著者
岸本 章宏
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1257-1263, 2007-11-15

よく知られたボードゲーム「チェッカー」は,両プレイヤが最善を尽くせば引き分けになることが,アルバータ大学(カナダ)のJonathan Schae er教授を中心とする研究チームによって,計算機を用いて証明された.本稿では,チェッカーの解明に利用した技術と筆者がプロジェクトの一員として参加した経緯,およびチェッカー解明までの道程について述べる.
著者
松嶋 淑恵
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 = Bulletin of Human Science (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.185-208, 2013-03-01

The concept of Gender Identity Disorder has taken hold in Japan, allowing medical care and legal change of sex for people with Gender Dysphoria. However, there is a negative understanding that assumes having a gender identity that differs from one’s sex is a disorder. Individuals whose gender identity does not fit into a set category are also ignored. A solution based on medical model has little impact on gender dualism and gender norms and compels people who have a unique gender identity to adopt it. We investigated the impact of financial status, human relationships, and psychological problems based on quantitative approach that included various subjects with a unique gender identity. Results indicated that there were economic disparities similar to the male-female disparity for Mt and Ft and the male–male disparity for Mt and Mt. Subjects with a gender identity that was not generally recognized tended to be isolated in comparison to individuals with a typical GID. Anxiety about one’s transition led to inability to play the social role one wished more so than discontent with one’s physical transformation. Sustained efforts to tackle the problem posed by gender dualism, gender norms, and gender discrimination for the transgendered as well as the cisgendered must be made to create a society that includes people with Gender Dysphoria.性同一性障害概念ができたことにより性別違和をもつ人々に対する性別変更のための医療や制度が成されたが、性同一性障害は身体と異なる性自認をもつ事を疾患としてとらえる消極的な理解であるとともに、典型的な当事者にあてはまらない多様な当事者を不可視化している問題がある。また医学モデルに基づいた解決は、当事者を苦しめる男女二元論やジェンダー規範を揺るがさないまま当事者側だけが変化すべき対象であることを強いている。そこで、多様な当事者を対象に含め、量的調査法による実態調査を行い、特に経済状態の影響、他者との関係性、精神的問題について調査した。その結果、MtとFt間で男女間および男性間の経済格差が見られ、治療の機会不均等に影響していた。典型的性同一性障害像に比して認知度の低い性自認をもつ人は孤独に陥りやすかった。また、性別移行に関する不安は、身体変容が満たされないことよりも社会関係上で望む役割が果たせないことから生じることが明らかになった。性別違和をもつ人々が社会から排除されずに生きるためには、男女二元論やジェンダー規範、性差別といった非当事者にもかかわる問題に取り組み、社会が変化していくことが必要であると言える。
著者
青葉 隼人 川島 龍太 松尾 啓志
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-160, no.4, pp.1-7, 2023-07-27

インメモリ KVS はデータベースや Web アプリケーションで生成されたデータのキャッシュとして用いられている.しかし,インメモリ KVS は Linux カーネルのプロトコルスタックがボトルネックとなる.DPDK と F-Stack を用いてインメモリ KVS を再設計した手法では,Linux カーネルのパケット I/O 処理で生じたオーバーヘッドを解消し高速化を図ったが,依然としてプロトコルスタックがボトルネックとなる.また,XDP を用いてドライバ層でキャッシュを行う手法では,キャッシュヒット時にプロトコルスタックをバイパスしてボトルネックを解消したが,ドライバ層におけるカーネル由来のオーバーヘッドは未解消である.本研究では DPDK を用いた透過型 L2 プロキシで KVS のキャッシュを行う手法を提案する.DPDK によりコンテキスト切り替えのオーバーヘッドを解消し,OSI 参照モデルのデータリンク層でキャッシュ制御を行い,キャッシュヒット時にプロキシがレスポンスを送信してスループットを向上させる.インメモリ DB である Redis に適用して提案手法の性能を評価した結果,キャッシュヒット時においてレイテンシを 36% 削減した.また,READ リクエスト割合の増加に伴いスループット性能が向上し,公式の Redis と比較して最大 13.6 倍向上した.
著者
畑山 大地 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-159, no.5, pp.1-11, 2023-05-09

ECC-uncorrectable メモリエラーはコンピュータシステムの信頼性に大きく影響するが,近年では発生頻度が増加している.オペレーティングシステム(OS)がこうしたメモリエラーに遭遇すると,OS カーネル内のデータが破壊されることで OS は継続稼働が不可能となり,それまでに処理をしていたメモリ上のデータを損失してしまう.この ECC-uncorrectable メモリエラーによる影響を特に受けるのがファイルシステムである.なぜなら,ファイルシステムはバッキングストアへのアクセスによる性能劣化を避けるために,ダーティなデータをバッキングストアに逐次書き出さずに,メモリをキャッシュとして用いて,ある程度纏めてから書き出す手法を採用しているからである.ファイルシステムにはジャーナリング機能を有する場合もあるが,これはファイルシステムとしての整合性を保つことが目的である.アプリケーションからすると,ファイル内容の整合性が保たれていない.そのため,ECC-uncorrectable メモリエラーが検知されるタイミングによってはメモリ上のダーティなデータは同期される前に消失してしまう.本論文では,OS カーネル領域において ECC-uncorrectable メモリエラーが発生した場合でもダーティなデータを失わないファイルシステムを提案する.ECC-uncorrectable メモリエラーの発生箇所がファイルシステムが使用するオブジェクト内ならば修復処理を行い,メモリ上のダーティなデータを同期させる.提案手法を Linux 5.15.54 上に実装を行い,ECC-uncorrectable メモリエラーを模したフォールト下で実験を行った.実験結果として,低いオーバヘッドでダーティなデータを書き出すことを確認した.
著者
大藪 龍介 Oyabu Ryusuke
雑誌
松山大学論集 = Matsuyama University review (ISSN:09163298)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.23-50, 2010-03-01
著者
仁藤 敦史
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.217, pp.29-45, 2019-09-20

倭と栄山江流域の交流史を考える場合,文献的に問題となるのは,まず全羅南道および耽羅の百済への服属時期を確定することが必要と思われる。そのうえで北九州系および畿内系などに細分化される倭人の移住集団の活動内容の分析が必要となる。さらには加耶地域への移住集団との対比も必要となる。以下ではこの問題を考える素材として『日本書紀』欽明紀に散見する倭系百済官僚を中心に検討した。現在,栄山江流域の前方後円墳被葬者についての諸説は,大きくは在地首長あるいは土着勢力とする説,倭人あるいは倭系の人物を被葬者とする説に分かれている。本稿では在地的な首長系列とは異なる地点に突如出現する点を重視して,後者の可能性を指摘した。結論として,憶測を述べるならば五世紀後半以降の一時期に限定される栄山江流域の前方後円墳被葬者像として,百済王族たる地名王・侯の配下で,県城以下クラスの支配を任された,北九州を含む倭系豪族と想定した。彼らはやがて,百済の都に集められて官僚化し,倭国との外交折衝などに重用されたために,一時的な現象として古墳は消滅したのではないか。栄山江流域にのみ前方後円墳が集中する理由や,移住の詳細なプロセスなどについては不明であり,今後も検討する必要がある。
著者
上田 義明 碓井 利宣
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.87-88, 2020-02-20

大量のリクエストに低遅延で応答する必要のあるコンテンツ配信では,一般にデータストアに分散KVSを用いる.しかし,データ更新が頻発する状況では,各KVSノード間のデータ同期により帯域が逼迫する問題があった.本研究では,パーソナライズされたコンテンツ配信システムのデータ特性に着目し,データ同期のコストを減らした分散KVSの構築手法を提案する.ユーザごとのデータの一貫性が保たれていれば良いことに着目し,ユーザごとに割り振りを特定のKVSノードに固定して,一貫性を損なわずにデータ同期を減少させる.本手法を用いたPoCの性能を評価し,分散KVSのデータ同期による帯域の削減を確認した.
著者
上段固体モータ信頼性研究グループ 上段固体モータ信頼性研究グループ Upper Stage Solid Motor Reliability Research Group Upper Stage Solid Motor Reliability Research Group
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所報告 = Technical Report of National Aerospace Laboratory (ISSN:03894010)
巻号頁・発行日
vol.1298, pp.1-62, 1996-06

国産・自主技術で進めたH-1ロケット用第3段モータおよびアポジ・モータの開発において重要な要素である信頼性の確立を図るため、航空宇宙技術研究所(NAL)と宇宙開発事業団(NASDA)が研究グループ「上段固体モータ信頼性研究グループ」を結成し、共同研究「上段固体ロケットモータの信頼性評価基準に関する実験的研究」を1980年度から1984年度まで行った。そしてその主体である推進薬の欠陥許容判定基準の研究および推進薬の欠陥検出法の研究についての成果をその後の研究成果も含めて3部作の報告書にまとめた。なお、本共同研究はNAL特別研究「上段モータの信頼性評価基準に関する研究」と緊密な関係のもとで行われた。本報告書では、国産開発のH-1アポジ・モータの1/4縮尺モータなどの小型モータに、推進薬気泡、インシュレーション・推進薬間剥離、推進薬ノッチなどの人工欠陥を付し、欠陥の燃焼への影響を調べた結果について述べる。
著者
森國 泰平 吉田 光男 岡部 正幸 梅村 恭司 Morikuni Taihei Yoshida Mitsuo Okabe Masayuki Umemura Kyouji
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌(トランザクション)データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.16-26, 2015-12-28

ツイートに含まれる特徴と位置情報を対応させることで,実世界を観測するセンサとしてTwitterを活用することができる.しかし位置情報が付加されたツイートは少なく,Twitterをセンサとして活用するときの問題の1つとなる.そこで本研究では,ツイートの投稿位置を推定し,より多くのツイートに正確な位置情報を付与することを目的とする.この目的を達成するために,ツイート中のノイズとなる単語を除去するためのフィルタリング手法を提案する.また,単語の地理的分布を平滑化するためのスムージング手法も提案する.これらの提案手法が従来手法よりも有効に機能することを示し,その考察を行う.Twitter can be considered as a real-time sensor that responds to real-world events by combining the content and location information of tweets. However, a problem persists: tweets containing location information are too small. To overcome this problem, we estimate the location where a tweet was posted. Our main method involves using word filters called AF filter and TF-IAF filter that detect stop words. In addition, we propose a smoothing method called Distance smoothing for overcoming sparsity of words. We show that both our methods improve location estimation accuracy and discuss the features of the results.