著者
阪本 昌成
出版者
立教大学
雑誌
立教法学 (ISSN:04851250)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.34-66, 2009-03-17
著者
岩尾 慎介
出版者
立教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究において、特異なトロピカル曲線と、対応する超離散可積分系をしらべた。通常の可積分系の理論において、滑らかな曲線に対応するテータ関数を用いて得られる解を、準周期解と呼ぶ。ここで、元の曲線代わりに特異な曲線を用いると、その特異性の大きさに応じて、ソリトン解、多項式解、と、より特殊な解を得られる。以上の理論は、超離散可積分系においても、同様に成り立つと考えられる。実際、超離散KdV方程式・超離散戸田方程式・超離散KP方程式などの準周期解は、トロピカル曲線に付随するトロピカルテータ関数を用いて記述で出来ることが知られている。本研究では、超離散可積分系のソリトン解、多項式解を、トロピカル幾何の文脈で解くことを行った。この際、現れるトロピカル曲線は何らかの意味で「特異」なものになると期待されるが、純粋なトロピカル幾何学で知られている「特異トロピカル曲線」の定義では、上記の目標を達することは出来ない。本研究では可積分系の手法によって、新たな特異トロピカル曲線の定義を独自に導出した。具体的な手順は以下の通り:1.離散可積分系の「Lax方程式」を用いて、代数曲線の定義多項式を求める。この時、周期境界条件を課すと滑らかな曲線を得られることは古くから知られているが、周期境界条件を緩めることで、特異曲線があらわれるようにすることができる。2.得られた特異曲線を超離散化する。超離散可積分系への自然な応用が存在するという理由から、私はこちらの「特異トロピカル曲線」の定義のほうがより正当であると信じる。
著者
井上 雅雄 (2005-2006) 渡辺 武達 (2004) LEE Hyangjin
出版者
立教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究実績(1)申請者は本研究の期間中に行った約300人のアンケート調査と約80人に対するインテンシヴな面接調査を完了し、現在テキスト分析を中心とした研究報告を執筆中であり、既に4本の論文を研究成果として発表し、さらに4本を執筆中である。この執筆中のものには岩波新書が含まれる。以上の調査研究から明らかとなったことは、次の通りである。日本における韓流ブームは、中年女性たちによるある種のサイバー文化反乱と位置づけることができる。彼女たちは、家庭や職場という既存の生活枠を飛び出し、広範な社会的ネットワークを形成しつつ互に交流することで、起伏に乏しい平凡な日常を精神的・物的にも超えようとしている。この越境的文化行動は、高度大衆消費社会の重圧のもと、グローバライゼーションとローカライゼーションの同時多発的な進行とによって変化していく政治的・社会的・文化的環境条件に適応するための、自己救済的な努力といえよう。彼女たちの日常から喚起されるある種の喪失感、あるいは願望に伴う"ヒステリー"を癒す遊びとしての韓流は、自己実現・自己回復に向けた意志的な取り組みであり、アイデンティティの表現なのである。彼女たちは、「見えない市民」としてプライベートな空間に留まることを拒み、自分の存在と欲求を表出するために文化的市民権を求めていると解釈できよう。彼女たちにとって韓流文化の消費は、現実が満たせずにいる自己の欲求を充足させ、充実した生のあり方を示してくれるものである。それはまた独自の政治的インプリケーションをもつものであった。(2)学会活動としては、2005、2006年度の「アジア学」学会(於米)で、研究の中間的成果を発表するとともに、2006年の7月には「インターアジア・カルチュラル・スターディズ」学会(於東京)および立命館大学、東京大学、同志社大学で開催されたシンポジュームで各々報告した。また立教大学では「誰のための『韓流』か」と題した講演を行った。
著者
ジョンズ アダム・ルカス
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

オーセンティシティーは研究や議論の中でいくつかの使い方があり、幅広く使われているこのコンセプトにこれらの定義を結びつける枠組みを提案した。多くのデザイナーはモノの生産立地より材料の本質を重視する。ただし、デザインプロセスの中の決定的要素の原型や試作品を作るのに製造者が近くにいることが不可欠である。多くのデザイナーは「オーセンティック」なモノを作るのにその国のデザイン本質や文化を保存しすべての作品に適用する必要性は感じない。ブランドを持つ製造者にとってデザイナーの国籍や材料の原産国、そして商品の生産地は商品のオーセンティシティーに関して重要ではないという意見および経験的根拠があった。
著者
北本 俊二 森井 幹雄
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

補償光学を使用したX線望遠鏡を開発し、X線による撮像実験を行った。補償用の参照光源と撮像する物体との行路差を補正する方法を適用し、分解能を改善させることができた。その結果、1.55秒角の角度分解能を達成した。また、X線干渉計を製作するための検討を行った。X線用として有望な形状で可視光実験を行い、必要精度等を検証した。その結果、ピエゾ素子等を使うことでX線干渉計が作成可能という結論を得た。
著者
浪岡 新太郎
出版者
立教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

本年度は、フランスにおけるマグレブ系移民新世代イスラーム結社の全国規模での調査を行い、これまでリヨン中心に行ってきたフィールド・ワークの修了を目指した。具体的には、リヨンのムスリム若者連合、およびリヨン大都市圏ムスリム結社連合の行政委員会メンバーの全てとインタビューを終えた。このインタビューを通じて、一般的にメディアなどで、「原理主義」、「反統合」と表象される結社連合の活動を明らかにし、さらに、その活動を支える多様な活動家の考える多義的な市民性、統合概念を明らかにした。さらに、フランス・ムスリム結社連合を構成する、北部ムスリム連合(リール)、パリ・ムスリム連合(パリ)、南部ムスリム連合(モンペリエ)の各組織代表者とのインタビュー、彼らからの資料収集を通じて、ネット・ワークとして構成されているために全体像が把握しにくいフランス・ムスリム連合の構成・機能を明らかにした。リヨンのムスリム若者連合については、「新しい市民権」との観点から論文を日本平和学会三〇周年記念『平和学シリーズ』第三巻に発表した。フィールド・ワークで得られた成果は、特に、国籍から切り離された市民権概念としての「新しい市民権」の観点から解釈され、しばしば市民概念と対立されると表象されるムスリム・アイデンティティが、市民成立に大きな役割を果たしていることが明らかにされた。
著者
後藤 和彦
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、19世紀中葉における後発近代化を共有するアメリカ南部と近代日本において、「敗北の文化」に惹起され産出された公的文化言説、「ナショナル・ナラティヴ」が、その後に出現してきた私的言説としての文学にとってどのような意義をもったか、さまざまな文化テクストの実証的な分析によって歴史的に跡づけ、今後の両文学の本格的比較研究への新しい視座を切り開いた。
著者
アムール=マヤール オリビエ
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この3年間では私は特に、次の3つの主たる目的を設定した。まず第一には国際シンポジウム「ミシェル・ビュトール-境界にて、あるいは移動の芸術」を開催することである。シンポジウムの目的は、ビュトール作品にみられる日本文化の影響を明らかにすることであった。研究の2つ目の目的は、フランス現代作家の作品にみられるアジア文化の影響、特に日本文化の影響について、書物を準備・刊行することであった(『ノマドのエクリチュール-フランス作家と極東』)。研究の3つ目の目的は、上記シンポジウムの成果に基づく、共著を出版することであった(『ミシェル・ビュトール-境界にて、あるいは移動の芸術』、ディジョン大学出版局)。
著者
渡辺 学 高田 博行
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

日独両言語における若者語および若者語研究の最新状況を文献調査や国際レベルでの情報収集を通してつねに把握しながら、とりわけ携帯メールのテクストに現れた若者語の特性と相違点を明らかにすることを試みた。具体的には、アンケート調査に基づく日独携帯メールテクストコーパスの作成と対照比較分析により、まず共通点として話し言葉の特性が書き言葉に浸透していく様子が観察された。他方、ドイツ語においては、文字(言語記号)中心のいわば「単線的コミュニケーション」につながる表現形態が目立つのに対して、関西方言の関東方言との偏差をも視野に入れて収集を進めた日本語の文例を分析した結果、顔文字・絵文字が頻繁に出現するほか、(疑似)方言語法、古語語法、幼児語法(ベビートーク)も現れることが分かった。これらの語法に限定するかぎり、日本語ではメールテクストにおいて日常語の「話し言葉性」からの意識的シフトが行われることがあり、ドイツ語ではそれがないものと暫定的に推論することができる。これらの特徴はひとり言語現象としてとらえることができるのみならず、言語行動のあり方の特性として把握可能であるばかりか、全角入力が基本となる日本の携帯メールで顔文字・絵文字が頻出するなど、メディアや(メディア)テクノロジーのあり方とも関連していること、それらの規制を受けていることも明らかとなった。メディアジャンルとしては、研究分担者が電子掲示板に注目して、その言語的特徴を調査したことが研究の裾野を広げるのに大いに役立った。さらに、資料として「日独若者語対照基礎語彙表」をまとめることができた。この語彙表は、日常語にまでおよぶ日独の若者語語彙の意味機能的な対応づけの試みであるとともに、収集した携帯メールテクストのコーパスとも合わせて今後の日独若者語対照研究の基礎資料として裨益するものと思われる。
著者
小峯 和明 渡辺 憲司 金 文京 増尾 伸一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本中世の物語類を中心に、<予言文学>に関わる表現やモチーフの資料集を作成し、さらに予言書、未来記、託宣書、夢記、起請文、遺言、遺訓などの文書類のリストを作成、資料集としてまとめた。東アジアに関しては、北京、ソウル、ハノイ、パリ、ロンドン、ボストンなどで資料調査を行い、貴重な資料を収集した。それらの成果をもとに、北京、ハノイ、パリで<予言文学>をめぐる国際学会や研究会を主催し、論文集としてまとめた。
著者
石川 巧
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

大学入試における小論文・作文の歴史研究として『「いい文章」ってなんだ―入試作文・小論文の歴史』(ちくま新書)を刊行した。また、近代日本におけるリテラシー能力のありようを考える過程で論文集『高度経済成長期の文学』(ひつじ書房)、『「月刊読売」解題・詳細総目次・執筆者索引』(三人社)をまとめることができた。大学生のリテラシー能力を涵養するためのテキストとして『戦争を〈読む〉』(ひつじ書房)を編んだ。個別の研究としては「雑誌「小説春秋」はなぜ歴史の後景に消えたのか?―附・総目次」(「敍説」III-10)、「戦前における〈近代文学の教科書〉」(「日本文学」727)など15本の論文を書き、口頭発表も行った。
著者
粟屋 憲太郎 伊香 俊哉 内海 愛子 林 博史 永井 均
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

第2次世界大戦において日独が行った数多くの残虐行為に対し、連合国はそれをどのように認識し、対処しようとしたのか。これまで個別分散化していた戦犯裁判研究を総合的に明らかにするため、大戦初期の連合国による戦争犯罪認識の形成過程から戦犯処罰方式の決定に至るまでの過程、さらに対日戦犯裁判政策の形成・実施・修正・終了のプロセスを全体的に明らかにすることを目指し、連合国による対日戦犯裁判政策に関する政策文書を収集・分析した。
著者
松浦 正孝 山室 信一 浜 由樹子 土屋 光芳 中島 岳志 高橋 正樹 宮城 大蔵 WOLFF David 大庭 三枝 吉澤 誠一郎 姜 東局 大賀 哲 酒井 哲哉 後藤 乾一 都丸 潤子 関根 政美 矢口 祐人 高原 明生 遠藤 乾 松本 佐保
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アジア各地における多様なアジア主義のビジョンと構造を解明し相互比較すると共に、アジア主義ネットワークの生成過程を解明した。方法としては、国内外から選ばれた各地域の専門研究者と各事例を議論することで、アジア主義に共通の構造と地域それぞれに固有の特徴とを明らかにした。そうすることで、各地域におけるアジア主義を相対化して民族中心的なバイアスから解放し、アジアにおける共同体の可能性と条件、各民族・国家の共生の可能性を探ろうとした。
著者
柴崎 徳明 蓬茨 霊運
出版者
立教大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

超強磁場中性子星が発見されたので、その研究をミリ秒パルサーの研究に優先させ行い、以下のような成果を得た。X線、ガンマ線を爆発的に放射する天体がある。今までに4例見つかっており、Soft Gamma Repeaters(SGR)と呼ばれている。私たちは、1998年の4月と9月、X線天文衛星「あすか」でこの内の一つSGR1900+14を観測した。その結果、定常的なX線放射を検出し、その強度が5.16秒の周期で振動していることをみつけた。このパルス周期は1.1×10^<-10>ss^<-1>の割合で伸びていた。さらに、X線のスペクトルはベキ型であることも見い出した。これらの観測事実をもとに考察、検討を重ね、つぎのようなことが明らかになった。(1)パルス周期とその伸び率から、バルサーは〜10^<15>Gという超強磁場をもつ中性子星(マグネター)である。(2)解放される中性子星の回転エネルギーは少なく、定常X線成分を説明できない。エネルギー源はたぶん磁場そのものであろう。(3)定常X線成分は、中性子星表面からの熱放射ではなく、たぶん磁気圏からの非熱的放射であろう。中性子星が誕生する際、その回転がたいへんに速く周期がミリ秒程度のときは、ダイナモメカニズムが強くはたらく。その結果、磁場は〜10^<15>Gぐらいまで成長し、マグネターができると考えられる。私たちはマグネターの磁場の進化および熱進化について調べ、次のような結果を得た。(1)コアの磁場は、ambipolardiffusionにより10^4年ぐらいで一様にはなるが、大幅に源衰することはない。(2)中性子星全体としての磁場の減衰はコアとクラストの境界あたりでのジュール損失できまり、減衰のタイムスケールは10^8年以上である。(2)解放されるジュール熱により、中性子星の表面温度は10^6年から10^8年以上わたって、〜10^5K以上に保たれる。
著者
蓬茨 霊運 柴崎 徳明
出版者
立教大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究から次のようなことが明らかになった。1.X線新星、LMXB(低質量連星型X線星)それぞれのX線スペクトルには二成分が存在する。この内の一成分はどちらにも共通しており、降着円盤から期待されるスペクトルによく合う。この降着円盤成分はどちらのX線源においても強度の時間変動がきわめて少ないか、あってもゆるやかである。このことから中性子星のまわりにも、またブラックホールのまわりにも同じような性質の降着円盤が形成されているといえる。2.スペクトルのもう一方の成分は、X線新星の場合は、ベキ型のスペクトル、LMXBの場合は黒体輻射のスペクトルでよく表わされる。ベキ型の成分はブラックホールの近傍でホットプラズマによるcomptonizationあるいは非熱的なプロセスでつくられるのであろう。一方、黒体輻射成分は中性子星表面からの放射と考えられる。3.ベキ型成分、黒体輻射成分はどちらも激しい強度変動を示す。X線新星でもLMXBでも、スペクトルの二成分はそれぞれ独立に変動することをみつけた。もしこれらの二成分が正の相関をも動するならば、降着円盤を通過した物質がブラックホールや中性子星表面に到達することになる。したがって、二成分間に相関がないということから、中心天体への物資降着には降着円盤(幾何学的にうすく光学的にあつい円盤)を通過するチャンネルの他にもう一つ別のチャンネルがあると結論できる。もう一つのチャンネルに対し、私たちは降着降着円盤が二重構造、つまり光学的にあつく幾何学的にうすい円盤が光学的にうすい円盤ではさまれたサンドイッチ状の構造になっているのではないかと考えている。現在、観測との比較のため必要になる二重構造円盤のより詳細な性質に向けて研究を進めている。