著者
南部 功夫 和田 安弘 大須 理英子 大須 理英子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、直感的で操作が容易な脳情報バーチャルキーボード構築に向けた基礎検討を行った。最初に、脳波(EEG)を用いて、運動実行時および想起時の個々の指運動(想起)を予測できる可能性を明らかにした。次に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により、運動準備時には対側の運動前野や補足運動野に高精度な指運動情報(系列)が含まれることがわかった。最後に、機能的近赤外分光計測(fNIRS)を用いた運動情報の抽出を目指し、fNIRS信号に混在する頭皮血流アーチファクトを除去し、脳活動の推定精度を向上させる手法を開発した.以上の結果は、脳情報を利用したバーチャルキーボード構築に貢献すると期待される。
著者
植松 敬三 内田 希
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

アルミナセラミックスの加圧成形による製造を対象に、その破壊源形成に及ぼす製造時の基幹的因子の影響を解明することを目的に研究を行い、当初の目的を達成した。得られた結論は次のとおりである。原料粉体は粗大粒子を含み、それらは従来の粉砕処理では十分に除去できず、高性能アルミナセラミックスの破壊源となり得るものである。粉体粒子の液中での分散状態は、顆粒特質に著しい影響を及ぼし、その加圧成形体構造、従って破壊源形成および焼成時の材料変形とも密接に関係する。成形条件、特に雰囲気中の湿度は得られた焼結体の構造と特性に著しい影響を及ぼす。CIP処理は強度向上には有益だが、変形防止の点ではむしろ有害である。新規評価法により焼結体の機械加工傷の具体的構造を検討し、表面傷と破壊強度との関係が従来の破壊理論で整理され得ることを明らかにした。材質中の粒径と破壊源の寸法とは密接に関係し、粒径の減少により強度が増すのは、それにより破壊源が小さくなるためである。高強度材料開発で粗大傷の防止が最も重要である。本研究開発した新規評価法は、レーザー蛍光顕微鏡に基づく構造評価法、赤外線浸液透光技術、定量的な浸液透光偏光顕微鏡技術である。以上のとおり、本研究では最新の評価技術を用い、また必要に応じて新規評価法の開発を行い、それらを駆使することにより、セラミックス製造プロセスのすべての段階について厳しい検討を行い、製造に係わる種々の要因と、セラミックスの構造ならびに特性の関係を解明し、破壊源の形成原因を明らかにし、さらにそれらの防止法を提案できた。これらはセラミックスの進歩に大いに貢献しその社会的活用をいっそう促進する原動力になるものと考えられる。
著者
山崎 克之 山本 麻希 山本 寛
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

新潟県粟島におけるオオミズナギドリの営巣地をフィールドとし、環境観測情報ネットワークの研究開発を進めた。データ解析の結果、平成23年度と24年度ではメスの帰巣パターンが異なることから、日本海の海面温度の上昇がトリの生態にあたえる影響を実証できた。また、ZigBeeネットワークのノード間で2msの精度でクロック同期を実現する方式を研究開発し、これを利用して有害鳥の検知撃退システムを開発した。発表論文は電子情報通信学会通信ソサイエティ論文賞を受賞した。本研究は生態学の専門家とのコラボレーションによって実現したものであり、この受賞によって生態学への情報ネットワークの研究が広まることを期待している。
著者
阿部 雅二朗 丸山 暉彦 杉本 光隆 志田 敬介 仲川 力 藤野 俊和
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

不整地盤上作業機械とその運転者である人間よりなる系において、複雑条件下の機械転倒安全性を快適に確保するシステムの構築を目的に、運転室シミュレータと小型クローラクレーンおよびその支持地盤モデルよりなるリアルシミュレータに加え、クレーン-支持地盤系のバーチャルシミュレータを開発した。これらシミュレータより機械の転倒限界状態近傍における運転者の運転・生体特性と機械およびその支持地盤挙動との相関関係を総合考察し、転倒安全快適確保のための基本原理を示した。運転支援システムの試作および有用性確認も実施した。
著者
塩野谷 明
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、スキー実滑走時模擬振動暴露シミュレータの開発を行なうとともに、スキー滑走メカニズム解明のための基盤構築を目的とする。シミュレータは、スキーヤーを想定した雪塊を、雪面に見立てたスキー滑走面で滑走させるものである。スキー板の振動は、ボールバイブレータを圧縮空気で回転させ、発生させる。シミュレータでは雪塊が滑走する際の動摩擦力、動摩擦係数、滑走速度が算出される。実験の結果、250Hz付近の振動を板に暴露した場合、滑走速度の増加、摩擦係数の低減、滑走速度の増加に伴う動摩擦係数の低下が認められた。以上の結果より、本シミュレータはスキー滑走メカニズム解明の基盤として適当であることが示唆された。
著者
白仁田 沙代子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

固体高分子形燃料電池における電極触媒のPt使用量削減を目指した新しいPt単原子電極触媒の開発を行った.その結果,次の成果が得られた.(i)Pt担持量がわずか0.6wt%の低担持量電極の作製に成功した.(ii)水素酸化反応におけるオンセット電位は,本研究で作製した電極はPt板と同程度であった.
著者
中平 勝子 マーラシンハ アーシュボーダ
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、技術者の業績と人物像を生き生きと物語る史料としての「追悼文」に注目し、これを系統的に収集し、技術革新経験に関する知識基盤として技術者教育に活用する可能性と方策について研究を行うものである.平成21年度は,以下のことを行った.● 所在源調査に関しては、本年度は学協会機関紙、業界紙、新聞などから,計350件超の追悼文を抽出し,そのデータベース化を行った.また,それのWeb利用のための検索エンジンを構築した.● 追悼文の教育利用を検討するにあたり,実際に技術者教育を行っている高専,および,社会の世情(総務省調査)の双方のデータを用いて分析を行った.その結果,現在の教育システムは、大きく学校教育と家庭・社会教育から成り立つこと,学校教育は相応に調節された技術者向け教育プログラムを提供できる毅階にあるが,家庭・社会教育においては製品・技術のブラックボックス化により,物が動く仕組みを知る機会が減っていること,情報過多・読書体験の不足・現実世界との相互作用の不足が技術者ロールモデルの欠如を生み,「生きる力」の育成を削ぐ形になっている可能性が高いことを示唆し,技術者ロールモデルとしての技術者人物史料の必要性を提言した.
著者
高橋 勉
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

フィルムやペットボトルの成形加工に用いられる平面伸張流動場における高分子流体の挙動を調べるために,シース流を利用して試料を急速に加速しフィルム状に引き延ばすフローフォーカッシングを用いて安定した高伸張速度の流れ場を形成した.伸張速度をさらに増加させるために流体駆動と試験部を一体化した装置を作り効果を確認した.さらに,定常伸張流動中に180旋回する流路を用いて伸張応力の評価も行った.
著者
佐野 可寸志 ウイスニー ウイセットジンダワット
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

事業所の立地においては、立地場所固有の属性だけでなく、空間効果の影響も大きいが、これまで十分な研究の蓄積されていない。本研究ではまず、独自の調査データに、因子分析と強分散構造分析を適用し、事業所の移転要因を抽出した。次に、Mixed Logit Modelを用いて空間効果を考慮した事業所の立地選択モデルを構築し、空間効果の影響を定量的に把握した。東京都市圏物資流動調査データを用いてモデルのパラメータを推定した結果、通常の立地選択モデルで用いられる地価や交通のアクセスビリティーの要因に加えて、確定項における企業立地相関や、誤差項におけるゾーン間の空間相関が、立地選択に影響を与えていることが分かり、空間効果を考慮することの重要性を示すことができた。
著者
熊倉 俊郎 陸 旻皎 石坂 雅昭 田村 盛彰 山口 悟
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

季節的な大雪や強い降雪は雪国の社会生活に危険を及ぼす。これを避けるために除雪、防護柵設置、安全情報の配信などが行われているが、その際に、本来利用したいのにできないのが、雨か雪かあられかの降水種別情報である。理由は、粒子種別を正確にかつ簡易的に自動で行う機器がないためである。そこで、ここでは簡易的な雨・雪・あられの判別器を試作し、特別なデータ処理により、自動では難しいとされる雪とあられの判別率を8割にまで高めた。また、この降水種別データを用い、未解明な課題に対して新たな知見を得た。
著者
上村 靖司 関 嘉寛
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,越後雪かき道場の取組を通じて未経験外部支援者の関与による減災プロセスを分析し、雪に対する地域防災力向上手法を確立することである。2011年度からの3冬季に、新潟県,富山県、山形県の18か所で雪かき道場13回、命綱講習会22回を開催した。参加者と地域住民へのアンケートから「外部支援者との共同作業が安全に繋がる」、「外部者混在の講習会の方が心理的抵抗が少ない」など住民の防災意識啓発に有効であることが確認された。次に豪雪4県の雪害リスクの分析の結果、リスク水準が受容限度を超えていること、降雪量がリスクを支配し高齢化率や人口密度等の社会指標はほとんど寄与していないことを明らかにした。
著者
福嶋 祐介 犬飼 直之
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

粉雪雪崩の流動機構と発生機構が同じ固気混相流である吹雪の流動と密接に関連していると考え、一連の研究を推進した。モデルとして、これまで保存性サーマルや定常の泥水流で実績のあるk-ε乱流モデルを用いた。偏微分方程式の離散化と数値解法にはSIMPLE法を用いた。まず、吹雪の解析では拡散方程式の解法で不可欠な底面での境界条件について考察した。その結果勾配型あるいはフラックス型で与えられる境界条件として雪の連行係数を用いる方法がもっとも合理的であることを示した。これを南極みずほ基地で観測された吹雪データと比較し、風速分布、飛雪流量の分布に対して合理的な結果を与えることを明らかにした。また、現地観測結果と数値解析を組み合わせるで雪粒子の密度と雪の連行係数が算定できることを示した。雪崩については、傾斜面上のサーマルの流動と酷似していることから、保存性傾斜サーマルの解析を基礎として、上流部で塩水サーマルとして発生した流れが斜面上の固体粒子を巻き上げ、さらに自ら加速する"Ignition Condition"が現れる泥水流に置き換えて数値解析を行った。この結果、底面上の固体粒子の直径がある程度小さいとIgnition Conditionを満たし、流下方向に加速する現象があることを初めて見出した。このようにサーマルが加速する場合には、塩分濃度の等濃度線の時間変化は保存性の場合とかなり異なり、斜面方向に平坦な形状を示すことが明らかになった。一方、土砂の等濃度線の形状は塩分濃度の等濃度線とはその形状がまったく異なり、プルームの先端部の形状に近いことを明らかにした。さらに、固体粒子を浮遊する流れの相似則についてさまざまな議論があることから、傾斜サーマルについて、保存性と非保存性の二つの場合についてスケールを100倍に替えた数値解析をおない、サーマルの流動に及ぼすスケールの効果について議論した。その結果、保存性傾斜サーマルでは適切な無地元化を行うとスケールにかかわらず相似な流動となることを実証した。一方、非保存性の場合には、スケールが異なると流動特性に顕著な違いが現れることを確認した。したがって、吹雪や雪崩の流動特性を明らかにするためには、現地規模の数値解析を行うことがもっとも有効であることが示されたといえる。またスケールが異なった場合の底面での条件については十分な検討がなされていないことから、この条件を明確にすることの重要性を明らかにした。
著者
小島 陽 落合 鍾一 福沢 康
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

機能的かつ機械的性質に優れたウィスカ強化アルミニウム合金複合材を得るには、製造法がポイントとなり、いかにウィスカを均一に分散させるかにある。現在のところ製造法には、大別して鋳造法と粉末冶金法がある。本研究では、粉末冶金法でウィスカ強化アルミニウム合金複合材を得る製造工程を確立し、複合材の特徴である耐熱性、耐摩耗性にも優れた高性能製品の作製のための基礎データを集め、また得られた複合材の高温特性を調べ、金属組織学的立場から高温特性と金属下部組織との関連を明らかにすることを目的とした。本研究に用いた粉末法は、SiCウィスカとA6061アルミニウム合金粉末を混合後、ホットプレスで一次成形した後さらに熱間押出しを行ない複合材を製造し、機械的特性や摩耗特性について調べた。特に、SiCウィスカの前処理、アルミニウム合金粉末の粒度、混合方法の影響について調べ、複合材の製造における問題点を考察した。本研究で得られた成果をまとめると以下のとおりである。SiCウィスカに前処理を施して、44μm以下のアルミニウム合金粉末を用いることにより強度は向上した。混合方法としてボールミルを用いると、ウィスカの体積率で5%、マグネットスターラを用いるとウィスカの体積率で2%までの複合材で強度の向上がみられた。混合方法によりウィスカの損傷や分散状態に差が生じ、これが強度に大きな影響を及ぼしていることが示された。また、ウィスカの損傷は、押出し工程までに激しくなり、アスペクト比も混合方法などに関係なく一定となった。SiCウィスカ強化アルミニウム合金複合材は、ウィスカ体積率10%で耐摩耗性が母材のアルミニウム合金の約3倍と非常に大きな結果となり、耐摩性材として有効であることが明らかとなった。
著者
TANSURIYAVONG Suriyon
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、双方向映像通信を利用したコミュニケーションにおいて,効果的に状況映像を伝えつつ,かつプライバシの保護手法を確立することを目的としている.具体的には,(1)状況映像の中から個々の人物像を実時間で自動的に抽出・認識・追跡する手法を確立し,(2)個々の人物像の細部を加工し隠蔽表示が可能とする制御機能を実現し,(3)プライバシ保護機能を組み込んだ双方向映像通信システムを構築して運用実験を行い,システムの有効性を確認することである.研究実績:(1)動画像処理装置IMPA-VISINを利用した人物像の実時間抽出手法の確立背景差分法と移動方向コードを組合せてビデオ映像から人物像を実時間で自動的に抽出する手法を確立した.(2)IDバッジを利用した人物の認識実験名札サイズの紙に印刷してIDバッジを作成し,認識用のビットパターンを決めて,画素の輝度の差を利用してビットパターンをIDバッジの背景から抽出し,ラベリング処理を行って,ビットパターンのコードを認識する実験システムを構築した.(3)人物の顔画像を利用した人物の認識実験多重解像度モザイク化処理を利用し,正面顔から12×12,合計144次元の顔部品特徴ベクトルを求め,それらから顔辞書を作成した.入力映像から実時間で自動的に正面顔を抽出し,モザイク化処理を施して顔辞書と照合し,人物を認識するシステムを構築した.(4)同一人物の追跡と人物隠蔽実験上記の(1)の抽出結果を利用して,人物像のラベリング処理をし,フレーム間での変化を追いつつ,同一人物を追跡しながら隠蔽表示できるシステムを構築した.隠蔽表示方法としては,シルエット表示,名前付きシルエット表示,名札シルエット表示及び透明人間表示を用いた.上記の(2)又は(3)と組み合わせて,識別した人物の名前と各隠蔽表示方法で,状況映像における人物のプライバシ保護手法を開発した.さらに,運用実験を行いシステムの有効性を確認した.(5)2000年9月13日に長岡技術科学大学で開催された電子情報通信学会オフィスシステム研究会で研究成果を発表した.(6)2001年11月16日にOrlando Florida, USAで開催されたWorkshop on Perceptive User Interfaces(PUI'01)にて研究成果を発表した.
著者
岩橋 政宏
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

従来の監視カメラは常に我々を写し続け、受信者に対して被写体の細部までを克明に伝えてしまう。いわば被写体の気持ちを無視した映像通信システムとなっている。これに対し本研究では、映りたくない人は自動的に隠す、いわば見られる人の気持ちを反映するプライバシー・コンシャスなビデオ通信方式を開発し、これをもって国際交流に貢献することを目的としている。1年目は、1)映像中から人物領域を抽出し、2)カメラからの距離に応じて人物ごとの透明度を決め、3)必要最小限の情報のみを圧縮符号化および伝送し、4)受信側で透明人間を映し出す方法を提案した。提案手法はとくに、画像符号化の国際標準であるJPEG2000(JP2K)の要素技術を活用しているため、世界的に普及しているIPコアなどのハードウェア・ソフトウェア資産を活用でき、開発期間の短縮や製品コストの削減が可能となる優れた特徴を有している。2年目は、5)本システムをDSPによりハードゥェア実現し、6)諸般の利用形態における改善点を明らかにし、システムの実用化を目指した評価実験を行った。既存の画像認識モジュールと既存の画像符号化モジュールを単に組み合わせるだけでは学術的な特色があるとは言えない。本研究では、7)JP2K画像符号化国際標準の要素技術を活用し、8)認識処理にフィードバックすることで人物領域や透明度を決定する。このような点で学術的に特色があり独創的であると言える。結果として、認識と符号化の協調技術が開発され、小型で省電力な知能ビデオカメラの開発が期待できる。更にはこれを太陽電池と風力発電で駆動することで、プライバシー・コンシャスな環境調和型モニタリング・システムを構築できる、あるいは、人に緊張感を強要しない遠隔共同研究空間を提供できる、等の意義を有する。
著者
下村 匠 細山田 得三
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、飛来塩分環境下におかれた構造物が受ける環境作用を実験室内において再現する装置を作製することを目的としている。平成19年度より製作に着手した実験装置が、平成20年度に完成し、予定通りの性能を発揮することが確認され、有効な実験を行うことができた。実験装置は、断面1m×1m、一周約10mの風洞の中に、プロペラ、塩水粒子発生装置を組み込んだもので、風洞内に設置したコンクリート供試体に、設定された量の飛来塩分を連続的に作用させることができる。このことにより、実環境下ではさまざまな不確定要因の影響を受けるため精度のよいデータの取得が困難であったコンクリートに到達する飛来塩分量とコンクリート内部へ浸透する塩分量との関係が、理想的な条件下で測定することができる。合理的で実現象をよく表す塩分浸透の境界条件の形式の検討、理想的な飛来塩分環境下におけるコンクリート中の拡散係数など、この装置により明らかになることは多いと期待される。水セメント比が40、50、60%のコンクリート供試体に、本装置により継続的に飛来塩分を作用させ、定期的に供試体内部の塩分量の分布を測定した結果から、ボルツマン変換を用いてコンクリート中の塩分拡散係数を塩分濃度の関数として求めた。塩分濃度が増加するにつれて拡散係数が小さくなる結果が得られた。塩分拡散係数のより的確な表現方法の検討は、本装置を用いた今後の継続研究課題である。また平成20年度には、本装置を用いた応用研究として、飛来塩分にさらされたコンクリート構造物の表面を高圧水で洗浄することにより塩分侵入抑制効果が得られるかどうかを実験的に検討した。洗浄頻度が多いほど、内部への塩分侵入を抑制する効果が認められた。
著者
梅村 晃由 谷内 宏 内倉 章夫 白樫 正高 AKIO Uchikura HIROSHI Taniuchi
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

二年間にわたり、装置の設計、試作、実験を繰返えした結果として、まず水力輸送の各装置について、(1)雪分率測定機:管内を流れる雪水混合体中の雪の割合いを、試料を採取することなく、連続的に測定する装置として、実用化の目途を得た。(2)雪分率調整機:管内を流れる雪水混合体から水のみを抽出する(あるいは水を加える)ことにより、それより下流の雪の分率を調整する装置として、実用化の目途を得た。(3)雪押込機:雪を水と混合してポンプに吸い込ませるための攪はん混合装置の制御系の改善を行った。また市販のスラリーポンプの雪水混合特性を調べ、雪の水力輸送に適するものを選んだ。両者を結合して、市民の使用に適する雪押込機を製作した。つぎに、これらの装置を組合わせて、高い雪分率の輸送実験を行い、雪水二相流の流動特性について、つぎのような点を解明した。(1)流速一定の条件の下の、高い雪分率における直管内圧力損失(2)仕切り弁における圧力損失と閉塞の発生機構(3)雪塊の間欠的投入に伴う、輸送系内の雪分率の変動挙動開発された装置の市内現場における実用試験は、小雪年が続いたため、山から雪を運んで行われ、つぎのことを確認した。(1)装置は所期の輸送能力を有する。(2)閉塞は管路の収縮部における雪塊の停滞によって起る。(3)雪の投入を制御するための警報装置は所期の作動をする。しかし、この装置を市民に使ってもらって、稼動率や信頼性を知る試験は小雪のため行うことができず、今後の課題として残された。
著者
梅村 晃由 松本 昌二
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

豪雪都市において, 雪害を経済的に評価する根拠を確立するために, 都市のある地域で, ある時刻に何円の損害が生じているかを雪害度と定義し, これを積算する方法を先に提案した. 今回は, この方法を長岡市の代表的な商業地区, 工業地区および住宅地区に適用し, その有用性を検証した. このとき, 毎日の積雪の変化を推計するための除排雪分析法を導入し, 毎日の雪害度の変化を気象や除排雪作業の条件と関係づけて試算するようにした. 主な結果はつぎのようにまとめられた.(1)観測地点は, 2km×5kmの平坦な市街地の中にあるにもかかわらず, 自然積雪深には, 場所によってかなりの差がみられた. 一般に, 繁華街では積雪が少なく, これは地域暖房および自動車の排熱が融雪を促進しているものと考えられる.(2)商業地域では, 除雪が頻繁に行われ, 堆雪深は他の地域より低い状態に保たれた. このため除雪費用が高くなり, その分, 他の地域と比べて雪害度があがったと考えられる.(3)自動車および歩行者の交通量は, 全ての地域でほとんど積雪の影響を受けておらず, 商業地域では, むしろ自動車交通量が増加する傾向さえみられた. 一方, バイクや自転車は, 積雪深が増えるにつれて交通量が減少することがわかった. これより, 本年度のような小雪のときは, 有雪時と無雪時で道路の利用率の変化はなく, 除排雪に要する費用が雪害度の主要部分をなすことがわかった.(4)上記の結果は, 62年冬および63年冬のデータに基づいているが, この年はそれぞれ数年に1度, 2年に1度の小雪年であり, 雪害度の検証のためには, さらに, 大雪年についての調査が必要である.
著者
塩田 達俊
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

高分解能な分光システムは基礎科学から応用まで幅広いニーズがある。これまで分解能1MHz、計測範囲100GHzと高性能なシステムが実現されているが、光周波数標準や物理化学過程の追跡などの進展のためにさらに性能の向上が望まれてきた。申請者は課題実施までに単側波(SSB)光変調器を用いて光周波数を高精度に且つプログラマブルに制御してスペクトル計測システムの実現を図ってきた。本研究課題では、SSB光変調器スペクトル計測システムの分解能を向上し、これまでの周波数制御システムをベースにして、新たに周波数安定化した光源を導入してシステムの性能を発展させることを目的とした。平成19年度は、前年度までに構築した高分解スペクトル計測システムの計測範囲の広帯域化をはかった。また、光変調器を用いたシステム全体を構築して計測精度の確認を行った。具体的には5THz以上の周波数帯域を示す光周波数コムを光源として光フィルタにより個々のピークを切り出し、光変調器による高精度な光周波数掃引を行う実験系を構築した。光ファイバとインライン半透鏡を組み合せて構築した1MHz線幅の共振器の透過スペクトルを計測することで、実測値として1MHzの分解能を確認した。さらに、H^<13>C^<14>Nガス(圧力約1Tprr、長さ約80cm)を用いた繰り返し計測から1MHz以下の光周波数計測精度を得た。また、光フィルタの掃引による光周波数コムのピークを選択することで1THz以上の計測帯域を得ることを確認した。
著者
高橋 勲 蘇 貴家 近藤 正示
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

フライホイールをバッテリーに代るエネルギー貯蔵要素とした高性能長寿命無停電電源を試作、開発することを目的とする。主な成果は、1.10kw1分のシステムについては本予算以外の物で、試作は完了しているがまだ、真空システムに問題があり実験には入っていない。2.真空の問題についてはチタンから高性能のジルコニウムゲッタに変更し、3ヶ月ほど運転試験を行なったがOリング、容器(鋳物製)よりのリークが確認され現在ステンレス等用いて対策中である。3.IGBTを使用し16kHzのスイッチングで無騒音化し(従来品の5dB減)、かつソフトスイッチングで損失を減らしフアンレス、長寿命化を図った。その結果、フィン温度を13℃下げることができた。4.寿命が短く大型の電解コンテンサを除去するため、電解コンテンサレスインバータを採用した。コンテンサ容量は停電時からの立ち上げでも200μF以内で可能でフイルムコンテンサの使用が可能となった。5.電流追従速度の改善の結果、整流器負荷で出力電圧歪を1%にでき、かつ中性点電圧制御の結果トランスレス化が可能となった。6.上記の手法を用い入力力率99%以上が1/5負荷以上の領域で達成できた。7.寿命に関係のあるフォトカプラをパルストランスと放電回路を併用したもので取り換え全システム15年以上の長寿命化を達成できた。8.効率94%が目的(市販品90%以下)で、スイッチング損失回収回路、アモルファスリアクトルなど採用したが93%が限度であった。9.フライホイール電動発電機に直接トルク制御を用い回転センサレス化を図り、真空容器の設計を簡単にし真空度を高められる構造にできた。などの成果が得られた。試作予算、真空系に問題はあり主に5kWのシステムで実験を行なったがほぼ所定の目標を達成できた。