著者
岩田 久 松山 幸弘 加藤 文彦 千葉 一裕
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.269-282, 2019-03-01

要旨:椎間板ヘルニアは椎間板中の髄核が線維輪を穿破し脊髄などの神経を圧迫し,下肢痛,腰痛を発症する疾患である。その治療において,保存療法として,非ステロイド性消炎鎮痛剤,ステロイドなどの薬物療法,理学療法,硬膜外仙骨ブロック,神経根ブロック,運動療法などで効果がみられないとき,コンドリアーゼ(C-ABC)化学的髄核融解術(chemonucleolysis)が,手術的治療に至る前の最後の手段として考えられる。このC-ABCは50年前,Proteus vulgarisを培養,その菌体成分から抽出・精製し,そしてFlavobacterium heparinum由来のC-AC酵素とともに駆使しコンドロイチン硫酸異性体の分析に使用した。その過程でコンドロイチン硫酸-デルマタン硫酸ハイブリッド構造の存在を半月板軟骨内に発見した。この酵素が種々の動物実験,臨床治験を通し,腰椎椎間板ヘルニア治療のための椎間板注射剤として純国産で,世界で初めて開発され,今回日本で認可が得られた。C-ABC,C-ACを用いた種々軟骨,尿などのコンドロイチン硫酸異性体の特徴,C-ABCの臨床応用に向けての基礎的研究,使用方法,適応,今後の展望について検討した。
著者
小川 徹郎
出版者
金原出版
雑誌
眼科 (ISSN:00164488)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.p249-259, 1981-03
著者
吉野 愛 金川 武司 林 周作 石井 桂介 光田 信明
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1051-1055, 2017-08-01

稽留流産の治療として待機的管理または外科的治療が行われている。当センターでも治療法の選択肢として外科的治療だけでなく待機的管理も選択肢として提示している。しかし,各治療成績についてのわが国の報告はまだない。そこで,当センターでの各治療法の成績を比較・検討した。対象は2011 年1 月〜2015 年12 月に当センターで稽留流産と診断した症例とした。診断時の患者希望により,待機的管理群(待機群),外科的治療(D & C)群に分け,各治療法の入院・追加処置を要する合併症発生率の比較,待機群で診断から14・21・28 日目までの胎囊排出率を求めた。対象となった稽留流産は326 例で,待機群は184 例,D & C 群は142 例であった。合併症発生率は,待機群で8%,D & C 群で6%に認め,有意差はなかった(P=0.51)。待機群での,14・21・28 日目までの胎囊排出率は,それぞれ68%・80%・86%であり,診断から21 日目までに大部分の症例で排出していたことがわかった。
著者
原田 晋 佐々木 和実
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.371-376, 2018-03-01

36歳,女性,美容師。毛染めブリーチの使用直後に全身性のアナフィラキシー症状が出現した。プリックテストで毛染めブリーチ中に含まれている過硫酸塩が陽性を示したため,自験例を同剤によるアナフィラキシーと診断した。過硫酸塩は,遅延型アレルギーによる接触皮膚炎および即時型アレルギーでは吸入による喘息症状をきたしやすいことが知られているが,即時型反応の機序で接触により生じる接触蕁麻疹ないしアナフィラキシーの報告は少なく,とりわけ日本人における発症はまれである。しかし本邦でも,毛染めブリーチ剤の使用によって過硫酸塩による接触蕁麻疹ないしアナフィラキシーがおこりうることに留意するべきである。
著者
松田 貴雄
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.197-202, 2018-02-01

女性アスリートの三主徴が提言されて,女性アスリートが疲労骨折を繰り返す場合,整形外科では婦人科受診を勧めるようになってきている。疲労骨折を生じるアスリートは中学生・高校生に多く,近隣の婦人科を受診すると考えられるが,無月経の治療以外にアスリートに何をすればいいか迷う婦人科医は少なくないと思われる。疲労骨折を生じるアスリートはエネルギー不足でほぼ貧血を合併している。貧血を診療することで中高生アスリートにとってのかかりつけ婦人科となることが,女性アスリートの三主徴の予防につながると考えられる。
著者
橋本 拓哉 酒井 望
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.279, 2019-03-15

肝切除は大腸癌肝転移に対して根治的治療法とされ,一般的には個数制限はないとされる。両葉多発肝転移の場合は,major hgepatectomyを含む大量肝切除後の肝不全のリスクが問題であるが,術前門脈枝塞栓術や二期的切除などを含めた工夫が考案され,より積極的な肝切除へと適応が広がっている。しかしながら,転移個数が多く大量肝切除を要する症例での術後再発率は高く,再発後の治療も踏まえた治療方針が必要となる。
著者
依藤 彰記 細谷 友雅 岡本 真奈 粕本 愉美 五味 文
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1527-1533, 2019-12-05

ブリモニジン酒石酸塩点眼液(アイファガンⓇ,以下BT)の主な副作用として結膜充血,アレルギー性結膜炎などがあるが,角膜炎の報告は少ない。BT使用の経過中に発症した角膜実質炎3例を報告する。【症例1】62歳女性。4年前から両眼にBTならびに緑内障治療薬2剤を使用。右眼鼻下側角膜周辺部に実質深層の密な新生血管を伴う濃厚な半円状角膜混濁と結膜充血を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼と抗ヘルペス薬を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存し,矯正視力0.8と低下した。抗ヘルペス薬は中止したが再燃はない。【症例2】79歳女性。6年前から両眼にBTほか2剤を使用。左眼鼻下側角膜周辺部に実質深層の新生血管を伴う濃厚な弧状角膜混濁を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼と抗ヘルペス薬を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存した。視力低下は認めなかった。【症例3】76歳男性。3年前から両眼にBTとヒアルロン酸点眼液を使用。左眼耳下側角膜周辺部に実質深層の密な新生血管を伴う濃厚な半円状角膜混濁と結膜充血,濾胞を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存した。全例BT使用中に出現した角膜炎であること,角膜ヘルペスの既往はないこと,実質深層の新生血管を伴う角膜周辺部病変で,既報の所見に類似していることから,BTが発症に関与した可能性のある角膜実質炎と診断した。緑内障治療中の患者に周辺部角膜実質炎をみたら,BT使用歴の確認も必要である。
著者
川崎 富作
出版者
金原出版
雑誌
小児科 (ISSN:00374121)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.205-214,巻頭グラビア(目でみる小児科)2p, 1968-03
著者
菅原 努
出版者
金原出版
雑誌
臨床放射線 (ISSN:00099252)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, 1958-01
著者
中村 由香里 平方 良輔 外園 幸司 山崎 徹 宮城 友豪
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.337-340, 2018-03-10

hemosuccus pancreaticusは,膵管を経由したVater乳頭からの消化管出血で,胆道出血と区別するためにSandblomにより1970年に提唱された1)。原因として慢性膵炎を基礎に形成された膵仮性嚢胞や仮性動脈瘤からの出血が多い。重篤な病態ではあるが,間歇的な出血のため,しばしば上部内視鏡検査で十二指腸乳頭からの出血が認められない。そのような症例に造影CTを施行したところ,脾仮性動脈瘤からの造影剤の血管外漏出が主膵管を経由して十二指腸に注ぐのが描出された,世界初と思われるhemosuccus pancreaticusの症例を経験したので報告する。
著者
今村 明 金替 伸治 山本 直毅 船本 優子 田山 達之 山口 尚宏 黒滝 直弘 小澤 寛樹
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.679-686, 2017-07-01

近年,統合失調症をはじめとしたpsychosis への移行が危ぶまれる状態を,「精神病リスク状態at︲risk mental state( ARMS)」と呼ぶことが増えており,それについて盛んに研究報告がなされている.ARMS は「脆弱性グループ」「減弱精神病グループ」「短期間間欠型精神病症状グループ」の₃ つのグループで構成される.ARMS は,必ずしもpsychosis へと移行していくものではないことがわかってきており(移行は₃₀〜₄₀%程度),それ自体に対応を必要とする状態像の一つとして考えられている.ARMS に対しては,まずは心理社会的治療が推奨されるが,早期に薬物療法を開始する場合もある.
著者
大坪 英則 鈴木 大輔 神谷 智昭 鈴木 智之 山下 敏彦 史野 根生
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1481-1488, 2018-11-01

要旨:近年,膝前十字靱帯(ACL)再建術では,形態的にも機能的にも正常靱帯に近い靱帯を再建するために,正常靱帯付着部に骨孔を作成し自家腱を移植固定する解剖学的再建術が行われている。われわれは,新鮮屍体膝を用いた解剖学的研究を行い,ヒト正常ACLは,前内側線維束(AM束)と後外側線維束(PL束)の2線維束に分けられ,さらにAM束は内側部分(AM-M束)と外側部分(AM-L束)に分けられ,3線維束を構成することを明らかにした。さらに,線維束の配列と断面積計測,付着部位置および面積計測,MRIによる生体内画像解析,透過型電子顕微鏡(TEM)によるコラーゲン線維の微細構造についての詳細な検討を行い,ACL 3線維束の解剖学的な特徴を明らかにした。これの結果は,各線維束が力学的に異なる役割を担っていることを示しており,靱帯再建術式の決定や移植腱の選択においては,これらの線維束構造の機能解剖学的特徴を十分に考慮すべきである。
著者
竹島 徹平 黒田 晋之介 湯村 寧
出版者
金原出版
雑誌
産婦人科の実際 (ISSN:05584728)
巻号頁・発行日
vol.66, no.13, pp.1839-1844, 2017-12-01

不妊の約半数に男性因子が関与しているにもかかわらず,無精子症の場合を除き男性不妊治療介入を経ずにART を導入されている例が少なくない。受精後,day 3 以後の胚発生には精子DNA の完全性が関与しており,断片化が生じると発生停止,着床障害,流産などの原因となる。精子DNA 断片化に対して,ラボにおける精子選別法以外にも,生活指導や採精指導,内服治療や手術に至るまで,ART 成績向上のための泌尿器科的に治療可能な取り組みが存在し,良好な治療成績が得られている。今後も治療エビデンスを確固たるものとし,ART 治療成績向上のため,婦人科医師と連携を図っていく必要がある。
著者
岡本 紀夫 森本 壮 松下 賢治
出版者
金原出版
雑誌
眼科 (ISSN:00164488)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.975-981, 2019-09-05

要 約目 的:長期経過観察できた外傷性視神経症の2例の光干渉断層計所見について報告する。対象および方法:急性期の外傷性視神経症1例と陳旧期の外傷性視神経症1例に対して,光干渉断層計で平均全網膜厚および黄斑部ganglion cell complex厚について経時的に計測を行った。結果および結論:既報と同じく黄斑部ganglion cell complex厚は受傷後早期から減少し,数か月後には減少傾向がプラトーに達した。一方の平均全網膜厚は1年以上経っても軽度であるが菲薄化が進行していた。陳旧期の外傷性視神経症の光干渉断層計所見は鑑別診断の一助になると考えられた。

1 0 0 0 肩甲骨骨折

著者
松村 昇
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1331-1337, 2017-09-01

肩甲骨骨折は比較的まれな外傷であるが,大部分は多発外傷を合併する。肩甲骨は周囲を筋組織に包まれているため,骨折が生じた場合でも比較的安定性が保たれる。また豊富な血流により骨癒合も良好であることから,骨折例の多くは保存的に加療され,おおむね良好な治療成績が期待できる。一方で骨折部位や転位の有無により臨床症状は異なる。肩峰骨折のうち遠位骨片が下方へ偏位もしくは転位した症例では,術後の偽関節や変形癒合により二次性の肩峰下インピンジメントを生じる可能性がある。烏口鎖骨靱帯より近位での烏口突起骨折は肩鎖関節部の不安定性を生じることが多い。肩甲骨体部骨折後に変形が残存すると,肩甲胸郭関節が不適合となり肩甲帯の易疲労感や怠感,筋力低下が残存することがある。肩甲帯部複合損傷では不安定性により肩甲帯機能低下につながる。これらの症例では観血的手術も選択肢の一つとなる。
著者
原田 晋 森山 達哉 田中 裕
出版者
金原出版
雑誌
皮膚科の臨床 (ISSN:00181404)
巻号頁・発行日
vol.60, no.13, pp.1969-1974, 2018-12-01

35歳,男性。春季花粉症あり。ジョギング後に大豆プロテイン飲料を初めて摂取した直後より,呼吸困難・全身性膨疹などのアナフィラキシー症状をきたして,救急搬送された。プリックテストで大豆プロテインおよび原料の脱脂大豆蛋白で陽性をきたし,また血液検査・immunoblot・ELISAによる検索の結果,Gly m 3およびGly m 4の両者の感作が認められたため,自験例をクラス2大豆アレルギーと診断した。これまで豆乳アレルギー症例は数多く報告されているのに反して,大豆プロテイン飲料によるクラス2大豆アレルギーの報告は過去には存在していないが,今後大豆プロテイン飲料によるクラス2アレルギーの発症にも留意する必要がある。
著者
久保 敦司
出版者
金原出版
雑誌
臨床放射線 (ISSN:00099252)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.p443-444, 1977-04