著者
小林 弘 川島 康代 竹内 直政
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.153-160, 1970-12-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
17

本研究はコルヒチン処理とair-drying法によりフナ属魚類の体細胞の染色体を観察した.その結果, 金魚, キンブナ, 宮崎系ギンブナ (雄の1個体を除く), ヨーロッパブナ等の染色体数はいずれも100で, 核型分析の結果も一致し, metacentricは10対で20個, submetacentricは20対で40個, acrocentricは20対で40個の染色体よりなり, acrocentricのほぼ5対目の染色体にはsatelliteが認められた.また核学的には雌雄の問では差異は認められなかった.一方関東系ギンブナ30個体中の28個体は染色体数が156で, 核型分析の結果, metacentricが17対で34個, subrnetacentricが31対で62個, acrocentricが30対で60個であった.また残りの2個体では206の染色体数が数えられ, その核型分析の結果は, metacentricに22対で44個, submetacentricに41対で82個, acrocentricに40対で80個の染色体があり, acrocentric中にはsatelliteが認められた.以上の結果より, 関東系ギンブナはフナ属魚類中に生じた3倍体および4倍体に相当するものではないかと考え, これが関東地方のギンブナに雌のみを生ずる原因と関連をもつものではないかと推測した.
著者
淀 太我 井口 恵一朗
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-54, 2003-05-23 (Released:2011-07-04)
参考文献数
19
被引用文献数
4

To elucidate the feeding habits of smallmouth bass Micropterus dolomieu in Japanese inland waters, the stomach contents of fish from Lakes Aoki and Nojiri, Nagano Prefecture, differing in catchment landscape, were analyzed. Specimens were collected from May 2000 to October 2001 in Lake Aoki and from June to December 2000 in Lake Nojiri. Prey importance was estimated from an index of relative importance (IRI, (percent of prey number+percent of prey weight) ×frequency of prey occurrence). The main prey in Lake Aoki were pond smelt (Hypomesus nipponensis) and a cyprinid (Tribolodon hakonensis), and in Lake Nojiri, a shrimp (Macrobrachium nipponense) and goby (Rhinogobius sp.). Aquatic and terrestrial insects were also important prey in spring and summer in both lakes. Principal prey changed ontogenetically from small bottom-dwelling an-imals (gobies or aquatic insects) to larger limnetic fish in both lakes. The results suggested that smallmouth bass will have deleterious effects on differing animal groups with growth.
著者
L.Humphreys Robert Moffitt Robert B. Seki Michael P.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.357-362, 1989

ミズワニ科シロワニ属の<I>Odontaspis noronhai</I> はこれまで大西洋からのみ報告されていた (holotypeのものとほとんど同じ歯列をもつインド洋あるいは南シナ海でとれたと思われる一組の顎の報告はある).今回ハワイ島の南西550kmの地点でマグロ延縄にかかつた個体が採集されたので, その測定値と粛列について他海域のものと比較し報告する.標本は北海道大学水産学部に保管されている.
著者
仲谷 一宏 白井 滋
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.37-48, 1992

1978年から3年間, 沖縄舟状海盆, 九州-パラオ海嶺, 茨城県から青森県に至る本州北部太平洋の陸棚斜面 ("東北沖") および北海道のオホーツク海陸棚斜面 ("オホーツク沖") において大規模な深海魚類調査が実施された.<BR>この中で著者らは軟骨魚類の分類を担当し, 水深200-1, 520mで行われた584回のトロール漁獲物から61種の深海底生性軟骨魚類を確認した.また, これら4調査海域に加え, 尾形他 (1973) による日本海でのトロール結果を含めて軟骨魚類相を検討した結果, 各々の海域が極めて特徴的な深海底生性軟骨魚類相を有することが判明した.沖縄舟状海盆は非常に多様性に富んだ海域で, 多くの分類群に含まれる37種が出現し, 中でもツノザメ科, トラザメ科, ガンギエイ科 (ガンギエイ属) の種が優占した.九州-パラオ海嶺には10種が出現し, その構成は比較的単純で, ツノザメ科の種が多く, ガンギエイ科やギンザメ目の種は出現しなかった.東北沖では18種の比較的多様な軟骨魚類が出現し, ガンギエイ科 (ソコガンギエイ属) の種が最も多く, ツノザメ科の種がこれに次いだ.オホーツク沖では軟骨魚類の構成は単純で, 2科9種が見られ, その大部分がガンギエイ科 (ソコガンギエイ属) の種であった.日本海で見られた深海底生性軟骨魚類はガンギエイ科 (ソコガンギエイ属) のドブカスベ1種で, 他の海域に比較して極めて貧弱な軟骨魚類相であることを再確認した.<BR>これらの深海底生性軟骨魚類の分布は琉球海溝等の超深海や対馬海峡等の浅海域の存在により大きな影響を受けているものと考えられる.また, 多くの種が出現した分類群について日本周辺での分布の特徴を調査した結果, 伊豆半島から南下する巨大な七島・硫黄島海嶺が深海底生性軟骨魚類の分布に大きな影響を与えているものと考えられた.すなわち, 中浅海部を黒潮で覆われた七島・硫黄島海嶺は, 特に北方産の深海底生性軟骨魚類の多くにとって越え難い障壁となっており, さらに, 北方深海底生性の魚類一般についてもこの考えを拡大できる可能性が示唆された.
著者
高村 健二
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.107-114, 2005

Black bass populations in Japan were examined for haplotypes of the mitochondrial DNA control region. A total of 16 haplotypes were found from specimens representing 47 Japanese populations and five in North America. Ten haplotypes were of largemouth bass, and three each of Florida bass and smallmouth bass. Three clades of largemouth bass haplotypes were identified by the maximum parsimony method, the major clade comprising seven haplotypes including those found in Iowa, Minnesota and Ontario (USA). It ispossible that the haplotypes of this clade in Japan originated from the introduction of fish from Minnesota and Pennsylvania in 1972. One of the remaining clades, comprising a single haplotype and found throughout Japan, may have originated from the introduction of cultured fish from California in 1925. All of the seven largemouth bass haplotypes found in Japan were found in Lake Yamanaka, such haplotype richness reflecting active stockings of largemouth bass from other Japanese freshwaters. Florida bass haplotypes were found only in Lake Biwa, indicating that the haplotypes could function as indicators of future invasion of black bass into other waters with the active transplantation of other commercially valuable fishes from the lake.
著者
明仁親王 目黒 勝介
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.409-420, 1988-02-25 (Released:2011-02-23)
参考文献数
6

ロクラハゼ属の2種キマダラハゼAstrabe flavima-culataとシマシロクラハゼA. fasciataを新種として記載し, シロクラハゼ属の模式種であり, 今まで知られていた唯一の種であるシロクラハゼA. lactisellaについても前2種と比較して再記載した.キマダラハゼは日本産魚類大図鑑の中でキマダラハゼAstrabe sp.として明仁親王 (1984) が解説を付したものである.キマダラハゼはシロクラハゼとは眼の上縁にある皮摺の上後部が突出しないこと, 縦列鱗数が少ないこと, 第1背鰭前方と腹部に鱗があること, 胸鰭基部を通る白色横帯の幅が狭いこと, 生時には胸鰭基部を通る白色横帯を除き, 暗褐色地に黄色模様が見られることによって区別される.シマシロクラハゼはシロクラハゼとは横列鱗数が少ないこと, 体側の鱗のある部分の幅が狭いこと, 胸鰭基部を通る白色横帯の幅が狭いこと, 第1背鰭前部から体の腹側に向かう白色横帯があることによって区別される.この度の標本の調査により, Snyder (1912) が記録した種子島産のA. lactisellaはキマダラハゼであり, 本間・田村 (1972) が記録した佐渡島達者産のシロクラハゼはシマシロクラハゼであることが判明したので, これらの標本はそれぞれの種の副模式標本とした.また道津.塩垣 (1971) がシロクラハゼとして扱ったものの中, 標本を調べることが出来た鹿児島県馬毛島産のものはキマダラハゼであった.長崎県野母崎産の標本は図から判断するとシマシロクラハゼと考えられる.明仁親王 (1984) のシロクラハゼとキマダラハゼの解説は訂正しなければならない.
著者
Barry C. Russell
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.295-310, 1993-02-15 (Released:2011-02-23)
参考文献数
80

日本および台湾産イトヨリダイ属Nemipterus Swainson (イトヨリダイ科) の分類学的再検討を行った.1新種を含む以ドの9種が認められ, 検索表, 標徴, シノニムを提示した: ヒライトヨリN.aurora [新種, 従来N.delagoae Smithとされていたもの], ソコイトヨリN.bathybius Snyder, モモイトヨリN.furcosus (Valenciennes) [従来, 誤ってN.peronii (Valenciennes) とされていたもの], ニジイトヨリN.hexodon (Quoy et Gaimard), ニホンイトヨリN.japonicus (Bloch), シャムイトヨリN.peronii (Valenciennes) [従来N.tolu (Valenciennes) とされていたもの], トンキンイトヨリN.thosaporni Russell [従来N.marginatus (Valenciennes) とされていたもの], イトヨリダイN.virgatus (Houttuyn), ヒトイトヨリN.zysron (Bleeker) [従来N.metopias (Bleeker) とされていたもの].新種ヒライトヨリはインド洋のN.bipunctatus (Ehrenberg) (N.delagoaeはジュニアシノニム) によく似るが, 背鰭と臀鰭の色模様により容易に識別される.すなわち, ヒライトヨリの背鰭のほぼ中央沿いに1本の幅広い橙黄色帯が走り, 臀鰭のほぼ中央沿いには1本のレモン色のすじが走るのに対し, N.bipunctatusの背鰭は一様なバラ色であり, 臀鰭には2-4本の黄色い波状のすじがある.
著者
岩槻 幸雄 木村 清志
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.475-477, 1994-02-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

先島諸島の西表島から2個体のワキグロアカフエダイ(新称)(Lutjanus timorensis)が採集された.本種の出現は, 日本沿岸水域からは, 初めての記録であり, 本種の最も北限の記録になる.本種は, 胸鰭の脇および基部が黒色を呈し, 背鰭, 轡鰭及び尾鰭軟条部縁辺が非常に尖ることと縁辺の黒い幅が明瞭に広いことにより, 同属の類似する赤いフエダイ類と容易に区別される
著者
Russell Barry C.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.295-310, 1993

日本および台湾産イトヨリダイ属<I>Nemipterus Swainson</I> (イトヨリダイ科) の分類学的再検討を行った.1新種を含む以ドの9種が認められ, 検索表, 標徴, シノニムを提示した: ヒライトヨリ<I>N.aurora</I> [新種, 従来<I>N.delagoae</I> Smithとされていたもの], ソコイトヨリ<I>N.bathybius Snyder</I>, モモイトヨリ<I>N.furcosus</I> (Valenciennes) [従来, 誤って<I>N.peronii</I> (Valenciennes) とされていたもの], ニジイトヨリ<I>N.hexodon</I> (Quoy et Gaimard), ニホンイトヨリ<I>N.japonicus</I> (Bloch), シャムイトヨリ<I>N.peronii</I> (Valenciennes) [従来<I>N.tolu</I> (Valenciennes) とされていたもの], トンキンイトヨリ<I>N.thosaporni Russell</I> [従来<I>N.marginatus</I> (Valenciennes) とされていたもの], イトヨリダイ<I>N.virgatus</I> (Houttuyn), ヒトイトヨリ<I>N.zysron</I> (Bleeker) [従来N.metopias (Bleeker) とされていたもの].新種ヒライトヨリはインド洋の<I>N.bipunctatus</I> (Ehrenberg) (<I>N.delagoae</I>はジュニアシノニム) によく似るが, 背鰭と臀鰭の色模様により容易に識別される.すなわち, ヒライトヨリの背鰭のほぼ中央沿いに1本の幅広い橙黄色帯が走り, 臀鰭のほぼ中央沿いには1本のレモン色のすじが走るのに対し, N.bipunctatusの背鰭は一様なバラ色であり, 臀鰭には2-4本の黄色い波状のすじがある.
著者
矢野 和成 室伏 誠
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.129-136, 1985-08-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1

駿河湾, 戸田沖の水深225mから270mの問で行われた底曳網により得られた1新種オロシザメOxynotusjaponicusを記載した.本種は第1と第2背鰭の棘が僅かに後方に傾いていること, 第1と第2背鰭の先端から棘までの前縁部の長さが棘先端から背鰭基底までの垂直高よりも非常に長いこと, 第1背鰭と第2背鰭の間の長さが第2背鰭の基底長の1.3倍であること等により同属の他種と明瞭に区別された.さらに本属は太平洋の北半球からの初記録となった.
著者
千葉 晃 本間 義治
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.287-294, 1981

日本海側の新潟海岸へ多数漂着するハリセンボンの新鮮標本8尾を用い, 各種器官を組織学的に観察した.いずれも軽い飢餓状態にあったが, 消化器官, 膵外分泌組織, 腎臓, 脾臓には異常は認められなかった.しかし, 肝臓への脂肪蓄積が著しく, 胸腺は退行状態にあり, ブロックマン小体にはグルカゴン産生細胞が優勢で, 甲状腺は機能低下状態を示した.一方, 間腎腺とスタニゥス小体は正常と目された.卵巣は卵黄形成前の若い卵母細胞によって占められていたが, 精巣の大部分は精原細胞よりなるものの, ごく少数の精子もみられた.視床下部神経葉には相当量の神経分泌物が検出されたが, 腺性下垂体の生殖腺刺激細胞はまだ小さく, 染色性に乏しかった.冬季に対馬暖流によって日本海の高緯度地域まで運ばれるハリセンボンは, 前報 (Chibaetal., 1976) したアミモンガラ同様に未熟の若魚で, 死滅回遊の過程にあると思われるもので, ほぼ同様の組織像を示していた.
著者
岩田 明久 田 祥麟 水野 信彦 崔 基哲
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.373-388, 1985

ドンコ属魚類について再検討を行なった.ドンコ属は, 1) 平坦な骨質隆起が眼の背方上部にある事, 2) 前鯉蓋骨に棘がない事, 3) 鋤骨に歯がない事, 4) 鯉孔は目の下方まで達する事, 5) 両眼間隔は眼径より大きい事, 6) 背鰭前部鱗は鼻孔後方に達する事などで定義される.該当種はドンコ<I>Odontobutis obscuraobscura</I>, カラドンコ<I>O.o.potamophila</I>, セマダラドンコ (〓〓〓〓〓) <I>O.o.interruta</I>, コウライドンコ (〓〓〓) <I>O.platycephala</I>で, 後2者は新亜種および新種である.<BR>コウライドンコ<I>O.platycephala</I>は頭部側線感覚系において孔器列の前鯉蓋下顎列上にふたつの感覚管を有する事で他のドンコ類と明瞭に区別される.カラドンコ<I>O.o.potamophila</I>とセマダラドンコ<I>O.o.interrupta</I>は眼上列眼後部にひとつの感覚管を有する事でドンコO.o.obscuraと区別される.カラドンコ<I>O .o.potamophila</I>とセマダラドンコ<I>O.o.interrupta</I>の差異は前者が眼下列と眼前頬縦列が分離しているのに対し後者はそれらが連続している事である.また後者の体側背方には明色帯が縦走するため暗色鞍状斑は中断される.<BR>ドンコO.o.obscuraは西日本, カラドンコ<I>O.o.potamophila</I>は中国に分布する.セマダラドンコ<I>O.o.interrupta</I>は韓国の錦江以北の西韓亜地域に, コウライドンコ<I>O.platycephala</I>は東韓亜地域北部を除く韓国全土にそれぞれ分布している.
著者
Rüdiger Riehl
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.374-380, 1991-02-28 (Released:2011-02-23)
参考文献数
27

Heterandria formosaの雄化した雌1尾を初めて記載する.全長は28mmで, 雄成魚 (17-20mm) と雌成魚 (35―40mm) の中間である.長さ約5mmの雄化した轡鰭が明らかである.鰭条IとIIは正常雄にみられるように縮小している.鰭条III-Vは伸長して発達中の交接肢の特徴をみせる.残りの鰭条VI-VIIIは “正常鰭” に相当する形状をみせる.正常には鰭条IVの前枝から派生する属特異的な鈎状部と鰭条IVの後枝に生ずる基部鋸歯状突起は, 雄化した臀鰭にはない.妊娠した正常雌にある妊娠斑点もみられない.H. formosaの雌における雄化臀鰭の形成の原因はまだ不明である.雄化した雌は雌雄同体型の生殖腺を持っており, その生殖腺には卵巣組織域と精巣組織域が容易に識別される.卵巣組織域がより大きい.この生殖腺の卵母細胞は薄い卵膜を持ち卵黄形成の段階にある.精子とセルトリ細胞が存在する精巣組織域は卵巣組織全体に分布している.生殖腺内に成熟卵母細胞と成熟精子の双方が同時に出現するというこの様式の雌雄同体現象は魚類では注目に値するものである.
著者
上野 紘一 小島 吉雄
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.338-344, 1984

韓国産コイ科魚類9種の核型 (複相数, 構成) は次のように分析された.<BR>コウライヒガイ, 50, 18m+32sm・st, ヒメハヤ, 50, 10m+34sm・st+6a, カネヒラ, 44, 10m+20sm・st+14a, ズナガニゴイ, 50, 16m+28sm・st+6a, ヤガタニゴイ, 50, 12m+28sm・st+10a, ヤガタムギツク, 50, 14m+30sm・st+6a, ホタテコブクロカマツカ, 50, 18m+32sm・st, ムナイタカマツカ・50, 18m+32sm・st, サメガシラ, 50, 12m+30sm・st+8a.<BR>多型現象ならびに異形対染色体は種を通じて観察できなかった.核学的分類学の立場からすると, <I>Mbroco</I>属は<I>Phoxinus</I>属に統一できること, ドジョウカマツカ類は類縁的にドジョウ科よりもコイ科に近いことを論じた.
著者
松浦 啓一
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.29-33, 1994

モヨウフグ属の新種<I>Arothron caeruleopunctatus</I>アラレフグ (新称) を4個体の標本に基づいて記載した.本種はケショウフグ<I>Arothron mappa</I>とモヨウフグ<I>A. stellatus</I>に似ているが, 頭部と体に多数の淡青色点があること, 眼の周囲に同心円状の淡青色値と褐色線があることによって識別される.本種は西部インド洋のレユニオン, 中部インド洋のモルジブ, 西部太平洋のインドネシア, パプアニューギニア, 日本, マーシャル諸島およびサンゴ海に分布する.
著者
Hin-Kiu Mok
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.507-508, 1988-02-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
4

アカタチ科は多くの骨学的特徴をソコアマダイ科と共有することが知られている.しかし, 共有形質として示されてきた特徴は, これら2科に特有ではない.このためソコアマダイ科をアカタチ科に含めることに関しては, 議論の余地があった.これら2科の骨学的特徴を調べたところ, 前部脊椎骨の上肋骨と肋骨に特異な形質が見いだされた.前部脊椎骨の数個に付く上肋骨と肋骨は基部で癒合する.この形質はスズキ目の他の科では知られておらず, 派生的特徴と考えられるので, アカタチ科とソコアマダイ科は単系統群を形成する.
著者
中野 繁 Kurt D. Fausch 田中 哲夫 前川 光司 川那部 浩哉
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.211-217, 1992-11-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

モンタナ州フラットヘッド川水系の山地渓流において, 同所的に生息する2種のサケ科魚類ブルチャーとカットスロートトラウトの採餌行動と生息場所の利用様式を潜水観察し, さらに両種の食性を比較した.一般に, 渓流性サケ科魚類の採餌行動は, 水中の一地点に留まり泳ぎながら流下動物を食べる方法 (流下物採餌) と河床近くを広く泳ぎ回りながら底生動物を直接つつくようにして食べる方法 (底生採餌) に大きく二分される.両種の採餌行動は大きく異なり, ブルチャーの多くの個体が主に後者の方法を採用したのに対し, 観察されたすべてのカットスロートトラウトは前者を採用した.両種間には明瞭な食性の差異が認められ, ブルチャーがコカゲロウ科やヒラタカゲロウ科幼虫等の水生昆虫を多く捕食していたのに対し, カットスロートトラウトは主に陸性の落下昆虫を捕食していた.両種が利用する空間にも明らかな差異が認められ, ブルチャーが淵の底層部分を利用するのに対し, カットスロートトラウトはより表層に近い部分を利用した.また, 前者が河畔林の枝や倒木の下などの物陰を利用するのに対し, 後者は頭上の開けた場所を利用した.両種の食性と流下及び底生動物の組成を比較した結果, 両種間に見られた食性の差異は採餌行動の差異のみならず採餌空間の違いをも反映しているものと考えられた.このような種間における資源の分割利用が両種の共存を可能にしているものと考えられた.
著者
鈴木 亮
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.235-238, 1973-12-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14

タモロコとカマツカの間で得た交雑種は, 正逆組合せ共に対照よりも生残率が高く, 特にタモロコ♀× カマツカ3の場合は, 3年魚における平均体重が対照よりも大きかった.雑種のほとんどは雄であり, それらは成熟期に達しても精子を放出しなかった.雑種の生殖腺は発達が悪く, 体重に対する生殖腺の重量比が対照におけるよりもはるかに小さく, 逆に体重に対して, 内臓を除去した部分の重量比は対照よりも大きかった.すなわち, 不妊雑種では, 可食部の増重がみられた.もしもこのことが, マス類やコイなどにおいてもみられるならば, 食用魚生産の上において, 不妊雑種が有利であるように思われる.
著者
落合 明 楳田 晋
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.50-54, 1969-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

1967年9月より11月にかけて高知県須崎市および宿毛市に来遊する成熟ボラの産卵生態を調査し, 次の事項が明らかとなった。1。雌は大型で体長43cm以上はすべて雌であり, 雄は小型で, 31cm以下はすべて雄によって占められる。2。卵径は9月16日に0.22mm, 10月17日に0.37mm, 11月2日に0.66mm, 11月4日に0.68mmとなり, 11月に入って急激に肥大した。3.カラスミとなる雌個体は10月22日に出現し, 11月4日に最も多く, 11月10日には全く認められなかった。4.カラスミとなる卵巣は体長35cm前後で約200g, 45cm前後で約350g, 50cm前後で500gに達し, 生殖腺指数は10-21の間にある。この卵巣卵は成熟過程からみて卵黄球期のものに相当する、5。雌の放卵魚体は11月2日に出現し, 11月10日まで認められた。6。成熟精巣は卵巣のように肥大せず, その重量は159前後にとどまった。7、成熟の雄は10月18日に出現し, 11月10日まで認められた、8。須崎湾における産卵期間はせいぜい20日前後である、
著者
千田 哲資 木村 基文 神原 利和
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.193-198, 1993-08-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
15

西太平洋熱帯域 (北緯2-8°, 東経140-151°) の漂流物に随伴する魚類の胃内容物を調べたところ, 5つの科に属する6種がウミアメンボを食していた.特にギンガメアジでは61%と高い捕食率であったのに対し, 他の7種のアジ科魚類130個体では1個体のツムブリを除いてウミアメンボを食していたものはなかった.捕食されていたウミアメンボのうち, 66.4%がツヤウミアメンボ, 32.7%がセンタウミアメンボであった.それぞれ1個体の雌雄のコガタウミアメンボが, 従来本種は分布していないと考えられていた北緯4。付近で採集したギンガメアジ (別個体) に食されていた.魚類は海鳥とともに, 遠洋性ウミアメンボの無視できない捕食者であると考えられた.