著者
湯村 翼
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2015-EC-37, no.3, pp.1-3, 2015-08-16

新たな成果や知見が発表される場は,アカデミック (学術会議や学術論文) 以外に,IT 勉強会,ハッカソン,Maker Faire,ニコニコ学会 β,ニコニコ動画,YouTube,KickStarter など多岐にわたる.これらに類する活動は昔からあったと推測されるが,近年のウェブサービスの充実とともにその様子が浮き彫りとなってきた.これらの場では、未知の知見が大いに含まれているものも数多く発表されている.人類の進化のためには適切に取り扱い広く共有されるべきであるが,学術論文の引用のような明確なルールは存在していない.本発表は,アカデミック以外の場において発表される成果や知見をどう活用すべきか議論するきっかけとしたい。
著者
粟飯原萌 小林貴之 村上雄太郎 菅原祐人 花村成慶 武田智裕 古市昌一
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.307-308, 2011-03-02

本研究は,教育支援を目的としたシリアスゲーム(SG)に関するものである.対象は就学前の児童で,社会性や言語教育等の支援を目的とした電子絵本の利用を効果的に実施するため,集中力を持続させるためのHMIに関する.児童が電子絵本との間で複数の手段でインタラクションを繰り返してストーリが進行・展開することにより,集中力を維持することを特長としたHMIを提案する.本HMIでは,電子絵本中の複数の登場人物をAR,OpenCV及びマルチユーザタッチパネルを利用したユーザ認識技術を複合的に利用することにより,一人または複数の人が同時に操作することが出来る. 本稿では,方式の提案及び初期評価結果について述べる.
著者
長嶋 洋一
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2018-MUS-118, no.11, pp.1-29, 2018-02-13

世界中で開発が進められている自動運転車は安全走行のため多種の搭載センサを外界に向けており,GPS を含むこのセンシング情報を生かして周囲の状況に反応する 「リアルタイム作曲システム」 として,運転の必要がない全ての搭乗者に快適で音楽著作権の不要な BGM をライヴ生成する自動作曲手法が求められている.英国 Forkswagen が 2013 年に発表した "Play the Road" は運転手目線のシステムでありやや目的が異なるが,その音楽スタイルの検討は重要な参考資料となった.ライブ生成の要素を除外するとしても,古今東西の音楽データを収集し深層学習させた AI が良質な音楽を自動生成するためには,教師データとして膨大な音楽嗜好感性ビッグデータを適用すればよいが,いまだに成功例が報告されていない.筆者は 2006 年に IPA 「未踏」 に採択され発表した "FMC3 (Free Music Clip for Creative Common)" において,音楽的ヒューリスティクスを重視した考え方を提案したが,豊田中央研究所に共同研究を依頼され開発した 2016 年版の車載用リアルタイム BGM 生成システムにおいて,この原則を発展させた.自動運転車が生成するセンサ情報と音楽音響的情報との関係を整理した上で,本稿ではこのリアルタイム BGM 生成システムの試作に関して,(1) BGM 進行のための音楽的な基本原理,(2) ループの繰り返しとリズム/ビートのスタイル,(3) センサ/マッピング / 音楽生成のブロック分割,(4) 音楽要素パラメータへの確率統計的な重み付け,(5) 調性とコードとスケールの構成,(6) 試作と実験の模様,などについて詳細に報告する.
著者
テンシリリックン シラ 高橋 一幸 ナム サンギュ 池田 心
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2018-GI-40, no.7, pp.1-6, 2018-06-22

これまでのコンピュータゲームプレイヤ (ゲーム AI) における研究の多くは,“強さ” を目的として行われてきた.近年では,ゲーム AI は人間プレイヤの対戦相手として十分な強さに達しつつある一方,それ以外の部分,特に “人間らしい振る舞い” に関心が集まってきている.人間らしいゲーム AI の利用目的 ・ 着眼点 ・ 実現法は多岐にわたる.例えば利用目的では,対戦する人間プレイヤを楽しませたり観賞用の映像を作成する目的だけでなく,人間プレイヤにとっての難易度を計測する目的,それを発展させステージを生成する目的などにも使われている.また着眼点もさまざまであり,人間の疲れ ・ 見間違い ・ 操作ミスなど身体的な部分に着目したもの,感情や認知バイアスなど心理的な部分に着目したもの,またそもそも 「ゲームは勝つためではなく楽しむためにプレイする」 などの人間の目的設定に着目したものなどが挙げられる.実現法についても各目的 ・ 着眼点ごとに複数ありえ,人間の挙動を学習データとして機械学習を用いるもの,疲れや見間違いなどを再現した環境下での学習を行うもの,など多様である.近年のこれらの研究を体系的に俯瞰しておくことは価値があると考え,本稿では第一次の文献調査の結果をまとめたものを紹介する.
著者
梶田 耕平 吉野 孝 宗森 純
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.6(2001-GN-042), pp.25-30, 2002-01-24

リアルタイムで協調して4 コマ漫画の作成を支援する,4 コマ漫画作成システムAB- DOKAN を開発した.今回,AB- DOKAN を用いて,複数の作業者が協調して4 コマ漫画を作成し,作業者数が漫画作成時にどのような影響を及ぼすかについて検討した.作業者数は2 名,3 名,4 名で,4 コマ漫画作成実験をそれぞれ10回ずつ行った.実験の結果,1 人当たりのチャット会話数と漫画作成時間とについての有意差は見られなかったが,漫画の面白さの5 段階評価については,3 名の作業者による4 コマ漫画が面白い傾向が見られた.
著者
Xinyi Zhao Nobuaki Minematsu Daisuke Saito
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2018-SLP-125, no.17, pp.1-4, 2018-12-03

In English education, speech synthesis technologies can be effectively used to develop a reading tutor to show students how to read given sentences in a natural and native way. The tutor can not only provide native-like audio of the input sentences but also visualize required prosodic structure to read those sentences aloud naturally. As the first step to develop such a reading tutor, prosodic events that can imply the intonation of the sentence need to be predicted from plain text. In this research, phrase boundary and 4-level stress instead of the traditional binary stress level are taken into consideration as prosodic events. 4-level stress labels not only categorize syllables into stressed ones and unstressed ones, but also indicate where phrase stress and sentence stress should appear in a sentence. Conditional Random Fields as a popular sequence labeling method are employed to do the prediction work. Experiments showed that applying our proposed method can improve the performance of prosody prediction compared to previous researches.
著者
萩原 友子 黒澤 亮 祐森 誠司 池田 周平 稲元 民夫 栗原 良雄 Tomoko Hagiwara Kurosawa Akira Sukemori Seizi Ikeda Shuhei Inamoto Tamio Kurihara Yoshio
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.169-172,

3週齢のSD系雄性ラット12匹を食糞行動を許容した対照区と食糞行動阻止区に6匹ずつ配し,4週間の飼育期間中に,対照区からは普通糞を,食糞行動阻止区からは含水糞を採取し,それぞれの糞の微生物数を測定した。普通糞では含水糞に比べStaphylococciとVeillonellaeが多く,StreptococciとBacteroidaceaeが少ないことが明らかとなった。普通糞と含水糞で微生物叢が異なることは,含水糞に含まれるビタミン類の合成や消費に関わるものと考えられた。
著者
松崎 丈
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.8, pp.15-32, 2013-06

本稿は、平時における聴覚障害者の情報アクセスの実状を概観し、東日本大震災で被災した聴覚障害者が発災直後から復旧期までの時期に直面した問題状況を情報アクセスの観点から検討するとともに、今後、災害時における聴覚障害者の情報アクセスで求められる方策と課題を検討した。その結果、東日本大震災で直面した問題状況は、自然災害による直接的な被害だけでなく、平時の情報アクセスに関する制度と体制の不備にも起因していることが示唆された。今後の防災・減災対策として、聴覚障害者自身が災害時の情報アクセスへの行動や手段を拡げること、情報提供者となる家族や地域の人々とのつながりを作ること、通信インフラの耐災害性の強化とICTアクセシビリティの向上・改良などが挙げられた。
著者
矢嶋 直規
出版者
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
雑誌
人文科学研究 (キリスト教と文化) = Humanities: Christianity and Culture (ISSN:24346861)
巻号頁・発行日
no.50, pp.53-77, 2018-12-15

本稿はヒュームに代表される近代英国哲学の道徳哲学がニュートン派の自然神学をめぐる論争から成立した過程を解明することを目的とする。自然神学論争の中心人物にはクラークとバトラーが含まれる。ニュートン派の自然神学を擁護するクラークは、ホッブズ、スピノザ、ライプニッツ、トーランドを批判する論陣を張っていた。またバトラーの経験論的方法による神学と道徳哲学はヒュームやリードにも影響を与えた。本稿の主たる考察対象は初期バトラーの思想形成の舞台となったバトラー= クラーク書簡である。同書簡では神の存在証明における神の遍在と、神の必然的存在についてのクラークの主張へのバトラーの批判が展開されている。神の遍在は空間・時間論を主題とし、神の必然的存在は因果論を主題とする。バトラーは空間・時間を事物の原因とするクラークの議論を批判し、因果を人間の経験に即したものとして扱う可能性を提示している。また神の存在が必然的であるというクラークの主張を批判することで、形而上学的必然性に基づく対象理解を蓋然的信念の問題へと転換している。こうした議論は後期バトラーの経験主義的道徳論及び宗教論に結実するとともに、ヒュームやリードをはじめとするスコットランド啓蒙思想の経験主義的道徳論を準備する思想となった。こうして本稿はバトラーのクラーク批判に用いられる必然性、蓋然性、思惟可能性などの概念が経験的道徳論の基礎概念とされた次第を解明しようとするものである。
著者
津上 智実 Motomi TSUGAMI
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.83-100, 2018-12-20

本論はソプラノ歌手永井郁子(1893-1983)の音楽活動の概略を、朝日新聞データベース「聞蔵 Ⅱ」掲載の記事によって描き出すことを目的とする。永井郁子は山田耕筰の最初の妻で半年足らずで離婚した女性として知られ、演奏家としての先行研究は1本という状況である。だが予備調査において、永井の「邦語歌唱運動」が当時の雑誌や新聞で大きく取り上げられているのを見出した。この活動は、日本語で歌うことの議論を活性化したと見えるが、先行研究がないために実態が不明で、これを再評価する必要性を痛感した。「聞蔵Ⅱ」で検索すると、「永井郁子」に関する記事は98件(写真23点)で、1915年から1941年までの26年間に及ぶ。報道のピークは1925年から1928年にかけてで、邦語歌唱運動の始動時期に当たる。初期の永井が出演した演奏会は、多数の奏者によるオムニバス形式で、学校や慈善関係が多い。1922年夏からは個人的な動向が報道されるようになり、1925年6月には放送開始間もないラジオにも出演している。邦語歌唱運動は1925年11月に第1回、翌年11月に第2回が行われ、その際に『和訳歌詞問題前後「転機」批判編』が刊行された。また、宮城道雄の琴と吉田晴風の尺八の伴奏で両氏の創作歌曲の紹介に進み、更に豊澤猿之助と杵屋佐吉の糸で義太夫中の名歌と佐吉の作曲とを唱うといった試みを継続している。1929年9月には大隈講堂、青山会館、報知講堂、本所公会堂、横浜会館で5日連続の独唱会を行い、1931年には「支那各地」まで巡演し、1932年3月には第500回を日比谷公会堂で行っている。その後、満州にも巡演し、1941年3月3日に日比谷公会堂で「永井郁子邦語運動満十五周年念願達成引退音楽会」を行ったことが記事から判明した。これから大まかな軌跡は掴めたものの、その評価については今後、さらに理解を深めていく必要がある。
著者
武田 翔一郎 亀田 明男 磯貝 愛 木全 英明
雑誌
研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:21888582)
巻号頁・発行日
vol.2019-AVM-104, no.9, pp.1-5, 2019-02-21

ビデオマグニフィケーションは,ヒトの視覚では捉えることが困難な映像中の微細な変化を強調 ・ 可視化する技術だが,被写体に素早く大きい変化があると,強調後の映像にノイズが発生するという課題を抱えている.これまでに,時系列データの滑らかさを評価する躍度という指標を用いることで,素早く大きい運動を無視しながら,微細な変化のみを強調する新たなビデオマグニフィケーション手法が提案されている [9].この手法は,定性的および定量的評価を通じて,従来発生していたノイズを著しく抑制できることが確認されているが,強調された映像がユーザに与える体感品質については明らかにされていない.本稿では,微細な変化の強調率に応じた,変化に対するユーザの気づきやすさと自然さの関係性について主観評価を行い,その結果を報告する.