著者
田村 秀行 西浦 敬信 木村 朝子 柴田 史久 大島 登志一 柴田 史久
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

視聴覚併用複合現実空間の表現力を向上させる研究開発を推進し,聴覚的には新しい3D音像提示方式の提案・実装を,視覚的には実時間光学的整合技術の体系化を行った.特に「音像プラネタリウム」と名付けた前者は全く独自の新方式であり,当初の計画以上の有望な研究成果を生み出した.このため,本研究を1年短縮して終了し,2012年度から基盤研究(S)としてさらに発展させることになった.
著者
渡辺 和之 橘 健一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、自動車道路の開通した現在でも、ヒマラヤ交易が形を変えて継続していることを、ネパール国内での現地調査によって実証した。特に畜産物に注目し、その生産から消費に至る流通経路を調べることで、交易を支える諸条件を明らかにした。この結果、交易が山地住民の農業・牧畜・森林利用の複合経済を基盤とし、他地域や都市や海外とも関わる交易ネットワークに支えられることが示した。また、とかく一方向的に都市の商品が流通すると見られていた山地経済を見直し、出稼ぎ経済の浸透で過疎化する山地経済を支え、存続する基盤は何か考察した。
著者
村田 裕和
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

萩原恭次郎と岡田龍夫が「印刷術による総合運動」と名づけた詩集『死刑宣告』(1925)について、その生成過程を調査し、それが当時の活版印刷文化の歴史的文脈の中でどのような意味を持っていたのかを考察した。また、シンポジウムを開催して1920年代のプロレタリア芸術の諸相を再検討した。特に、美術・映画・漫画などの視覚芸術を中心に、ジャンルの境界領域において、多様な実験的活動が行われていたことを明らかにした。
著者
松下 冽
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

上記研究課題名のもとに行った研究成果は3つの柱にまとめられる。第1は、研究課題のキー概念である「ローカルな共有型分権化」へのアプローチとして、「ローカルな民主主義と分権化」に関する研究動向の整理と方法あるいは視点について考察したが、この考察は単なる地方分権化のみならず広い意味でナショナルなレベルとローカルなレベルでの「国家一社会」関係の変容・再編を伴う。この認識からの研究成果は、『立命館国際研究』(17巻3号、18巻2号、19巻1号)である。第2の研究成果は、メキシコにおける分権化促進の歴史的・政治的背景の分析、またこの分権化の発展過程と市民社会の登場および社会運動の展開との相互依存についての考察である。この面での成果は、『立命館国際研究』(20巻1号)および『研究成果報告書』の第4章(「メキシコにおける分権化と市民社会の相互発展」)である。なお、社会資本と「権力共有の可能性」という視点から『立命館国際研究』(19巻1号)でも論じた。第3に、ブラジルにおける「ローカルな共有型分権化」研究の成果は、『立命館国際研究』(18巻3号)がある。さらに、本研究を比較政治の視点から深めるために、インドのケーララの民主的ガヴァナンスとブラジルの事例を考察した論文が『長崎平和研究』(21号)である。なお、本研究課題とも共有する問題意識から、近年注目を浴びてきた概念として「パートナーシップ」がある。「国家-開発-市民社会」関係への「パートナーシップ」アプローチを批判的に検討して、この関係を「シナジー型戦略」理論の視点からブラジルの事例を分析した成果には編著書『途上国社会の現在-国家・開発・市民社会-』、とくにその「序論」がある。以上の研究成果は、ローカルな場での地方・州政府と市民社会および多様な市民・社会運動との相互協力がブラジルやメキシコのみならず、多くの発展途上国における発展と民主主義の深化にとって決定的に重要であることを例証している。そこでは、「ローカルな共有型分権化」の現実化の程度と進展、それを保障する多岐にわたる自立的諸運動と制度を分析することが不可欠である。
著者
杉浦 香織
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は日本人英語学習者が効果的に語強勢を習得する有効な方法として, 聴覚性プライミング効果の原理を利用した発音学習(音声刺激語の復唱)が可能かどうか,また,その効果に影響する要因を検討した.その結果, ①復唱が5回以上で効果あり,②刺激語の親密度に関係なく効果あり(BNC頻度上位3000語),③音節への注意は効果的,④刺激語を数回復唱した後の文字情報が効果的,⑤復唱のみでは効果は1週間持続しない,ことがわかった.発音向上(音韻表象の変化)に必要な音韻情報への注意,文字情報を得る時期の重要性,更に学習効果を持続させるため,音韻情報の内在化を促進させる手だての必要性が示唆された.
著者
竹内 隆夫
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

農村の主要な作物である米は、一層の商品化が進展し、農法も直播に変化した。稲作のみでは現金収入が不十分なため、農村工業が展開されている。自動車の普及によるその修理業と中心となる縫製業である。都市の業者の下請けでかつむらでは元請けとなりむら人を孫請けにしている。かれらの縫製技術は、村内で訓練されてきた。賃金は下請けの半額程度だが、量を確保してむらでの一か月の現金支出分くらいを稼いでいる。少子高齢化が一層拡大してきた。少子化は定着し、高齢化が拡大している。老親扶養は伝統的な末娘が中心だが、少子化は受け皿を減少させつつある。制度化された保健ボランティアとの役割の分担は、未成熟である。
著者
松村 勝弘 川越 恭二 井澤 裕司 平田 純一 富田 知嗣 澤邉 紀生 村山 嘉彦 荒川 宜三 豊原 紀彦 荒井 正治 八村 廣三郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

(研究・教育システム)われわれは,立命館大学において.経済・経営・理工の学部横断的な研究・教育システムづくりの一環として,ファイナンス・インスティテュートを設置し,一昨年来その研究教育システムの開発に取り組んできた。これは,現代企業に突きつけられている複雑な課題を文理総合型の新たな仕組みの中で,その解決策を発見できないかと考えたからである。このような取り組みは,学際的な研究教育の仕組み作りを必要とした。(データ・ベース)そこで,ファイナンス分野での研究・教育をすすめるために,現存のマクロ・データ,株価データ,企業財務データなどのデータを総合的に分析するための研究・教育用ソフトウェアを,バックグラウンドを異にする研究者の協力共同のもとで,開発した。と同時に,別途資金により日経クイック社の協力を得て新たなデータ・ダウンロードのためのもう一つの仕組みも完成させ,これも併用している。これらは学生初学者用ウェッブ・ページ版と中級上級用バッチ処理版およびアクセス対応版の三本立てでデータベースへのアクセスをする仕組みを完成させるとともに日経クイック版とあわせ,これらの研究・教育の両面からの利用を進めてきた。それぞれ一長一短がある。今後もこれらの改善すすめる予定である。ここで最大の問題は,環境その他日進月歩でできあがったものがすぐに陳腐化してしまうことである。そこで,科研以外の資金も活用しつつ,かつ日経クイック,大和SBをはじめとする資金力のある外部機関との共同の取り組みでこれに対応しようとしている。(教育プログラム)教育プログラムとしては,2000年度開講の『金融市場分析実習』の内容となるものを共同して研究し,これを教育に活用したが,なお改善の余地があると考え,現在さらに改善しテキストにしようとしている。その第一の内容は,証券アナリスト資格要件の一つとして,財務分析,の学習が課されており,これを含んで,実際のアナリスト業務を行うにあたっての素養としての企業分析の実習を内容とする。第二は,ファイナンシャル・エコノミクスに基づいた金融市場分析を内容とする。これについては,別途大和SBが開発したPoet-SBを活用した教育を進めてきている。これらについても一定その成果を別途冊子にまとめた。(研究プログラム)現在,まずはこれまでの研究を基礎に,前者を内容とするテキスト作りを進めている。これと並行して,日本の金融システムと企業財務戦略に関する研究を深めるという作業を行っている。成果の刊行はすでに終えたものの他,なお継続中のものもあるが,これまでの成果をさしあたり別途冊子にまとめた。
著者
櫻谷 眞理子 大橋 喜美子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、乳幼児を養育中の母親の意識や子育ての実態を把握し、適切な社会的支援のあり方を明らかにすることを目的としている。595人の親へ質問紙を配布したところ、365人から回答が得られた。その結果、親になるまで赤ちゃんの世話をした経験がある人は3割に過ぎず、経験がある人に比べ、経験の無い人の育児不安はより高い傾向がみられた。また、出産前のイメージと現実とのギャップがあったと答えた人は52.5%で、そのうち、76.5%が現実の子育ては思っていたよりも大変だと答えている。なお、イメージと現実とのギャップがあったと答えた人たちの方が育児不安は高い傾向がみられた。養育態度や意識について把握したところ、子どもを感情的に叱ったり、体罰を多用する傾向がみられた。例えば、大きな声で叱るが85.8%、叩いて叱るが55.1%(複数回答)という結果であった。子どもに苛立つことがあるという回答は68.4%、自分は育児に向いていないと感じることがあるという回答は53.4%であった。また、子育てに疲れるという回答は82.3%、時間的なゆとりがほしいという回答は91.9%であった。母親たちの自由時間はほとんど無く、専業の母でも平均2時間で、有職の母の平均1時間とあまり差がなかった。夫の家事・育児参加に満足している妻は、3人に1人に過ぎなかった。さらに、近隣からのサポートも受けられず、孤独な育児を強いられている実態が浮き彫りになった。なお、母親が育児に専念すべきと考えている人は、3.8%に過ぎず、28.7%の母親は保育所を利用したいと希望しており、48.7%は時々保育を受けたいと希望していることがわかった。これらのことから、親の不安や負担感の軽減を図るためには、必要なときにはいつでも利用できる保育システムを整え、養育技術を学習する機会等を保障することが不可欠になってきているといえよう。
著者
北 泰行 土肥 寿文 藤岡 弘道
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

希少金属の使用減に役立つ環境調和型新反応や反応剤を開発し、持続可能な手法として有用物質の合成へと応用した。さらに超原子価ヨウ素反応剤を用いるメタル触媒フリー酸化的カップリング反応を、申請者らが培ったヨウ素や硫黄、さらに酸素(オキソニウム)などの性質を利用した合成法と組み合わせ、天然物やその類縁体、機能性分子などの合成研究を展開することで、創薬研究や物質化学の発展に資する有用な手法とした。
著者
平野 哲郎
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

実体法的側面としては,医療過誤訴訟において医師の過失と患者の損害の間の因果関係が証明されない場合に機会喪失論を適用することを否定したオーストラリア連邦最高裁判所判決を紹介した。同判決は,日本の最高裁判所が相当程度の可能性法理や期待権侵害論によって因果関係の困難を克服しようとしていることと対照的である。訴訟法的側面としては,オーストラリアで普及している専門家を同時的に尋問するコンカレント・エヴィデンスという新たな方式を,これと類似する面のある東京地方裁判所のカンファレンス鑑定と比較した。いずれも裁判官の心証形成を容易にし,より良い判断に資することを目的とする点で共通点がある。
著者
崎山 治男
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、現代の新自由主義化とグローバル化が労働場面や私的場面での関係性を変容させる力学に関して、心理主義化に注目した理論的かつ実証的な研究を行った。具体的には、労働の感情労働化が進む中で公私における感情マネジメント能力を得ることへと人々が煽られる中で、「生の感情労働化」と社会への包摂ー排除が進むことを、感情社会学と現代社会学、社会哲学における統治論・権力論とを接合させる中で示した。それを裏付けるために、1990年代から現代に至るジェンダー、階層を異にする雑誌や自己啓発書におけるビジネススキル書、恋愛作法書などを分析し、「生の感情労働化」が階層差をも生み出すメカニズムを示した。
著者
桂 良太郎 安斎 育郎 池尾 靖志 阿部 敦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は世界の平和博物館同士のネットワーク構築にむけた基盤整備その活用(応用)に主たる目的がある。第6回国際平和博物館会議(2009年)で21世紀にふさわしい平和博物館のあり方を検討することとし、「世界の平和博物館情報ネット」を立ち上げることを試みた。立命館大学国際平和ミュージアムの協力のもとで、ウェブサイト情報に基づき、各国の平和博物館の動向を検索できるCD-ROMの作成に取り組んでいる。目下、235件の入力が終わった。2011年5月にはバルセロナ(スペイン)で「第7回国際平和博物館会議」、2011年5月「IPRA」にて本研究の成果を発表し、さらに2012年11月の「IPRA」(於:三重大学)においては、ほぼ完成したCD-ROMを参加した内外の研究者や実戦者から高い評価を得ることができた。さらに充実した情報ネットワーク構築のために努力したいと考えているところである。この世界の平和博物館情報を検索できるウェブサイトを、立命館大学国際平和ミュージアムのホームページ上に立ち上げるべくその調整を図っている。本年度の目標であったアジア太平洋の平和博物館会議(ベトナム)は本国の都合により延期となるが、2012年8月の「韓国ノグンリ平和セミナー」およびベトナム平和博物館関係者との2014年開催予定の「第8階国際平和博物館会議」にむけた、アジア地域の平和博物館ネットワーキングに関する「研究会議」を無事ホーチミン市にて行うことができた。韓国、ベトナム以外に中国ロシアの平和博物館関係者及び、東南アジア諸国、インドやパキスタンなどの南アジアの平和博物館関係者も招聘し、本研究成果の発表とさらなるネットワーク構築のための準備を行っているところである。
著者
吉田 武弘
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

貴族院院内会派の実態解明を目的に、本年度も昨年度に引き続き史料収集、翻刻、検討作業を行った。まず昨年以来検討している男爵議員の会派・公正会について、阪谷芳郎ら関係者の史料を網羅的に収集、検討する作業を継続して行った。公正会は、大正期後期の成立以来、政界において独自の存在感を示した会派としてその名が知られているが、一方でその実態や理念、動向についてはほとんど検討されていない。よって本研究がその先鞭をつけたものといえる。またこれに加えて本年は、伯爵議員団についても検討の幅を広げた。なかでも特に伯爵議員団において中心的役割を果たした大木遠吉に注目し、大木に関する史料を収集、検討する作業を行った。大木は「華冑界の総理大臣候補」ともいわれた華族政治家であるが、従来必ずしも十分に検討されてきたとは言い難い人物である。大正期華族研究は、近衛文麿、有馬頼寧らのちに「革新華族」を構成した人々に集中する傾向があるが、これに対し大木ら当時の政界において重要な役割を果たしていた華族政治家に着目することは、華族研究の視野をより広げることになるであろう。くわえて、院内会派の動向をより大きく議会史全体の文脈上に落とし込むべく、「両院関係史」の検討も行った。主には、第4次伊藤内閣下の両院衝突問題、大正政変などの時期に注目し、それら政治史上の重要事件を両院関係の視座から読み直す作業を行った。これは従来「議会」と「官僚閥」という視点で整理されてきた政治史理解に対し、むしろ「官僚閥」においても「議会」が絶対的に必要であったという視座からこれを再検討しようとするものである。こうした作業を通じて、近代日本における議会制度の意味を再検討することができるであろう。
著者
早川 清 鍋島 康之 太井子 宏和 庄司 正弘
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

表層軟弱地盤における振動伝播挙動の正確な把握および振動増幅現象の予測手法についての検討と検証解析課題に関して、平面道路・高架道路などにおける振動実側調査および数値解析を行った。長野県内の地盤が軟弱な幹線平面道路での振動調査およびボーリング調査・貫入抵抗調査などの詳細な地盤調査結果より、表層軟弱地盤の固有振動数が5Hz付近にあり、家屋の固有振動数と一致して共振現象を生じていることを解明した。ISO規準に基づいた路面凹凸条件を入力し、数値シュミレーションでもこの現象を解析している。大阪府内幹線高架道路の構造体の固有振動数は5Hz付近にあり、沿道家屋との共振現象を励起して苦情に繋がっていた。橋体本体の床版たわみを制御する縦増桁による対策効果を固有値解析から検討したが、低域振動数では顕著な効果の期待できないことが理解された。高架道路交通振動を対象とした地盤振動の伝播特性に関しては、上下方向だけではなく、橋軸方向および橋軸直角方向の3方向加振の影響も大きく、現行振動予測法の不備を指摘した。京都南部の幹線平面道路は、表層が軟弱な沖積粘土層で構成されている。道路交通振動調査および表面波探査から、地盤の固有振動数が3Hz付近の低域にあることを確認した。地中防振壁を用いる振動低減対策工に関する研究課題に関しては、大きな中空部を有するPC壁体および矢板の振動低減効果を、現地振動実験。模型振動実験およひ数値シュミレーション解析から考察した。高架道路でのPC壁体の振動低減効果量は5dB程度であり、2次元FEM手法で橋体の動的応答を再現できることを確認した。PC壁体周辺部の剛性を3種類に変化させた模型壁体を作成し、中規模振動実験から壁体重量の影響を検討した。この結果、軽量壁体の効果が大きく生じたが、さらに数値解析からもこの点を解明する必要性を感じている。剛矢板地中壁の振動遮断効果は、既に現地振動実験結果から確認している。しかしながら、矢板が2次的な振動源となって矢板の背後で振動増幅される問題点を改善するために、矢板の打設深度、打設枚数およひ軌道下地盤改良などの対策効果を、数値解析から検討している。
著者
榊原 哲也
出版者
立命館大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、ドイツ現象学派内部においてダウベルト、プフェンダー、ライナッハらによって提示された言語行為の考え方の全貌をできる限り明らかにし、それをオースティンに始まる英米の言語行為論の成果と比較検討することによって、現象学の立場から、現象学と英米哲学との架橋を試みるものであった。英米の言語行為論との比較の上に立った、これまでにない新たな「言語行為の現象学」を可能な限り展開することを目指して、本研究は始められた。まず第一に、ドイツ現象学派内部における言語行為の考え方の発展過程を辿って、ダウベルトからプフェンダー、ライナッハに至る思想の全貌をできる限り明らかすることが試みられた。ダウベルト、プフェンダーについては、時間的制約のために、その思想を十分に捉えることができなかったが、しかし、ライナッハについては、近年公刊された新全集の読解に基づいて、そこに明らかに、しかも英米の言語行為論よりも約半世紀も前に、「言語行為」論の考え方が形成されつつあったことが確認された。これが本研究の第一の成果である。その上で第二に、ライナッハの言語行為の考え方と英米の言語行為論(とりわけオースティン)との比較検討が試みられた。これについては、残念ながら、十分な考察がなされたとは言えないが、しかし、次のことだけは、すなわち、現在英米哲学の一つの潮流を為しているオースティン以来の言語行為論に対して、ライナッハの「現象学的」言語行為論が、各言語行為の持つ本質連関を現象学的に解明してくれるという点で、十分寄与しうる余地のあることだけは、少なくとも確認された。以上が本研究の第二の成果である。さらに第三に、「現象学的」言語行為論を基礎づける為に、現象学の流れを解釈し直す試みと、「現象学的記述」をめぐる考究が行われたが、これらは本研究にとって、きわめて有益であった。以上が第三の成果である。以上の成果の一部は、論文の形で公刊され、また一部は立命館大学における講義で開陳された。
著者
石森 洋行
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

廃棄物や循環資材埋立地盤からの化学物質溶出量を正確に評価することを目的として、化学物質の長期溶出特性に及ぼす溶出試験条件(流速、試料粒度、バッチ法とカラム法の違い)を調べるとともに、埋立地盤内に発生する水みちを有効間隙率の点から定量的に評価する手法を開発することで溶出量に及ぼす水みちの影響を調べた。
著者
李 豪潤
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究17-19世紀の日中韓の儒学思想の展開を中心に、東アジア知識人の対外観および交流史を明らかにした研究である。殊に17-19世紀の日本・中国・韓国の知識人・民衆の交流および、書籍の移動に伴う知の連鎖・知のネットワークを通じて東アジア思想空間を総合的に研究するきわめて重要な位置を占めている。そして、本研究で試みた17-19世紀の中国の思想展開と朝鮮王朝・徳川思想の比較研究は、近代以降のそれぞれの歴史展開の分岐をより明確に理解する上でも重要な課題であろう。