著者
山口 泰雄 武隈 晃 野川 春夫 杉山 重利 大沼 義彦 高橋 伸次
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度は、昨年度の研究成果を整理し、本年度の研究計画を立てた。海外調査は、「北米班」と「オセアニア班」に分かれて、イベント調査と団体調査を実施した。北米調査においては、障害者の国際スポーツ統括団体である「スペシャルオリンピック」の事務局を訪ね、ヒアリング調査と関連資料を収集した。加盟国は150ヶ国に上り、100万人が活動している。また、オーランドで開催されている「全米シニアゲームズ」のフィールドワークを行った。会場は、ディズニーワールドの中のディズニースポーツセンターで、センターに登録されたボランティアが大会のサポートを行っていた。カナダにおいては、厚生省の「ヘルス・カナダ局」を訪ね、フィットネス活動に関するボランティアの概要をヒアリングした。また、フィットネス活動の広報団体である「パーティシパクション」の事務局を訪ね、「トランスカナダ・トレイル2000」事業におけるボランティアの活動概要の資料を収集した。「オセアニア班」は、ニュージーランドの政府機関である「ヒラリーコミッション」を訪ね、ボランティア指導者のキャンペーンやスポーツクラブにおけるボランティアのヒアリング調査と関連資料を収集した。オーストラリアにおいては、政府機関である「オーストラリア・スポーツ委員会」を訪ね、VIPプログラムとボランティアを含めた「アクティブ・オーストラリア」キャンペーンの資料を収集した。2000年2月には、カナダのMcPherson教授を招聘し、研究分担者が集まり、平成11年度における研究成果の研究報告会を行った。同時に、わが国におけるスポーツボランティア活動の定義、分類、および今後の振興方策を議論・整理した。
著者
小椋 たみ子 窪薗 晴夫 板倉 昭二 稲葉 太一 末次 晃
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

第一に言語構造、養育環境(親の働きかけ、メディア環境、家族環境など)、個体要因(物理的世界の認知能力、社会的認知能力、気質、出産時情報など)の言語発達への影響を明らかにした。第二に親の報告から言語発達を測定するマッカーサー乳幼児言語発達質問紙の妥当性が実験と観察データから高いことを明らかにした。第三に言語構造の違い(複数の形態素の有無)が認知へ寄与するかどうか明らかにした。第四に大人の言語との比較を基調に、子供の言語を(i)非対称性、(ii)「幼児語」の音韻構造、(iii)アクセントの獲得、(iv)促音の出現、以上の4つの観点から明らかにした。
著者
日置 智紀
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

年齢が100万年程度、質量が太陽程度の恒星(Tタウリ型星)の周りにはガスやダストで形成されている原始惑星系円盤と呼ばれる構造があり、この円盤内の物質の一部は惑星を形成し、残りの多くは中心星へ降着している。また、質量放出現象としてアウトフローと呼ばれる双極流が円盤の垂直方向に吹き出している。これらの星周構造は、中心星の周りのダスト起源の熱放射を捉える多波長測光観測などの間接的手法によって盛んに研究されてきた。さらに、ハッブル宇宙望遠鏡や補償光学を搭載した地上大型望遠鏡の登場によって、高空間分解能による星周構造の直接撮像が可能になってきたが、その観測対象の多くは単独星である。本研究対象であるFS Tauは離角が約0.2秒角(30 AU)のTタウリ型連星系である。この連星は半径1400AUに広がった反射星雲に覆われているが、これまでの観測では周連星円盤は発見されていない。我々はすばる望遠鏡のCIAOを用いた観測を行い、さらにハッブル宇宙望遠鏡の可視光偏光観測で撮られたアーカイブデータと合わせて、この連星に付随する2つの周連星構造を検出した。1.周連星円盤:この円盤の半径は約4.5秒角(630AU)、軌道傾斜角は30-40°程度である。円盤の外側は、内側よりもフレアしている可能性がある。近赤外域では、この円盤の南東側が明るく、北西側が暗い。これは、周連星円盤内のダストの前方散乱が原因と予想できる。一方で、可視光では北西側が南東側よりも明るいことがわかった。これは、FS Tauから約2800AU離れた若い星(Haro6-5B)からの放射が原因である。我々はFS Tauの北西側の偏光データから、Haro6-5Bからの光とFS Tauからの光が「混合」している証拠を見つけた。2.アーム構造と空洞:近赤外線と可視光の両画像で、空洞を取り囲むように存在するアーム構造が見られた。この構造は、FS Tauから吹くアウトフローによって形成されたか、または周連星円盤内の物質密度むらによるものであろう。
著者
塚本 昌彦 寺田 努 義久 智樹 義久 智樹
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、実世界に多数散らばるユビキタスデバイスをそれらのトポロジを用いてプログラミングする(群コンピューティング)枠組みを構築した。特に、ネットワークのトポロジを用いてうまくコーディングしていくこと(トポロジコーディング)を考えた。まず最初に、格子状のネットワーク上でグローバル通信とローカル通信を組み合わせて全体制御をする枠組みGlocalGridを設計し、デバイス、システムを実装した。さらに、主としてセンシングデータ収集を行うことを想定して、さまざまな効率的なアルゴリズムを検討した。応用分野としてはダンス、演劇、スポーツなどのアート・エンターテインメント分野を考え、システム展開を図った。
著者
寺井 弘文 今堀 義洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では省エネ・低コスト貯蔵の手段として,エタノール蒸気を用いた収穫後ブロッコリーの老化(黄化)抑制効果について,食品成分として重要なアスコルビン酸が関与する抗酸化機構を明らかにした.またエタノールは青果物の異臭や褐変など,ガス障害の原因物質であるため,処理がアルコール発酵に及ぼす影響をブロッコリーの他,バナナ,ピーマンについて検討した.エタノール蒸気処理は"エタノールパッド"(シリカゲルにエタノールを吸着したもの)により,青果物を入れた有孔ポリエチレン袋にパッドを封入することにより行い,アスコルビン酸に関する研究では20℃のもとで,アルコール発酵に関する研究では20から15℃のもとで貯蔵した.アスコルビン酸については,エタノールの蒸気処理により,対照区(無処理)に比較して,その含量の減少が抑制された.過酸化水素含量は,貯蔵期間5日を通じて処理区では無処理区に比較して低かった.また,Superoxide dismutase(SOD),Catalase(CAT),Ascorbate peroxidase(APX)の活性は貯蔵期間を通じて処理区は無処理に比べ高かった.これらのことから,処理によりブロッコリー小花の細胞内では酸化型アスコルビン酸,酸化型グルタチオンを還元型にしてアスコルビン酸-グルタチオンサイクルの働きを保ち,過酸化水素を効果的に消去していることが示唆された.またアルコール発酵に関する研究では用いた3種の青果物のうち,いずれも処理により組織中のアセトアルデヒド(AA)およびエタノール(EtOH)量の一時上昇が認められた.そのうち,ブロッコリーがAAおよびEtOH量とも最も多かった.バナナ果実で緑熟果と追熟処理果を比較した結果,処理によって緑熟果は組織中のAAおよびEtOH量が影響されなかったのに対して,追熟処理果ではいずれも一時増加がみられ,追熟の進展がやや抑制された.さらに,ピーマン果実でアルコール発酵代謝の酵素活性は処理による影響はなかった.
著者
末本 誠 朴木 佳緒留 伊藤 篤 松岡 広路 津田 英二
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

<目的>本研究は、現代GPプログラムとして取り組んだ「アクションリサーチ型ESDの開発と推進」で得た成果(平成)19~21年度)を、日本国内外に普及、交流するための実践・研究的な方法の探求を課題にしている。<成果>(1)今年度は早稲田大学、東京農工大学等、日本国内でESDに取組む主要な大学を尋ね、ESD理解、カリキュラム、地域社会との関わり、ステークホルダーの役割などについての実地調査を行ったことにより、国内の主要な大学でのESDに関する具体的な取り組みの実態が把握された。また、神戸大学での取組みとの異同を議論することにより今後の実践研究的交流の基盤を構築することができた。(2)カナダモントリオール大学、同ケベック大学モントリオール校を尋ね、同上の点についての調査を行ったことにより、同上の成果を得たほか、国際的なESD研究を交流するための関係を構築した。(3)これらの調査活動で収集した資料を、データベース化した。これらは、その存在をweb上で公開し広く活用されるようにする予定である。(5)22年3月にフランスからライフヒストリーの研究者を招いて、ESDの国際シンポジウムを開催した。これにより価値観や生活態度を変えるというESDの課題に応える、具体的な教育方法論を開発する理論的な根拠を深めることができた。(6)神戸大学を会場として開かれた、平成22年9月の日本社会教育学会の研究大会において、「会場校企画」として「持続可能な社会作りと社会教育の再構成」をテーマにしたシンポジウムを開催した。これにより、大学でのESD実践・研究を社会教育の領域で展開する可能性が明らかにすることができた。
著者
菱本 明豊
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現在、日本国内で社会問題となっている自殺行動の生物学的機序を解明し、自殺予防のための治療モデルを開発する為に、我々はストレス反応を主に制御するHPA axis(視床下部-下垂体-副腎皮質系)関連遺伝子に着目し自殺との関連解析を行った。我々はFKBP5遺伝子の特定のハプロタイプと自殺に有意な相関を認め、自殺行動には遺伝的脆弱性が関与していることを明らかにした。さらにALDH2、NOS1遺伝子と自殺、NOS1遺伝子と統合失調症との有意な相関を認めた。これらの知見より自殺行動のバイオマーカーとしていくつかの遺伝子変異が利用できる可能性があることを示した。
著者
福武 将映
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

統合失調症がその病態の基底にもつ生物学的な脆弱性に着目し、その疾患感受性を担う遺伝子変異の同定を試みた。神経発達障害仮説などの従来の仮説に基づいた標的遺伝子の探索に加えて、従来の視点とは異なる手法として大規模な遺伝子発現プロファイリングが可能であるDNA chipを統合失調症死後脳に用い、その結果を基に相関解析を行った。その結果、いくつかの遺伝子多型において統合失調症との相関が見出された。
著者
大津留 厚
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

第一次世界大戦初期のハプスブルク帝国では、一方で総力戦体制に向けて諸政策が取られたが、他方で難民、敵性自国民、捕虜兵など総力戦体制から排除された人々を抱え込むことになった。
著者
釜谷 武志
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

辞賦と楽府は口承性において本来共通していたが、後漢期に入って、辞賦の口承性が希薄化していくにつれて、本来保持していた機能の一部を楽府詩が担うようになったと考えられ、物語詩的な楽府詩は辞賦の変質と関連性があると推測される。また、漢代文学に特徴的に見られる時間の推移についての悲哀の感情は、人間の生きる時間が直線的で後戻りのきかないものであるという意識のほかに、罪の無い人間も禍を背負って生まれてくるという意識が底辺にあったから生じたと考える。
著者
大向 吉景
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

水処理用中空糸膜の製造において、膜の固化速度は製造コストに直結する重要な検討項目である。本研究では、代表的な製膜法である熱誘起相分離(TIPS)法と非溶媒誘起相分離(NIPS)法について、膜の固化速度に影響を及ぼす因子の探索とその制御を試みた。TIPS法では、結晶化温度が固化速度と相関を持つことを明らかにした。同じ高分子/溶液系であっても、非溶媒を添加して相図を変化させることで固化速度の向上が可能であった。NIPS法では、接触式強度測定装置を用いて膜強度の経時変化を実測し、溶液組成の影響を検討した。その結果、溶液粘度はあまり影響を示さず、溶液の親水性が非常に重要な因子であることを明らかにした。
著者
原 拓志
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、高度技術システムにおける安全確保のためのテクノロジーマネジメントのあり方について、理論的研究および経験的研究を実施した。すなわち、一方で、技術社会学および組織論における先行研究の検討から理論的枠組みを導出した。他方で、この理論的枠組みを使って、鉄道および航空サービス・航空管制などにおけるフィールドワークや文献資料に基づいた事例研究を実施した。
著者
澁谷 啓 加藤 正司 鳥居 宣之 河井 克之 川口 貴之 齋藤 雅彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

中越地震や能登半島地震で発生した地盤災害は, 地下水位の高い盛土に集中していた. 一方, 豪雨による盛土崩壊も後を絶たない. 兵庫県で発生した台風による補強土壁の崩壊事例では, 雨水の浸入により盛土本体が弱体化したことに加えて, 盛土背部で水位が急激に上昇し, 補強土壁盛土全体が押し流された. この種の地盤災害軽減のためには, 盛土内および周辺への雨水の浸入を決して許さないことが肝心である. 本論文では, 盛土を囲むようにジオシンセティックス排水材をL型に配置し, 鉛直に設置した排水材で受けた浸透水を盛土底部に水平に設置した排水材に流すことにより盛土外へ速やかに排水させる方法であるジオシンセティックスを用いたL型排水盛土防水工を新たに提案した.
著者
向井 理恵
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

複数のパートナータンパク質と結合して細胞質に存在するアリール炭化水素受容体(以下、受容体はAhR、タンパク質との複合体はAhRcと略す)は、芳香族炭化水素が結合するとパートナータンパク質が解離し核へ移行する。さらに、Arntタンパク質と2量体を形成することで転写因子として働き、細胞内の代謝をかく乱する。本研究では、植物性食品成分がAhR形質転換を抑制することに着目し、その作用メカニズムならびに生体内での有効性について検討した。1、細胞内における、芳香族炭化水素が誘導するAhRシグナル経路に対してフラボノイドがどのような効果を示すか検討した。フラボノイドのサブクラスのうち、フラボン、フラボノールに属する化合物はAhRの核移行を抑制すると共にAhRcの解離を抑制した。一方、フラバノンあるいはカテキンに属する化合物に関しては、これらの抑制効果を示さず、AhRならびにArntのリン酸化を抑制し、両者の2量体形成が抑制された。これらの事から、フラボノイドのサブクラスごとにAhRの転写因子としての働きを抑制する機構が異なることが明らかとなった。2、フラボノイドの効果が動物体内で発揮されるか否か検討した。フラボノイドの一種ケンフェロールをマウスに経口投与した場合にAhRの形質転換が抑制された。フラボノイドはABCトランスポーターを介して細胞外へ排出されることが報告されている。トランスポーターの阻害剤を動物に作用させた場合にフラボノールの効果が高まる結果が得られた。また、培養細胞においても同様の効果が認められ効果の増強にはケンフェロールの取り込み量の増加が伴う事を明らかにした。