著者
杉山 卓弥 小幡 拓弥 斎藤 博昭 保木 邦仁 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2009論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, no.12, pp.59-65, 2009-11-06

コンピュータ将棋において,複数のクライアントの意見から1 つの指し手を選択する合議アルゴリズムが注目されている.非常にシンプルな手法ながら,この合議アルゴリズムによって,思考エンジンの性能改善が報告されている.本研究では,各クライアントの指し手に加えて,局面の優劣評価の値も利用する新しい合議法について報告する.正規乱数を用いて局面評価値を修正し生成された複数クライアントから,最大の評価値を付けたクライアントの意見を採用する楽観的合議法を提案し,その有効性と仕組みについて議論する.
著者
小島 秀信 Hidenobu Kojima
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.1261-1279, 2018-03-15

ポランニー晩年の共著『意味』の読解を通じて、彼の暗黙知論、社会論、宗教論を統体的に把握する。
著者
古山 萌衣
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.15-29, 2014-12-30

本論は日本が援助国として深く関わるカンボジアについて、そこでの障害者問題に注目したものである。既存の統計データをもとにカンボジアにおける障害者の現状を分析し、今後の障害者福祉・教育施策の課題について検討を行った。まず、内戦終結からの復興および開発途上にあるカンボジアにおける障害者の実態として、中高年層の男性障害者を中心に、現在も戦争被害による影響が色濃く残っている。一方で、若年層の障害者においては、農村部では医療体制の未整備、都市部では交通事故の増加等を背景とする障害比率が高くなっている。このような現状について、戦争・紛争時代の戦後処理の一環として、地雷・不発弾被害者を含む戦争被害者を中心とした障害者支援施策を図るというこれまでの取り組みから、今後は戦争被害者に対象を限定しない幅広い障害者問題への対応および支援施策の展開とともに、国民生活に関わる社会政策の推進が広く求められるということを主張した。また、カンボジアにおけるインクルーシブ教育の推進について、障害者教育は「Education for All」のコンテキストのなかで議論されるべき課題であることを指摘した。カンボジアにおける国民全体の識字率および就学率は向上する傾向にある一方で、障害者についてはその教育レベルは低調な状況にある。基礎教育の完全普及において、依然として貧困やジェンダー、都市部と農村部の地域差は、教育機会を制限する要因となっている。「Education for All」をめざす教育開発のなかでその課題解決・対応と同様に、「障害」による特別な教育的ニーズについての対応が求められるということを主張した。
著者
棚橋 大介 浅野 裕俊 水野 統太 井出 英人 Tanahashi Daisuke Asano Hirotoshi Mizuno Tota Ide Hideto
雑誌
【全国大会】平成20年電気学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
pp.115, 2008-03-19

カフェインには、眠気や倦怠感を低減する効果があることで知られている。本研究では、被験者に計算課題を与え作業に対する生理心理的影響をカフェインを摂取した場合としない場合で比較し、評価した。評価指標は心理指標、行動指標、生理指標の3項目とした。心理指標はVASを使用した。VASは作業後にカフェインの影響と考えられる眠気と疲労、作業に対する集中力を、反対の言葉で結んだ線上にチェックさせ測定した。行動的指標は誤答率とTSF(Time Share Function)を用いた。TSFとは、作業の時間分析による評価値である。生理指標は赤外線サーモグラフィで顔面熱画像を取得した鼻部額部差分変動とした。その結果、カフェインにより交感神経が優位となり、タスク後半の集中力の増加につながり、作業能力の向上が確認された。
著者
村上 哲 渡辺 安 藤原 仁志 Murakami Akira Watanabe Yasushi Fujiwara Hitoshi
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所資料 = Technical Memorandum of National Aerospace Laboratory (ISSN:1347460X)
巻号頁・発行日
vol.774, 2003-06

航空宇宙技術研究所が開発を進めているジェットエンジンを搭載した小型超音速実験機(ジェット実験機)には、マッハ2までの飛行速度で作動する2次元外部圧縮型可変形状超音速インテークを搭載する予定としている。ジェット実験機の推進システム性能予測およびインテーク可変制御開発に必要なインテーク空力特性を取得するために、ジェット実験機第2次形状超音速インテーク(C313形状)の19.2%縮尺模型を用いた単体空力特性取得試験を航空宇宙技術研究所の遷音速風洞および超音速風洞においてマッハ0.6〜2.1の範囲で実施した。ジェット実験機の推進システム性能予測およびインテーク可変制御開発に必要なインテーク空力特性データを取得するとともに、風洞試験で得られた空力特性がCFD解析により事前に予測した特性と概ね一致し、設計目標を満足した。また、マッハ1.3以上においては低流量側でバズが発生し、特にマッハ1.8以上の高マッハ域においてはFerri型不安定によるバズ発生のためインテークの安定作動余裕が小さいことが判明したが、適切な超音速ランプ可変制御および抽気制御によりインテークの安定作動域を改善できる。さらに抽気プレナム圧力比は本試験条件の範囲においては第2ランプ角や抽気条件による影響は小さく、インテークの作動状態を適切に示すパラメタとなることを確認した。インテーク入口部における横流れの影響については横流れ偏角4度までの範囲において、試験を行った何れのマッハ数においても大きな空力性能の劣化は見られず、良好な特性を示した。
著者
飯田 凌大 津邑 公暁
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2018-ARC-232, no.7, pp.1-9, 2018-07-23

トランザクショナルメモリ (TM) は,クリティカルセクションを含む一連の命令列をトランザクションとして定義し,これを投機的に並列実行することで,粗粒度ロックと同程度の記述性と,細粒度ロックと同等以上の性能とを両立しうるパラダイムとして期待されている.この TM をソフトウェア上に実装したソフトウェアトランザクショナルメモリ (STM) では一般に,論理タイムスタンプを用いて共有変数の一貫性を検証しているが,この手法はスケーラビリティに欠けるという問題がある.また,他の一貫性検証手法として共有変数別ごとのバージョン情報を用いるものがある.この手法は論理タイムスタンプを用いる手法に比べスケーラビリティに優れるが,トランザクション内で読み出す共有変数の個数の二乗に比例するオーバヘッドが発生するという問題がある.本稿では,実行時のスレッド数とトランザクション内で読み出す共有変数の個数とを基準とし,一貫性検証手法を適切なものへ動的に切り替えることで,STM のオーバヘッド抑制とスケーラビリティ向上との両立を目指す.提案手法を実装し,評価を行った結果,最大 27.0%,平均 15.3% の速度向上を達成した.
著者
山田遼平 橋本高志良 津邑公暁
雑誌
研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.2014-ARC-211, no.1, pp.1-8, 2014-07-21

マルチコア環境では,共有変数へのアクセス調停のためにロックを用いることが一般的である.しかし,ロックには並列性の低下やデッドロックの発生などの問題があるため,これに代わる並行性制御機構としてトランザクショナルメモリ (TM) が提案されている.この機構のハードウェア実装であるハードウェア・トランザクショナルメモリ (HTM) では,アクセス競合が発生しない限りトランザクションが投機実行される.HTM では投機実行が失敗した場合,再び競合が発生することをを防ぐため,トランザクションの再実行までに待機時間を設定するアルゴリズムが採用されている.しかし,既存の待機アルゴリズムでは適切な待機時間を設定できていないため,再び競合が発生して投機実行の失敗が繰り返されることで,HTM の性能が著しく低下してしまう場合がある.本稿では,この待機アルゴリズムを改良し,トランザクションの実行状況に応じた待機処理を行うことで HTM を高速化する手法を提案する.シミュレーションによる評価の結果,提案手法により最大 59.9%,16 スレッドで平均 11.2%の高速化を確認した.