGenBank、EMBL、DDBJなどのデータベースに蓄積されている。しかも、まだ遺伝子データベースのデータ量が指数関数的に増加している。ホモロジー検索は、進化・系統分類の解析、蛋白質の機能解析などを目的とした配列解析の最も基本的な手法の一つとなっている。現在最も頑健なアルゴリズムとして、Smith-Waterman(SW)アルゴリズムがあるが、その計算を行うことは時間的に現実的ではない。遺伝子データベースのデータ量が急速に増えている現状を考えると、さらに実行時間の大幅な増加を意味する。現状では、精度と検索速度が両立できる塩基配列の高速検索法はまだ実現されていない。本研究では、必要最小限のSWアルゴリズムによるアライメント処理と組み合わせたベクトル量子化による高精度かつ高速な塩基配列の検索手法を実現した。
著者
豊国 源知
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

研究最終年度の本年は、昨年度から引き続き南極および北極の観測網で記録された遠地地震波形記録を用いて地球内核中をS波として伝搬するコアフェーズ「PKJKP」の検出を試みたが、検出には至らなかった。本課題のスタート直前には、PKJKPの検出を報告する論文が2編出版されていたが(Cao et al., 2005, Science; Wookey & Helffrich, 2008, Nature)、本年には検出可能性に否定的な研究が報告された(Shearer et al., 2011, GJI)。極域氷床上の地震波形データには、氷や雪の影響で水平動成分に特にノイズが多く、検出はさらに困難なものと考えられる。以上のことから本年は、極域の氷床上での地震波形データに氷床がどの程度影響を与えるかを定量的に評価することに研究の主眼を置いた。厚さが3km一定で、密度・地震波速度も一定の簡単な南極氷床モデルを作成し、ピュアな横ずれ型震源から励起される卓越周期30sのP波・S波の計算を行ったところ、氷床の効果はほとんど見られないことがわかった。地震波の鉛直成分の空間解像度は波長の1/8程度以上であることが知られているが、周期30sではP波・S波の波長がともに氷床の厚さに比べて長すぎるため、氷床の影響は見られなかったものと考えられる。よって30sよりも短い周期で計算を行う必要があるが、現在の計算機環境では30sの計算に約5日要しており、単純に周期を短くすることは実質上不可能であった。そこで本年は、シミュレーションの際にS波のみを励起する震源(トルク型震源)を用い、方程式のP波に関する部分を落とすことと、S波が地球の外核以深を伝搬しない性質を利用して計算領域を縮小することで、S波のみであるが30sより短周期での計算を実現した。卓越周期60s,30s,20s,10sの4つのケースで理論波形計算を行った結果、60sと30sでは氷床の影響がほとんど見られなかったのに対し、20sでは氷床上の観測波形に1.4倍程度の顕著な振幅の増幅が現れた。また10sの場合は1.6倍強のさらに顕著な増幅に加え、氷床内部の多重反射を反映したと考えられる後続波が見られることがわかった。振幅の増幅は、基盤岩の上にやわらかい堆積物が乗っている場合と同様の原理である。今回の計算により、氷床上で観測された30s以下の短周期地震波形では氷床の影響が顕著になることと、影響のオーダーを明らかにすることができた。
著者
杉原 興浩 岡本 尚道 小松 京嗣 戒能 俊邦 白井 宏政 芦高 秀知 江上 力 秋月 隆昌
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

情報通信分野における急速な情報量の増加により、光導波路を用いたモジュール間あるいはボード間の光インターコネクションの研究が活発に展開されている。本研究では、高耐熱性・優れた透明性を備えた樹脂を開発し、それを用いて光導波路デバイスを作製・評価することを目的とする。材料として高いガラス転移温度を有するポリアリレート樹脂を開発し、現行樹脂の欠点を克服し、これまでにない優れた光学特性を有する材料を得る。また該樹脂を光導波路デバイスに応用し、ポリアリレート高分子光導波路作製において、光インターコネクションや宅内・車載LANに応用できる低損失マルチモード光導波路(コア径:30〜100μm)を実現する。従来のポリアリレートは、200℃以上の耐熱性を有していたが、その構造にC-H結合を多く有するため、赤外域での吸収損失が無視できなかった。そこで、C-H結合の一部をC-F結合に置換したフッ素化ポリアリレートを開発し、その材料としての特性を評価した。その結果、ガラス転移温度は基本的なポリアリレートであるU-100と比べて30℃上昇し、耐熱性が向上していることが明らかとなった。また、可視〜赤外の広い領域でU-100と比較して透明性が向上しており、光導波路コア材として適していることも明らかとなった。このフッ素化ポリアリレートを用いて、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング法でコア径90μm及び30μmのマルチモード光導波路を作製した。また、ポリアリレートは、電子線直接描画と熱現像により微細加工できるが、フッ素化ポリアリレートにおいては、微細加工に必要な電子線照射量がU-100の1/20で良いことがわかり、材料の電子線感度が大幅に向上することが新たに発見された。
著者
竹中 興慈 落合 明子 小原 豊志 井川 眞砂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、アメリカ合衆国における「白人性」whiteness意識の構築とその展開過程を社会史的、文化的、思想史的側面から学際的、総合的に検討した。全年度を通じて、毎週1回、2〜3時間程度の研究会を開催した。研究会では、主としてD.Roediger, The Wages of the Whiteness(白人性の代償)をテキストにして、その内容理解とともに、諸問題に関するディスカッションを行った。そのなかで浮上した様々な問題点の解決、および各研究分担者の関連諸テーマを深めるための資料収集、およびアメリカ合衆国の研究者との意見交換のために、平成13年度に竹中興慈がイリノイ州シカゴ、平成14年度に井川眞砂がニューヨーク州エルマイラ、平成15年度に小原豊志がノースカロライナ州チャペルヒルへ出張した。研究補助金による研究の締めくくりとして、『アメリカ社会における「白人性」成立の学際的総合研究』を公刊した。各研究分担者が執筆した内容は、1.竹中が「日本における『白人性』研究の現状と展望」というテーマで、日本における「白人性」研究の持つ問題点と展望を考察した。2.井川は「『ハックルベリー・フィンの冒険』をめぐる人種主義論争-19世紀アメリカの白人作家が描写した黒人像」というテーマで、今日のアメリカ合衆国で展開されている本作品の人種主義論争に関わる黒人描写を検討した。3.小原は「アメリカ合衆国における黒人選挙権問題の19世紀的展開-選挙権における『白さ』の研究-」というテーマで、南北戦争を画期にした選挙権のおける「白さ」の構築・解消・再構築の過程を追究した。4.落合は「人種と記憶-『記憶の場』としての映画『グローリー』-」というテーマで、南北戦争をめぐる記憶の形成と、黒人の排除によって成立した白人性の構築との関係を検討した。
著者
今村 文彦 片田 敏孝 牛山 素行 越村 俊一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

人間は知覚機能などを通じて外的な脅威に関する情報と自分の現在の状況を収集し,その相互関係で危険を認識する.さらに,避難行動の際にも経路の状況を判断して,より安全に避難場所へ移動しようとする.このような知覚機能を重点に置き情報と人間行動の関係を検討することを目的とした.研究の中で,過去の災害データ,ハザードマップ,体験型学習,避難訓練を通じて,住民や行政担当者にどのようにして認知されそれが知識化し,どの位の期間まで記憶化されるのかを調査研究を行った.その中で,2003年5月の宮城県沖の地震では,三陸沿岸各地で震度4〜6弱が観測され津波襲来が直ちに懸念されたが,津波を意識して避難した住民は,全体のわずか1.7%であった.この要因を把握するため,住民の避難行動とその意識的背景を分析した結果,避難の意思決定を避難情報や津波警報に過度に依存する姿勢や,正常化の偏見による危険性の楽観視,過去の津波経験による津波イメージの固定化といった住民意識の問題点が明らかとなった.このような現状を踏まえ災害情報の受取側の課題を解決するために,津波災害を対象に地域および学校での2種類の取り組みを実施した.1つは,住民参加型の津波防災サイン検討会における住民参加型防災対策の実施であり,地域住民のみならず観光客も対象とした津波避難サインの設置を目指した.もう1つは,体験・参加型の学校での学習である.いずれも,課題を解決する内容を含んでいるものの,既存の活動や教育プログラムに取り込む方法や継続的な内容にする工夫が必要であることが分かった.
著者
山本 博章
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は五感と色素細胞機能の連携を探索することを目的としている。今年度は、聴覚や視覚への影響に加え、臭覚と味覚に関しても解析しようと計画していたが、飼育室の空調のせいか、ケージを置くラックの位置によって、給水瓶の残存水量が大きく異なることに気づいた。室内の微気候を整えようと、加湿器の調整また扇風機による送風を試みたが改善されなかった。そこで空調のダクト工事により、風量を下げ、より均一な温湿度を保とうとしたが、それでも十分改善されなかったため(ケージの場所によって、給水瓶残存水量が数倍異る場合があった)、今回も聴覚に関する解析を優先することにした。このような飼育室の微気候改善に試行錯誤しているうちに、聴覚において興味ある現象に気づいた。脊椎動物特異的な神経冠より発生する色素細胞を欠損すると、白毛色となり、内耳に移動する色素細胞も無くなるため聴覚を失うことが知られている。我々が維持するblack-eyed whiteと呼ばれる変異体で、Mitf (Microphthalmia-associated transcription factor)遺伝子座にアリルMitf^<mi-bw>をホモに持つと、やはり全身白毛色で遺伝的な難聴を示すが、これらの集団中に、高い音に反応する個体がある割合で検出できることに気づいた。当該の系統は一時期絶滅の危機に直面し、それまでの遺伝的背景であるC57BL/6J(コンジェニック系統)から、元々の系統であるC3Hに変更してレスキューした経緯がある。前者の遺伝的背景では詳細な解析結果が残されているが、全て難聴を示すことが報告されている。現在飼育中の変異体は4〜5世代C3Hに掛け合わせ、それからクローズドコロニーとして維持を続けてきた。従って、現時点では、C3Hに由来するある遺伝子(群)が、内耳色素細胞が保障する聴覚に何らかの影響を与えていることを発見したのではないかと期待している。
著者
佐藤 可織
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は観測船「みらい」搭載雲レーダ・ライダデータより導出したレーダ反射因子と雲氷量の関係式を用いCloudSat衛星観測データを解析し、得た氷晶雲微物理特性の検証を以下の解析を行い推進した。CloudSat衛星と同期する航空機観測データによる光学的に厚い雲内部の微物理量抽出精度の検証に加え、パラメタリゼーションを用いずに雲微物理量を抽出する事のできるレーダとライダの信号強度を組み合わせた手法により光学的に薄い雲や雲上層部における抽出量の検証を行った。その結果、両手法で得られた氷晶雲粒径の高度-緯度断面には良く似た傾向が見られる事の他、パラメタリゼーションより得た雲氷量の統計値がレーダ/ライダ法で得られるものと比してより光学的に厚い雲の解析結果をより反映しているという特徴がある事がわかった。これらの成果はProceedings of the International Radiation Symposium(IRS2008)に"Sensitivity study for the interpretation of Doppler signal of space-borne 95-GHz cloud radar"という題名で報告した。衛星データに基づいた気象場分類法に従って氷晶雲-放射フィードバック効果をモデルで予測する際に重要であると思われる氷晶雲特性が大気大循環モデル(AGCM)で正しく再現されているかの評価を行った。その結果、観測ではlarge scaleの周囲の場の対流活発・不活発の分類と雲量に非常に良い対応関係があったが、モデルでは気象場と雲量の関係が良く再現されていない事がわかった。また、過去の研究からモデルでは上層雲の雲量が過大評価になっている事が指摘されていたが、常に過大評価であるわけではなく気象場による事がわかった。モデルの氷晶雲微物理特性の再現性に関してはグリッド平均の雲氷量特に11km以上の対流圏上層で対流活動活発時に1桁程度過小評価し、粒径を平均的に20μm程度過大評価する事がわかった。今後、より長期のデータを使用しこれらの成果を発展させ、モデルと観測の不一致のメカニズムを理解する事によりモデルでの雲再現性を改善する事が可能となると期待される。
著者
森本 浩一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

虚構としての表象・表現は,現実としての表象・表現と「区別」される限りにおいて,固有の認知的役割を演じる。従って虚構論は,現実性の本質を扱う存在論と不可分の関係にある。この点については,過去の補助金研究(「文学的虚構の基本性質に関する研究」(2000〜2001年度)課題番号12610568)においても一定の検討を行ったが,これを踏まえつつ,本研究では,虚構の認知的特性とそれが現実認識との関係において持つ役割について考察した。1 虚構の認知的効果。近年,認知科学において,表象内容が真として妥当する範囲(スコープ)を限定する表象機構,いわゆる「メタ表象」の研究が進んでいるが,虚構は,世界に関する直接的な信念形成からの「分離」を特徴とする点で,メタ表象の典型である。虚構は「分離」のもとでの表象の試行・探索を可能にし,それが美的な報酬感を伴うとも考えられる。虚構のメタ表象的メカニズムとその効果について検討した。2 虚構の社会的機能。現実認知を構成する多くの表象は,百科事典的知識や報道・伝聞に基づく公共的表象であり社会的な信念システムであり,個々の表象は多くの場合,確からしさの程度を伴うスコープ付き表象であり,神話的信念や信憑性に乏しい虚構的なものも混入している。解釈を通じた虚構作品の直接的影響を含め,現実認識の構成において虚構や虚構的なものが果たす役割について検討した。3 虚構の現実性。虚構の本来的な「現実性」は,作品の還元的解釈においてではなく,むしろその「部分」消費の過程においてこそあらわになる。詳細は今後の課題であるが,「レイヤー構造」分析の方法論を提示することで,この問題に関する端緒的な検討を行った。
著者
齋藤 智寛
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

伝・顔師古撰『玄言新記明老部』について、その作者問題と『老子』注釈史上の位置づけについて一定の見通しを得た。特に、科段説と章指についての見解から、『明老部』が六朝より唐初の老学史について、貴重な情報を提供する資料であることを確かめた。『明老部』によれば、斉・梁以来、『老子』注釈書は儒仏二教同様に科段を採用したが、該書はそれに反対しつつ、章序の意義を説く章指は温存する、過渡的性格を持つ注釈書である。
著者
佐竹 正夫 大東 一郎 東田 啓作 柳瀬 明彦 斉藤 崇 松八重 一代
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は最終年度であるので、各自の研究成果の公開とこの課題に関心を持っている若手研究者との交流を目的として、以下のような活動を行った。1. 公開シンポジウム平成20年9月16日(東北大学)発表者東田啓作"The Determinants of International Trade in Recyclable Materials and the Effects on Welfare-Theory and Evidence-"斉藤崇「国際資源循環と国内廃棄物処理・リサイクル制度」中谷隼*「使用済ペットボトルの国内リサイクルと日中間リサイクルの比較分析」*東京大学工学研究科助教2. 研究会平成21年2月2日(明治大学)この課題に関心を有している若手研究者*を招いて、特に理論の面での研究会を開催した。*栗田郁真(京都大学大学院生)、赤石秀之(法政大学大学院生)、南部和音(明治大学非常勤講師)、菊地徹(神戸大学准教授)、山重芳子(成城大学准教授)3. 成果発表会平成21年3月13日(東北大学)新熊隆嘉関西大学教授を招いて、公開の研究会を中に入れて、最終の成果報告会を開いた。研究成果は5月に報告書を発刊する予定である。4. 研究会、シンポジウムなどへの参加この課題はまだ結論が出るような問題ではないので、引き続き他の研究機関が開催する研究会などに積極的に参加すると同時に自治体や企業への聴き取りを行った。参加したシンポジウムは次のようなものである。・廃棄物処理等科研費研究班主催「PETボトルのリサイクル効果に関する公開セミナー」・国立環境研究所研究会主催「適正な国際資源循環を構築するための枠組みについて」・廃棄物学会主催「資源確保競争下での国際資源循環のあり方を考える」
著者
小林 俊光 川瀬 哲明 吉田 尚弘 大島 猛史 和田 仁 鈴木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

耳管開放症の疫学研究を行った。とくに慢性腎不全に伴う腎透析患者における耳管開放症の発症の実態を調査した。その結果、腎透析を行った147人中13人(8.8%)が透析後に耳管開放症を発症したことが透析病院での検診結果で判明した(Kawase T, et al.:参考文献)。腎透析と耳管開放症の関係を示した世界で初めての報告である。耳管開放症の画像診断を検討した。その結果、座位で行うCTが有用で臨床応用可能であることを示した。また、バルサルバ法の負荷によって、診断精度が向上することを示し、臨床的な重症度ともよく相関することを示した(Kikuchi T, et al.:参考文献)。耳管開放症・耳管閉鎖障害に影響する因子としての聴力の影響を検討した。その結果、耳管開放症の症状は難聴があると、軽減つることが判明した。例えば、鼓膜穿孔、耳硬化症、真珠腫などのために伝音難聴があると、経耳管的に中耳に伝達され知覚される自声が低く知覚されるために、耳管開放症の症状が軽減する。しかし、一度、手術などの治療によって、聴力が改善すると、知覚される自声が大きくなり、不快な症状が自覚されることとなる。このような病態を潜在性(隠蔽性)耳管開放症と新しく提唱した。中耳真珠腫においても、以上のメカニズムが働いているかどうかを、真珠腫新鮮例171例において検証した。真珠腫の中には約30%の鼻すすり型耳管開放症が含まれているが、鼻すすり(+)群と鼻すすり(-)群の聴力の比較を行ったところ、鼻すすり(+)群が有意に聴力は良好であった。また、術後に鼻すすりを継続した群は鼻すすりを停止した群よりも有意に聴力が良好であった。つまり、鼻すすり癖の停止、継続には、聴力が影響すること、そしてそれは自声強聴を知覚する度合いの違いによるものと解釈された(Hasegawa J, et al.:参考文献)。
著者
堀田 浩充
出版者
東北大学
雑誌
東北大學選鑛製錬研究所彙報 (ISSN:0040876X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.9-14, 1977-09-30

The details of observations of the photoconductive spectra (0.7 to 2.5 μm) for the natural pyrite crystal are described with some supplements to the experimental results of the previous report. Several sub-peaks have been observed at 77 K near the principal peak of 0.9 eV which is attributed to the interband transition. The sign of dE_G/dT is determined to be negative from the temperature-variation of the peak. Photoconductive decay of the natural pyrite crystal has been observed at 77 K with the 2 μs pulsed white light. Three different life times (τ_j) have been derived from the empirical formula, V=Σ V_jexp (-t/τ_j), which applies to the observed decay curve. Their values of τ_j are about 80 μs, 5 ms and 65 ms, respectively.
著者
中澤 高清 青木 周司 菅原 敏 川村 賢二 遠嶋 康徳 パトラ プラビール 森本 真司 青木 周司 花輪 公雄 石戸谷 重之 菅原 敏 森本 真司 町田 敏暢 遠嶋 康徳 マクシュートフ シャミル 佐伯 田鶴 パトラ プラビール 石島 健太郎 豊田 栄
出版者
東北大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2005

大気中のCO_2、CH_4、N_2Oの濃度や同位体比およびO_2濃度を、地上基地や航空機、船舶、大気球を利用して広域にわたって測定し、全球におよぶ時間空間変動の実態を明らかにした。また、全球3次元大気輸送モデルを開発し、観測から得られた結果を解析して、変動の原因を究明すると同時に、近年における温室効果気体の循環を明らかにした。さらに、南極ドームふじ深層氷床コアを分析し、過去70万年にわたる温室効果気体の変動を復元し、その変動を解釈した。
著者
岩崎 俊樹 山崎 剛 余 偉明 大林 茂 松島 大 菅野 洋光 佐々木 華織 石井 昌憲 岩井 宏徳 野田 暁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

ダウンスケール手法に基づくメソスケール予報システムを作成し、農業気象と航空気象へ高度利用法を検討した。予測精度を向上させるためには、物理過程を改良し、初期条件と境界条件を最適化することが重要であることが示された。農業分野では、清川だしの強風といもち病の予測可能性を明らかにした。航空分野では、ドップラーライダーとダウンスケールシステムを組み合わせた、空港気象監視予測システムの可能性を検討した。
著者
嶋 啓節 中島 敏
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

脳の最高位中枢である前頭前野は機能的に異なる複数の領域より成り立っている。実生活において、進行中の複数課題の状況が逐次把握され制御・調節、すなわち最適処理されている。申請者らは、脳機能を複数の機能を持つ複数のマルチシステムと捉えて、このような複数の同時並列処理に関わる新しい脳の動作原理を解明することを目標として研究を進めている。この研究では、現在認知行動課題訓練中のサルを用いて、並列複数課題遂行時VS.単一課題遂行時の前頭前野の細胞活動を比較検討することによって上述した目的を達成しようとしている。具体的には、その役割が殆ど明らかにされてない前頭前野前方部、さらに前頭前野中央部から後方部および内側前頭前野などの複数領域、さらにその領域内の異なる機能にかかわる細胞活動を同時に記録し解析する。現在、細胞活動の記録を前頭前野と運動前野から行っている。その結果、単一課題遂行時と並列複数課題遂行時に前頭前野と運動前野から、極めて興味深い領野特徴的な細胞活動を記録している。すなわち、運動前野では同時並列遂行時に単一課題遂行時では認められない複雑な神経活動が多く認められ、それまで遂行していた動作を反映する変調を強く受けていた。一方、前頭前野の細胞活動は、課題中断時に行っていた動作ではなく、より認知的なアクション(連続動作のカテゴリーあるいはパターン)を反映すると思われる活動が多く認められた。この結果は、前頭葉における運動遂行の階層性を個々の細胞活動で明示するものである。さらなる今後の研究の継続により、アクションに関する前頭前野の神経機構を解明できる。
著者
渡辺 明
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、屈折率が2を超える超高屈折率ポリマーの創製を目指し,主鎖がGe-Ge結合のみからなるハイパーブランチ(分岐)型ゲルマニウムポリマーにおいて,その主鎖構造や側鎖の有機置換基構造の分子設計・合成を行い,そのポリマー構造と屈折率との関係を明らかにする。さらに,そのポリマーの塗布薄膜を前駆体として,レーザー光照射や加熱処理による化学構造変化を用い,無機ゲルマニウム系薄膜への変換により,さらなる高屈折率化を行うことを目的とした研究を行った。ハイパーブランチ(分岐)型ゲルマニウムポリマーの合成は、四塩化ゲルマニウムを出発原料としてMgを用いたGrignard反応と有機臭化物を用いたキャッピング反応によって行った。これによって、種々のアルキルおよびアリール基を有するハイパーブランチ型のGe-Ge骨格を有する有機ゲルマニウムナノクラスター(OrGe)を合成した。OrGeのスピンコート薄膜は、加熱によって300℃付近から有機側鎖の脱離を伴う無機ゲルマニウム化し、さらに500℃での加熱によって結晶性ゲルマニウムへと変換されることが、顕微ラマンスペクトルやXPSスペクトルによって明らかにされた。これによって、屈折率が2.5を超える高屈折率薄膜を形成することができた。また、高屈折率のGe微細パターンを、レーザー直接描画法によって形成することが可能であった。さらに、干渉露光法やナノインプリント法によって、高屈折率微小構造体を形成し、波長フィルターとしての機能を得ることができた。
著者
及川 英俊
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究課題では,「有機-金属ハイブリッドナノ結晶の極微構造を制御した多層化コア-ナノシェル構造体の作製法を確立するとともに,その光学特性を評価し,ナノ界面電子・光相互作用を明らかにする.」ことを主たる研究目的とした.最終年度は,多層化の要素プロセスとして,逆構造であるPDA(ポリジアセチレン)コア-金属シェルの作製法「光触媒還元法」のさらなる拡充とその線形光学特性評価,「共沈法」との併用による多層化ナノ構造体の作製を試みたので報告する.ここで,PDAナノ結晶(結晶サイズ:70nm,150nm)は再沈法により予め作製した.(1)光触媒還元は,可視光を吸収したPDAの励起電子がコア表面周囲に存在する金属イオンを還元・析出させるものと考えられた.このことは,PDAコアのサイズ・形状とは関係なく,還元が進行することから支持される.(2)硝酸銀の代わりに,塩化白金カリウムを用いると非常に精細な白金ナノ粒子をPDAコア表面に析出することができ,白金ナノシェル構造が構築できた.(3)析出する銀ナノ粒子と白金ナノ粒子のサイズ・析出密度の差は,金属イオンの酸化還元電位と対応する金属の仕事関数で定性的に説明された.(4)予め「光触媒還元法」により析出したPDAコア表面の銀ナノ粒子を触媒として,化学還元法を併用し,金ナノ粒子を析出させることに成功した.(5)「光触媒還元法」と「共沈法」を組み合わせることにより,銀コア-PDAシェル(1)-白金シェル(2)という多層化ナノ構造を始めて作製することが可能となった.
著者
吉田 忠
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

(1) 全国各地の図書館において関連文献の調査・収集につとめたが、殊に大谷大学図書館、国立天文台図書館、横浜市立大学図書館などにおいて関係資料を採訪した結果、内通、円煕、介石以後の論者たちの文献を調査・収集することができた。(2) 幕末の神道家賀茂規清が有名な天文学者間重富から聞いた話では、円通は老齢になっても須弥山説の講釈を行っていたという。事実彼が1817年三重県津市一身田専修寺で行った講釈の記録ノートが現存している。そこでは孔子君子の暦法が仏暦と同じだと述べているが、こうした表現は一般大衆の共感を喚ぶにきわめて有効な言い回しであったろう。(3) こうした講義記録は、円通の弟子達、たとえば2大弟子である信暁(1837,1855)、環中(1854,2点)、また円煕のそれが残っている。しかし、どういうわけか、円通の場合も含めて、『立世阿毘曇論日月行品』に対する講義が多くを占めているのは注目してよい。(4) 幕末から明治初年の護法運動は、中国伝道プロテスタント宣教師たちの書物による地球概念と地動説の普及を警戒し、須弥山宇宙論の観点から批判した。佐田介石らの運動も、この一連のコンテクストの中で考える必要があることを明らかにした。(5) 介石らの努力にもかかわらず、須弥山説運動が明治中期に衰退するのは、明治の学校制度の整備による科学知識の普及の結果、これが仏教関係者の間だけの論争に終わったことによることを指摘した。