著者
天野 裕久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.202-207, 2018-02-10 (Released:2019-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

米国心エコー図学会(American Society of Echocardiography:ASE)から,心エコー図法による右心機能の評価方法が多数提言されて以来,肺高血圧症における心エコー図による右心機能評価は一般化しつつある.それらの指標を用いたスクリーニング方法と重症度判定について,欧州心臓病学会(European Society of Cardiology:ESC)の肺高血圧症の診断と治療のガイドラインに則り,解説する.
出版者
住吉内記 [ほか写]
巻号頁・発行日
vol.第1軸 三条殿焼討巻, 1700
著者
大黒 徹
出版者
北陸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ファビピラビルは、抗インフルエンザウイルス薬として承認されたが、RNAウイルスに広く効果を示す。そこでファビピラビルとその誘導体で、他のRNAウイルスにどの誘導体が最も効果が高いかを検討した。実験にはポリオウイルスを使用し、薬剤はファビピラビルの6位のフッ素を水素、塩素、臭素に置換した誘導体を用いた。インフルエンザウイルスでは、ファビピラビルより6位を水素置換した誘導体の方が効果が高いという報告があるが、ポリオウイルスでは、ファビピラビルが最も高い抗ウイルス効果を示し、塩素置換、臭素置換体は効果が低かった。ファビピラビルやその誘導体の抗ウイルス効果はウイルスの種類によって異なると考えられる。
著者
田中 晋平
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.158-178, 2020-07-25 (Released:2020-08-25)

本論は、小川プロダクションによる映画『どっこい!人間節 寿・自由労働者の街』(1975年)の上映活動がどのように展開されたのかを検討する。1960年代末から成田空港建設反対闘争の現場となった三里塚を記録してきた小川プロが、次に映画撮影に選んだ空間が東京の山谷、大阪の釜ヶ崎と並ぶ日本三大寄せ場と呼ばれた横浜・寿町だった。小川プロのスタッフは、寿町に住み込み、日雇労働者らのインタビューを行い、失業者たちが無事に冬を越すため、寝る場所や炊き出しを確保する「越冬」の様子などを記録した。『どっこい!人間節』の上映の詳細については、公開当時に小川プロが発行していた『小川プロニュース』などの資料に基づき、調査を進めた。本作は、その上映を介して、不況下の寿町における厳しい現実を各地域に伝え、野宿者への新たな支援運動を生むなど、メディアとしての役割を担ったといえる。また会場は祝祭空間のように演出され、上映だけでなく、寿町の住人を撮影した写真の展示、映画に登場するミュージシャンの演奏も行われた。ただ、公開時における上映の方向性も要因となり、『どっこい!人間節』が記録した寿町の住人たちの生の形式に、これまで議論が及ぼされてこなかったのではないかという問題提起も本論では行う。
著者
阪本 裕文
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.114-136, 2020-07-25 (Released:2020-08-25)
参考文献数
37

映画監督・映像作家の松本俊夫は前衛記録映画論を提唱し、新理研映画に在職していた期間(1955~1958)に実質的な初監督作品として『銀輪』(1956)、正式な監督作品として『マンモス潜函』(1957)、『伸びゆく力』(1958)、『日本原子力研究所第二部——JRR-2』(1960、松本の参加は1958年末まで)を監督した。これまで『銀輪』以外の作品は所在不明であり、新理研映画時代の松本の仕事は不明な部分が多かった。しかし本論に係る調査により『マンモス潜函』と『日本原子力研究所第二部』は現存が確認され、『伸びゆく力』は別の監督によって改作された改訂版の現存が確認された。本論はこれら新発見作品を主な分析の対象とする。まず第1節にて、新理研映画時代に併行して起こった教育映画作家協会での政治的論争と新理研映画の労働争議が、松本の中で結びついていたことを論証する。続く第2節にて、新発見作品の演出を個別に分析し、前衛記録映画論を提唱する以前の松本の映画の中に、前衛的な記録的手法の兆候があったことを論証する。最後に第3節にて、実験工房とのコラボレーションである『銀輪』の中で、松本の演出が強く表れている箇所を分析し、『銀輪』と新発見作品の間に連続性が存在することを論証する。これにより本論は、前衛記録映画論の形成過程を明示するという目的を達成する。
著者
藤原 巧未 長尾 和彦
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.501-502, 2019-02-28

日本の学生の学力低下問題の原因の一つとして授業中の居眠りがある。授業中に居眠りをする原因として、ゲームやSNS等の利用による夜更かしや、授業内容が単調でつまらないこと等が挙げられる。一方、米国のローレンス・バークレー国立研究所によると、人間の思考力はCO2濃度が2,500ppmを上回ると急激に低下すると確認された。このことから、居眠りの原因の一つとして室内CO2濃度の影響が関係するのではないかと推測した。そこで、本研究は、教室内の気温、湿度、CO2濃度、授業中に居眠りをしている学生の数を計測し、それらの関係の調査を行った。
著者
東浦 幸平 岡本 隆
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.19-30, 2012-09-28 (Released:2017-10-03)
参考文献数
18

To restore the living attitude of Eubostrychoceras muramotoi Matsumoto, 1967, from the Upper Cretaceous of Hokkaido, Japan, computer simulations based on a newly developed hydrostatic model with hypothesizing negative buoyancy were carried out. The adequacy of restorations was tested by the inclination of ribs which depends tightly on the life orientation of the ammonite during growth. The results of computer simulations suggest that a rapid upside-down of the shell would take place at about one and a half whorls after the shell apex when the ammonite had a small and light phragmocone. This stage corresponds well to the changes in rib inclination observed in the actual specimens, whereas it is significantly late comparative to the previous calculation with hypothesizing neutral buoyancy. These results suggest that E. muramotoi was negatively buoyant and probably had a nektobenthic mode of life. Since the life orientation is essential information for living animals, ammonites would have used it as a "guide" for morphogenesis. The establishment of the new technique covering negatively buoyant shells enables us to make some farther computer simulations in order to understand the meanings of ammonites' shell forms.
著者
濱島 ちさと
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.212-218, 2016 (Released:2018-06-27)
参考文献数
13

「過剰診断」はマンモグラフィ検診の評価に絡み,乳がん検診では重要な検討課題となっているが,すべてのがん検診に生じる不利益である。「過剰診断」とは,がん検診を行うことで,本来は生命予後には影響しないがんを発見することを意味する。がん検診を受診することがなければ,こうしたがんは発見されない。過剰診断により,不必要な精密検査や治療の増加を招く可能性がある。無症状者を対象とするがん検診では,「過剰診断」の可能性が高く不利益が大きいが,「過剰診断」はすべての医療サービスが共通に抱える問題である。「過剰診断」は検診方法ばかりではなく,対象集団の人種やリスク要因も影響する。また,検査の感度,検診の開始・終了年齢,検診間隔も影響要因となる。 過剰診断の推計にはいくつかの方法があるが,現段階では標準化された方法は定まっていない。地域相関研究,時系列研究,コホート研究などの観察研究や無作為化比較対照試験のデータを用いることができる。この他,モデル評価が行われている。 頻回に検診を行うことで過剰診断が増加し,過剰治療を誘発する。がん検診による過剰診断を可能な限り減少させるためには,検診回数を最小限とすることが望ましい。
著者
岡田 唯男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1623-1630, 2012-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
51

学会や専門医の考える理想のアレルギー疾患の診療は,一般的に存在するエビデンス-診療ギャップにより,十分患者に届いていない可能性がある.その理由としてエビデンス・パイプラインにあいた穴としての7つのAが存在し,その穴を塞ぐために様々な工夫と資源投入が必要であり,ジェネラリストとの協働や,ガイドラインの周知度,利用簡便性の向上などへの工夫なくして,その実現は不可能である.
著者
柴田 勝家
出版者
早川書房
雑誌
SFマガジン = SF magazine
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.24-31, 2016-12
著者
池嶋 健一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.342-350, 2018-07-20 (Released:2018-07-27)
参考文献数
48

アルコール性肝障害はその初期像としての脂肪肝からアルコール性肝炎を繰り返して肝硬変へと進行するが,近年増加傾向が注目されている非ウイルス性肝硬変の成因の約半数を占めており,非ウイルス性肝癌の発生母地としても重要である.アルコール代謝酵素の遺伝子多型は飲酒習慣や依存形成に関与する一方,patatin-like phospholipase encoding 3(PNPLA3)などの遺伝子多型が脂肪肝形成から肝病態の進展に関わるリスク因子であることが明らかになっている.アルコール性肝障害の発症・進展には,アルコール代謝過程で生じる活性酸素種(ROS)などによる細胞障害に加えて,腸内細菌叢の変化(dysbiosis)とそれに対する自然免疫系の反応が主軸的な役割を演じていることが明らかにされつつある.