著者
高田 三枝子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.34-45, 2006-04-01

本研究は語頭有声破裂音のVOTに注目し東北から関東にかけての地域,また話者の生年との関係を分析した。資料は1986〜88にかけて全国統一的に収集された録音資料を用いた。その結果東北と関東の間で大きな地域差が見られ,東北では話者の世代(生年)に関わらずほとんどの場合VOT値がプラスの値をとること,一方関東では世代差がみられ,生年の遅い話者ほどプラスの値をとる割合が高いことを明らかにし,さらに北関東(茨城・栃木)内を詳細に検討することによりここに見られる東北・関東間の境界が,先行研究で指摘されてきた東北的な音声音韻に関する現象の境界とほぼ一致することを指摘した。
著者
富田 昌平 TOMITA Shohei
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
no.65, pp.149-158, 2014-03-31

本研究では、子どもはなぜサンタクロースを信じ、やがて信じなくなるのかについて、大学生を対象とした。回想的な質問紙調査により得られた事例をもとに考察を行った。その結果、以下のことが示唆された。子どもは幼児期の間にプレゼントにまつわる神秘的体験をもとに超自然的な力を持つ行為者としてのサンタクロースの概念を明確にしていく。幼児期の終わりから児童期中頃になると、子どもは論理的思考力や懐疑主義を身に着けるようになり、サンタクロース神話をめぐる数々の矛盾点に疑いの目を向け、それらを見破るようになる。具体的には、プレゼントの隠し場所や包み紙に関する見破り、プレゼントを置く瞬間の目撃、サンタクロースへの手紙の発見、手紙やプレゼントの内容に対する疑惑などが挙げられる。また、親や年長のきょうだい、友達からの証言もサンタクロースに対する不信に拍車をかける。そのようにしてサンタクロースを信じなくなる一方で、サンタクロースを信じようとする心も併せ持っており、子どもの心は両者の間を揺れ動いている。従って、親をはじめとする大人がそうした子どもの揺れ動く心にていねいに寄り添い、誠実に対応することがこの時期大切なこととして考えられる。さらに、「サンタクロースは本当はいない」という真実を知った時、子どもは怒りや悲しみ、憤りなど様々な感情的反応を示すが、大切なのはその時その瞬間ではなく、その後それをどのように意味づけ、振り返るかではないかと考察された。
著者
長崎 洋
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.55-59, 2012
参考文献数
45

政治・法律・行政分野の文献には,内容的に公開しても差し支えないものが多い。また,その作成のお金の出所から考えて広く公開されるべきものが多いと思われる。それにもかかわらず,入手しにくいものが少なくないように感じられる。本稿では,まず,そのような文献を類型化し,次に,インターネット情報の発達によってそれらの入手可能性が高まっていることを述べる。最後に,今後の更なる文献の公開とその保存について,概観する。その際,これまで灰色文献に取り上げられることがあまりなかったと思われる,通達を収録した資料および国会の資料にも言及している。
著者
大場 孝裕
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.335-340, 2020

<p>ニホンジカ捕獲強化の政策に伴い,わなによる捕獲数が増え,捕獲に占める割合も大きくなっている.わなの種類ごとの捕獲数はほとんど集計されていないが,箱わなや囲いわなに比べて安価で,1人で設置できる足くくりわなの使用が多いと推測される.捕獲具ごとの捕獲数の集計は,今後の課題である.足くくりわなによる捕獲は,ワイヤーロープで足を締め付ける.動物がわなに掛かってから,殺処分や放獣するまでの経過時間が長いことも多く,個体の損傷,ストレスが多い,アニマルウェルフェア上問題のある捕獲方法である.また,足くくりわなは,獣道に隠して設置し,荷重により作動するため,ニホンジカ以外の動物,特に大型哺乳類のクマ類,ニホンカモシカ,イノシシの意図しない錯誤捕獲を避けられない.実態把握のため,錯誤捕獲の報告を求めても,少なくとも処罰の対象となる条件が明確化されないと,正確な報告は期待できない.足くくりわな捕獲に伴う損傷とストレスの軽減,錯誤捕獲回避のための技術的改良に加え,足くくりわなに依存しないニホンジカ個体数管理技術の開発が必要である.</p>
著者
土崎 常男
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.7-11, 1993

ウイルスは生きた細胞でのみしか増殖できないので,土壌中では植物の根,土壌微生物,土壌小動物等の中に存在している。tobacco mosaic virus等のTobamovirusは極めて安定なウイルスであるため,根から放出されたウイルスは,土壌中でもしばらくの間生存し,新たな宿主植物が植えられると機械的に根に感染を起こす。軟腐病菌等の土壌中の植物病原細菌にはバクテリオファージが感染しているが,これを細菌病の防除に使用する試みは成功しておらず,現在はファージを利用した細菌の分類,同定,検出,定量等の手段として用いられている。コムギ立枯病菌等の土壌中にある植物病原菌には,時に菌類ウイルスが感染している。菌類ウイルスの宿主である菌に対する影響,自然界での伝搬方法は殆ど明らかにされていない。コムギ立枯病菌のウイルスを例にとると,血清学的性状の異なる4群のウイルスが検出されており,しばしば同一細胞に複数のウイルスが感染することが明らかにされている。土壌伝染性植物ウイルスの媒介者として,土壌棲息菌が数種類認められているが,菌とウイルスの関係には2種類あり,1)休眠胞子中にウイルスが存在しそれより発芽した遊走子でウイルスの伝染が起こる場合,2)休眠胞子中にウイルスはなく,遊走子の表面にウイルスが吸着されてウイルスの伝染が起こる場合とがある。土壌に棲息する植物寄生性線虫の中のニセハリセンチュウ目により媒介されるウイルスとして約30種類が知られている。ウイルスを獲得した線虫は数ヵ月以上体内にウイルスを保持するが体内で増殖はしない。体内の食道等にウイルスが吸着されるが,その表面構造とウイルスの外被蛋白質との間の特異的な親和性等により,媒介の有無が決められる。
著者
丹野 正
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
no.3, pp.37-47, 2006-12-28

一般に狩猟採集民の社会は徹底した平等主義社会であると位置づけられている。リー(1979)が記載したクン・サンのハンターたちが交わす「きついジョーク」は、このことを端的に示す事例として多くの人類学者たちが紹介している。また、リーが調査地のクンたちへのクリスマス・プレゼントとして購入してきた大きな雄牛が、彼らによって酷評されてしまったというエピソードも、同様の例として引用される。私はムブティやアカのハンターたちが仲間の殺した獲物をけなす「きついジョーク」を聞いたことがなかった。そこで、クンはなぜそのようなジョークをあえて言うのかという疑問をもった。また、リーはハンターたち自身による「きついジョーク」と雄牛のエピソードのどちらを先に経験したのだろうか。本稿では、リー自身は雄牛の一件をどのように受けとめ、そこから何を理解するに至ったのか、さらに、ハンターたち自身が交わすとされる「きついジョーク」は実際にはいつ、どこで、どのような状況のもとでリーが知ることができたことなのかを、リーの叙述をもとに明らかにする。これらのことは、彼の著書の以下のような目的に直接に関わっているからである。「・・・また調査者たちがクンの生活に、そしてクンたちが調査者たちの生活に及ぼした相互のインパクトを跡づける。その目的はフィールドワークの経験なるものを(読者に)お伝えすることにある。」
著者
田渕 直樹
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-18, 2002-03
被引用文献数
1

The 'Mizu Kaese' movement is one of the first local resident's campaign in Japan to succeed in acquiring the maintenance flow discharge in the river. But the people of the three Kawanes were not satisfied with the results at all. What is the reason of it? Firstly, the people of the three Kawanes did not fully understand the 'Kawara Sabaku' of the Ooi river. The dam of the Chuden Co.Ltd., destructed the circulation of water and soils and the eco-system of the Ooi river. Secondly, because the leaders of that campaign was not people but person of influence in the three Kawanes, they couldn't give a challenge to the Chuden Co.Ltd., and the government. The 'Mizu Kaese' movement is completely different from a citizen's movement that was in fashion since 1990's in Japan. Next step, they need to set up a council to discuss the eco-system in the Ooi river, and start a campaign of reviving the river with the people all over the country.
著者
小田部 胤久
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.15-27, 2006-06-30

Die sich ihrer Modernitat bewussten Fruhromantiker, vor allem Fr. Schlegel, haben Fragmente mit Absicht verwendet, wie es sich aus einem Fragment von Fr. Schlegel ergibt: "Viele Werke der Alten sind Fragmente geworden. Viele Werke der Neuern sind es gleich bei der Entstehung." Im vorliegenden Aufsatz versucht der Verfasser nicht, das Fragment als eine literarische Gattung zu behandeln, sondern es geht darum, zu zeigen, dass der Geist des Fragments dem Gedanken Schlegels zugrunde liegt. Im Studium-Aufsatz von 1795 stellt Schlegel die vollendete Schonheit der alten Kunstwerke dem Fragmentarischen der modemen Kunstwerke gegeniiber. Ab 1797 leugnet er einen solchen Dualismus. Schlegels neue Auffassung des Fragments lasst sich in seiner Behauptung erkennen, dass das "Reifste und Vollendetste" "Bruchstucke von Bruchstucken" seien. Fragmente konnen "vollendet" sein, sofern sie "Winke und Andeutungen" sind. In diesem Sinne sind Fragmente Projekten gleichgesetzt. Und Fragmente als Winke und Andeutungen mussen mit der sie erganzenden bzw. verwirklichenden "Kritik", die selbst nicht anders als fragmentarisch sein kann, verbunden werden. Aufgrund einer solchen Erganzung vermitteln die Fragmente das Einzelne mit dem Ganzen, das Endliche mit dem Unendlichen, die Wirklichkeit mit der Moglichkeit und die Gegenwart mit der Zukunft.
著者
川島 大輔 小山 達也 川野 健治 伊藤 弘人
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.121-132, 2009
被引用文献数
4 8

本研究は医師が一般診療場面において希死念慮を有した患者にどのようなメッセージを呈しているのかを探索的に検討することを通じ,医師の自殺予防に対する説明モデルを明らかにしようとしたものである。希死念慮者への医師の対応に関する調査において,これまで死にたいと述べる患者に自殺をとどまるようにメッセージを伝えた経験があると回答した166名の医師の自由記述を対象に,テキストマイニングの手法を用いて分析を行った。結果,頻繁に用いられる言葉が同定され,また対応分析により「共感的理解と告白」,「精神科への相談」,「病気の診断と回復の見通し」,「自殺しない約束」,「生の価値と他者への配慮」の5つのクラスターが確認された。さらに得られたクラスター変数と患者の性別および年齢との関連についても検討を行った。
著者
岩船 昌起
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<b>【はじめに】</b>2016年熊本地震災害では,九州の県と市町村は,九州地方知事会での決定に基づき「カウンターパート方式」で被災市町村をそれぞれを専属的に支援した。筆者も,鹿児島県担当の宇城市で集中的に支援活動を行い,災害対策本部等に助言している。本発表では,この活動や宇城市提供データに基づき,宇城市での被害や避難者の実態を報告する。<br><b>【地震の概要】</b>2016年4月14日21時26分に熊本県熊本地方を震央とする震源の深さ11kmでM6.5の地震が発生し,益城町では震度7,宇城市では震度6弱が観測された(気象庁)。また,同じく熊本地方を震央とする震源の深さ12kmでM7.3の「本震」が16日1時25分頃に発生し,西原町および益城町で震度7,宇城市で震度6強が観測された。<br> 本震以降,熊本県阿蘇地方や大分県西部および中部でも地震が頻発し,14 日21 時以降6月30日までに震度1 以上を観測する有感地震が1,827 回発生している。これは,平成16年新潟県中越地震(M6.8)など日本で観測された活断層型地震の中で最も多いペースである。<br><b>【熊本地震による被害の概要】</b>熊本地震災害の主要な被災地の熊本県と津波災害が際立った東日本大震災被災地の岩手県とでの被害状況を比較する。人的な被害としては,死者・行方不明者が岩手県の方が桁違いに多いが,負傷者は熊本県が8倍弱多い。地震動による瓦の落下や家具の倒れ込み等で外傷を負った方々が多かったものと思われる。物的被害として,全壊は岩手県の方が7倍程度多いが,一部損壊は熊本県がほぼ倍程度の数となっている。<br> 東日本大震災では,全壊あるいは大規模半壊でも家屋を解体して「滅失」と判定されて応急仮設住宅に入居できた方々が多く,応急対策期の避難所での生活よりも復旧期の仮設住宅での暮らしの中でさまざまな問題が現出した感がある。一方,熊本地震では「一部損壊」認定世帯が被災者の大半を占め,半壊以上ので手厚く施される生活再建支援のさまざまな手立てを熊本地震災害被災者の大半に適用できない可能性が高い。<br> また,熊本地震では,土砂災害で阿蘇地方での大規模崩壊等が注目されているが,ほとんど報道されていない宅地や農地の盛土地等で小規模な崩壊や亀裂が多数生じており,それらの土地所有者の多くがその対処に難儀している。それは,宅地被害でも家屋の破壊に結びつかないと罹災証明で評価され難く,特に私有地の被害が公的支援の対象になり難いからである。盛土地での被害は,1978年宮城県沖地震や2011年東日本大震災でも丘陵地の団地等で繰り返し発生しており,日本列島の造成地では地震動でどこでも生じる可能性が高かい問題であった。<br><b>【避難者の特徴】</b>宇城市提供の避難者数データから, 14日「前震」直後より16日「本震」以降で避難者数が多いことが分かる。17日0時に宇城市内避難所20施設合計で,宇城市人口の2割程度の11,335人が最大の避難者数として記録されている。また,日中には避難者数が減じ,寝泊まりする夜間に増加する傾向がある。<br>&nbsp;一方,約93年間(1923年~2016年4月13日)の宇城市での最大震度は,震度4であった(気象庁)。従って,「前震」までに震度5弱以上の経験者はごくわずかであり,かつ震度5弱以上の地震は宇城市で発生しないと考えていたようであった。そして,地震災害を身近なものと考えていなかったことから,地震にかかわる科学的な知識や地震から身を守る知識や技術も地震が多発する地域の人びとに比べて相対的に低かったと思われる。<br> 「地震に対する備え」が十分でなかった宇城市民は,14日夜の前震と16日未明の地震で「地震の揺れに対する恐怖心」が強化され,家屋の損壊が酷くなくても自宅に入れない人びとが多数出現した。特に夜に地震に遭ったことから家の中で寝られない人びとが多く,それが避難者数の夜間増加の要因となった。<br>&nbsp;避難者が抱く「地震に対する恐怖心」を軽減・解消するためには,地震の発生が収まることが最も重要であるが,活断層が存在する熊本では今後も地震が必ず発生し,再び恐怖心が呼び起される可能性が高い。これに対処するには,ソフト面では,心理的なカウンセリング等と並んで,防災教育を通じて「地震を知り,これへ対処できる」知識と技術を「地震を経験した人びと」が身に付ける必要がある。具体的には①市民が地震に関する科学的知識を身に付けること,②家具の固定など被害に遭い難い居住環境を事前に整えておくこと,③地震発生時には自身の安全にかかわる周囲の状況を見極められること,④これに応じて「身を守る」行動を選択実行できることなどに及ぶ。<br><b>【本発表では】</b>今後の防災教育の立案にかかわり,宇城市提供資料の分析や,実施予定の質問紙調査の結果も交えて,本発表時には,熊本地震災害避難者の詳細な特徴を報告する。
著者
西川 俊作
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.41-65,表3枚, 1971-12