著者
板場 一訓 今井 正義
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.307, 2011

【目的】<BR>スポーツにはスポーツ特有の姿勢(フォーム)があり競技中の姿勢制御の熟達は精巧なパフォーマンスを決定する。本研究ではスポーツの中でも特に野球の重心制御の特徴を足圧中心の変化から検討することである。<BR>【方法】<BR>対象は、野球選手(以下:B群)、運動習慣のない男性(以下:C群)の10名とした。また、利き脚は右脚である。課題は、重心動揺計(GS-11・アニマ社製)を使用し、裸足で開眼と閉眼で1分間の両脚立位・左右片脚立位保持をそれぞれ3回施行し、単位時間軌跡長、単位面積軌跡長、左右方向・前後方向の最大振幅を算出した。統計処理は、One-way ANOVAを適用し多重比較検定にTukey Kramer法を適用し有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】<BR>B群、C群の左右の片脚立位において、単位面積軌跡長、左右方向最大振幅、前後方向最大振幅は、それぞれ閉眼時に比べ開眼時は有意に短かった。B群・C群間の比較では、C群に比べ、B群が有意に短かった。単位時間総軌跡長は、B群は、左右片脚立位において、開眼時、閉眼時共に有意差はなかった。しかし、C群は、右片脚立位では有意差はなかったが、左片脚立位で開眼に比べ閉眼が有意に短かった。<BR>【考察】<BR>B群は利き脚に比べ非利き脚関係なく足圧中心がコントロールされ、C群は利き足での開眼・閉眼は左右差なく重心動揺をコントロール行っているが、非利き脚では重心動揺が増加している。野球は投球動作やバッティング動作など不安定な状況でのパフォーマンスが求められ、足底からのフィードバック制御、フィードフォワード制御がより必要になる。また、足底からのフィードバックに加え、足部周囲や他関節からの体性感覚・固有感覚からのフィードバックが必要であるため、競技の特性上、体性感覚系をより活性化させていることが考えられる。野球に限らず直接地面と接する競技では足部が安定することで身体運動軸が安定し、運動の伝達効率が改善され重心位置のコントロールが行いやすくなり、下肢、骨盤、体幹、頸部の筋が効率よく反応し、高いパフォーマンスを発揮しやすい状態になっているものと考える。<BR>【まとめ】<BR>野球選手は高いパフォーマンスを発揮するために運動習慣のないものに比べ、高度な姿勢制御を行っている。
著者
東 庸介 鉄口 宗弘 難波 康太 三村 寛一 渡邊 俊之
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.175-185, 2011-02

本研究は,大学野球選手を対象に,体幹機能が投球動作にどのような影響を及ぼしているのか検討することを目的とした。その結果,遠投上位群は,身長,体重,胸囲,体組成項目全ての筋肉量,メディシンボール投げ,背筋力において有意に高い値を示し,腹筋・背筋バランス上位群は,コントロールにおいて下位群よりも有意に高い値を示した。 以上より,優れた投球動作には下肢で生まれた力を上肢に伝達するための体幹の動きが重要であることが示唆され,強く速いボールを投げるためには腹筋・背筋の筋力が重要となるが,正確なボールを投げるためには,腹筋と背筋をバランス良く鍛えることが重要であると示唆された。
著者
木暮 洸一 川越 誠 桜井 進一 久保 雅義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1388, 2012

【はじめに、目的】 投球動作の中で肩・肘関節に疼痛を訴えることの多い相はLate cocking期以降とされており,その動作はそれ以前の動作の影響を受ける.先行研究ではLate cocking期以降に加わる肩・肘関節へのストレスの大きさに影響を及ぼす要因として,肩・肘関節角度などが挙げられている.さらに,投球動作は下肢からの連動動作であるため,上肢だけではなく下肢にも注目する必要がある.下肢の中でも指導者や野球の指導書の多くがよく指摘するリードレッグ(前方に踏み出す足)の接地位置は投球におけるコントロールに強く影響を及ぼすため,接地位置のズレに気がつかないままの投球の継続は,コントロールを意識しすぎるが故に手投げとなることが多いとされている.そこで,本研究は野球の投球動作においてリードレッグの接地位置の違いが,肩の負荷および上肢への運動伝達に重要な体幹回旋角度にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした.【方法】 対象は,本研究に同意の得られた野球経験のある男性10名(平均20.4±0.5歳)とした.課題動作はリードレッグの接地位置をスタンスレッグの踵からホームベースへ引いた直線上に接地するストレートステップ(以下SS位),その線より3塁側に接地するクロスステップ(以下CS位),1塁側に接地するオープンステップ(以下OS位)とする3つの肢位での全力投球とし,各課題それぞれ3球ずつ行い,その動作を三次元動作解析装置(VICON Mx,Oxford Metrics社製)およびスピードガン(Bushnell社)で計測し解析した.サンプリング周期は250Hzで,身体の各部位に38個の反射マーカーを貼付した.解析対象としては,各課題間で球速の差を最小限にするため,球速が近い値のデータを選択し,リードレッグ接地時(以下FP)・肩関節最大外旋時(以下MER)・ボールリリース時(以下BR)の関節モーメントおよび関節角度(オイラー角を用いて表現)を算出した.統計処理には, 3条件間での比較に一元配置分散分析を用い,その後の2条件間の比較に多重比較検定のTukey-Kramer法を用いた(有意水準5 %).なお,肩関節の負荷については,肩関節モーメントと肩関節角度・体幹回旋角度を求め,それらから推定するものとした.【倫理的配慮、説明と同意】 被験者に対しては,研究内容と研究で起こりうる危険因子について口頭及び書面を用いて十分に説明を行い,同意を得た.【結果】 肩関節モーメントでは,MER時のSS位の内旋モーメントがCS位に比べ有意に高い値を示した(p<0.05).その他の肩関節モーメントでは有意な差は見られなかった.MER時の肩関節外旋角度は,SS位に比べCS位が,OS位に比べCS位が有意に高い値を示した(p<0.01).MER時の肩関節外転角度は,CS位がSS位・OS位に比べ有意に低い値を示し(p<0.05,p<0.01),SS位はOS位に比べ有意に低い値を示した(p<0.01).BR時の肩関節外転角度は,CS位がSS位・OS位に比べ有意に低い値を示した(p<0.05,p<0.01).肩関節水平内転角度は,MER時においてCS位がSS位と比較し有意に低く(p<0.01),BR時においてCS位がOS位と比較し有意に高い値を示した(p<0.01).FP時の体幹回旋角度では,SS位に比べCS位が,OS位に比べCS位が有意に低い値を示した(p<0.01).BR時では,SS位に比べCS位が,OS位に比べCS位が有意に高い値を示した(p<0.01).【考察】 算出した肩関節モーメントは,関節角度に比べデータの標準偏差が大きく,MER時のSS位・CS位間の内旋モーメントのみに有意な差が認められた.関節角度では,CS位が他の2条件に比べ有意に肩関節最大外旋角度が大きく,肩関節外転角度が小さくなった.また,リードレッグ接地時の体幹回旋角度でもCS位は他の条件に比べ小さい値となった.肩関節最大外旋角度が大きく,肩関節外転角度が小さい肘下がりでの投球動作はいずれも肩関節への負荷が増大するとされている.さらに,リードレッグ接地時の体幹回旋角度の不足は体幹と上肢の運動伝達を低下させ,代償的に肩にかかる負荷を増大させることから,CS位では肩の負荷が増大していると考えられる.以上のことから,3条件の中で一番肩関節への負荷が大きいのはCS位での投球動作ということが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 リードレッグ接地位置を修正することは,高速運動となるLate cocking期以降の動作を修正するよりも比較的容易であり,投球動作の指導上,有用なものになると考えられる.
著者
林 誠 岩間 圭祐 小野 誠司 木塚 朝博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.225_3, 2017

<p> 野球の投手における練習方法に、自分自身のピッチングフォームを巻き戻すように行う逆再生シャドーピッチングがある。本研究では、逆再生シャドーピッチングの達成度が高い者と低い者との間で投球能力に違いがあるのか、さらに、動作をイメージする能力が逆再生シャドーピッチングや投球能力に影響しているか否かを明らかにすることを目的とした。大学野球投手16名(平均球速;128±5.6km)を対象者とし、逆再生シャドーピッチングテストとコントロール及び球速を測るピッチングテスト、動作のイメージの鮮明さを測るイメージテストの3つを実施した。その結果、逆再生シャドーピッチングの達成度が高い者と低い者はそれぞれ8名ずつであった。また、高い者は低い者と比べ球速に有意な差はないがコントロールにおいて有意に優れ、イメージテストにおいても有意に得点が高いことが認められた。これらのことから、逆再生シャドーピッチングの達成度が高い者はコントロールと動作を鮮明にイメージする能力に優れていることが明らかとなった。したがって、自分自身が投げるピッチング動作を鮮明にイメージできることが、コントロールの向上につながっている可能性がある。</p>
著者
林 誠 小野 誠司 木塚 朝博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.223_1, 2018

<p> 野球の投手に求められる能力の1つに、コントロールの精度の高さがある。わずかな身体の乱れがコントロールの乱れを引き起こすため、コントロールに優れる者は自己の身体の乱れを認知しフォームを修正している可能性がある。先行研究において、関節位置再現や筋出力再現など自己の動作を正確に認知する能力を評価するテストが行われているが、それらの成績とコントロールの精度との関係を調査した研究は行われていない。そこで本研究では、コントロールの精度の高い者と低い者とで運動感覚や動作を鮮明に想起するイメージ能力に違いがあるのかを明らかにすることを目的とした。大学野球投手16名を対象に、関節位置再現テストと筋出力再現テストに加え、動作を鮮明に想起する能力を評価するVMIQ-2テストと頭の中でイメージを操作する能力を評価するCMIテストを行った。その結果、コントロールの精度が高い者と低い者とで関節位置再現と筋出力再現には有意な差は認められなかったが、CMIテストで有意な差が認められた。これらから、単一の関節の位置や筋出力を再現する能力より、一連の動作をイメージする能力がコントロールに影響することが明らかとなった。</p>
著者
蔭山 雅洋 中本 浩揮
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.209_2, 2018

<p> 本研究は、通常のボールとは大きさの異なるボール(質量は同じ)を投球することによる短期的な適応が、その後の通常ボールでの投球に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。被検者は、高校生の野球投手9名(年齢16.3±0.7歳、身長174.3±4.7cm、体重66.2±4.7kg、野球歴6.8±1.9yr、投手歴4.1±2.2yr)を対象とした。適応期間では、通常用いるボール(基準球)、基準球よりも-10%小さいボール、基準球よりも+10%大きいボール(+10%球)を使用し、各15球投球させた。なお、実験は、各条件の効果が互いに影響しないよう、3日に分けて実施した。適応の評価は、適応前後におけるボール速度およびコントロール誤差(捕手が構えた位置からキャッチした位置までの距離)とした。その結果、+10%球を用いた適応では、適応後のコントロール誤差は適応前よりも有意に減少した(P<0.05)。この結果より、+10%球を使用した短期的な投球適応は、投手のボールコントロールを即時的に向上させることが示唆された。そして、内省報告より、+10%球は回転数や回転軸などの球質を向上させる可能性が示唆された。</p>
著者
山田 紀史 前川 直也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.124_2, 2019

<p> 野球の内野手の送球ミスの発生および目標からのバラツキがなぜ生じるかを、捕球・送球動作中に認知課題を課すデュアルタスクを用いて解明することを試みた。実験は10名の大学野球部員を対象にし、前方12mにある3つの目標点へ送球し、ボールの当たった位置と送球動作を2台の高速度カメラを用いて撮影した。その際、目標を事前に告げるコントロール試技、捕球時と捕球から送球への切替時に目標を告げそこへ送球する整合試技とその逆へ送球する不整合試技を行なった。</p><p> 目標からのバラツキは、ボールが当たった座標を主成分分析における第一主成分軸に変換し、そこでのバラツキで評価した。なお、目標点から0.5m以上離れた試技を失敗試技とした。その結果、コントロール試技、整合試技、不整合試技の順にバラツキと失敗の発生割合の増加、および送球時間の増加がみられた。よって、捕球・送球動作中に認知課題が課されると捕球動作の時間が延び、送球動作が変化する。その変化により、コントロールの精度が低下し送球ミスが発生する可能性があり、認知課題が課されるタイミングが遅いほどその影響が大きいと考えられる。</p>
著者
小林 仁
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.63-73, 2016-03-31

1927年に初演された 「ショー・ボート」 は、 「それまでのミュージカルの概念、 常識を破った画期的なもので、 今日アメリカのミュージカル史に新しい時代の到来をもたらした歴史的な作品」と位置付けられている。 1 脚本・作詞のオスカー・ハマースタインII世と作曲のジェローム・カーンは、エドナ・ファーバーによる原作の小説に描かれた人種問題を始めとしたアメリカの現実的、社会的問題を、登場人物のキャラクターにおけるその独創的な脚色、および黒人音楽であるブルースをとり上げるなどした音楽の多様性をもって、それまで娯楽として位置づけられていたミュージカルとは違う、物語と音楽が文字通り融合した全く新しい演劇の形態としてまとめあげ、芸術性の確立と舞台表現の可能性を示した。 本稿は、作者であるオスカー・ハマースタインII世 (脚本・作詞) とジェローム・カーン (作曲) それぞれがこの作品において成し遂げた芸術的手法と、 この作品がミュージカル史において果たした役割を通して、その革新性を考察するものである。
著者
植松 敬三
出版者
無機マテリアル学会
雑誌
無機マテリアル (ISSN:2185436X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.263, pp.332-339, 1996-07-01 (Released:2011-03-07)
参考文献数
12
著者
謝 順景
出版者
日本熱帯生態学会
雑誌
Tropics (ISSN:0917415X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.33-58, 2001 (Released:2009-01-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

アフリカは南半球で最も大きな大陸である。南端と北端の 2 つの温帯地域とそれに連なる 2 つの亜熱帯地域に挟まれた熱帯地域を包含し,極めて多様な生態環境を有する。この地理的条件により,アフリカの人々は多様な作物を栽培する。 6 億 5500 万人の大部分は農業に従事している。 主要食物はソルガム,ミレット等の雑穀類,とうもろこし,小麦,大麦,米,それにヤム,キャッサパ,サツマイモ,ジャガイモ,タロイモ等の根塊茎作物から成る。アジア稲は大変好まれている穀物であり,現在では,在来のアフリカ稲にとって代わっている。 人口増加による食糧問題を解決するために,ほとんどのアフリカの国々が稲の生産増に尽力している。稲の生産増を助けるために,台湾はアフリカへ技術援助を行った国の一つである。ここ 39 年間,国際技術合作委員会および国際合作発展基金会を通して,台湾は多数の専門家および技術者を世界の 6 つの地域に派遣した。台湾のアフリカにおける農業合作計画は. 1961 年に農業技術協力隊をリベリアに派遣して始まった。翌年. 23 の協力隊(合作隊)チームがアフリカ各地に配置されたが,後にそのうちいくつかは撤退した。 2001 年 5 月 1 日現在. 8 つの協力隊チームがアフリカ諸国で活動している。 この 39 年間で,アフリカの農業技術協力隊チームは 24 カ国,全体で 28,631 ha の水田を開墾した。同時に 18,244 ha の濯瓶水田に導水するため,全体で 2,784 km の濯淑用水路と1,524 km の排水用水路も建設した。このような稲作基盤の整備はアフリカ諸国の稲生産力を向上させるのに重要な役割を果たした。 報告では,アフリカ 13 カ国(ブルキナファソ,チャド,中央アフリカ共和国,カメルーン,ベニン,ガンピア,ギニアビサウ,コートジボアール,リベリア,マラウイ,モーリシャス,ニジエール,セネガル)における台湾の稲生産技術援助に焦点を当てた。アフリカにおける稲作技術協力におけるこれらの台湾モデルの過去の成果と技術移転時の諸問題を考察して,今後の技術協力の展望を述べた。
著者
荻津 格
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.548-555, 2012-08-05 (Released:2019-10-18)
参考文献数
147

X線回折実験に基づくホウ素元素固体の結晶構造解析の研究報告によれば,常圧で熱力学的に安定であることが知られているβホウ素の六方晶単位胞中には423の原子位置があり,そのうち約320が占有される.このうち23原子は126原子位置にほぼ乱雑に配置される.最近の理論研究は,この不完全原子占有状態は化学結合数と価電子数の整合性を保つのに必要不可欠であること,また,不完全占有状態は,スピン氷などに特異な低温物性をもたらすことで知られている幾何学的フラストレーションを持つこと,などを明らかにした.本記事では,歴史的な背景を交え,ホウ素研究におけるごく最近の展開,熱力学の第三法則との関係,などを解説する.
出版者
太田記念美術館
巻号頁・発行日
1990