著者
Masanori HIRANO Hiroto YONENOH Kiyoshi IZUMI
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

Basel regulatory framework, one of CAR (capital adequacy ratio) regulations, is said to make markets destabilized in a previous study. But the previous study included some inappropriate assumptions. So, this study assessed this destabilizing effects with a new model. In my model, FCN agents and 2 kinds of portfolio agents, CAR regulated ones and not regulated ones, were included. Using this model, some simulations were run. As results, the simulations revealed some facts: 1. Asset management using portfolio stabilizes markets and the stabilizing effect are significant if there are a lot of markets included in the portfolio; 2. CAR regulation destabilizes markets and vanish the stabilizing effects of portfolio. In addition, the results of my simulations suggest that CAR regulation does not only raise the chance of price crashes but also depress whole price.
著者
西 勇樹 伴 雅雄 及川 輝樹 山﨑 誠子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

はじめに 蔵王火山は、東北日本火山フロントに位置する活火山で、2013年頃から噴火の前兆的現象が多数観測されている。蔵王火山の最新期は約3.5万年前の馬の背カルデラの形成に始まり、約2千年前に最新の山体である五色岳が活動を開始した。我々は、五色岳形成開始前後の噴出物を対象として、地質学的・岩石学的研究を進め、その結果、噴出物の地質ユニットは、五色岳形成に先行する溶岩ユニット(振子滝溶岩、五色岳南方溶岩及び火砕岩類)と形成開始後の火砕岩ユニット(五色岳南部火砕岩類、五色岳東部火砕岩類)に細分されること、全ての岩石は苦鉄質・珪長質マグマの混合によって形成されたこと、一方で、両端成分マグマの特徴、マグマ溜まりの構造、および滞留時間1年未満と5年以上を示す珪長質マグマ由来の直方輝石の割合が、溶岩ユニットと火砕岩ユニットでやや異なっていることが明らかになった。 上記の火砕岩ユニットの両火砕岩類は、後者が前者を不整合に覆っており、形成時期がやや異なる可能性がある。また、五色岳南部火砕岩類には計3本の火砕岩脈が認められる。今回は、五色岳南部火砕岩類で見られる火砕岩脈の特徴と形成過程を明らかにすると共に、五色岳南部火砕岩類の岩石学的特徴を、前後の地質ユニット(溶岩ユニット、五色岳東部火砕岩類)と比較し、マグマ溜まりの時間変遷の検討をより詳細に行った。五色岳南部火砕岩類、特に火砕岩脈について 五色岳南部火砕岩類は五色岳の南東部に分布する。噴出物は主に成層構造の発達した火砕サージ堆積物からなる。全層厚は約12mである。火砕サージ堆積物を切る計3本の火砕岩脈(以下、火砕岩脈を順に1~3と称す)が認められる。その最上部は浸食されている。火砕岩脈1~3の高さは約12m、7m、7m、幅(最下部)は4m、2m、8m、幅(最上部)は16m、5m、8m、走向はN50°E、N70°E、N15°Eである。何れもほぼ垂直方向に貫入しており、火砕岩脈1、2は下部から上部に向かって幅が広がる形状を成す。火砕岩脈3の幅はほぼ一定である。火砕岩脈は褐色~青灰色の火山灰支持の凝灰角礫岩からなる。本質岩片は細かい冷却クラックを持つ火山弾とそれらが破砕されたと考えられる径5cm~10cm程度の火山礫、径10cm程度の少量のスコリアからなる。加えて、径5~10cm程度の類質岩片を少量含む。岩片の多くが冷却クラックをもつ本質物であり、破砕されたものも多いことからマグマ水蒸気爆発によるものと推定される。なお、火砕サージ堆積物と岩脈の境界は明瞭であり、境界付近の火砕サージ堆積物は赤褐色に酸化している。火砕岩脈1を代表として、内部構造について詳細に検討した。その結果、弱い成層構造が認められ、多くの火山岩塊は概ね水平方向に伸長しており、少なくとも一部はフォールバックした可能性が高い。また、火山岩塊の含有割合に不均一性が認められる。特に、岩脈の両端から10~20cmにおいては大きな火山岩塊が認められない。これは岩脈の境界付近で効率的に破砕が進行したためと思われる。岩石学的特徴の比較検討 五色岳南部火砕岩類(火砕岩脈の本質岩片も含む)の岩石学的特徴について、前後の地質ユニットと比較検討を行った。いずれの岩石も単斜輝石直方輝石安山岩からなり、全岩化学組成は、概ね一連の組成トレンドに乗る。しかし、溶岩ユニット、五色岳南部火砕岩類、五色岳東部火砕岩類の組成変化トレンドは、TiO2-SiO2図上で、この順に高TiO2量側にシフトし、Cr-SiO2図上では低Cr量側にシフトしている。これらの特徴は、溶岩ユニットから五色岳東部火砕岩類にかけて、苦鉄質端成分マグマの組成が変化したことを示唆する。また、どの地質ユニットでも直方輝石斑晶のリム(Mg# = 69)から内側~100μmの部分でなだらかな逆累帯構造をもつreverse-zoned タイプ と、リムから内側~50μmの部分でMg-rich zone(Mg# = ~75)を持つMg-rich-rim タイプが認められるが、溶岩ユニットではreverse-zoned タイプが多く、五色岳東部火砕岩類ではMg-rich-rim タイプが多いのに対して、五色岳南部火砕岩類ではその両方がある程度認められる。また、直方輝石の滞留時間について、溶岩ユニット中の多くのものは5年以上で、五色岳東部火砕岩類の多くのものは1年未満のであるのに対して、五色岳南部火砕岩類はその両方が認められる。 以上の検討結果から、五色岳南部火砕岩類は溶岩ユニットと五色岳東部火砕岩類の中間的な岩石学的特徴を持つことが明らかとなった。reverse-zonedタイプの多い溶岩ユニットでは混合マグマは発達し、Mg-rich-rim タイプの多い五色岳東部火砕岩類では混合マグマは未発達であったと考えられるため、その両方のタイプをある程度含む五色岳南部火砕岩類は上下の地質ユニットと比べて、中間的な混合マグマの発達度合いであったと考えられる。すなわち、五色岳南部火砕岩類は、溶岩ユニットから五色岳東部火砕岩類に移る転換時期であったと考えられる。
著者
池永 有弥 前野 深 安田 敦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

伊豆大島では, 1777年から15年間にわたり安永噴火と呼ばれる大規模な噴火が発生し, 溶岩の流出と数億トンにのぼるスコリアおよび火山灰の噴出が起きた(小山・早川, 1996). 地質調査や歴史記録の解析(Nakamura, 1964; 一色, 1984; 津久井ほか, 2009)によって, 噴火はスコリアの放出(基底スコリア)から始まり, 溶岩を流出させた後, 数年間の火山灰期を経て噴火が終息したと考えられている. このように噴火の大枠は明らかになっているが, 溶岩は様々な方向に複数回流出しており, 基底スコリアも広範囲に分布しているため, 噴火様式および推移と堆積物との対応については未解明な部分が多い. 基底スコリアについては, 層準により粒子の特徴に違いがあることが本研究でわかってきた.伊豆大島において, 安永噴火の降下火砕堆積物および溶岩の観察を行った. その結果, 基底スコリア層が大きく下部の斜長石斑晶に乏しい層(Unit A)と, 上部の斜長石斑晶に富む層(Unit B)の2層に分けられることがわかった. さらにUnit Aのスコリア(Aスコリア)は島の西側を除く広範囲に堆積している一方で, Unit Bのスコリア(Bスコリア)は島の東側の狭い範囲にのみ堆積していることがわかった. このことから, 層準によって噴煙の特徴が異なっていた可能性が高く, 複数の方向へ流下した溶岩と基底スコリアの前後関係を理解する上で, 溶岩に接する基底スコリアの斜長石斑晶量が鍵となることがわかった.次にA・Bの各スコリア, および溶岩について全岩組成分析を行ったところ, 分析値がNakano and Yamamoto(1991)などで示されている斜長石濃集トレンドに乗り, Bスコリアが最も高いAl2O3量を示した. 溶岩のAl2O3量は最も低く, AスコリアについてはBスコリアと溶岩の間の値になった. ただしAスコリアのうち最下部のものについては, Al2O3量がUnit Aの他の層準のスコリアよりもさらに低く, 溶岩に近い値を取るという特徴がある. 伊豆大島の山頂火口から噴出するマグマは, マグマだまり内での斜長石の浮上・濃集により斜長石に富むという考えがあり(荒牧・藤井, 1988), この説に基づけば噴火初期に斜長石に富むマグマが噴出することが予想される. しかし安永噴火の基底スコリアは山頂火口から噴出したと考えられているにもかかわらず, 露頭観察および岩石学的分析から, 噴火初期には斜長石に乏しいマグマが噴出し, その後斜長石に富むマグマが噴出した.EPMAを用いて斜長石の分析を行ったところ, 基底スコリアに含まれる斜長石斑晶のコア組成については, Aスコリアに比べてBスコリアのAn値が有意に高くなる傾向が見られた. 溶岩についてはAスコリアに近い値となった. また溶岩およびAスコリアの石基にのみ斜長石微結晶が多く含まれるが, Aスコリアの中には石基に微結晶をほとんど含まない粒子も多くある.このように安永噴火の噴出物は層序毎に特徴がかなり異なることが明らかになったが, 単一のマグマだまり内での斜長石濃集のみでマグマプロセスを説明できるかどうかや, マグマ上昇プロセスがユニットにより異なる可能性など, 噴出物の特徴に違いが生じる原因の解明については今後の課題である.
著者
西原 歩 巽 好幸 鈴木 桂子 金子 克哉 木村 純一 常 青 日向 宏伸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

破局的カルデラ形成噴火を生じる膨大な珪長質マグマの起源を理解するために,3万年前に生じた姶良火砕噴火で噴出した入戸火砕流中に含まれる本質岩片の地球化学的・岩石学的特徴を考察した.流紋岩質の白色軽石及び暗色軽石に含まれる斜長石斑晶のコア組成は~An85と~An40にピークを持つバイモーダルな分布を示すことに対して,安山岩質スコリアの斜長石斑晶は~An80にピークを持つユニモーダルな分布を示す.高An(An#=70-90)と低An(An#=30-50)斜長石コアのストロンチウム同位体比は,それぞれ87Sr/86Sr=0.7068±0.0008,0.7059±0.0002である.これらの測定結果は,姶良火砕噴火で噴出した膨大な量の流紋岩質マグマは,高An斜長石の起源である安山岩質マグマと低An斜長石の起源である珪長質マグマの混合によって生じたことを示唆する.苦鉄質マグマからわずかに分化してできた考えられる安山岩質マグマから晶出した斜長石のSr同位体比は,中新世の花崗岩や四万十累層の堆積岩など,高いSr同位体比をもつ上部地殻の岩石を同化したトレンドを持つ.このことは,安山岩質マグマと珪長質マグマの混合が上部地殻浅部で生じたことを示唆する.また,流紋岩質マグマは基盤岩より斜長石中のSr同位体比が低く,基盤岩との同化をほぼ生じていない安山岩質マグマ(英文にあわせてみました)と似たような組成を持つ.このことは,珪長質マグマと苦鉄質マグマは,姶良カルデラ深部の下部地殻のような同一の起源物質から生じているとして説明できる.
著者
古川 竜太 高田 亮 Nasution A. Taufiqurrohman R.
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

リンジャニ火山はインドネシア, ロンボク島北半分に配列する第四紀成層火山体群の中心にあり,山頂西部にある径6x8kmのカルデラは13世紀の破局的噴火で形成された(Nasution et al., 2003; 高田ほか, 2003,Nasution et al., 2010; Lavigne et al.,2013). カルデラ形成に先立って, およそ2万年前から1万年前にかけてリンジャニ火山が標高3726m, 総体積100km3の成層火山体を建設した. およそ5000年前からは爆発的噴火を間欠的に起こし, 13世紀の破局的噴火に至った. カルデラ形成噴火の推移は噴火堆積物から6フェイズに区分できる. 各フェイズ間に顕著な時間間隙を示す証拠は見つかっていない. フェイズ1の小規模な水蒸気噴火のあと,フェイズ2ではプリニー式噴火によって発泡の良い軽石を主体とする降下火砕物を西側の広い範囲に堆積させた. フェイズ2末期では粒径が細かくなり, 異質岩片が増加する. フェイズでは火砕流が発生し, 北麓で層厚10m以上の無層理塊状の軽石流堆積物を分布させた. 南西麓や遠方の地域には成層した火山灰流堆積物が広く分布する. 層厚数cm?50cmまで層厚が変化し, 地形的凹地では厚く堆積し, 下位の降下軽石層を削り込むことがある. 推定噴出源から50km近く離れた南西地域や, 海を隔てたギリ諸島にも堆積していることは, 高い噴煙柱から崩壊した希薄な火砕流堆積物であることを示唆する. フェイズ4はふたたびプリニー式噴火となる.降下軽石堆積物は級化構造の繰り返しと細粒火山灰が挟在することから, フェイズ2に比べてプリニー式噴煙が不安定であったことを示唆する. フェイズ5では, ふたたび火砕流が発生し, 厚い無層理の軽石流堆積物が山麓を30km以上の範囲を覆って海岸線に到達した. 火砕流堆積物には花崗閃緑岩など地表に露出しない岩石が含まれる.フェイズ6ではプリニー式噴火が発生したが, フェイズ2と4に比べると規模は小さい. 噴火に関与したマグマはSiO2=62.5-66wt.%, Na2O+K2O=7.5-8.7wt.%の粗面安山岩から粗面岩質である.フェイズ3から4にかけてより珪長質な軽石が増加する.フェイズ4のプリニー式噴煙が不安定で, フェイズ5で大規模な火道の浸食が起こったことを考慮すると, フェイズ4から大幅な火道の拡大あるいは新たな火道形成によって, それまで噴出していなかったマグマが吸い出された可能性がある. フェイズ6のプリニー式噴火は崩壊したカルデラ床によって閉塞された細い火道から起こったと考えると説明可能である. 南極およびグリーンランドの氷床試料では西暦1258?1259年相当の層準に硫酸酸性の強いスパイクがあることが以前から指摘されていた(Palais et al., 1992など).氷床試料から抽出した火山ガラス片の主成分化学組成はこれまでメキシコのエルチチョン火山に対比されていたが,リンジャニカルデラ形成噴火の火山ガラス組成は,両極地方の火山ガラス組成により近い.よってリンジャニカルデラの形成は1258?1259年頃である可能性がある.Lavigne et al., (2013) は同様の手法で噴火を対比して,噴火時期は古文書から1257年とした.両極地方の硫酸堆積量から計算されたSO2放出量は200メガトンであり(Langway et al., 1988),最近千年間で最大である.リンジャニカルデラ形成噴火が地球規模の気候変化に影響を与えた可能性が大きい.
著者
和田有子 田中夕祈 嶋谷裕子 山田雄次 長谷川藍子 肥田重明 谷口俊一郎 寺崎貴光 瀬戸達一郎 福井大祐 高野環 伊藤研一
出版者
一般社団法人 日本脈管学会
雑誌
第55回日本脈管学会総会
巻号頁・発行日
2014-10-17

ヒトや哺乳類の常在菌であり病原性のない嫌気性菌であるBifidobacterium longum(B.Longum)菌を嫌気的環境への特異的DDSとして用いた血管新生療法の可能性について,ヒトbFGF遺伝子を組み込んだbFGF-B.Longumを作製し検討した。【方法】ヒトbFGF遺伝子およびその発現遺伝子を組み込んだプラスミドベクターをB.Longum菌にトランスフェクトし,bFGF-B.Longumを作製した。これをマウス下肢虚血モデル(bulb/c,14W)に尾静注した。投与後3日目および血流改善後にサクリファイスを行い,健常下肢,虚血下肢それぞれの組織内菌数を建嫌気培養にて確認した。ついでレーザードップラー血流計を用いて経時的に下肢血流を測定した。【結果】bFGF-B.Longumは投与後3日目には健常部位から消失し虚血部位にのみ集積した。血流改善後は患肢からも消失した。またbFGF-B.Longum投与群ではPBS投与群に比べ有意に下肢血流を改善した。【考察】bFGF-B.Longumは全身投与(静注)によっても虚血部位にのみ特異的に集積し,局所での血流改善をきたすこと,また血流改善以降は自然に治療部位より消失することが示された。既存の血管新生療法はそのDDSに虚血部位特異性がないため,一般的に筋注や動注で用いられその侵襲性が問題となる上,副作用発現時や治療後の遺伝子の除去が困難といった問題がある。B.LongumをDDSとして用いた血管新生療法は,デリバリーシステムの疾患部位特異性と虚血感度によって,低侵襲でかつ安全な治療法となりうると考えられた。
著者
野田 朱美 宮内 崇裕 佐藤 利典 松浦 充宏
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

房総半島南端部には沼Ⅰ~Ⅳ面と呼ばれる完新世海成段丘が発達している.このうち最低位の沼Ⅳ面は1703年元禄地震の際に離水した浅海底地形(波食棚から海食台付近)であることが知られており,元禄段丘面とも呼ばれる(松田ほか, 1974).この元禄段丘面と高位の沼Ⅰ~Ⅲ面の高度分布パターンが良く似ていることから,従来,沼Ⅰ~Ⅲ面も昔の元禄型地震によって離水したと考えられてきた(Matsuda et al., 1978; Shimazaki & Nakata, 1980; 宍倉, 2003).しかし,プレート境界地震の場合,地震時にすべった領域(震源域)はやがて再固着するが,それ以外のプレート境界では地震間を通じて非地震性すべりが進行するため,地震時の隆起・沈降パターンは時間と共に徐々に失われていき,最終的に残るのはプレートの定常沈み込みによる変動だけである(Matsu'ura & Sato, 1989).従って,沼Ⅰ~Ⅲ面の形成は元禄型地震の発生とは関係なく,その成因は太平洋プレートとフィリピン海プレートの沈み込みによる房総半島南端部の定常的な隆起運動と完新世の海水準変動に帰すべきものである(松浦・野田,日本地震学会2014年度秋季大会講演予稿集,D11-03).こうした考えの妥当性を検証するため,本研究では,波浪による浸食と堆積,地盤隆起,及び海水準変動を考慮した海岸地形形成モデルを構築し,房総半島南部の完新世海成段丘発達の数値シミュレーションを行った.海岸地形の形成過程は概念的に次のような式で記述される:標高変化=-浸食+堆積+地盤隆起-海面上昇.海岸での海-陸相互作用のモデル化に際しては,浸食レートは波浪エネルギーの散逸レートに比例し(Anderson et al., 1999),浸食によって生産された浮遊物質の堆積レートは岸から遠ざかるにつれて指数関数的に減少していくとした.また,房総半島完新世海成段丘の発達シミュレーションでは,地震性の間欠的な隆起運動は考慮せず,プレートの沈み込みに起因する定常的な隆起運動(Hashimoto et al., 2004)のみを考慮し,酸素同位体比記録に基づく平均海面高度の時系列データ(Siddall et al., 2003)を3次スプライン関数の重ね合わせでフィッティングした海水準変動曲線を用いた.海食崖と海食台は海水準変動曲線の変曲点(山と谷)付近で発達する.1万年前から現在までの海水準変動曲線には7つの変曲点(4つの山と3つの谷)があるため,7つの海成段丘が形成される.しかし,隆起速度が遅いと,形成された段丘の殆どは現海面下に沈んでしまい観測されない.隆起速度が早い場合でも,古い段丘と新しい段丘の重なり合いや逆転が生じ,段丘面の形成年代と現在の高度の対応関係は単純ではない.このことは,房総半島南部の完新世離水海岸地形の詳細な調査に基づいて,既に指摘されている(遠藤・宮内,日本活断層学会2011年度秋季大会講演予稿集,P-06).今回のシミュレーションでは,隆起速度を3~4mm/yrとすると沼Ⅰ~Ⅳ面に相当する明瞭な段丘面が発達することが分かった.但し,その場合でも,古い段丘と新しい段丘の重なり合いや逆転が生じているため,最高位の段丘面の形成年代が最も古いわけではないことに注意する必要がある.
著者
小山亮太郎 石原翼 岩崎彩
出版者
サイエンスキャッスル
雑誌
サイエンスキャッスル2015
巻号頁・発行日
2015-12-04

植物の生育には水・酸素・温度や光が必要だが、そのほかにも音が生育に影響を与えるという話を聞く。音の何が生育に影響を与えているのかを調べてみたところ、音由来の空気の振動により細胞が刺激され、結果、生育が向上するらしいことが分かった。そこで音の周波数=空気の振動数が、植物の生育にどのような影響を与えるのかを調べてみた。実験には大豆を用い、水につけた後、種々の周波数の音を聞かせるもの、聞かせないものに分け4日間育て、このときの発芽率や芽の成長度を計測した。複数回の実験を重ねることにより、小さいながらも差異を見いだすことができた。
著者
加藤正宏 西井瑞季 田中美穂 平瀬詩織 牛若菜月 東畑知真 田端優貴
出版者
サイエンスキャッスル
雑誌
サイエンスキャッスル2014
巻号頁・発行日
2014-12-19

バナナの成熟に伴いその皮は斑点状に黒色化する。ドーパミンの重合による黒色化である。この現象に興味を持ち研究を始めた。特に、①なぜ、斑点状に黒色化するのか(生物学的意味)、②斑点状に黒色化する仕組みはどうなっているのか、③なぜ、ドーパミンが存在するのか(生物学的意味)、これらの点に疑問を持ち、その解明を目的とした。今回は、②について知見を得るべく、「バナナの皮の変化の温度依存性(‐8℃~200℃)」を調べた。その結果、20℃および30℃で保存した場合のみ、明確な斑点状の黒色化が観察された。また、細胞レベルでの黒色化を確認するために、表皮の顕微鏡観察も行った。これら以外に、得られた知見を紹介する。