著者
芹沢 浩 雨宮 隆 伊藤 公紀
出版者
横浜国立大学
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-14, 2010

湖沼生態系におけるアオコの異常発生現象には次のような特徴が見られる.(1)アオコをもたらす究極の原因である湖の富栄養化は10年,20年の歳月をかけて徐々に進行するが,異常発生はある年を境に,突然,勃発する(突然の出現).(2)アオコの主成分であるミクロキスティスなどの藍藻類は冬から春にかけて湖底で越冬し,夏の訪れとともに湖面に上昇して「水の華」と呼ばれる異常発生現象を引き起こす(年周期の垂直上下運動).(3)夏季の異常発生期間でもこれらの藍藻類は,午前中,水面に出て光合成を行い,午後になると水中に沈んで栄養分を吸収する(日周期の垂直上下運動).本論文ではタイムスケールの異なるこれら3つの特徴を的確に説明するために,栄養塩と藍藻類から成る2つの2変数数理モデル(常微分系の基本モデルと偏微分系の垂直上下運動モデル)を作成する.そして,これらのモデルを用いて,神奈川県の『県営水道の水質』に記録された相模湖と津久井湖におけるアオコの異常発生現象を解析する.本論文の解析によれば,相模湖・津久井湖水系は1970年代前半に澄んだ状態から濁った状態にレジームシフトし,以後,現在まで濁った状態,すなわち夏季のアオコ異常発生が恒常化した状態が継続している.またアオコの発生量,発生パターンに関する年ごとの変動には日照量,水温,栄養塩濃度といった生態学的,生理学的要因とともに,台風の襲来,ダムの放流といった自然,人為による偶発的要因も深く関与していると考えられる. Algal blooms in lake ecosystems are characterized by the following features. (1) Algal blooms break out abruptly at a certain time, although eutrophication, the ultimate cause of algal blooms, proceeds gradually over decades (abrupt outbreak of the phenomena). (2) Cyanobacteria such as Microcystis, the main component of algal blooms, overwinter at the bottom of the lake during the winter season, rising up to the water surface with the coming of summer (annual vertical migration). (3) During the summer season, cyanobacteria repeat vertical movement for photosynthesis at the surface from the midnight to the morning and for nutrient uptake at subsurface layers from the afternoon to the early evening (diurnal vertical migration). In this paper, we present two mutually correlated mathematical models, a fundamental model described by ordinary differential equations and a vertical migration model described by partial differential equations, both of which consist of nutrients and cyanobacteria. These models can properly explain the above-mentioned phenomena that differ in time scales. Then, we apply these aquatic models to the algal blooms in Lake Sagami and Lake Tsukui, referring to "Quality of prefectural tap water" published by Kanagawa Prefecture. According to our analyses, the aquatic system of these lakes has undergone the regime shift from the clear-water state to the turbid-water state at the beginning of the 1970s, with the turbid-water state continuing until now. In both lakes, the abundance of cyanobacteria and the seasonal algal blooming pattern differ considerably depending on years, indicating the significant influence of accidental factors of the natural and the anthropogenic origins such as the advent of typhoon and the water discharge from the dam as well as the ecological and the physiological factors such as the light intensity, the water temperature and the nutrient concentration.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.491, pp.181-183, 2000-03-13

「単純なミスが原因だった。本当に情けない」。KDDの田中孝司情報システム部担当部長は,こう言ってがっくりと肩を落とした。田中担当部長が落胆するのも無理はない。いく多の困難を乗り越え,1999年10月にやっとの思いで稼働にこぎ着けたばかりの新基幹系システム「統合KISS」で,電話料金の"誤請求"というトラブルが発生したからである。
著者
水谷 仁 MIZUTANI Hitoshi
出版者
名古屋大学法政国際教育協力研究センター(CALE)
雑誌
Nagoya University Asian Law Bulletin (ISSN:21881952)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.76-95, 2016-09-30

Presents paper focuses into Yoshimi Takeuchi's unique perception of Korea as a specific actor in Asia. Takeuchi was a Chinese literature researcher and thinker who approached Asia and its regions in his own individual way. Understood by almost all of studies on Takeuchi, his image of Asia is connected with China. However his image of Asia also includes Korea. In present research, I specifically inquire into Takeuchi's personal understanding of Korea. His image of Asia was recognized under the scheme "invasion-resistance as opposed concept". Takeuchi recognized that relation between Europe and Asia is less geographical and essential, but more correlative. It would mean that Europe could only be viewed as Asia's invader. On the other hand, Asia is just able to exist as the resistant against Europe's invading. This image of Asia as resisting actor was generalized in his understanding from works of Chinese novelist Lu Xun. Also Takeuchi's perception of Asia was understood as actor indivisible from China. However, a part from that, he had another unique view on Asia that was drawn from the perspective on Korea. In his exploring woks on Asia, Takeuchi basically expressed solidarity to other Asian nations, which were subjected to Japanese aggression. Based on this awareness, he constructed his main idea on Korea. According to Takeuchi's image, Korea was being, which was forcibly subjected to Japanese role. In particular, Korea was caught between two main problems. First, strict Japanese rule based on military occupation. Second, Japanese language, which got the status of Lingua Francas. Thus, Korea was placed in an ambiguous condition. Therefore, there appeared a big gap between Japanese and Koreans, in terms of understanding each other's problems and views on them. Takeuchi described Korea as existence suffering from Japanese dominating. Additionally, he demanded self-reflection to Japanese with his image of Korea.
著者
山﨑 雄大 常松 展充 横山 仁 梅木 清 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.30(第30回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.43-48, 2016 (Released:2016-11-28)
参考文献数
10

本研究では2020年の東京五輪のマラソンコースを例に,その温熱環境を把握することを目的として,MRT(平均放射温度)とWBGT(湿球黒球温度)の計算事例を示した。その結果,猛暑日である2015年8月7日の事例では,9時~18時でコース上のすべての地点でWBGTが熱中症の「厳重警戒レベル」とされる28℃以上となった。またコース上にできる影によってWBGTが低下するため, 日陰を選んでコース取りをすることにより,ランナーが体感するWBGTを低く抑えられる可能性が示唆された。
著者
加藤 博章 KATO Hiroaki
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
2018-03-26
著者
鈴木 石根
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

藻類は、効率的にバイオマスを生産でき、かつ食糧生産と競合しないバイオマス源として近年注目を集めている。しかしながら、藻類は細胞内にオイル成分を蓄積するため、培地から希薄な細胞を濃縮・回収し、抽出を行う必要がある。また、細胞の培養には窒素・リン酸・金属イオンなどの培養液成分が必要である。本研究は、藻類による有用物質の大量生産の問題点を解決するため、ラン藻細胞に導入した複数の代謝系をファージに倣って時系列的に誘導制御することにより、有用バイオマスであるアルカン/アルケンの高生産系を構築、藻類ファージのように細胞内の高分子を分解し、最終的に可溶化させることで、培地中に生産したオイル類やアミノ酸・ヌクレオチド類を放出させることで、オイル成分の回収を容易にするとともに、培地を再利用する方策を開発することを目的とする。ラン藻細胞の代謝改変のシグナルとして、植物ホルモンのエチレンとエチレンのセンサーをラン藻の内在性のヒスチジンキナーゼと連結して、エチレンセンサーとして働くキメラセンサーの作製を試みた。ラン藻細胞内でのキメラセンサーのア構築はこれまでに複数の成功例があり、機能未同定のHik2の機能解析については今年度公表した1)。シロイヌナズナの5種のエチレンセンサーから、キメラ型のヒスチジンキナーゼを作製し、ラン藻内で発現させた結果、3種は常に活性型で2種は常に不活性型であったが、いずれもエチレンの刺激に応答しなかった。植物のエチレンセンサーは、3回の膜貫通ヘリックスとGAFドメインをシグナルインプットドメインに持ち、膜貫通ドメインにエチレンの結合部位が存在する。5つのセンサーは互いに相同性が高く、アミノ酸配列の比較だけからは、活性の有無を評価できなかったため、様々なドメイン交換体を作製した。その結果、活性型の膜貫通ドメインを有することが、活性の発現に必須であることがわかった。
著者
藤森 弘子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.144, pp.73-84, 2010 (Released:2017-04-15)
参考文献数
18

国際交流基金(2008)によれば,世界における日本語教育上の一番の問題点は「適切な教材の不足」だという。教員養成における「教育実習」では,既に日本語教育の多様化に対応するための取り組みや成果に関する報告が多数なされているが,教材不足問題を解決できるような人材の養成に着目した事例はまだ少ないと思われる。本稿では,「教材研究」において協働作業とピア評価を取り入れた授業実践を紹介し,受講者のアンケート評価をもとにその意義と問題点を考察した。その結果,ペア協働作業で行った教科書分析と,日本人学生と留学生との協働作業に対する評価が最も高かった。アンケート記述の内容分析からは,互いに協働することの意義に気づき,ピア評価によってより深く教材を観察・分析する意識が高くなっていることがわかった。これらは教材研究の専門的力量の形成につながっていくと思われる。教員養成では,このような活動主体で協働作業を取り入れた授業が有効に働くのではないかと言える。
著者
池田 康弘
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌
巻号頁・発行日
vol.2017, no.636, pp.636_25-636_43, 2017

本論文は,弁護士費用保険をめぐる潜在的被害者(依頼者,被保険者),弁護士,保険者の各当事者の利得構造とインセンティヴ,および当事者間の情報の非対称性に着目し,民事紛争への保険利用の問題と課題を経済分析によって明らかにする。<br />本論文の考察の内容と主な結論は次のとおりである。まず,保険料が保険数理的に公正であれば,弁護士費用保険に加入未加入のどちらにせよ,依頼者の期待利得は同じとなり,弁護士探索の費用がかからない分だけ被保険者の期待利得が高くなる。次に,成果報酬の弁護士報酬は,弁護士のモラルハザードを阻止できるが,契約の不完備性から生じる被保険者と弁護士の暗黙の結託による弁護士費用の過大請求がもたらされ,他方,固定報酬の場合は,弁護士のモラルハザードを回避できないが,社会的に正の外部性をもつ事件にも対処できる可能性がある。さらに,弁護士費用保険は経済的利益をめぐる原告弁護士と被告弁護士間の暗黙の結託の余地を与え,弁護士費用の過大請求を許してしまう可能性をもつ。最後に,依頼者保護基金の制度設計は良質な弁護士を確保するための装置となりうる。保険制度設計者は上記の事柄を認識する必要がある。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1428, pp.10-11, 2014-08-04

チーフディレクターの杉田氏のコメントが番組HPで紹介されているが、「兄弟はいくらケンカをしても翌朝には仲直りができるし、親には言えないことも言える関係性がある。だからこそ、相手の傷をえぐるような本質的な言葉を言い合うことがある」と書かれてい…
著者
久保田 尚之 小坂 優 謝 尚平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<br><br><b>1.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b>はじめに</b><b></b><br><br>夏季西部北太平洋域での代表的な気圧配置パターンとして、フィリピン海と日本付近の気圧偏差が逆相関の関係で年々変動するPJ (Pacific-Japan)パターンが知られている(Nitta 1987, Kosaka and Nakamura 2010)。これは、日本の猛暑・冷夏と関連して、東アジア太平洋域の夏の天候を広く特徴づける気圧配置パターンである。本研究では、PJパターンを地上データから定義することで1897-2013年のPJパターンを再現し、夏期西部北太平洋域のモンスーン活動の数十年変調を調べた。<br><br><b>2</b><b>.</b><b> </b><b> </b><b>データと解析手法</b><b></b><br><br>夏期(6-8月平均)の高度850hPaの渦度(10-55&deg;N、100-160&deg;E)の主成分解析(1979-2009年のJRA55データ)で得られた第1モードと海面気圧との相関を図1に示す。PJパターンに対応したフィリピン海と日本付近の逆相関が顕著な2地点(横浜と恒春)を選び、6-8月平均の気圧差(横浜-恒春)をPJパターンの指標(PJ指標)と定義した。解析期間は1897-2013年。<br><br><b>3.&nbsp; </b><b>結果</b><br><br>PJ指標が正の年は日本、韓国、中国の長江流域で乾燥・猛暑となり、フィリピン海のモンスーン活動が活発で雨量が多く、沖縄や台湾を通過する台風活動も活発になる(図2)。一方で、負の年は逆に北日本の冷夏、日本のコメが不作、長江の洪水と対応する。PJ指標との関係を1897年まで遡ると、PJ指標とENSOとの相関が高いのは1970年代後半以降であることがわかる(図3)。それに対して1940年代から1970年代は不明瞭、さらに1930年代、1910年代より前は再び明瞭になる関係があり、数十年の間隔で明瞭、不明瞭の時期が繰り返されていることがわかる。日本の夏の気温、コメの収穫量、台湾や沖縄を通過する台風数とPJ指標との関係もまた、明瞭、不明瞭の時期を数十年間隔で繰り返しており、変化が一方向でないことから、変調が地球温暖化よりも気候の自然変動に伴うことを示唆している。
出版者
巻号頁・発行日
1786
著者
大山 梓
出版者
明治大学社会科学研究所
雑誌
明治大学社会科学研究所紀要 (ISSN:03895971)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.5-28, 1973-02-01

二次大戦に際しマレー半島で,ジョン・ダリー大佐が組織し,日本軍と対戦した華僑部隊の勇敢な交戦は戦史に著名である。当時の南洋華僑の人口は千五百万人と云われ,または二千五百万とか云われている。かかる南洋華僑が抗日に蹶起したのも,通説によると満洲事変以来,または支那事変以来とされている。本稿は更に溯り,南洋華僑の政治意識を,大清帝国が滅亡し,中華民国が成立した以後の大正時代を考察することにした。即ち一次大戦の日本参戦,二十一ケ条の要求,山東問題の懸案,利権回収の問題に対し,南洋華僑の動向を研究することにある。昭和時代・満洲事変・支那事変・大東亜戦争に際し,南洋各地の華僑の激烈な排日思想は,既にその萠芽が大正時代の排日と排貨,経済断交の運動にみられるからである。
著者
堤朝風 原輯
出版者
英大助
巻号頁・発行日
vol.[2], 1836
著者
薬師寺 文華
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.121-124, 2016

<p>米国ボストンにあるハーバード大学、Broad Institute of Harvard and MITのStuart L. Schreiber教授が主宰する研究室に2年間留学する機会を得た。Schreiber研究室は、現在Broad Instituteの3階にあり、大学研究室の枠を越えた大規模な研究展開を行っている。最近では、ガン細胞における遺伝子発現と低分子化合物に対する感受性との間に相関を見出すことで、化合物の作用機構を考察する計算科学的手法を発表している。Schreiber教授の研究例を含め、大規模データ解析による知見の構築が次世代創薬の流れをつくりつつある。実際にBroad InstituteはGoogle genomicsと提携し、ゲノム解析ソフトGATKをGoogleクラウドプラットフォーム上で使用できるサービスを開始しており、生物医学や創薬研究に与えるインパクトの大きさがうかがえる。Schreiber研究室への留学という好機に恵まれたことに深く感謝し、今後も幅広い研究活動を行えるよう努力を重ねていきたい。</p>

6 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1903年12月05日, 1903-12-05

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1924年12月06日, 1924-12-06