著者
北村 勝朗 生田 久美子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

スポーツの指導場面で用いられる言葉の中で,動作イメージの形成に有効に作用すると指摘されている比喩的な言語に関しては,それがどのような構造によって成立しているのかに関しては未だ十分に解明されていない,そこで本研究では,修辞的なわざ言語が用いられている指導場面をフィールドとし,修辞的な指導言語が用いられる場面における指導者の伝達意図と選手の認知過程について,インタビューおよび行動再検証によって,動作イメージが形成されていく全体像の分析を行った.初年度の平成14年度は,体操競技,フィギュアスケート競技,および伝統芸能におけるわざ言語の抽出を中心に行い,どのような場面で,どのようなわざ言語が用いられるのかについてのデータ蓄積を進めた.2年目の平成15年度は,体操競技に焦点をしぼり,ビデオ映像を用いたインタビュー(行動再検証)を用いてジュニア体操選手のわざ言語理解とわざ言語によるイメージ形成過程について分析を行った.最終年度の平成16年度は,競技種目をバスケットボールと体操競技に限定し,より詳細なデータ収集・分析を実施した.本研究の主な成果として,下記の点があげられる.「わざ」言語の生起場面では,学習者の動作結果について指導者が提示する婉曲的なフィードバックにより,学習者は自身の持つ動作感覚と運動感覚をもとに,課題とする動作の本質的な理解を手探りで深めつつ,新たな運動図式を組み替えていくという作業を行っている.また,修辞的な言語を用いたいわゆる比喩表現によってスキルに関わるフィードバックを得た選手は,比ゆ表現の中で伝達を意図されている動作の根本原理(例えば,遠心力を利用した姿勢や動作構成のあり方)についてのイメージと大きく関連する感覚を,自身が持つ記憶の中から検索し,再構造化することにより,複雑な動作を1つの動作図式として組みかえるといった作業を行っている.以上のように,修辞的なわざ言語は,選手の動作イメージの活性化につながり,その結果,選手がこつをつかむことに貢献している一連の構造が明らかとなった.
著者
仁平 義明
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1)急速反復書字によるスリップの発生メカニズム特に書字速度を独立要因とした実験結果から、急速反復書字によってスリップが発生する原因は、次のようなものから構成されることが明らかになった:(1)急速な書字では、活性化された書字運動プログラムのうちトリガ-すべき運動記憶の選択機構が障害される。(2)活性化された不適切な運動記憶の抑制機構も急速という条件によって同時に障害される。(3)運動記憶のネットワ-クを通じて不適切な運動記憶に波及した活性化の水準が時間的加重によって高進する。従ってトリガ-されやすくなる。(4)反復は自動的なトリガ-部分だけをくりかえすことになるため、選択機構の機能低下が生じる。2)スリップがあらわれるときの書字時間インタ-バルは短縮される傾向があり、「わりこみトリガリング」によってスリップが生じることが示唆された。3)ネットワ-ク内の活性化の波及・活性化は書字対象の文字とリンクしている単一の文字だけではなく、ネットワ-ク全体に波及することがスリップの出現様式から分かる。ネットワ-ク内の書字運動記憶には、このようにきわめて密接なリンクがある。4)文字の運動記憶は、単純なネットワ-ク構造になっているのではなく、文字のための違った種類の運動記憶からなる重層的なネットワ-クを形成している。
著者
最上 忠雄 山崎 浩道 松山 成男 石井 慶造
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

加速器と言われる装置で発生される粒子線は、放射線と呼ばれるもので、この放射線を知ることは原子などミクロな世界の現象を知ることであり、しかも社会で非常に役に立っていることはあまり知られていません。ミクロな世界の現象の理解を通した大学院生や大学生による子供たちのための理科教育の中でも放射線を題材とした、寸劇「放射線裁判:怪盗Xの巻」を通じて、皆様が最先端の科学技術に興味をもつきっかけとなってくれることを期待している。対象は、宮城県内の小学生・中学生とし、学校訪問による出張公演を行う。一般に、文科系向きの人も理科系向きの人も共に興味を抱くことができる科学技術は少ない。PIXE(ピクシー)法は、加速器と言われる装置を用いて粒子線を発生させ加速して、それを試料に当て、微量の元素を分析する方法で、考古学試料、食品・飲料水、血液、河川水など何でも高感度で分析できる方法であり、しかも、非破壊なので指輪・ネックレスなど貴重な試料の分析も行えるので、文科系向きの人も理科系向きの人も共に興味を抱くことができる科学技術です。この対象は、オープンキャンパスの期間中、東北大学ダイナミトロン加速器(公開実験)を用いて、高校生・一般とするが特に、「中学生コーナー」を設定した。1.出前授業(演劇)平成16年度 「放射線裁判:怪盗Xの巻」実施校 中学校 4校(10クラス) 実施回数 7回 総参加者数 274名平成17年度 「放射線裁判:怪盗Xの巻」実施校 中学校 2校(4クラス) 実施回数 4回 総参加者数 147名2.オープンキャンパス(公開実験)「中学生コーナー」平成17年 7月28日(木) 志津川町立志津川中学校 3年1名 2年6名男子5名 女子2名 合計7名村田町立村田第二中学校 3年4名 2年2名男子4名 女子2名 合計6名
著者
前田 美香
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

脊髄運動神経は、その軸索が脊髄を脱して移動していく一方で、細胞体は脊髄の内に留まり情報を受け取る必要がある。その仕組みを知る目的で、ゼブラフィッシュ胚で運動神経と移動中の神経冠細胞に発現する接着分子Tag1に注目し、研究を行った。Tag1が発現していない場合、神経冠細胞の軸索への異常な配列や細胞死、異常なSchwann細胞の分化が起こり、さらにこのような胚では運動神経細胞体の軸索からの脱落が観察された。魚類の運動神経細胞体の保持には、Tag1を介したSchwann前駆細胞の軸索への配列が重要な役割を果たしており、ニワトリやマウスと同様に神経冠由来細胞が関わっている事がわかった。
著者
隅野 行成
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LHC実験で粒子の性質を精密測定するためのweight function法を提唱した。特徴は、(1)粒子の崩壊先に含まれるレプトンのエネルギー分布だけを用い、hadronizationモデルやジェットに関する不定性などの影響が少ない、(2)理想的には粒子の速度分布に依存しないため、パートン分布関数やinitial-state radiationの不定性の影響が小さい。まずヒッグス粒子の質量決定への応用可能性を示した。現在、トップクォークの質量決定法を開発している。また、高次輻射補正計算のためのアルゴリズムを開発した。これを用いて重いクォーコニウムのスペクトルに対する3次補正計算を完成させた。
著者
白鳥 則郎 菅沼 拓夫 北形 元
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

最終年度である本年度は,下記テーマ(A),(B),(C)については,19,20年度の研究成果をもとにさらに詳細化と実装を進め,完成度を向上させた.また(D)については,20年度の検討をもとに詳細設計と実装を進め,プロトタイプシステムによる評価実験を行った.さらに最終年度のとりまとめとして(E)を実施した.本年度の各テーマの具体的な研究成果は以下の通りである.1.テーマ(A):ネットワーク情報の収集技術の実装とバージョンアップを進めた.また,ネットワーク情報を利用者に分かりやすく可視化して提示する表示支援システムを構築した.2.テーマ(B):NDNの具体的なモデルの構成とアーキテクチャの詳細設計をさらに進めた.3.テーマ(C):(A)の成果を用い,NDNの自律的な制御・管理技術の設計と実装を進めた.4.テーマ(D):(A)-(C)の成果を用いて評価用アプリケーションの詳細設計と実装を行った.また,実際の災害を想定したシミュレーション実験を行った.5.テーマ(E):(A)-(D)の成果を統合し,本提案の総合評価を実施した.本年度は特にテーマ(D)の推進に力を入れた.具体的には,近い将来発生が予想される宮城県沖地震など,実際に発生する災害時のコミュニケーションやネットワーク障害を想定し,NDNの挙動をシミュレーション実験により観測することで,その効果を検証した.以上の成果を,国際会議や国内学会等で発表した.以上より本研究は,ほぼ計画通りの進捗であると言える.
著者
米田 忠弘 加藤 恵一 濱田 幾太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

1つの分子で磁石の性質を示す単分子磁石である、テルビウム・フタロシアニン錯体分子を用いて、単分子の磁石をオン・オフさせることが可能であることを示した。この分子は平面型のフタロシアニン配位子(Pc)2枚が互いに向き合うように重なった構造を示すが、今回、これに電流を流して向かい合う2枚のPcをくるりと回転させるという手法を開発し、2枚のPcの相対角度を制御することで分子磁石をオン・オフさせることに成功した。
著者
石田 章純
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

初期原生代(19億年前)のガンフリント層およびローブ層における地質調査を行い、採取試料の岩石学、鉱物学、地球化学的分析を行った。特に有機物の窒素安定同位体比の測定においては段階燃焼法の導入によってコンタミネーションの可能性を除去した信頼できる値を提示し、かつ有機物中に、含有される窒素の同位体比の異なる炭素構造をもつ有機物の不均質が存在することを示すことができた。その結果、初期原生代の海洋環境と微生物活動について、一般に信じられている"浅部が酸化的で深部が強還元的(硫化水素に富む=euxinic)な海洋"における"化学合成細菌(例えば鉄酸化菌)主体"の環境モデルではなく、"浅部が酸化的で深部が非酸化的だがeuxinicではない海洋"における、"シアノバクテリアが生態系の第一次生産者である"モデルを提唱した。この成果はGeochimica et Cosmochimica Actaに投稿準備中である。段階燃焼法を用いた有機物窒素同位体比の測定法の確立、および初期原生代有機物窒素同位体比の不均質性の発見は革新的な成果であり、その成果は別途Geochemical journal投稿され、受理された(Ishida et al.,2012,in press)。目標の1つであった電子顕微鏡による微小領域観察については有機物の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の初等技術を習得し、初期原生代の有機物中に結晶度の異なるグラファイトが存在する可能性を見出すことができた。さらに、より古い時代の岩石については、30億年前、27億年前、22億年前の堆積層が産出するカナダ・スペリオル湖周辺地域、25億年前、23億年前の堆積層が産出する南アフリカ・タイムボールヒル地域、クルマン地域での地質調査および岩石試料の採取を完了している。これらの地域について岩相記載や薄片観察など基礎的な分析を進めた。
著者
手嶋 泰伸
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究員の研究目的は、現在まで本格的な分析の行われてこなかった戦時期における日本海軍の政治史的動向を、特にその期間内の大部分で海相及び首相を務めた米内光政に着目することで解明し、戦時期の政治史研究の深化に実証的な貢献をなすことである。平成22年度においては、対米開戦の政治過程における海軍の役割と、ポツダム宣言受諾時の政治過程における海軍の役割について分析を行う予定であったため、防衛省防衛研究所図書館・国立国会図書館憲政資料室を中心に、戦前期陸海軍の関係文書を調査した結果、以下2点が明らかになった。(1)対米開戦の政治過程における海軍の役割について第3次近衛文麿内閣において対米戦に消極的であった海軍が、何故東条英機内閣において急速に開戦に傾斜するのかということを、海軍の内部史料を収集・分析した。その結果、この問題における海軍の態度決定要因が「管掌範囲認識」と「執行責任のジレンマ」という2点にあることを明らかにし、それらが東条英機内閣で開催された大本営政府連絡会議により解消することで、海軍が開戦に傾斜するということを明らかにした。それにより、当該時期の意思決定システムが、消極的な海軍の影響を受けて曖昧になっていく過程が抽出された。(2)ポツダム宣言受諾時の政治過程における海軍の役割についてポツダム宣言受諾時の政治過程において、海軍(米内光政)の果たした役割について分析した。その際、米内の行動の基礎となる海軍内部の情勢を詳細に把握するとともに、陸軍内部の状況も同様の調査を行い比較検討することで、米内の行動の背景や要因を考察した。その結果、ポツダム宣言受諾時の混乱は主管大臣を尊重する米内の政治スタンスと、部下統制を非常に重視しつつも楽観する、米内の特殊な職掌認識にあったということが明らかになった。それにより、宮中グループを中心に分析されてきたポツダム宣言受諾時の政治過程の混乱の理解が、海軍の視点から深められた。
著者
小野 哲也
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

放射線による腸死に対し幹細胞移植による治療の可能性を探るためマウスを用いたモデル実験を行うのが目的である。昨年の結果から胎仔期の小腸上皮細胞を用いれば幹細胞移植がより効率的に行える可能性が示唆されたので、本年度はまず小腸上皮細胞をsingle cellとしてより多く回収する方法を検討した。具体的には細胞が緑の蛍光を発するように改変されたEGFPマウスの17.5~18.5日齢胎仔小腸を用い、文献情報から得られたコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パンクレアチン、トリプシン、DNase I、EDTAの単独及びそれらの2つ以上の組み合わせた処理について検討した。また処理方法は0℃×60分、20℃×20分、37℃×20分についてチェックした。指標としてはsingle cell suspensionが得られるか、蛍光蛋白が細胞内によく保持されているか、細胞の収率はよいかの3点で行った。その結果、EDTA存在下でヒアルロニダーゼを37℃×20分処理後トリプシン+DNase Iを20℃×20分を行うのが最適であることが分かった。この時の細胞の回収率は0.3~1×10^5 cells/マウスであった。次にこの細胞を用い10Gy照射したマウスの尾静脈に投与した結果、マウスの生存期間は9~11日であった。これは何も処理しない時の生存期間とほぼ同じであり、生存率への影響はみられなかった。このとき小腸にはかなりの数の移植された蛍光細胞がみられたが、幹細胞から絨毛上皮に向けた直線状の細胞のつながりは見えなかったので、幹細胞をうまく移植できたかどうかは不明である。個体の腸死を回復させるためには今後さらなる検討が必要である。
著者
A Al-Mahboob
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

有機デバイスの根幹物質であるペンタセン(Pn)の、グラファイト(HOPG)およびルチル型二酸化チタン(110)(ルチルTiO_2)上における真空蒸着による薄膜成長を低速電子顕微鏡/電子線回折装置を用いてin-situ観察した。Pn薄膜は、基板や作成条件を制御により、デバイス特性上好ましいとされるstanding-up構造(立配向)を作成可能なことが報告されているが、真空蒸着では成長した薄膜結晶同士のお互いに阻害するために、輸送特性上好ましくないドメイン境界をもった多結晶となる。本課題では、Pn薄膜が速度論的にa軸に比べてb軸が優先的に成長しやすいことに着目し、基板、温度の最適化による解決を試みた。HOPG表面は、Pnの主骨格であるベンゼン環だけから構成される表面であり、Pnとの相互作用が強く働く系である。この表面上への室温における蒸着の結果は、第一層にPnの濡れ層が形成された後、様々な配向をとる多結晶状態となった。また、Pnの吸着、脱着が平衡状態となる90℃においても制御できなかった。一方、Pnと基板の相互作用が弱い系では、濡れ層から立ち配向への自発的な転移が、Pn間の強い配向安定性から起こることが報告されている。ルチル型TiO_2は、無機物であるためにこの系に該当すると予想され、また表面再構成の結果[001]方向に一次元の酸素原子列をもつ凹凸を持つため、種結晶の初期形成を制御が期待される。作成条件の最適化の結果、Pnは表面の原子ステップ上に沿った成長、および濡れ層から1層目から結晶方向の揃った立配向への転移が起こることや、b軸成長が支配的な成長モードであることを確認したが、もともと基板表面上に存在する格子欠陥や局所的なアイランド構造から形成された異なる配向も同時に確認された。この制御のためには、表面が原子レベルで綺麗な幾何構造をもっパターン基板を用いる必要があることがわかった。
著者
保木 邦仁
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

研究代表者がこれまでに研究してきた分子ダイナミクス制御・レーザー制御理論に基づいた, ナノマシンの理論設計・実験結果の解析・機能分子の運動の観測手段の提案を目指して研究を進めた. 特に, 分子モーターの人工合成に必要と思われる基礎理論の構築を目指した研究を行った. また, 第一原理分子動力学法によりモーター分子の運動を評価して回転運動の伝達や散逸の機構を明らかにした.
著者
佐藤 源之 渡邉 学 横田 裕也 ANDREY Klokov ZHAO Weijun 園田 潤 高橋 一徳 MAHFOOZ Abdel-Motaleb Hafez Salem 城戸 隆 園田 潤 ZHAO Weijun
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

強い不均質性媒質中の埋設物検知のためのレーダ信号処理技術について研究を行った。これを利用して人道的地雷除去を目的とした地中レーダ装置ALISを開発し、カンボジアの実地雷原での実証試験において70個以上の地雷検知に成功した。本試験は本研究終了後も継続中である。更に次世代の小型レーダ技術としてバイスタティック型レーダによる埋設物検知を行った。またレーダポーラリメトリ技術をボアホールレーダ、GB-SAR、航空機・衛星搭載SARなどのレーダに対して、特に防災・減災への発展的応用を行った。
著者
平野 勝也
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度は,昨年度の,店舗単位でのイメージ分析の街路単位への拡張を行った.まず特徴的な街並みを含むように,東京を中心に実際の11街路19区間について調査を行い,実際の街並み写真及び地図等の基礎資料収集を行った.街路の景観特性は、店舗のパターン認識の集積であると捉え,店舗のイメージから,街路のイメージを説明する論理的枠組みの整理を行った.即ち,店舗パタンにはイメージの代表値があり,その代表値を昨年度の成果である店舗パタンごとに店舗イメージ平面の重心として算出し,これに基づき,実際の街並みのイメージ指標を,店舗軒数による重み付き平均及び分散を,街並みイメージ計量手法として提案した.これに基づき調査した19区間について,街並みイメージの計量を行った.一方,昨年度の店舗と同様,街並みイメージを,被験者に分類試験,SD法心理実験を行うことを通じて,街並みイメージの実験的把握を行った.その結果と,街並みイメージを計量手法による結果を比較検討を行ったところ,極めて良好に,双方が一致することが確認された.これは即ち,提案した街並みイメージ計量手法の有効性の証左であると考えられる.このことにより,概ね街路単位においても,店舗同様,店外論理記号猥雑さを演出し,店外直感記号がそれを補完している点,店外直感記号及び店内直感記号の多さが親近感を演出している点,論理記号の多さが疎外感を演出していること等が明らかとなった.
著者
乾 健太郎 岡崎 直観 楠見 孝 渡邉 陽太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

(i) Web上の様々な医療・健康情報の間に潜在的に存在する同意、対立、根拠等の隠れた論理的関係を同定する言論間関係認識技術を研究開発した。(ii) (i)の要素技術として、大規模言語データからの知識獲得、述語項構造解析の洗練、仮説推論の高速化と機械学習に関する研究に取り組んだ。(iii) (i)(ii)の技術をソーシャルメディア上の情報に対する信頼性分析に応用し、ソーシャルメディア分析のケーススタディを行った。(iv) ネット調査を行い、批判的思考態度や教育歴がヘルスリテラシーを高め、適切なネット上の医療・健康、食品安全性に関する情報の利活用を促進していることを明らかにした。
著者
占部 城太郎 日野 修次 伴 修平 千葉 聡
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、1)集水域の土地利用と湖沼生態系の二酸化炭素分圧(pCO2)との関係を把握し、2)pCO2変化に伴う種間相互作用や物質転換効率の変質過程を生態化学量論の視点から明らかにすることで、3)地球・地域環境変化に伴う湖沼生物群集の応答予測を行うことを目的としている。この目的のため、前年度に引き続き湖沼調査を実施し、調査結果を強化するとともにGISを用いて集水域を解析し、湖沼pCO2への被覆・土地利用の影響を解析した。主成分分析により各湖沼の集水域の被覆・土地利用特性を数量化し、湖沼の物理・化学・生物パラメータとともに共分散構造分析を行ったところ、集水域に針葉樹林が広がる湖沼では溶存有機態炭素の流入が相対的に多く、これを従属栄養生物が直接・間接的に利用して無機化するためpCO2が増加することがわかった。しかし、集水域に田畑・市街地を多く含む湖沼では、栄養塩流入が相対的に高くなるため一次生産が活発となってCO2を吸収するため、pCO2は大気よりも低くなる。すなわち、湖沼の炭素代謝は栄養塩と溶存有機態炭素の流入バランス(化学量)に強く依存し、それらは集水域の被覆・土地利用を反映していることが示唆された。また、このような湖沼のpCO2変動に対する生物群集への応答を調べる、CO2濃度を操作したマイクロコズム実験を実施した。その結果、pCO2の変化に対する藻類の応答やその藻食プランクトンへの化学量効果は、藻類分類群によって異なることが示された。すなわち、ラン藻類ではpCO2の変化に応答は小さく、藻食プランクトンの餌としての価値も小さいものであったが、緑藻や珪藻類ではpCO2の変化に成長速度や化学量が鋭敏に応答し、藻食プランクトンの餌としての価値はpCO2濃度によって大きく変わることが明らかとなった。湖沼のpCO2の挙動はこれまで殆ど注目されてこなかったが、集水域の土地利用を指標する一方、湖沼の食物網にも強く栄養を及ぼすものであることが、本研究により示唆された。
著者
谷内 一彦 渡邉 建彦 古本 祥三 櫻井 映子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

神経創薬に応用可能な神経イメージング基盤技術の萌芽的開発のために以下の研究を実施した。1)神経変性疾患に蓄積する異常蛋白質であるアミロイドβ、αシタクレイン、プリオンに結合する低分子標識化合物[^<11>C]BF-227を用いてPET分子イメージング法の臨床研究を行なった。アルツハイマー病(Aβ)、プリオン病(プリオン)、多系統萎縮症(Multiple System Atrophy)(αシヌクレイン)、パーキンソン病(αシヌクレイン)において、[^<11>C]BF-227の脳内での結合量が増加することが明らかになった。[^<11>C]BF-227はタウ蛋白には結合しないが、アミロイドAβ、プリオン、αシヌクレインへの結合特性を持っていることが基礎および臨床研究から明らかになり、神経変性疾患の超早期診断や鑑別診断に有用である。またタウ蛋白に結合特性があるTHK523をポジトロン(^<18>F)で標識して基礎研究を行い、インビトロ、インビボにおいてタウ蛋白に特異的結合することを見出した。さらに小動物用PETを用いて評価し、タウトランスジェニックマウスでのタウ蛋白の分子イメージングに成功した。2)ヒト脳内における薬物の脳内移行性について、鎮静性抗ヒスタミン薬を例にPET分子イメージングで研究した。前日の夜に鎮静性抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミン50mgを服用した場合に、12時間後の翌日までヒスタミンH1受容体を50%近く占拠することを明らかにし、翌日残存効果(hangover)のイメージングに初めて成功した。さらに鎮静性抗ヒスタミン薬であるケトチフェン含有点眼薬による鎮静作用の発生予測のために、点眼後に脳内H1受容体占拠率測定を行い、点眼により鎮静性抗ヒスタミン薬は脳内に移行することが明らかになった。PET分子イメージングを用いることにより組織移行性をヒトにおいて調べることが可能である。
著者
仁平 道明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、平安朝物語特に『伊勢物語』と『源氏物語』について、現在諸書がそれによっている藤原定家が校訂を加えて生まれた本文と、定家が校訂を加えていないと考えられる本文とを比較し、定家校訂以前の本文の形と、定家が校訂を加えて本文を形成していく機構を明らかにすることを企図したものであった。特に、古筆切の調査によって、鎌倉時代の伝衣笠家良筆の断簡等の本文が従来知られている諸系統の本文とかなり異なっているなど、『伊勢物語』の本文が多様なものであったことが確認され、定家がその中から選択した一部のものについて、仮名遣い等を改める程度の最小限の本文校訂を加えるにとどめた可能性が考えられることが明らかになった。
著者
林山 泰久
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

環境教育とは,個人が自らの行動の長期的影響を考慮し,理解を深め,合理的な行動を行うように変容することを想定しているものと考えられる.しかしながら,新古典派経済学では合理的な個人を仮定していることから,ここでの個人はそもそも個人の長期的影響を考慮した行動を行っており,環境教育を施すことによって厚生が上昇することも,行動を変容させることもないという論理的な矛盾が生じている.そこで,本研究では,実験経済学および行動経済学において議論されている「自制問題」に着目し,環境問題を現在偏重型選好により生ずる時間不一致性の問題として捉え,その際の環境教育の効果について検討した.