著者
大津 尚志
出版者
東京大学大学院教育学研究教育行政学研究室
雑誌
東京大学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要 (ISSN:13421980)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.45-52, 2001-03-27

In England and Wales there was no framework of curriculum for primary and secondary education for a long time. However, after Education Reform Act was enacted in 1988,it was decided to establish "National Curriculum". And it has been revised twice since then. In the National Curriculum, "programmes of study", "attainment target", and so on, are established in every key stage of each subject. Publishers produce textbooks used in classrooms which refer to the National Curriculum. However I have drawn the conclusion that the link is not strong. In this paper, findings are organized and presented under following titles; I The Educational Administration on Curriculum in England and Wales II The Textbook System and History Textbooks in England and Wales III Conclusion (Annex) Japanese Translation of the National Curriculum (2000) : History Key Stage 3
著者
油納 健一
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

"権利の無断使用(特許権の侵害)"に対して不当利得制度を用いた場合に、特許権者をいかに救済できるのかが、本研究の課題であった。ドイツの判例・学説を中心に詳細に検討した結果、特許権者は特許権侵害者に対して、特許権の使用可能性という利益を請求することができると考えるのが、ドイツにおける現在の支配的見解であり、日本法においても重要な示唆を与えうるものであることが判明した。もっとも、使用可能性という利益は、無形・無体の利益であるため、価格算定を行う必要があり、ここでは算定基準をいかに考えるかが問題となる。返還義務の対象の問題と同様に、ドイツの判例・学説を中心に検討した結果、客観的市場価格を基準とすることが最も妥当であることが判明した。これにより、不法行為制度に限らず、不当利得制度によっても、特許権保護を全うできる理論構成を提示することができ、今後の実務にも参考になることが期待されうる。

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著者
ブルノ ペーロン 小林 孝郎 ドナルド チェリー ヤマモト ウィルソン フレデリック アンドレス 井上 哲理
出版者
上智大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では、機器支援学習活動を展開するための新たなCALLシステムを目指した。そのために、教室据え置き型のデバイス(「iTable」と呼称)を用いて、CEFRLが提唱する「行動中心の考え方」にそった学習活動を可能にすることを目標とした。学習者が自身の学習過程を振り返り、目標言語についての仮説を形成できるように、認知学習ストラテジーも養成できる学習システム作りを行った。
著者
下田 圭悟 行田 弘一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.118, pp.19-24, 2010-07-01

地震等の大規模な災害が発生した際,加入者電話網や携帯電話網のネットワーク等既存の通信インフラは,回線の混雑やケーブルの寸断等により利用できない場合がある.そこでこのような場合の通信手段として,インフラに依存せずネットワークを構築可能な無線アドホックネットワークの利用が期待されている.携帯端末を用いて無線アドホックネットワークを構成する場合,端末(利用者)の移動に対応し,自律的に通信経路を維持することが課題としてあげられる.また,端末のバッテリー容量には限りがあるので,接続1生を高める一方で電力をより低くすることが重要である.本稿ではアドホックネットワークを用いた場合のデータ配信率の向上および消費電力の低減を目的とし,AODVにおける経路情報保持時間とデータパケットの送信間隔を制御した場合のデータ配信率と経路情報パケット量との関係を明らかにする.
著者
樋口 純明
出版者
駒澤大学
雑誌
論集 (ISSN:03899837)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.59-71, 1983-03

《精神の昼の領域》が文明を牛耳っている現代においては,実証や裏付けという,客観的記録によって人の言動の価値が定められ,また,人の方も自分が加わっている客観的実在物たる体制や組織の意向に自分の意思のすべてを任せきることによって,主体的決断の重責から逃れた空白の安逸を楽しんでいる。他方,《精神の夜の領域》は《昼》の一元的な明るさ,健全な単純さを嗤いながら,夢想の海の中を遊戈しつつ社会的実効性に背を向け,蟄居して全能の主観に淫している。これは共に各領域の偏向著しい場合を述べたが,本来,《昼》は太陽が現出させているのであって,その暖かい光の恵みは生命維持の必要条件であり,人の心を自然の新鮮なオゾンで満たしてくれるはずのものである。また,《夜》に輝く月は,雪のごとく降り注ぐ月光によって,《昼》の景色を一変させ,その演出を通して人の感受性を富ましめてくれるものである。私は以下,精神世界を二元論的に構成する比喩,《昼》と《夜》とを,その比喩の中に象徴的に実在する天体,《太陽》と《月》とに還元することによって,この二元性の根源を問い易い形にした。そして,まず序論で,ドイツ語圏において同様な観点から展開されている二元論をフリードリヒ・シラー(1759-1805),カール・グスタフ・ユング(1875-1961)のもとに辿って,この二元性をそれぞれ異なる仕方において洞察した先達のいることの確認を試みた。さらに本論においては,エルンスト・クレッチュマー(1888-1964)のもとにその確認作業を続けたあと,ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)の内に,この二元性の根源をただす問いに対する「答え」を探ってみる。そして,最後に《太陽》と《月》の二元論を総括することになろう。元来,この二元性は,文学作品におけるリアリズムとロマンチシズムの対置や,文学研究における実証主義とヘルメノイティックの対置とも完全に対応するものである。したがって,この二元性のあり方を文学的・心理学的・精神病理学的に探究した先達の論考を辿ったり,秘教的な著作の内にその「根源」を読み取らんとしたりする試みは,文学の本質をめぐる作業として無益なことではあるまい。
著者
石原 一志 坪田 康 奥乃 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.154, pp.19-24, 2003-06-19
被引用文献数
4

環境音を擬音語に変換するうえでの問題として,擬音語表現が聴者により異なるという聴者依存性の問題が挙げられる.本研究は擬音語への変換処理を聴者に依存する処理と依存しない処理に分けることでこの問題を回避し,3段階の処理により環境音を擬音語に変換する手法を提案する.(1)時間軸上のパワー包絡から環境音を音節単位で切り分け,(2)音長・減衰速度から音節構造を同定し,(3)音素グループを利用した音素認識により音節構造を擬音語に変換する.認識実験によりこれらの手法の妥当性を確認した.セグメンテーションでは83.7 %/ 99.1‰長音の認識では84.6 %/ 100.0 %の適合率/再現率を得た.
著者
春日井 真英
出版者
東海学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

四年にわたる調査研究を通じて至った結果は、十一面観音、牛頭天王(津島信仰)を個々に考えてはならないと言うことであった。これまでは、個々の問題を検討していたが地域を通じて考えてみると、この二柱に加えて地蔵も重要な機能を有していることが伺われるのである。そこには、神仏習合思想に基づく思想を見て取ることができ、この事を解明する手段として「牛頭天王島渡り」の祭文の研究が急務と言うことになる。この祭文に寄れば、津島神は牛頭天王であり、その本地は薬師如来となりそこには行疫神であると同時に施薬を行うという相反する機能を有しているのである。東三河各地を検討してみると素蓋鳴神社(進雄社)が多々存在し、その名を有する神社での祭礼に鬼が顕れるのだが、その鬼達の姿は喜々としている様に見受けられる。また、豊橋市の安久美神戸神明社の鬼祭と地域の宗教施設などを検討してみると、地域全体(ここでは豊橋市)が牛頭天王と十一面観音によって護られているかの様な構造を有していることが判る。この事は、名古屋市も同じであり、名古屋城を中心として各恵方に観音を配置するという構造とも重なるのかも知れない。とくに、尾張部では鬼こそ出ないものの山車によって天王(津島あるいは牛頭天王)が祀られている事を考えれば、東三河地区での様に鬼の顕れる祭祀が、山車という象徴的な祭祀に変化してきていることが伺われる。
著者
宮岸 隆司 東 琢哉 赤石 康弘 荒井 政義 峯廻 攻守
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.219-223, 2007 (Released:2007-05-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

目的 高齢者において終末期における治療と人工栄養に関する実態調査を実施し,栄養摂取方法選択ガイドライン作成の基礎資料とする.方法 対象は西円山病院(918床)における,2004年4月から2005年3月の死亡症例である.入院時の状況,経口摂取困難に至った原因と経過,終末期医療に対する意向,実際に選択された栄養摂取方法と平均余命について後ろ向き調査を行った.結果 155例(男性66例,女性89例)の死亡症例があり,死亡時平均年齢は86.2±9.0歳であった.うち95例で,肺炎などの感染症を契機に経口摂取が困難となり,栄養摂取方法が検討された.95例中,人工栄養は63例で選択され,経管栄養選択症例16例,経管栄養から中心静脈栄養に変更した症例14例,中心静脈栄養選択症例33例.人工栄養非選択症例は32例であった.死亡時の栄養摂取方法と平均余命の比較では,経管栄養選択症例;827±576日,中心静脈栄養選択症例(経管栄養から中心静脈栄養に変更した症例および中心静脈栄養のみの症例);196±231日,人工栄養非選択症例(末梢静脈栄養);60±40日であった.結論 今回の調査では,人工栄養導入後の平均余命は経管栄養にて有意に長かった.当院では経管栄養にて発熱が続く症例や消化管の機能不全が疑われる症例では中心静脈栄養に変更することが多いため,経管栄養の平均余命が長かったものと考えられる.32例では,人工栄養が選択されなかった.終末期高齢者の医療については,家族の意向が大きく影響し,多くは「患者の負担とならない治療」を希望するが,人工栄養導入をとっても結論はさまざまである.治療方針の決定に際して高齢や認知症という理由で医療行為が差し控えられることなく,初期より患者本人の意向を尊重できる体制を整える必要がある.終末期への移行の目安として,経口摂取困難を取り上げることの妥当性が示唆された.
著者
村上 淳一
出版者
桐蔭横浜大学
雑誌
桐蔭法学 (ISSN:13413791)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.3-29, 1994-09-30
著者
井上 徳子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.51-60, 1994-06-30

チンパンジー幼児の自己鏡映像認知の発達過程を, 縦断的観察 (実験I) と横断的観察 (実験II) によって検討した。実験Iの被験体は生後9週齢から人工哺育で育てられたメスのチンパンジー頭で, 実験開始時に76週齢, 実験終了時に87週齢だった。ケージ内に鏡を設置し, 1日1試行10分間の呈示を47試行おこなった。被験体が鏡呈示事態において示したさまざまな行動を50種の行動型として記述した。さらにこれらを社会的反応, 探索反応, 協応反応, 白己指向性反応, 複合反応の5つの行動カテゴリーに分類した。被験体は社会的反応や探索反応から, 協応反応や自己指向性反応へと出現行動カテゴリーを変化させ, 最終的には複合反応を示すに至った。いわゆる「自己意識」の成立の指標とされる自己指向性反応を被験体が示したのは1歳半をすぎてからだった。実験IIでは, 過去に鏡に関する経験を持たない1歳4カ月から4歳11カ月のチンパンジー幼児17頭を被験対象とした。1試行40分間の鏡呈示を実施し, 試行中に出現した鏡に関する行動を, 実験Iと同様の行動カテゴリーに分類した。40分間の試行内における鏡に関する行動は3歳半以上の被験体で特に変化した。社会的反応は最初の10分間で急減し, その後, 自己指向性反応およぴ複合反応が出現した。各行動カテゴリーの加齢に伴う出現変化も同様の傾向がみられた。年少の被験体は社会的反応を主に示し, 年長の被験体は自己指向性反応や複合反応を示した。横断的観察で得られた自己鏡映像認知の発達過程は, 縦断的に観察したチンパンジー幼児やヒト乳幼児の例と同様だった。だが自己指向性反応が現われ始めた時期は横断的観察では3歳半頃で, 繰り返し鏡が呈示された実験Iの被験体よりも, 約2年遅れていた。自己鏡映像の認知能力は, 加齢に伴う成熟と, 自己鏡映像に関する学習経験量によって決まることが示唆された。
著者
中村 智
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.119-130, 2001

This paper discusses why Shiga Naoya chose to write about Korea then a Japanese colony, in his novel "A dark night's passing". The question is not what part Korea played in the novel, but why Shiga was interested in Korea. A noteworth point is the relationship between Shiga and his friend, Yanagi Muneyohi. Yanagi was a scholar of Korean ceramics. In the 1930s, he criticized, through critical essays, in a roundabout way, the then Japanese Government for not considering and working for Korea sufficiently. One of the reasons Shiga wrote about Korea was that he shared Yanagi's opinion and wished to assist Yanagi's work. However, a more significant reason was that Shiga wanted to get readers of his own work to face the situation in Korea. He chose a different way from Yanagi's. He faced that problem not as an activist but as a novelist.
著者
三上 正男 藤谷 徳之助 張 希明
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.899-908, 1995-10-25
被引用文献数
4

乾燥地における砂漠化の機構を調べるため、1991年より中国新疆ウイグル自治区内のタクラマカン砂漠において、気象要素の長期観測を行った。この目的のため、タクラマカン砂漠南縁の礫沙漠(ゴビ)上に自動気象ステーションを設置した。約1年間にわたる観測データを解析し、オアシス郊外の草地の観測データと比較した。全ての月で月平均地表面温度は気温よりも高く、月平均顕熱輸送は一年を通じ上向きである。夏季において日中の比湿の増加が顕著に見られる。これは、風上側に位置する相対的に湿潤なオアシスからの水蒸気移流によるものと考えられる。主風向は2つあり、4月から6月にかけて見られる西よりの強風(平均風速7m/s以上)と夜間の南南東風である。この夜間の南南東風は、一年を通じて顕著に見られる時計回りの風向の日変化に伴うものである。ゴビから11キロ離れたオアシス内の草地とゴビの風向は,同じ日変化を示す。ゴビから西に100キロ離れたオアシス和田の地上から160mまでの風はゴビと同様の変化を示している。この風向の日変化は、崑崙山脈と砂漠地帯間の局地循環によるものである事が強く示唆される。