著者
岩本 さき 笠井 新一郎 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 塩見 将志 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-32, 2001-03-31

平成11年度より,香川県坂出市では,1歳6ヶ月児健診で未通過だった子どもの発達状況のフォローを一つの目的として,保健婦と言語聴覚士による2歳児を対象とした発達相談(以下,2歳児相談)を行っている.しかし,実施に際して,評価時間の短さや,子どもの語彙発達を評価する指標がない点が問題として挙げられた.そこで,2歳児相談時にスクリーニングとして使用できる語彙チェックリストを作成することを目的とし,2歳児の語彙発達の現状を明らかにするための調査研究を行った.調査の対象者は,香川県坂出市内の全保育所(12施設)に所属する1歳11ヶ月から2歳11ヶ月の子どもの保護者であり,161名であった.調査においては,名詞・代名詞・抽象語・動詞・形容詞・形容動詞・副詞・感動詞を含む,全語彙数452個のチェックリストを,調査用紙として用いた.分析を加えた結果,2歳児相談でスクリーニングの指標となる平均語彙数は,2歳0ヶ月児で183.9語,2歳6ヶ月児で288.7語であった.また,2歳9ヶ月〜2歳11ヶ月にかけて350語を超えており,グラフはほぼ横這い状態を示した.これらの結果から,今回用いたチェックリストの適用範囲は2歳9ヶ月以前と考察された.
著者
池永 満生 吉川 勲 古城 台 加藤 由美子 綾木 歳一 梁 治子 石崎 寛治 加藤 友久 山本 華子 原 隆二郎 Ikenaga Mitsuo Yoshikawa Isao Kojo Moto Kato Yumiko Ayaki Toshikazu Ryo Haruko Ishizaki Kanji Kato Tomohisa Yamamoto Hanako Hara Ryujiro
出版者
宇宙開発事業団
雑誌
宇宙開発事業団技術報告 = NASDA Technical Memorandum (ISSN:13457888)
巻号頁・発行日
pp.306-338, 1994-10-20

HZE(高エネルギー重荷電粒子)および宇宙放射線の遺伝的影響を調べるため、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の成虫雄と幼虫をスペースシャトル/エンデバー号(STS-47)に搭載し、雄の生殖細胞(精子やその元となる精原細胞など)に起こる伴性劣性致死突然変異と、幼虫の翅原基体細胞に起こる染色体のつなぎかえによる突然変異を調べた。用いた系統は、標準的な野生株(Canton-S)と放射線高感受性株(mei-41)である。各系統で、成虫雄は200匹ずつ、幼虫は約6000匹ずつを搭載し宇宙環境に曝すとともに、ほぼ同数を地上対照群として、宇宙飛行群と同じ環境条件(温度と湿度)で飼育した。宇宙飛行は約8日間であった。帰還した雄のハエは、伴性劣性致死突然変異を調べるため、検出用系統の処女雌に交配し、次々世代で致死遺伝子を保有しているX染色体を検出した。宇宙飛行群の致死遺伝子をもった染色体頻度は、地上対照群の頻度に比べて、野生株では2倍、放射線高感受性株では3倍高かった。幼虫は、帰還時にほとんどが蛹になっており、翌日より徐々に羽化が始まった。羽化した成虫は、順次70%アルコールで貯蔵し、後に翅標本を作成して、染色体突然変異由来の翅毛変異スポットを調べた。野生株では、宇宙飛行群と地上対照群の頻度は、ほぼ同じであった。放射線高感受性株から分離してくるMuller-5個体における頻度は、地上対照群に比べて宇宙飛行群では、1.5倍高かった。しかし、放射線高感受性個体における宇宙飛行群の頻度は、地上対照群に比べて有意に低い頻度を示した。地上対照群に比べて、宇宙飛行群の劣性致死突然変異の高頻度は、生殖細胞において、放射線と微小重力の突然変異誘発作用への相乗効果を示唆している。しかし、この相乗効果は、体細胞の染色体突然変異誘発作用に対しては観察されなかった。
著者
中島 栄之介 松﨑 泰
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.17-26, 2019-01

肢体不自由者教育における対象の変遷と教育的対応上の課題を「重度・重複障害」という言葉に着目して定義とその変遷、学習指導要領上の位置づけを中心に検討した。いわゆる「重度・重複障害」を有する子どもたちの教育は、戦後の福祉制度や特別支援教育の開始時期よりすでに問題になっており制度改革や学習指導要領の改訂ごとに課題とされてきた。特に就学猶予がなくなった養護学校義務化、医療的ケアが話題となっていた特別支援教育の開始時期に課題が顕著になっていた。また、「発達障害」の概念が広がった現行学習指導要領や次期学習指導要領以降には「発達障害」と併せ有する障害、「発達障害」を視野に入れた学びの連続性などが今後「重度・重複障害」を考える上でポイントになると考えられた。
著者
関 和俊 石田 恭生 小野寺 昇 田淵 昭雄
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.113-119, 2007

高所において生体は,いわゆる急性高山病(Acute Mountain Sickness ; AMS)症状に悩まされることが少なくない.動脈血酸素飽和度(SpO_2)を簡易に測定ができるパルスオキシメータは,酸素不足と高所順応の状態を的確に把握し,ヘモグロビンの透過率を測定できる機器であり,最近の登山には必要不可欠な装備とされている.富士山は,海抜3,776mの日本最高峰であり,低圧低酸素環境下にある.本研究では,心拍数,SpO_2およびAMSスコアを用い,富士登山における生体変化を明らかにすることを目的とした.被験者は健康な成人男女26名(男性15名,女性11名)であった.登山中の心拍数およびSpO_2の測定にはパルスオキシメータを用いた.AMSスコアの事後アンケート調査を実施した.心拍数は五合目登山前(88.8±11.8bpm;beats per minute)と比較して,富士山頂(101.2±19.3bpm)において有意に上昇した(p<0.05).SpO_2は,五合目登山前(91.4±2.0%)と比較して,富士山頂(82.1±6.5%)において有意に低下した(p<0.05).AMSスコアは「頭痛」および「めまい及び/またはふらつき」に関して山頂時に有意に高値を示した(p<0.05).このことから,富士登山においても心拍数やSpO_2は高所順化の指標となることを示唆する結果となった.また,SpO_2の測定は富士登山における高所順応が順調に獲得されているかどうかを知るための適切な指標であることが示唆された.心拍数,SpO_2およびAMSスコアを用いることによって,富士登山における急性高山病を事前に防ぐことが可能であると考えられた.
著者
丹羽 博之 Hiroyuki NIWA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-24, 2013-03-31

以前に「大和田建樹作詞「旅泊」と唐張継「楓橋夜泊」-明治唱歌による和洋中文化の融合-」(大手前大学人文科学部論集 第六号 二〇〇六年三月)、「大和田建樹作詞「旅泊」と唐張継「楓橋夜泊」と「灯台守」と英国賛美歌」(第十回東アジア比較文化国際会議(二〇〇八年一〇月 大韓民国 高麗大学)の論において、大和田建樹は唱歌「旅泊」において、「楓橋夜泊」詩を巧みに利用して、明治唱歌として、初めての芸術的な唱歌を作詞したことを述べた。 また、この曲は櫻井雅人氏によって、亜米利加のスクールソング"The Golden Rule"の利用が証明された。その後、「旅泊」の曲は、昭和二十二年文部省の音楽の教科書に「灯台守」として載り、更に同じ題で、韓国に伝わり、日本では殆ど歌われなくなった「灯台守」が今も韓国では歌い継がれていることを述べた。今回の発表では、(1)「旅泊」の題は『唐詩選国字解』の当該詩の解説の冒頭「旅泊ノコトナレバ」を参照して、大和田建樹は「旅泊」の題名を思いついたのではないかと推察した。(2)「楓橋夜泊」詩の日本での受容の例を探し、絶海中津(一三三六〜一四〇五)の詩を初め、五山文学のころから受容されたらしい。その他、日本国使と称して朝鮮半島に渡った玄蘇が一五八〇年に、慶州の奉徳寺の鐘をみて「楓橋夜泊愁眠客」の詩句を詠じた例がある。(3)韓国においては、高麗末の詩人李穡(一三二八〜一三九六)の詩集「牧隠詩藁」(巻十一)の「秋日。奉懐懶残子。因述所懐。吟成 五首(其一) 奉呈籌室」詩に、 「回首天台欲断腸、石橋人影掛夕陽、如今却似寒山寺、半夜鐘声到病牀」とあるのが、現在残る最古の例。(4)「月落烏啼」の名句は已に中唐劉禹錫の「踏歌詞四首(其三)」に、「新詞宛転遞相伝、振袖傾鬟風露前、月落烏啼雲雨散、遊童陌上拾花鈿」の例が見られ、韓国の漢詩に二十例見られる。等の事を指摘した。
著者
北神 雄太
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第72回, no.ソフトウェア科学・工学, pp.475-476, 2010-03-08
著者
日本体育会百年史編纂委員会
出版者
日本体育会
雑誌
学校法人日本体育会百年史
巻号頁・発行日
pp.1876-1941, 1991-10-28

安政4(1857)年から平成3(1991)年までの出来事を記述
著者
折田 明子
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)
巻号頁・発行日
vol.2013-DPS-156, no.26, pp.1-6, 2013-09-04

日本におけるインターネットを利用したコミュニケーションは,匿名性が高いものとして考えられてきたが,ソーシャルメディア,特にソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) は,現実の生活の人間関係を元にしており,匿名性は高いとは限らない.本稿では,大学生を対象にアンケート調査を実施し,が日常的に利用するSNSについて,用途や交流相手と名乗り (実名・仮名) の関係をみた.その結果,主に本人を特定しうる名前によってサービスが利用されており,回答者の約半数は,複数サービスにおいてリンク可能な同じ名前を使い続けていることがわかった.
著者
岡本 恵太
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.45-51, 2020-02

本稿の目的は、教育社会学的なものの見方・考え方を明らかにすることにある。そのための手がかりとして「置き勉」問題を取り上げる。「置き勉」とは、教科書等の学習用具を教室に置いたままにしておくことであり、身体的な負担軽減のために容認する動きが広がりつつある。この問題について以下の二つの見方・考え方を適用する。第一が、教育事象における「あたりまえ」をとらえ直す「価値自由」であり、これにより従来の「置き勉」禁止が価値判断を暗黙の前提とすることが明らかになる。第二が「モデル化」を通して事象の仕組みを探求する「理念型」である。「置き勉」問題に「規範モデル」「解釈モデル」という二つのモデルを適用し、この問題の解決に向けては、規則の強化よりも児童・生徒による「規則についての解釈」を生かすことが有効だと示される。